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感染症の記事一覧

抗ウイルス剤

2021.06.16 | Category: 感染症

ウイルスに効く薬は無いというのが一般的ですが、インフルエンザ関しては効果があるとされる薬が認可されています。

抗インフルエンザウイルス薬としてアマンタジン(製品名シンメトレル)という薬がありましたが、A型のインフルエンザウイルスにしか効かない事や、副作用が強い為に使用が限られていました。

その後認可されたザナミビル(製品名リレンザ)はA、B型全てのタイプのインフルエンザウイルスに効果がある事、ほとんど副作用がないという事で使用が盛んになりました。

発症後48時間以内だったら発症期間を短くすることができます。海外の臨床試験ではザナミビルを投与していると症状が軽い事、症状の緩和が早いこと、解熱作用が優れている事、インフルエンザによる合併症が少なくなる(抗生剤の使用が少なくて済む)こと、副作用がほとんど無い事、等が実証されています。

またウイルスの変異に影響されずに効力を発揮する事等の利点もあります。

予防的に使用しても有効です。ただこの薬は投与方法が経口ではなく、吸入する方法をとります。薬を吸入する方法は喘息以外にはあまり無いのですが、ザナミビルの場合吸入する事で薬が感染部位の気道に直接作用するので作用が早く、全身への影響が少なくてすむのです。

その後スイスのロシュ社から発売されたオセルタミビル(製品名タミフル)に今は代わり使用が頻繁になっています。

しかしオセルタミビル乱用により耐性の問題が明るみになり、抗ウイルス剤の本当の発現はまだ道半ばです。

施術上の感染を防ぐ

2021.06.12 | Category: 感染症

施術者から患者にうつさない、または患者が持ち込む病原体を他の患者にうつさないというのは常識ですが、対策には意外と抜け落ちている点がある様です。

鍼による感染の可能性がある鍼灸師は、自身の身を守る為にもB型・C型肝炎の感染の有無について鍼灸師自身の定期的なチェックを行う等、常に心がけるべきです。

万が一感染があっても早期施術すれば慢性化を防げます。

鍼灸院などの日常の感染防止対策として、患者が病院と鍼灸院を往復する様な抵抗力の低下した人や高齢者が多い事からも、院内の衛生環境の維持のため消毒・滅菌は不可欠です。

鍼灸室はディスポーザブルのシーツや枕カバー等を利用していても、見落としがちなのは待合室です。

患者がよく触れる受付のカウンターや長椅子やトイレ等は患者の手による汚染度が高いとされています。

また靴を脱いでスリッパに履き替える所では、スリッパの足の接触面が汚染されるので、消毒剤とエタノール配合のスプレーを噴霧後、直射日光下で乾燥させるといった注意が必要です。

また往診をしている施術者が注意しなければならないのが、ヒゼンダニによる疥癬です。

このダニは指の間や手関節、手掌や外陰部の角質にトンネルを掘って進み、産卵する為に非常に痒く、また改善も困難です。

免疫抑制剤を使う患者や老人に重症感染がみられ、これをノルウェー疥癬と呼んでいて感染力が非常に強いので要注意です。

施術者は特に入念な手指消毒は欠かせませんが、洗面器に消毒液を入れておいて何度も使用する、

備え付けタオルを何度も使うというのは交差汚染に繋がるので行うべきではありません。

手指は抗菌剤を含む石鹸や消毒剤を使用して、直ぐ流水でよくすすぎ、使い捨てペーパータオルを利用するといいでしょう。

増えているかびの病気

2021.06.12 | Category: 感染症

日本人の3大死因はがん・心疾患・脳血管疾患ですが、最終的に肺炎特にカビによる真菌性肺炎で亡くなるケースが少なくありません。

カビの胞子は細菌と共に空気中を常に無数に飛んでいて、呼吸時に吸い込んでいますが、健康で免疫系が正常であれば何も問題はありません。

気管の粘膜にある繊毛が働いてカビの胞子を排出し、肺胞にまで入り込んでもマクロファージが処理します。

しかしがんや白血病など重い病気で体力が落ち込んでしまうと免疫力も低下し、侵入したカビを排除できなくなってしまいます。

臓器移植で免疫抑制剤を投与されている人も同様で、一旦侵入したカビは発育が非常に早く、あっという間に肺全体に広がって、短期間に亡くなる事が多いのです。現在の医療現場で最も問題になっているカビの病気は、アスペルギルス症とカンジダ症です。

