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風邪が胃腸にくるとは

2019.10.16 | Category: 胃腸

風邪が胃腸にくるとしばしば食欲不振、嘔吐、吐き気、下痢などの感冒性腸炎を起こします。主な原因菌としてアデノウイルスやコクサッキーウイルスかよく知られています。アデノウイルスはヒトや動物に広く蔓延しているウイルス群ですか、このウイルスは32型以上もあります。風邪症状である上気道炎、咽頭結膜炎や胃腸炎だけで無く流行性角結膜炎等も起こします。コクサッキーウイルスは嘔吐、下痢、発疹、発熱、上気道炎、ヘルパンギーナ、手足口病、心筋炎等全身の感染症を引き起こします。脳炎や髄膜炎の発症頻度も50~60%と言われています。ロタウイルスはかつて仮性コレラと呼ばれ、白色または黄白色の下痢と嘔吐、発熱が2、3日から長くて1週問ほど続きます。多くは乳幼児に多く、抵抗力の無いお年寄り等に集団発生する事もあります。また風邪の合併症を予防する為の抗生物質の副作用として起こる偽膜性大腸炎があります。下痢、便秘、腹部不快感等の症状があり、発症はゆっくりですが、やがては激しい脱水状態が起こったり、一部の大腸の粘膜の上に偽膜を作るのが特徴です。これは抗生物質の影響で腸管内の細菌の種類が変化して(菌交替現象)クロストリジウム菌が異常に増えて、その菌毒素によって粘膜障害が起こって偽膜が出来るのです。

イボ痔

2019.10.14 | Category: 胃腸

直腸肛門部は細かい静脈が入り組んで密集していますが、この静脈叢の血行障善によってコブの様に膨らんだ物を痔核と言い俗に「イボ痔」と呼ばれています。加齢により痔主は増え、50才以上の2人に1人は痔核が有ると言われています。面白い事に痔核は仰向けに寝て肛門を時計に見立て、3時、7時、11時の場所に出来やすいのが特徴です。この痔核は内痔核と外痔核がありますが、この二つは同じ痔なのに発生由来の関係で大きな違いがあるのです。肛門の奥に少し指を入れると凸凹のヒダがあります。、この形状が歯並びの様に見えるので「歯状線」と呼ばれています。この歯状線は発生学的には、内側が内胚葉性の原始直腸と外側が外胚葉性の原始肛門とが接合して出来たものです。つまり直腸と皮膚の境界線で、発生学的に見れば痔核は直腸の疾患で外痔核は皮膚の疾患なのです。症状としても歯状線の内側は自律神経で支配されていますから自分の意志で動かしたり痛みを感じる事もありません。外側は脊髄神経によって支配されていますから、当然ながら痛みも痒みも感じるのです。痛みの伴わない出血は内痔核の場合ですが、それ以外に直腸癌の可能性もありますから、注意が必要です。

十二指腸球部

2019.10.13 | Category: 胃腸

指を12本橋に並べた長きの十二指腸は、胃の幽門につながる球部から始まり、その球部はX線で横から見ると三角形のおにぎり状をしています。この十二指腸球部の粘膜には胃からの酸を、中和する強アルカリの重炭酸を分泌するブルンネル腺が分布しています。そして塩を含んだ胃内容物が十二指腸に入って来ると十二指腸の壁に存在するセンサー細胞が食物の内容や胃酸の酸度を感知し、セクレチンやエンテロガストロンなどの消化管ホルモンを出して胃酸の分泌を抑えるのです。胃酸が胃酸の出具合を抑えるフィードバック機構を十二指腸ブレーキと呼ぶのですが、ブルンネル腺と十二指腸ブレーキの二重の働きによって球部は酸性でも十二指腸下部は中性になっているのです。そして十二指腸潰瘍はほとんどがこの球部に出来るのですが、高酸度の胃液に触れるのがその原因と考えられていました。しかし、現在では十二指腸粘膜の胃上皮化生が主な原因ではないかと考えられています。加齢によって、胃の上皮が腸上皮化生を起こすことは知られていますが、十二指腸球部の粘膜も胃の上皮に変化し、それと共に胃の出口に近い幽門前底部に住んでいるヘリコバクター・ピロリ菌が、十二指腸に移り住んで、十二指腸潰瘍を起こすのだと考えられています。

