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老化の記事一覧
運動は誰にとっても必要ですが、若い人と高齢者では条件や、やり方が違います。
体の機能としては高齢者では脚筋力、柔軟性、歩行能力、持久力、平衡機能等の衰えが目立ち、特に下肢の衰えは70代では20代の60%しかありません。
中でも股関節外転筋力、足関節の背屈力や底屈力が一様に低下しています。
平衡機能も低下し、閉眼片足立では若者の20%しか出来ません。
従って高齢者では体力向上を目的とするよりもQOLを高める事に重点が移ります。
つまり筋力増強その物を目指すと言うよりも、神経筋回路を剌激したりバランス感覚を高める事で転倒(→寝たきり)を予防したり、全身の恒常性を維持する事が期待出来るのです。
また運動機能の高い高齢者ほど意欲や根気、勇気等を持っていて、不快、苦痛、不満、恐怖等に対する抵抗力も高いと言われているので精神面に与える影響も見逃せません。
運動としてはやはりウォーキングが一番ですが、やや早歩きを目指すのが良く、1週間当りの歩行距離が長いほど脚筋力は高くなります。
その場合、歩幅を広くすると地面からの反発力が大きく、膝や足関節に与える衝撃が大きいので初心者は無理に歩幅を広くしない様に気を付けなければなりません。脚筋力が付いて来ると自然に歩幅は広くなります。
不老長寿の研究人の細胞を培養すると、約50~60回の分裂で寿命が来て活動を停止します。
染色体の両端にテロメアと言うDNAと蛋白質の複合体があり、細胞が分裂して染色体が複製される度にテロメアが短くなって行きます。
短くなり過ぎると細胞が不安定になり、細胞が自衛の為分裂を止めてしまうので、テロメアの事を「命の回数券」と呼ぶほどです。
赤ん坊から老人まで様々な年代の人の細胞を調べてみると、テロメアの長さは赤ん坊では長く、老人では短くなっています。
しかし生殖細胞や癌細胞の様に無限に増殖出来る細胞はテロメアが短くなりません。
テロメアの短縮を抑えるテロメラーゼと言う酵素を備えているからです。
普通の細胞にテロメラーゼの働きを持たせれば細胞は死な無くなり、癌細胞からテロメラーゼの働きを奪えば癌の増殖を抑える事が出来ます。
1998年アメリカのベンチャー企業のジェロン社が、遺伝子操作でテロメアを長くしたり、テロメラーゼの働きを抑えたりする事に成功したと発表、同社の株価が急騰して取引停止となる騒ぎが起こりました。
アメリカ国立老化研究所は老化した細胞を分裂させた若い細胞に置き換えれば平均寿命を120歳まで延ぱせると見ているそうですが、一つひとつの細胞を不老不死にしても長寿にはなら無いとの見方もあります。
寿命は細胞の寿命だけで無く遺伝的素因のホルモンや免疫の働き、環境要因の活性酸素など様々な因子が絡んでいるからです。
特に活性酸素はテロメアを傷つけると言う報告があります。
老人性の痴呆症には脳血管性の物と変性性認知症(アルツハイマー、FTD等)とがありますが、痴呆症の初期の段階では見極めが難しいものです。
アルツハイマー病は脳神経の内記憶や理解、判断を担う神経細胞が侵され、約10年間で1400gあった脳が800~900g以下に減ってしまいます。
日本で初めての痴呆予防ドックが開設されたのは三重県の津生協病院附属診療所でした。
それまで一般の脳ドックで発見し難いと言われていた、アルツハイマーの早期発見が出来る様になりました。
検査は、まず点眼検査で瞳孔の開き具合を見ます。トロピカミドと言う薬をアルツハイマーの人に点眼して30分後に調べると、瞳孔が異常に散大します。
この現象はアルツハイマー病の9割以上の患者に表れ、そうで無い人には表れません。
次に血液検査で、アルツハイマーの発症との関連が確認されている、アポE4とよばれる特殊蛋白質の遺伝子を調べます。
このアポE4が発見された人はアルツハイマーになる可能性が高いのです。
3番目に、MRIで脳の断層撮影を行い、実際に脳に萎縮があるかどうかを調べます。このMRIでは、まだ症状の表れていない、脳血管の小さな梗塞等も発見出来ます。
そして最後に問診で、簡単な計算能力や文章の理解度を調べ、痴呆の兆候が無いか記憶力をチェックします。
現在は多くの病院がMRI脳ドックPETによる脳ドック物忘れ外来等開設する様になりました。
早期発見は最新の薬も効果が期待でき、生活上で工夫をする事により、脳に刺激を与えて進行を遅らせる事は充分可能ですので周りの家族が早めの検査を受診させる事が大切になっています。
日本の65歳以上の3人に1人は高血圧で、血圧が高いほど心臓血管病や脳卒中の危険が増します。
