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老化 - Part 2の記事一覧
動脈硬化症によって出来る代表的な血管の病気が動脈瘤です。
統計的には欧米の10分の1程度と頻度は低いのですが、今後は確実に増加すると言われています。
血管の三層構造の動脈壁がすべて拡張する物を真性動脈瘤といいます。
この真性動脈瘤には胸部、腹部、胸腹部の大動脈や内臓動脈や末梢動脈等に発生します。
この中で最も多いのが腹部大動脈瘤で、次に胸部大動脈瘤です。
胸部大動脈瘤は50才~70才台の男性に多く、動脈硬化以外にも梅毒やマルファン症候群、動脈解離、大動脈弁拡張症等でも発生します。
症状はほとんど無症状であると言うのが特徴という恐い疾患です。
ただ、瘤が大きくなると気迫圧迫で咳、呼吸困難等があらわれ、食道圧迫では嘸下困難、神経圧迫でしわがれ声等になります。
また肩背部にこりの症状が現れがちです。
一方最近増加が著しい腹部大動脈瘤はやや高齢で60才~80才台の男性に多く動脈硬化による物が多いという特徴があります。
糖尿病や脳血管障害等動脈硬化による疾患を合併している事がよく見られます。
腹部動脈瘤は腎動脈分岐より下の腹部大動脈に現れ、丁度臍の周りに拍動するシコリとして触診する事が出来ます。
しかしこのシコリを確認出来るのは5cm以上であり、その様な時にはすぐに手術が必要です。
また、腰痛や腹痛などの症状が出て来たら、破裂寸前と言われています。
我々の立場からみれぱ、動脈瘤は地雷の様な物です。
ですから高齢者の肩こりや腰痛等では動脈瘤の有無を念頭にいれて施術しなければなりません。
年をとると筋肉置が減るだけで無く、筋線維の構成が変化し、速筋が少なく、遅筋の割合が多くなります。
筋肉量が減るのは筋線維が失われるためで、残った筋線維を太くする事は出来ても、加齢による線維数の減少を止める事は出来ません。
脳細胞が死んで行くのと同様に筋線維を支配する脊髄から出ている運動ニューロンも変化し、死んで行きますが、するとその筋線維も死んで行くので筋線維の減少は止められないのです。
ただし運動ニューロンが死んでも別の運動ニューロンに支配される事があって、そうなればその筋線維は生き延びる事になります。
しかし、例えば本来は速筋である筋線維が遅筋を支配していたニューロンに支配される様になると遅筋的な刺激を受けるようになり、速筋が遅筋の様になっていくのです。
逆もまた真です。
ただ、速筋は遅筋に比べて萎縮する率が高いので速筋の方がより遅筋的になりやすいのです。
ところで、骨格筋には、遅筋と速筋それぞれを特徴づけているアイソフォーム(蛋白質の違い)をもっていますが、純粋な遅筋と速筋だけで無く、両方のアイソフォームを持つ筋線維がある事は分かっています。
若い人の場合はこの様な混在型の雌雄は少ないのですが、高齢者にはこの混在型の筋線維が多いのです。高齢者では遅筋線維の比率が多くなると言うよりも、むしろ遅筋と速筋の線維が厳密に分けられなくなっている筋線維が増えていると言えるでしょう。
“元気のない高齢者は脱水症状を疑う”というほど高齢者は脱水症状になりやすいといえます。
高齢者では筋肉の減少によって細胞内教量が少なく、体内の水分量が減少します。
また老化による腎機能の低下で尿を濃縮する機能が落ちるので尿の量自体は増えます。
さらにホルモンの変化等でも体内に水分を保持しにくくなっているなど、様々な原因で脱水になりやすいのです。
しかも口渇感覚も鈍くなっているので、体に水分が足りなくても、喉の渇きとして感じる事ができにくくなっています。
夜間のトイレを用心するあまり自ら水分を摂るのを控えてしまう場合も多い様です。
また高齢者は持病の薬を飲む事が多いものですが、降圧剤、利尿剤、糖尿病や腎臓病の薬等で水分を余計に排泄させる事になり、ますます脱水状態をひどくさせがちです。
まして発熱や下痢症状があれば、あっという間に脱水症状になってしまいます。