アスペルギルス症は診断が難しく、薬も効きにくく、また肺や角膜や脳など身体中のあらゆる臓器に生えてしまうやっかいな病気です。

またあらゆる人に一番身近なカビといえば、人の身体の中に棲みついている、カンジダ・アルビカンスです。7万種あるといわれるカビの中でも、このカビだけが人の口腔内や大腸等の消化管に常在する事ができるのです。

カンジダ・アルビカンスは普段はいたって大人しく、病気を起こす事は無いのですが、抗がん剤等で腸粘膜が大きく傷付くと、組織内に侵入して全身に広がってしまいます。

ところで30~40年前の日本ではカビの病気といえば水虫等の皮膚病が中心でした。

医療の進歩により、抗生物質や抗がん剤・免疫抑制剤・ステロイド剤等の開発で、腸管の菌叢が破壊されたり、免疫力が低下した人に重篤なカビの病気が増えたのは皮肉な事です。

複合感染の脅威

2021.06.12 | Category: 感染症

毎年冬場が近づくと、新型インフルエンザの出現が恐れられています。

いま新型インフルエンザが発生すれば、日本だけでも死者が数十万人も出ると予測されています。

日本では1997年に対策検討委員会ができて、危機管理対策が始まりました。

1999年1月~2月にかけて、三重県多度町の精神病院で入院患者19人がインフルエンザの集団感染で亡くなりました。

保健所で詳しく調べたところ、患者の多くがインフルエンザの感染と共に、抗生物質の効かないMRSA(メチシリン耐性プドウ球菌)に同時に感染していて、MRSAの出す毒素でショック死する「毒素性ショック症候群(T S S : Toxic ShockSyndrome)」で亡くなった可能性が高いと分かりました。

それまで日本ではインフルエンザの集団感染でTSSによる複数の死者が報告された事はなかったのです。

TSSは、手術後の傷に感染したMRSA等の細菌から出た毒素が全身をかけ巡り、ショックを起こす症候群の事です。

「人喰いバクテリア(マンイーター)」と呼ばれる劇症型のA群溶血性連鎖球菌も、インフルエンザウイルスと同時に感染すると致死率が急上昇する事が、大阪大歯学部の川端教授らのマウス実験で確かめられました。

A群溶連菌、インフルエンザウイルスの単独感染では、致死率は共に10%以下なのに、インフルエンザ感染の後にA群溶連菌に感染させると90%以上が数日で死んだのです。

A群溶連菌は多くの人の咽頭部に常在しており、MRSAも今や保菌者は普通の人にもかなりの割合で見られ、これらを撲滅するのは困難なので、対策に苦慮しているのが現状です。

レジオネラ菌

2021.06.12 | Category: 感染症

2015年11月7日宮崎県日向市の温泉施設で発生したレジオネラ症の集団感染は7人の死者を含む約300人に達しました。

風呂の湯を循環させる配管のろ過器等でレジオネラ菌が増殖したのが原因でした。レジオネラ症といえば、24時間風呂の循環装置で問題になりましたが、その原因であるレジオネラ菌はアメーバ等の原虫に寄生して土壌や河川、湖沼等自然界に広く生息し増殖します。

酸や熱に強く、50度のお湯の中でも死滅しません。

レジオネラ菌は生活菌で、普通の銭湯や温泉には必ずいるのですが、それがよどんだ水の中で爆発的に増殖し、加湿器、給湯設備、循環式の浴槽やジャグジー、打たせ湯、人工の滝や噴水等の水煙を吸い込んで肺に感染するのです。

温泉施設では循環型や溜めたお湯を使う施設が多いので、浴場の換え水や清掃、残留塩素濃度等衛生管理が悪いとレジオネラ菌が繁殖しやすく感染の恐れがあります。

厚生労働省は宮崎県の感染をきっかけに、全国の保健所に大型浴場の検査をする様に通知しました。

レジオネラ菌による症状は、レジオネラ肺炎とポンティアック熱の2種があり、ポンティアック熱はインフルエンザの様な症状で治ります。

レジオネラ肺炎は劇症と言われるほど悪化が早く、死亡率も高く、保健所に届出義務がある病気ですが、人から人へは感染しません。

感染しても、体の抵抗力が強かったり、菌数が少なく、菌が弱っていれば、発熱や筋肉痛、けん怠感を感じる程度で約1週間位で自然に治る軽症の場合もあります。

しかし、幼児や老人、糖尿病患者等体力、免疫力が落ちている人に感染すると注意が必要で、悪寒や高熱、激しい咳込みや胸に痛みを感じます。

レジオネラ菌の感染であればマクロライド系、テトラサイクリン系の抗生剤を服用すれば、完治しますが、この菌の検出に2週間かかるので、症状から想定して受診する事が大切になります。