野菜が大腸癌を予防

2019.10.12 | Category: 胃腸

大腸癌は男性では1位肺癌、2位胃癌、に次いで3位女性では1位大腸癌、2位肺癌、3位胃癌、です。急増したのは食生活で肉食が多くなった為に、大腸に過酸化脂質の発生や腸内細菌に変化をもたらした事です。脂肪を多く摂ると便に過酸化脂質が発生し、、赤身の肉に含まれる鉄と反応して化学的に電子を余分に持つ過酸化脂質ラジカルと言う状態になります。これが遺伝子のDNAを切断し遺伝子の変異を引き起こし癌を発生させるのです。この脂質ラジカルを中和してくれるのが、野菜やお茶に含まれるフラボノイドや、ポリフェノールです。野菜の細胞壁は人の消化液では破れません。ですから野菜からこの成分を取る為には生野菜ではなく加熱してから食べる事が大切です。また腸内には100種類、100兆の細菌がいます。その中にはビフィズス菌や乳酸菌といったビタミン合成や消化吸収、感染防御等に有用な善玉菌と、大腸菌、ウェルシュ菌といった腸内で腐敗をもたらす悪玉菌があります。肉類が多いと悪玉菌が優勢になり、アンモニアや硫化水素の腐敗毒素が多くなり、これが発癌物質として蓄積されるのです。ですからこの毒素を含んだ便が大腸に長い時間滞留しない為には、食物繊維を多く含む野菜や果実を多く摂って便の量を増やし便通を良くする事です。またこの食物繊維が善玉菌のエサとなり善玉菌を増やして大腸を守ってくれるのです。

免疫

2019.10.11 | Category: 免疫

私達身の周りには微生物や食べ物や化学物質等数え切れない物質に満ち溢れています。この中で、身体にダメージを与え、更に死に至らしめるものに対抗するシステムが免疫です。免疫に関して重要な事は自己・非自己の認識です。一般に自己と非自己を認識する事は脳によって行われますが、免疫系ではその脳を介さずに自己・非自己を識別し、身体の組織に侵入する敵を排除します。この免疫系は自然免疫系と獲得免疫系に分けて考えられています。第一段階では可溶性物質である補体、リソチーム、インターフェロンや細胞であるマクロファージ、ナチュラルキラー細胞などの自然免疫系が防衛に当たっています。しかし、非常に毒性を持ったウイルスや病原菌が侵入すると緊急防衛に当たるのが獲得免疫系です。この獲得免疫には液性免疫(抗体)と細胞性免疫(T細胞)があります。この様な免疫系全部の細胞を集めると肝臓よりも大きくなる程です。基本的には微生物には液性免疫が、ウイルスには細胞性免疫が対応しています。この免疫系が食べ物や環境の急激な変化により大きく揺らいでいます。アレルギー疾患や自己免疫疾患はもとより癌も免疫系との関連が指摘されています。さらに改善の手段として免疫療法も新たな展開をみせています。

免疫は第六感

2019.10.10 | Category: 免疫

生体の恒常性を維持するシステムとしては神経・内分泌・免疫の3つの系が挙げられます。従来はこの3系は独立の系として考えられていました。神経系は感覚・認識・情動・運動を司り、内分泌系は物質代謝・生殖を調節し、そして免疫系は病原体等の異物の排除でした。しかし、最近この3系は相互に共同しながら統合して生体を調整して働いている事が明らかになっています。このような考えとして免疫系も一種の感覚器官であり、臭、視、聴、味、触の五感に次ぐ第六感目の感覚系であると大胆に提唱したのがブラロックです。それによると外部からの刺激は、通常の感覚器で認識可能であれば、その刺激が生体にとって危険であると認識すると、そのシグナルの一部は視床下部・下垂体を刺激しホルモンを分泌させ、更にホルモンがリンバ球にも働き免疫応答に変化をもたらします。一方、通常の感覚器で認識されない刺激は免疫系によって認識され免疫応答を起こします。この時リンパ球は抗体やサイトカインばかりで無く各種のホルモンや神経伝達物質を産生しうる事で、神経・内分泌系に働き、免疫系以外の生理学的な反応を引き起こしています。サバアレルギーの人がサバを見る(視覚)だけでアレルギー反応が起こる事も免疫系が感覚器の一つである例であると言っています。

抗体の種類

2019.10.09 | Category: 免疫

1億種類もの異物を認識出来る抗体は免疫グロブリン(Ig)と言われる物で、大きさや機能の違いで現在5つのクラスに分けられていて(表参照一順番は血清中で濃度の高いもの順)、各クラスはそれぞれにやや性質の違ったサブクラスを持っています。これらの抗体は
・毒素蛋白と結合して中和させる
・ウイルスや細菌を固まりにして凝集させ感染源の数を減らす
・異物に穴を開ける
・補体と一緒になってマクロファージなどに取り込みやすくさせる
等の働きをします。この様な働きは主にIgGとIgMとが中心にりますが、これらは粘液中の蛋白分解酵素によって分解されるので、粘膜では働けなくなります。すると今度はIgAが異物に付いて粘膜上に付くのを妨ぎ防御するように、それぞれの働きで協調して体を守っているのです。
免疫グロブリンの種類
IgG  組織内防御、血清の中で一番多いわゆるγグロブリンの事。胎盤を通して胎児を守る
IgM  組織内防御赤血球凝集反応に対する抗体
IgA  粘液中での防御ほとんどは分泌型だが血清型もある。母乳に多く含まれる
IgE  過敏症(アレルギー)反応寄生虫排除
IgD  微量存在し、よく分かっていない

