- Blog記事一覧 -動脈硬化の記事一覧

動脈硬化の記事一覧

血管性間欠性跛行

2021.05.16 | Category: 動脈硬化,循環器

歩いていると足が動かなくなり一度に長く歩くことができず、暫く休むとまた歩ける、という状態を間欠性跛行といいます。

高齢者に多く、脊柱の変形や圧迫で神経が障害されるために起こる事もありますが、四肢に行く動脈が詰まってしまう閉塞性動脈硬化によるものが増えています。

間欠性跛行では大動脈下部から大腿動脈等が詰まって血行障害が起こるので歩けなくなるのですが、動脈硬化は全身病ですから、当然他の血管も詰まりやすくなっていて、2~3割は心疾患や脳梗塞に進むとみられています。

血管性間欠性跛行の最初は歩行の困難さはなくても、足の皮膚色が悪く、冷えや痺れを感じる事があり、それが悪化すると間欠性跛行が起こってきます。

更に悪化するとじっとしていても下肢が痛むようになり、最悪の場合は全く血流がなくなり壊死から足の切断へといたります。

500m位歩ければ改善は可能で、運動をする事で血管をまたいで側副血行路が発達し、血沈が改善しますから、努めて歩くようにする事が大切です。

この間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症からそれによって引き起こされる心疾患や脳血管障害のきっかけにもなるので、高血圧や特に糖尿病の人は要注意です。

動脈硬化が怖いのは?

2021.05.06 | Category: 動脈硬化

アテローム性の動脈硬化は、血管壁に脂肪のプラークが溜まって血管が狭窄したり閉塞すると思われがちですが、プラークが血管を塞いで、その為に組織が死んでしまうわけではありません。

動脈硬化が怖いのは作られたプラークが破裂する事で、プラークが破裂すると凝血塊ができ、その凝血塊が動脈を塞いでしまうからです。

問題はそのプラークが単なる脂肪の塊ではなく、常に炎症物質を産生させる働きを持つところにあります。

悪玉コレステロールのLDLは血液と血管の内皮の間を行き来していますが、あふれたLDLは血管の内膜に溜まり酸化されたり糖化されます。

すると血液中から単球やT細胞が内膜に入ってきてLDLを処理しようとします。

単球はマクロファージになってLDLをたらふく取り込み(泡沫細胞)、それらがプラークを形成していくのです。

この時マクロファージとT細胞は多くの炎症物質を作ります。

泡沫細胞から作られた炎症物質は組織の結合を弱めてプラークを破れやすくし、そのプラークが破れるとそこに凝血塊ができるのです。

つまり動脈硬化はプラーク内でさかんに作られる炎症物質によって破綻することでさまざまな危険を引き起こすのです。

LDLの値が高くなくても心臓発作や脳梗塞が起こってしまうのは、プラークそのものというよりもこの炎症作用が影響が大きいからだと考えられます。

善玉コレステロールのHDLが動脈硬化を予防するという働きには血液中のLDLを取り除く働きがあるとされていますが、それだけでなくLDLの酸化を抑えたり、炎症を抑制する作用があるのかもしれないとみられています。

動脈硬化のコントロール

2019.12.30 | Category: 動脈硬化

ヒトは年を取ればば誰しも血管も老化しますが、驚くべき事に動脈硬化はすでに小児の時に始まっています。しかし実際は血管の内腔狭窄が75%以上にならないと血流の減少は起こら無いとされていますから、生きている間に内腔の狭窄を75%以上にしない事と、出来てしまった粥状硬化巣が破れて血栓などが起こら無い様にすれば良い訳です。これまで一旦起こってしまった動脈硬化は不可逆的でどうにもならないとされていましたが、最近ではコントロールによって硬化巣が退縮する事も知られています。動脈硬化の予防と改善の為には何と言っても危険因子を避け無ければなりませんが、動脈硬化の危険因子と看做されている物は200以上にも上ります。とは言ってもその中の5大因子である高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙を退ける事でリスクはぐんと小さくなります。特に血清コレステロールと中性脂肪(トリグセリド)のコントロールが重要です。血清コレステロールでは、LDLのコントロールはプラークの形成を抑えると共に、退縮させる事が明らかになっています。トリグリセリドと動脈硬化の関係はコレステロールほど明確ではありませんが、一言でいえば動脈硬化を退けるには脂っこく無い血液にする事です。