高齢者の脱水は、水分不足の為血液が濃くなり循環障害を起こし、ひどくなると筋肉の痙攣やショック症状で意識障害も起こります。
腎機能が低下して尿が作れなくなる急性腎不全、昏睡や心不全等で命を落とす事もあるのです。
7、8月に東京都老人センターに救急車で運ばれる高齢者のほとんどに脱水があるといいますから、夏場は特に要注意です。
元気がない、食欲がない、目がくぼむ、皮膚に張りが無いなどの症状に気をつけましょう。
また脇の下は普通湿っていますが、脱水があると乾いた状態になるのも一つの目安になります。
一度に沢山の水分を摂るのではなく、口の渇きを感じなくても少しずつ頻回に水分を摂るようにしなければなりません。
普通基礎的運動能力とは、筋力、バランス、持久力(スタミナ)、柔軟性、全身協調性等を指します。
これらの各項目には個人差があって、若い人の場合では、筋力が勝れていても持久力に劣っていたり、筋力や持久力があっても全身協調性に欠ける、等という場合もあって、各能力が密接に関係しているわけではありません。
ところが、高齢者になると、それぞれの項目が強く関係するようになります。
例えば若い人では筋力があって遠く歩ける人でもゆっくり歩く人はいます。
つまり筋力と歩くスピードに関係はありません。
しかし、高齢者の場合、歩く速度は歩く能力そのものを表していて、筋力等色んな項目との関係が密接であるといえるのです。
特に筋力やバランス能力と歩行速度の相関は高く、また他の運動能力である握力や片足立ち、歩く速度、指タッピングとの相関関係も高いことが分かっています。
つまり全身運動である歩行は高齢者にとって全身を統合して使う機能であり、複雑な測定をしなくても、歩行の能力でその高齢者の体力がある程度判断できるのです。
たとえば10mほどをできるだけ遠く歩いて、中間の5mを歩くのにかかった時間を計ります。
上の線と下の線の間であれば年相応体力、上の線以上に時間がかかれば体力に難ありといえます。
東京都消防局で家庭内における平成11年の救急事故統計による高齢者65歳以上の総数15000人の内約7割が転倒によるものでした。
転倒場所は家庭内では、階段、部屋の境目、廊下、寝室等、家庭外では、普通の道路、階段、歩道、庭等です。高齢者の寝たきりになる原因の第2位が転倒による骨折ですが、その転倒の原因には白内障等による視力低下、中枢神経系や平衡感覚器等の障害によるバランス能力の低下、足腰の筋力低下等が考えられます。
病気が原因の場合には施術をする事ですが、足腰の筋力低下には筋力の強化が必要です。筋力が弱くなってくると、両足の左右の幅を自然に大きくして、股関節や膝を曲げ気味にした姿勢でバランスを取ろうとします。
そして転ばない事を意識して下ばかり見る為に、歩幅が狭くなり、背中も丸くなり腕の振りも小さくなります。
歩き方はすり足やちょこちょこ歩きになり、この歩き方ではちょっとした凸凹や段差、歩道ブロックの境目等つま先を引っ掛けてつまずきやすくなります。
これは歩行時に振り出される脚の足首が鋭角90度になるか、鈍角115度になるかが問題で、115度に近くなっていると足先が下がっているので地面や床の多少の凸凹や段差でひっかかって転ぶ事になるのです。
防止する為には足首を鋭角にする事で、その為には足のキックカを出す下腿三頭筋、足先を持ち上げる前脛骨筋の筋力を鍛える事が大切になります。
歩き方で心がける事は視線を10m前方にし、胸を張り、歩幅は通常よりも広げて、後ろ足でしっかり蹴って遠く歩き、距離を徐々に伸ばしていく事で転倒しない身体作りをします。最も安全なトレーニングは水中歩行が進められます。
また高齢者が転倒を防ぐ為には杖や座れるショッピングカート等が有効ですが、転びやすくなる前に杖を使う事をお勧めします。
高齢者の身体は若年者と比較して、基礎代謝で体内に取り入れられる水分は少ないのに、腎臓の尿細管での再吸収も少ないので排泄される水分が多く、非常に脱水症状を起こしやすく周囲の注意が必要です。尿の状態は高齢者の体調を測る目安のひとつで、尿量の異常、排尿困難、血尿、失禁など、それぞれに原因となる病気があります。