胸腺の働き

2019.10.08 | Category: 免疫

免疫系の最も大切な機能は生体防御だと一般に理解されていますが、それは結果であり、本来の機能は自己と非自己を見分ける事です。身体の中で自己主張する部分は胸腺で、成人では甲状腺の下部胸骨の裏にあり子供の拳ほどの大きさで、中にはリンパ球T細胞がぎっしり詰まっています。胸腺を学校に例えれば、T細胞は生徒、胸腺上皮細胞が教師です。まだ未熟な段階で入学して来て、胸腺上皮細胞の遺伝型と同一の物を自己だと認識する教育を受けるのです。具体的には、骨髄からの幹細胞が胸腺に到着し、まずT細胞抗体受容体の遺伝子断片の再構成が始まります。しかし全くランダムに行われるので、目的に添って作られる事は無く、ほとんどのT細胞は「自己反応性T細胞」として生まれてしまいます。胸腺で出来るT細胞は殆どが危険分子となるので、アポトーシス(プログラムされた細胞死)により死滅します。また、胸腺上皮細胞上の自己成分と全く反応出来なかったT細胞も何の刺激も与えられない為に死滅、無事卒業出来る5%にも達しません。自己と極めて弱く反応したT細胞だけが増殖のシグナルを与えられ分裂増殖して、末梢リンバ組織のT細胞となり免疫反応に携わる様になるのです。

免疫系を調節するサイトカイン

2019.10.07 | Category: 免疫

免疫系には様々な役割を担った細胞や物質がありますが、この中で免疫細胞の多様な生理機能を調節する重要な役割を果たしている蛋白質分子のーつがサイトカインです。サイトカインは炎症、発痛物質とのイメージですが数百種類あり免疫に深く係わっています。外からの刺激によってT細胞やマクロファージ、B細胞等で合成され免疫系が正常に働く様に作用しますが抗体とは違う幾つの特徴があります。サイトカインは寿命が短く超微量で産生細胞周辺にある細胞に作用します。サイトカインは元々どの抗原にも働きます。また、サイトカインには多くの種類があり相互にネットワークを形成していて、多様な働きと重複性を示しながら作用を調節しています。このサイトカインの中で免疫系の中心的な働きをするのが18番まで明らかになっているインター(細胞間)ロイキン(白血球)です。このインターロイキンは炎症反応の促進やT細胞の活性や抑制など多様な働きがあります。この他にも抗ウイルス作用をもつインターフェロン(INF)、腫瘍壊死因子(TNF)、マクロファージの抑制と好中球の活性化を促すトランスフォーミング増殖因子(TGF-β)等があり、血液細胞の分化・増殖等に関わるコロニー刺激因子(CSF)などもサイトカインのネットワークの一員なのです。

ストレスと免疫

2019.10.06 | Category: 免疫

ストレスは大脳辺縁系→視床下部→下垂体→副腎へとホルモンを通じて伝えられ、副腎は最終的にコルチソールを分泌して免疫を落とします。これがセリエのストレス学説です。体が危機に直面した場合免疫を落とすのでは無く高めた方が良さそうにも思えるのですが、体はまず神経とホルモンとでストレスに対処します。エネルギーを沢山必要とする免疫はとりあえずストップさせるのでしょう。ところで視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRH)は下垂体に働きかけるだけでなく脳内ホルモンであるエンドルフィンの生成も刺激しています。エンドルフィンは免疫系ではT細胞を増やしたり活性化させ、更にナチュラルキラー細胞やマクロファージの活性も高めます。視床下部から放出されるホルモンは9種類で、その内CRHも含めて5つが免疫に直接作用する事が分かっています。また交感神経の興奮で副腎髄質からアドレナリンが分泌しても免疫の反応は高くなります。この様にストレスは多くのルートで免疫に作用する訳で、免疫に対してもプラスに慟いたりマイナスに働いたりと、一様ではありません。ホルモンや神経伝達物質がリンパ球でも作らていますし、体は神経・内分必・免疫の各系で同じ物質を使っている事が分かって来ています。正に神経とホルモンと免疫は三位一体の関係にあると言えます。

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