動脈硬化とストレス管理

2019.12.29 | Category: 動脈硬化

ストレスが高血圧や動脈硬化等循環器病の危険因子となる事は良く知られています。性急で競争心の強いタイプAの性格やストレスを受けやすい人は、心筋梗塞のリスクが高いのです。ストレスが加わると、交感神経一副腎髄質系の活性化により、カテコールアミンというホルモンが過剰に分泌され、心拍数が増加し、皮膚や内臓の血管収縮が起こり、血圧が上昇します。カテコールアミンはLDLコレステロールを酸化させる働きがあります。酸化LDLは強力な血管傷害性を持っているので、酸化LDLが 産生されると血中の単球が血管内皮細胞からのシグナルを受けて、マクロファージ化して酸化LDLを貧食する事によって泡沫細胞が形成され、プラークを作って行きます。更にカテコールアミンは直接、またはトロンボキサン(TXA2)を介して血小板の凝集能や粘着性を高め、血液を凝固しやすくします。ストレスによってこれらの反応が繰り返して起これば、血管内皮は障害され動脈硬化が促進されるのです。普段からこうしたストレスのコントロールを心がける事で循環器病を予防あるいは改善効果が期待出来るので、ストレスマネージメントは重要です。リラクセーション、・バイオフィードバック、自立訓練法、瞑想法等を行ったり、カウンセリングを受けたりして精神の安定を図る事も必要です。

血栓と動脈硬化

2019.12.28 | Category: 動脈硬化

血栓が起こる要素は、血流と血液性状と血管壁の変化によって起こります。血液の中の血漿には凝固抑制因子の物質や蛋白質の繊維素であるフイブリン網を溶かすプラスミン等があり、血が固まらない様にしています。また、正常な血管では抗血栓活性がありますが、それは血管内皮細胞に血小板凝集抑卸、凝固阻止、フィブリン溶解等に関わる物質があるからです。このように絶えず血液が固まらない様に万全の備えが出来ているのですが、動脈硬化が進行していく過程において、血液が固まるリスクが次第に増えてしまいます。血栓が出来やすくなるのは血管壁の肥厚や狭窄によって血の流れが不規則になる事と好発部位である分枝の所や曲がった内壁に絶えず力学的な力が加わる事が挙げられます。また、内皮細胞自体も障害されて行きますので抗血栓活性が低下していきます。更に動脈硬化の部位の粥腫(プラーク)が破裂したり、裂け目が出来ても血栓が起こります。それは血波の中の血漿成分が粥腫の中に沢山集まっているマクロファージと接触する事になりマクロファージ上にある血液凝固外因系が作動してしまうからです。この典型的な症状が急性心筋梗塞なのです。

狭心症

2019.12.27 | Category: 動脈硬化

狭心症は一過性心筋虚血に原因する胸痛症候群の事です。一般的には心筋梗塞は危ないが狭心症は大丈夫だと言う考えが流布されていますが、そうとも言い切れません。虚血の原因は冠動脈アテローム硬化による狭窄があり、運動や精神的な興奮により心筋酸素需要が増大して、冠動脈への血流が足り無くなり発作が起こります。それ以外に、冠動脈痙攣縮による機能的な狭窄もあります。狭心症と言っても軽い物から致命的な物まで色々です。放つて置くと無症状期から安定狭心症期、不安定狭心症期に移行して、急性心筋梗塞症や心不全に至り死とする恐い病気なのです。改善法は薬剤では冠動脈拡張の為のニトログリセリンや血小板凝固抑制剤等を使用します。また、外科では冠動脈バイパス手術やカテーテルを用いた経皮的冠動脈形成術やバルーン療法等があります。現在は狭心症の進行の様子は心臓カテーテル検査や冠動脈造影で病変の状態が良く分かりますので、定期的な検査が何より大切です。しかし、冠動脈の狭窄を起こす原因である動脈硬化の5大リスク因子(高血圧、高コレステロール、喫煙、肥満、糖尿病、)と共に高尿酸血症、甲状腺疾患等の基礎疾患を改善しなければ、確実に進行していくのです。

血液中の脂肪

2019.12.26 | Category: 動脈硬化

脂肪は水に溶け無いので、水に馴染む蛋白質と結び付いて血液中を運ばれます。この蛋白質と結び付いたトリグリセリドやコレステロール等がリポ蛋白です。リポ蛋白は大きく分けて5っです。