初期受診を間違えると約1週間で死亡する事もあります。

腸管出血性大腸炎

2021.06.12 | Category: 感染症

病原性大腸菌O -157は食中毒菌の中で感染力が特に強く、菌の数が10~1000個でも発症します。

他の多くの食中毒では100万~10億個を口にしなければ発症しませんが、少量でも発症するのは胃酸に強い抵抗力を備えているからです。

この菌の潜伏期は食べた量にもよりますが、1~10日と長く、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛等で一般的な食中毒症状を呈して始まります。

次にベロ毒素を産出する大腸菌を腸管出血性大腸菌といい、これには6種類の大腸菌があります。

その中でもO-157は特に強いベロ毒素を出して蛋白質合成を阻害して細胞を破壊します。

まず大腸の下部腸管の細胞にダメージを与え、水分の吸収ができなくなり、そして、大腸の血管が破壊され出血性の鮮血様の血便となります。

次に腎細胞が破壊され溶血性尿毒症症候群や血栓性血小板減少性紫斑病、更にベロ毒素が脳に達すると痙攣や意識障害等脳症を呈し、死亡する場合もあります。

下痢止め等を服用すると、腸内に病原菌を閉じ込めて異常増殖させてベロ毒素を大量に産生させる為、病気を悪化させる事になります。

また抗生剤投与には効果があるという説と、抗生剤は菌を殺しますが、その結果、菌が菌体内に貯蔵しているベロ毒素を一度に放出するために、病状をかえって悪くするという説があります。

補助的に下痢による脱水を防ぐために輸液を与えることになります。

予防は食中毒における基本を守ることです。O -157は70度で1分加熱すれば死滅するので、しっかり加熱調理して、できるだけ早く食べる事。肉を調理した後のまな板、包丁、ふきんの取り扱いに注意をする事です。

また乳酸菌やビフィズ菌等腸内細菌叢を作る様に心がける事や、最近の研究では緑茶に含まれるカテキンがO-157を殺菌する事が報告されています。

食前、食後には緑茶を飲むと効果がある様です。

食中毒

2021.06.12 | Category: 感染症

下痢といえば食中毒、食中毒は感染症、というイメージがありますが、食中毒と腸管感染症はイコールというわけではありません。

確かに食中毒ではウイルスや細菌などが原因である事が多いのですが、添加物、容器等化学物質が原因の事もあって、感染症とは限りません。

何かを食べた直後、急激、大量に患者が発生する様な場合、最初に感染症として対応される事が多いのですが、まずは毒物等の中毒の可能性が高いものです。

いわゆる腸管感染症の場合、これまで赤痢や腸チフスは伝染病、腸炎ビブリオやサルモネラは食中毒というように伝染病予防法と食品衛生法と別々に扱われていたのですが、感染症新法からは1本化され、感染による食中毒は感染症新法の中では食品由来経口感染症として扱われています。

食品衛生法も改正されて、赤痢やコレラも食品由来で発症すれば食中毒としても扱われます。

さて腸管感染症という面から見れば、毒素型と感染型にわかれ、毒素型では黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌等があります。

菌その物の感染というより、菌が作った毒素が口に入る事によって下痢や腹痛等が起こるものです。

ボツリヌス菌の毒素は嚥下障害や呼吸困難等の全身性の重篤な症状を起こします。

-方感染型では大腸菌やサルモネラ、カンピロバクター等が下痢や発熱を起こします。

感染型の中でも感染した後体内で毒素を産生して症状を起こす物に腸炎ビブリオ、下痢原性大腸菌、ウェルシュ菌、セレウス菌等があり、O-157はこの生体内毒素型です。

人が広げる人畜共通感染症

2021.06.12 | Category: 感染症

抗生物質のおかげで感染症は制圧されたかと思われた矢先、1968年のマールブルグ病以来、ラッサ熱やエボラ出血熱を始め、30種類以上もの新興感染症が発生しました。

最初に発生したのがアフリカ大陸等だった事でもわかるように、これらのほとんどが野生動物を宿主とする人獣共通感染症のウイルスによるものでした。

これまで未踏の地だった所まで人間が深く入り込み、また活動範囲も全地球的になった為、眠れる獅子を起こしてしまったというわけです。

しかも、先進国に棲んでいる野生動物も危険なウイルスなどを持っている事が分かってきて、人畜共通感染症は世界的な脅威となってきました。

日本では多くの野生動物がペットや実験用として輸入されていますが、1999年の感染症新法施行でサルのエボラ出血熟とマールブルグ病が検疫対象に、また狂犬病法の改正でネコ、キツネ、アライグマ、スカンク等が検疫対象になりました。