一般に血圧は加齢に連れて自然と高めになり、70~80歳にもなれば程度の差は有るものの動脈硬化が進行します。
全身の細胞に行き渡らねばならない血液が血管の内径が小さくなる為に減少するのを、心臓のポンプの力を強める事で補う為に血圧が高くなると考えられます。
老人科専門の診療所等の方針では、比較的若い高齢者に対しては中年と同様に生活指導と平行して降圧剤等でとにかく血圧を低く保つようにしますが、70歳以上の高齢者に対しては投薬は慎重に行う要です。
食事・運動・嗜好の指導等の非薬物療法が主流で、血圧がとても高ければ少量の投薬から始めます。
高齢になればなる程薬による問題が起こる率が高いのです。
若者に比べて薬が体内に残る時間が長く、始めの内血圧が下がら無くても2、3カ月後に急に下がったりする事や、病院で多数の薬をもらっている人の場合「多剤併用」による副作用が起き易い事が大きな問題になっています。
降圧剤を服用している高齢者が急に元気が無くなったり、フラついたり、呆けた要な時はすぐに血圧を確認します。
収縮期血圧がかなり下がっていれば転倒やせん妄を起こす危険があるので注意が必要です。
肺塞栓症と言えば、最近話題に上る様になったのが「エコノミークラス症候群」です。
湿度がほとんど無い陰圧にした飛行機内に長時間身動きの取れない状態でいると血栓が出来て肺に塞栓を引き起こす疾患です。
この様な特殊な条件下だけで無くこの肺塞栓症は高齢者に次第に増加している疾患です。
肺塞栓と言っても、血涙障害の程度は様々で血栓の大小によって無症状から突然死まで幅があります。
突然死の場合は、急激に肺の多数の血管が血栓、塞栓によって閉塞して、肺へ血液を送る右の心臓に強い負荷がかかり、急性の右心不全を起す為です。
肺塞栓症はほとんど下肢の深部静脈血栓症が引き金になっています。
その危険因子として肥満による血液粘度の上昇や凝固機転を発生させるストレスや糖尿病や煙草等による凝集粘着の亢進等があります。
更に、長期臥床や手術後に高率で発症する事が分かっています。
静脈血栓は血液がうっ帯する所に起こり易いので、うっ滞を解消する為のマッサージや軽い体操が非常に効果的です。
肺塞栓症は病院内の発症が多く、約60%は入院患者に起こっています。
しかし、今後は高齢化が一層進み、在宅介護が進む中で、病院外でのこの肺塞栓症が増えて行く事が予想されます。
総コレステロールの値は男性で45歳以降、女性では更年期以降、年齢が上がるにしたがって高くなっていきます。
ピークは60歳代で、以後70歳代、80歳代と高齢になるに連れて減少していきます。
70歳以上になるとコレステロールの吸収や合成が低下する事が原因と考えられます。
一般に高脂血症は様々な生活習慣病の危険因子で、確かに75歳位までの高コレステロールは虚血性心疾患の危険因子である事は確かです。
しかし80歳以降の高コレステロールが心疾患の危険因子である事は疑問視されています。
もちろん高血圧や糖尿病の疾患があったり、かつて虐血性心疾患になっている人は薬物などによって速やかにコレステロール値を下げなければなりませんが、その既往症のない80歳以上の人にとって薬物的な療法は必ずしも必要とはされないのです。
しかも、高コレステロールだと、心疾患は確かに増加しますが、かえってコレステロールが低いと脳卒中や癌、肺炎などの感染症に罹り易くなってしまうのです。
疫学調査ではコレステロール値200前後と言う数値が一番長命だという結果が出ており、東京都老人研の小金井市の疫学調査でも低い人は高い人よりも寿命が短いという結果が出ているのです。
心疾患の徴候が無く、脳卒中や癌等を患った家族が居たり、現に脳卒中の心配がある人のコレステロール値はある程度高めでもよいのです。
健康な後期高齢者の場合、コレステロール値260位までは薬等を使って無理に下げる必要は無いと考えられます。
老年期痴呆症の分類は以前は、日本では脳血管性が約60%でアルッハイマー型が約30%、残りが混合型とされてきました。
しかし欧米では逆にアルツハイマー型が過半数を占め、脳血管性は約30%にとどまっていたのです。
この理由として欧米人に内頚動脈等の動脈硬化の程度が重く、頭蓋内脳動脈の動脈硬化は軽いのに比べ、日本人では頚部の動脈硬化は余り見られないのに頭蓋内脳動脈の硬化が著しいという事実が挙げられています。
しかし近年は日本の脳血管性痴呆は減少傾向を示し、欧米での統計に近づきつつあります。
その理由には脳梗塞後遺症に抗血小板薬や脳循環代謝改善薬が繁用される様になり、脳梗塞の再発を抑えていると考えられています。
欧米では脳血管痴呆への関心が薄く、DSM-Ⅲに精神疾患の国際基準とされる米国精神医学会の診断基準DSMの再々改訂版(現在はDSM-Ⅳ)に、ようやく脳血管性痴呆(以前は多発梗塞性痴呆)という診断名が出たのです。