尿量が2000ml以上の多尿は糖尿病や尿崩症によって起こる事が多く、400m1以下の乏尿は脱水があったり、心臓病や腎臓病等が原因にあります。
また乏尿は胃薬や風邪薬や不整脈の薬等の抗コリン作用がある薬の副作用でも起こり、尿が出なくなるだけで無く、唾が出ない、眼圧が上がる、便秘になる等の症状が現れ、緑内障や前立腺肥大がある人は要注意です。
膀胱に尿が溜まってきて排尿したいのに尿が出にくい、夜中に何度もトイレに立っても少ししか出ない、出終わるまで時間がかかる等の排尿障害は高齢の男性では前立腺肥大でよく見られます。
初期の症状ならα遮新薬や女性ホルモン剤などが使われ、薬物療法の効果がない時は経尿道的前立腺切除術などが行われます。
心配なのは前立腺がんでも同様の排尿障害と尿道狭窄が起こる事です。女性ではひどい便秘の時に尿が出にくくなる事があります。
血尿は膀胱炎、尿路のがん、腎孟腎炎、尿管結石等で起こりますが、高脂血漿薬や通風薬、抗アレルギー薬や抗生物質等の副作用でも起こります。
高齢者の尿の異常は水分代謝の状態を知る上で大切ですが、持病を持っている高齢者の服薬状況も把握しておく事はとても重要なのです。
目のレンズの濁りによって起こる白内障は、目の病気や糖尿病等の全身性の病気によって早くから発症、悪化する事はありますが、そもそもは自然老化による現象の一つです。
40才を過ぎるとそろそろ起き始め、60才以上では25%、80~85才で80~90%、90才以上になると100%、全員が多少なりとも老人性白内障になります。
大体はレンズの周辺部から起こる事が多いので直ぐに視力障害に気付く事はありません。
物が見え難くなったり、明るい所が眩しくなって見づらい時には白内障が進んでいるのかもしれません。
そもそも目のレンズには血管が入っておらず、レンズの実質成分である蛋白質は新陳代謝をしません。
しかしレンズ蛋白は目を開けている限り光を通しますから光による変性を受け続けています。
特に紫外線による蛋白変性の影響が大きく、変性した蛋白質は回りの分子に反応を起こして硬く、濁ってくるのです。
元々レンズには変性を抑えるビタミンCやグルタチオン等の成分があるのですが、白内障レンズではそれらの成分のほとんどが失われていますし、蛋白質も分子が大きくなって水に溶ける性質を失っています。
老化の一つですから完全な予防は無理ですが、栄養のバランスに気をつけて日差しを避ける事が予防となります。
発展途上国では50才前から手術を要するような白内障が多いという事から。栄養障害でも白内障になると考えられます。
また紫外線は明らかに白内障を悪化させます。晴天の戸外ではサングラスをかけて帽子で日光を遮る等の工夫をすべきでしょう。
最近では白内障の手術も確実になってきて、水晶体の核と皮質を取り出して人工レンズを入れる手術法が確立されています。
体力さえあれば100才でも手術は行えますが、ひどい高血圧や心臓病、糖尿病で血糖コントロールの悪い人等は無理になります。
高齢者が増えるに連れて大動脈疾患も年々増加しています。大動脈疾患には大動脈解離、胸部大動脈瘤、腹郭大動脈瘤があります。
生命を直に脅かす大変危険な大動脈疾患の背後には生活習慣病があり、動脈硬化、高血圧等の疾患が伴い、それに連れて悪化していきます。
ですから、早期に発見する事が重要です。大動脈解離による突然死の大部分は上行大動脈の破裂で起こります。
大動脈内膜の亀裂(エントリー)が発端になり、次第に大動脈壁が中腹外層で解離して、最後には破裂してしまいます。
適切な医療を受けなければ予後は不良です。典蛮的な初発症状は、突然の激烈な胸背部痛、腹痛、下行動脈解離では腰痛も起こります。
また胸部大動脈瘤と腹郭大動脈瘤も動脈硬化症と高血圧が主な原因です。