しかし実際はおびただしい種類と数の野生動物が輸入されており、それらはまったく野放しで、新しい感染症だけで無く狂犬病等、いつ発生してもおかしくないというのが今の日本の状態です。

本来、野生動物は飼わない、触れ無いという事が無用な危険を避ける事になります。

更にこれからは動物バイオテクノロジーの発達で、動物を利用して医薬品を作る事も多くなるとみられ、新たな人畜共通感染症の発生の可能性は少なくありません。

非特異的抵抗性とは

2021.06.12 | Category: 感染症

身体がもつ感染に対する抵抗性は特異的感染抵抗性と非特異的感染抵抗性に分けられています。

特異的感染抵抗性とは「免疫」の事で、「自己と非自己を識別し、非自己を排除する反応」と定義されているシステムです。

要するに外から入ってきた特定の細菌やウイルスを敵として認識して攻撃します。

このシステムには体液性免疫系と細胞性免疫系があり、お互いに補い、助け合って感染防御や生体の恒常性維持の為に働いています。

もう1つが非特異的感染抵抗性というものです。

これは外部から侵入しようとした病原体をどれでも機械的に阻止する機構をさします。

例えば、波膚の扁平上皮細胞の外側には粘液腺や汗腺、皮脂腺などを分泌する粘膜層があります。

侵入しようとする病原体は粘液中のリゾチームという酵素や皮脂腺からの抗菌力のある不飽和脂肪酸によって阻止されます。

その他の分泌液では唾液、涙液、鼻水、胃酸、胆汁酸も抗菌の働きをします。

また、気管上皮細胞の繊毛運動、消化管の蠕動運動、排尿運動等も病原体の標的細胞への定着を抑制する為に物理的に働きます。

更に、細菌やウイルスが深く侵入して血液やリンパ液に乗ったとしても、血液中には殺菌活性のあるラクトフェリンやトランスフェリン等の蛋白質が待ち受けています。

血液中やリンパ液中には、好中球や単球、マクロファージ等の食細胞が常時パトロールして病原体を攻撃しているのです。

また、身体の直接的な防衛機構では無いのですが、皮膚の黄色ブドウ球菌や腸内正常細菌叢や腕のデーデルライン棹菌等の常在菌は他の病原菌の侵入を防いでくれています。

HIV感染症

2021.06.12 | Category: 感染症

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は細胞性免疫のいわば司令塔であるCD4陽性Tリンパ球細胞に感染して、次第にその細胞を破壊していき、免疫機能障害を引き起こす様になります。

その為に次第に免疫不全状態が悪化して行き様々な日和見感染が起こり、重篤な症状が出てきますが、その状態をエイズと呼んでいます。ですからエイズとはHIV感染症の最も進行した状態だけを言います。

日本では一時ほど騒がれていませんが、アフリカや東南アジア等世界的にみるとやはり最悪の感染症といえます。

現在では方法がかなり確立してきています。初期感染、無症状期、エイズ関連症候群、エイズ期の4期に区分されて、区分に沿った医療が行われています。

なにより初期が大切なのですが、初期感染の時は一時風邪様症状がみられますが、自然治癒してしまいますし、数年から10年間は無症状期に移行していきます。ですから、よほど悪くなるまで気が付かない事が多いわけです。

本人が感染に気づいていないので当然二次感染を引き起こしてしまいます。

無症状の時期でもリンバ節ではウイルスが盛んな増殖とリンパ組織の破壊がじわじわ進行していることが明らかになっています。

ですから、HIV陽性であれば、その時期に積極的な通院を開始をしなければなりません。

ウイルスの動態も解明され強力な抗ウイルス剤を投与する事で感染症の進行を阻止することが出来て、免疫状態の改善も可能になってきています。

近頃あまり騒がれてはいませんが、大変危ない性感染症である事は間違いありません。

当院のスケジュール