この診断基準では
①痴呆が存在する
②既往歴や臨床症候から脳血管障害の証拠がある
③2つの障害の合理的な関連として明確な脳卒中後3ヶ月以内に痴呆が発症する、とあります。
日本では、脳血管障害があって2年位経って痴呆が出現しても脳血管性痴呆としているのです。
脳血管性痴呆の病態として、最も多く見られるのが基底神経核部及び大脳皮質下白質に存在する小梗塞巣で、大脳皮質の障害は比較的軽い事ですの変化が少ないので、2つの型を見分けるのに役立ちます。
高齢者の貧血は結構多い物ですが、老化と言う事だけで片づけられません。
確かに高齢者では赤血球系の幹細胞が減少しますが、だからと言って造血刺激に反応する力や血球の寿命までが劣って来る訳ではありません。
つまり血液を作る予備能が弱いとは言えますが、本来血液中の細胞数までが大きく減ると言う事は無いのです。
高齢者は何らかの病気を抱えているものですが、厳密に基礎疾患(複数の事も多い)の影響を除いて考えると高齢者だから貧血になると言う事は必ずしも言えないのです。
つまり、高齢者が貧血だという場合、老化と片づけないで別の疾患を考えなければなりません。
鉄欠乏性の貧血と言われるものも食事の偏りが原因というよりは、消化管の潰瘍や腫瘍よる出血である事が多く、高齢者に多い逆流性食道炎による出血も多いものです。
その他に癌や感染症、腎疾患、膠原病等も貧血の原因になっている事が多いのです。
特に高齢者の貧血では胃癌と大腸癌は疑うべきです。従ってこうした2次疾患としての貧血は基礎となっている疾患が改善すれば改善する筈です。
一般に高齢者では貧血の特徴である顔面蒼白、疲労感、動悸、息切れ等の典型的な症状が出にくいので見逃されたり、軽視される傾向があります。
しかし時として鬱状態やせん妄をひき起こしたり、動脈硬化や呼吸器疾患等を合わせ持っていると、心不全等になって重症になる事もあるので注意が必要です。
高齢者の脳血管障害の代表格が脳梗塞です。
血管が詰まる原因として粥状硬化やアテローム内出血や動脈硬化の部位の血栓形成等があります。
それにより血管内腔の狭窄や閉塞が進み、完全に詰まると脳梗塞へ進展します。
脳の血管が割と良好な状態でもこの脳梗塞が起こる事があります。
つまり心臓から脳内に行くまでの動脈にアテローム(粥状硬化)等があると、そこに病変が生まれ、血栓等が飛んで行き脳梗塞になります。
また、最近高齢者に増えているのが心原性脳塞栓症です。
心臓で血球が作られ、それが脳に飛んで行き脳塞栓を発症させます。
この原因になるのが心房細動です。心臓の正常なリズムが崩れ不規則で細かい動きが現れます。
この心房の震えにより血液が凝固して血球になるのです。
心房細動は様々な心疾患の随伴症状として出て来ますが、甲状腺機能亢進症、慢性肺疾患等にも出現します。
一般に加齢に伴って心房細動を合併する率は上昇します。また、30%は基礎疾患の無い孤立性心房細動です。
発作性と慢性に分類されますが、高齢者では慢性化しやすい事が明らかです。
ですから、心疾患での血栓予防に経口抗凝血薬としてワーファリンが有効とされ、広く使われています。
しかし、抗生物質等の薬の飲み合わせで、全身性の出血性合併症という非常に危険な副作用もあるので両刃の剣といえます。
若年者の大半の腎疾患は会社や地域での検診で発見されます。
しかし高齢者の腎疾患は検診で発見されるのは一部で、大半は血尿や高血圧・浮腫・だるさ・食欲不振といった何らかの症状によって気付く場合が多いのです。
遺伝的素因に環境因子が重なって起こると言われる本悪性高血圧で、若い頃から血圧が高いまま何年も経過すると腎臓の小動脈に動脈硬化が起こり、腎機能が低下して腎硬化症になって行きます。
腎硬化症は進行が遅く、最初蛋白尿が出てもすぐには悪化しないので油断している内にゆっくりと腎不全が進み、血圧が一層高くなって腎障害が重症化し人工透析にかかる事になります。
二次性高血圧の中で最も多いのが腎性高血圧で、糸球体腎炎や腎孟腎炎が原因で腎機能が低下すると徐々に血圧が上昇し始めます。
高齢者でそれまで降圧薬で安定していた高血圧が急にコントロール出来なくなった時は、粥状動脈硬化による腎血管性高血圧を疑います。
腎動脈が狭窄して腎血流量と糸球体濾過量が低下すると、傍糸球体装置の顆粒細胞からレニンというペプチドが分泌されレニンはアンジオテンシンという強力な血管収縮作用のある蛋白を変生します。
アンジオテンシンⅡは副腎皮質ホルモンのアルドステロン分泌を促して、ナトリウムの再吸収を促進・水を貯留する様に働くので、浮腫を招き血圧が急上昇します。