●カイロミクロン
一番大きいリポ蛋白。比重0.95。トリグリセリド85~90%。コレステロール6%
●超低比重リポ蛋白(VLDL)
カイロミクロンの次に大きい。比重0.95より大きく1.006以下。トリグリセリド50%
コレステロール19%。リン脂質18%
●中間比重リポ蛋白(IDL)
大きさはVLDLの1/2。比重1.006より大きく1.019以下。低比重コレステロールになる。
●低比重リポタンバク(LDL)
いわゆる悪玉コレステロール。比重1.019より大きく1.063以下トリセリグリド10%。コレステロール45%。リン脂質23%
●高比重リポ蛋白55(HDL)
いわゆる善玉コレステロール。比重1.063より大きく1.210以下。トリグリセリド2~5%
コレステロール18%。リン脂質50%

インスリンと動脈硬化

2019.12.24 | Category: 動脈硬化

疫学的に見て、糖尿病患者が心筋梗塞、脳梗塞、虚位桂心疾患、下肢閉塞性動脈硬化症等になる確率は、そうで無い人に比べて2~数倍の発症率になっています。糖尿病がどうして動脈硬化を起こすのかは最近ではインスリン抵抗性症候群という概念で説明しています。これは糖尿病になるとインスリン作用不足で、筋肉での糖の取り込みが低下します。その為に糖代謝を補う為に代償的に膵臓でのインスリン分秘が亢進し、高インスリン血症が起こるのです。インスリンの作用不足が起きるとリポ蛋白リバーゼ活性低下、肝臓でのVLDL合成亢進、LDL受容体活性低下が起きて脂質の代詩異常を起こします。また耐糖異常で高血糖を起こし、血管内皮細胞機能を傷害したり、糖化による蛋白変性をもたらし、動脈硬化が進みます。更に高インスリン血症ではそのインスリンが腎尿細管におけるナトリウムの再吸収を促進し、血管壁平滑筋細胞を増値して高血圧の原因になるのです。糖尿病における動脈硬化の子防は血塘値のコントロールだけで無く、インスリンによる代謝の正常化も問題になって来るのです。

動脈硬化とエストロゲン

2019.12.23 | Category: 動脈硬化

男性に比べて女性は動脈硬化を起こしにくく、冠動脈疾患の発症は成熟期の女性で男性のおよそ10分の1程度です。これは女性ホルモンのエストロゲンの分泌により守られている為ですが、更年期を迎え平均55歳を過ぎると女性の冠動脈疾患も増え、高脂血症の頻度もぐんと高くなります。しかしそれでも男性の半分以下です。古くからこの事は知られていたにも関わらず詳しく検討される様になったのはつい最近の事です。エストロゲンには脂質代謝改善効果があり、HDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを減少させる事が知られています。しかし、エストロゲンレセプターの血晋平滑筋細胞や内皮細胞における作用機構はまだ充分に明らかになってはいません。Stampferらが48.470人のの閉経後の女性について10年間の追跡調査を行った結果、低容量のエストロゲン補充療法で冠動脈疾患の発症が減少したと報告しています。日本の研究では、労作性狭心症の患者にエストロゲンを舌下に含ませると、運動をしても心虚血が起こるまでの時間が長くなる事が報告されています。また、米国の心臓学会でも、エストロゲンの作用でアセチルコリンが冠動脈をより拡張させるという研究結果を報告しています。ただ子宮内膜がエストロゲンにより異常増殖し子宮体癌を引き起こす確率が2~8倍にもなるそうでエストロゲン療法では子宮体癌のリスクが高くなる問題があります。

血管新生と動脈硬化

2019.12.22 | Category: 動脈硬化

血管新生は通常は既存の毛細血晋から新しい血管が生まれる現象です。正常な状態では女性の生理過程等で起こりますが、組織が病的な状態になっても起こります。最も知られているのが癌の増殖や転移の時ですが、他にも糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎等でも見られます。動脈硬化の場合血管の外膜と内膜へ栄養を供給する血管栄養血管(毛細血管)から新たに血管新生が起こって来ます。すると血管の内側にある内皮細胞は増殖を開始して肥厚して行きます。この血管新生は、促進因子と抑制因子のバランスが崩れて促進因子が優位に立った時に起こります。促進因子は沢山ありますが、その中でも重要な物が2つあります。1つは動脈硬化の進行の過程において、毛細血管の内皮細胞にある特異的な増殖因子である血管内皮増宿因子(VEGF)が活性化する事が明らかになっています。もう1つは動脈硬化の血告部位は局所的に虚血になる為低酸素状態になりますが、その酸素濃度の低下も重要な因子なのです。癌を始めとして生活習慣病の行き着く先にある動脈硬化もこの血管新生が深く関与している訳です。

当院のスケジュール