胸部大動脈瘤では瘤が大きくなり、瘤径が5cm、あるいは正常径の2倍を超えると破裂の危険性が高くなりますので手術が必要です。
また、動脈瘤の場所によっては、気管支、食道、反回神経、脊椎の圧迫による、喘鳴、嚥下障害、嗄声、胸背部痛等を起こします。
腹部大動脈瘤では、我々に関連する症状としては腰痛です。
ちなみに腹部大動脈瘤は破裂前に外科的手術をすると98%の確率で予後良ですが、破裂後では50%以下になります。
80才以上の高齢者の手術も現在では積極的に行われていて、年齢によるマイナスはあまり無いそうです。
いずれにしても高齢で高血圧や生活習慣病を抱えた患者さんの背部や腰部の急激な痛みは我々にとって極めて要注意の症状なのです。
下手すると大動脈の破裂を招く事になりかねません。
従来、日本ではアルツハイマー型痴呆症より脳血管性痴呆症(最近は血管性痴呆症と呼ばれる)の方が多いと言われてきました。
しかし、最近の統計では血管性痴呆症が多いというものとほぼ同数だとするものが増えてきました。
痴呆の原因は遺伝性が明らかなのは家族性アルツハイマー型痴呆症ですが、それ以外にも痴呆患者の血縁者に痴呆が高率に出現する事があります。
これはまだ発見されていない遺伝的因子があるのかもしれません。また後天的な素因である環境や生活習慣等の因子による可能性も指摘されています。
特に喫煙や生活習慣病等はもちろんのこと、それ以外の因子の研究も進んでいます。
また、若い頃からわがまま、頑固、短気、感情不安定、非社交的、消極的な人が痴呆症になりやすい性格因子として上げられています。
中年期以降、仕事一筋、趣味が少ない、社会参加に消極的、対人関係が苦手な人等も痴呆症になりやすいという統計があります。
もう一つ見逃せないのは頭部に外傷を受けた事がある人に高率にアルツハイマー型痴呆症が出現する事です。
ところで、アルツハイマー型痴呆症と血管性痴呆症を合わせると痴呆患者の90%になりますが、両者の痴呆症の初期症状はかなり違います。
血管性痴呆症では、不眠、抑うつ感、不定愁訴、まだら痴呆、感情不安定等がおこります。
アルツハイマー型痴呆症では、多幸感、明るい表情や態度、早期から人格の崩壊があり、見当識障害、全般的痴呆が起こります。
また、アルツハイマー型痴呆症では65才以上の女性に多く発症し、血管性痴呆症では50~60才の男性に多く発症して階段状に進行していきます。
更年期以降の女性に多い骨粗鬆症の予防や改善には、エストロゲンを中心としたホルモン補充療法が有効だとされてきました。
閉経後のエストロゲン投与は骨密度の低下を抑えるだけでなく若さを保つという事で、欧米ではポピュラーな療法になっています。
米国のいくつかの医療専門家からホルモン補充療法に対してイエローカードが出されています。
ホルモン補充療法は骨粗鬆症や痴呆、大腸がん等も予防的に押さえるのですが、乳がんや心臓発作、脳卒中、血栓のリスクはメリットを上回るので控えるようにとの勧告が出されています。
骨は、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成を繰り返していて10年ほどですっかり入れ替わりますが、骨形成が骨吸収に追いつかなくなると骨はスカスカになってしまいます。
エストロゲンは骨芽細胞にくっつくと骨を形成する様に働くだけでなく、破骨細胞の働きにブレーキをかけます。
したがって閉経によってエストロゲンが減るとブレーキが効かずに骨吸収が激しくなって骨密度が低下するというわけです。
警告はホルモンの利用が一筋縄ではいかない事を示しているといえます。
そこでエストロゲンの補充療法に変わるものとして注目されているのがビスホスホネート製剤です。
ビスホスホネートはエストロゲンと同じように破骨細胞の働きを抑制して骨吸収を抑えます。
骨の形成まで抑制する事があって使い方が難しいのが難点でした。
最近では骨吸収抑副作用が5000倍も強いという第3世代のビスホスホネート製剤が開発されています。