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加齢の記事一覧
高齢の患者さんが不眠を訴える事は臨床の中で毎日の様に経験します。
確かに高齢になるに従って睡眠の質と量は低下してしまいますが、この府民の問題はうつ病などで起こる心因性の者から脳血管障害などの器質性の者、更に加齢による睡眠覚醒リズムの振幅減少、睡眠覚醒の構造的な変化等様々な原因が考えられます。
しかし深部体温のリズムの変化が不眠と深く関係している事はあまり知られていません。
昔から「早寝早起きは三文の得」という諺がありますが、高齢になるに従って早寝早起きになる人が増えてきます。
しかし、これは健康的な早寝早起きの生活習慣が高齢者になるに従って身に付いたというより、実は加齢に伴い次第に就寝時刻が前倒しになる為なのです。
これは自律神経系に強く影響を与える深部体温のリズムが変化して活動性のリズムとのズレが生じ、早い時間に体温が下がる為に就寝時間が早くなってしまうからです。
また、この体温リズムは若い頃には体温の高低の振幅がはっきりしていて、夜にしっかり低体温期になる為に熟睡できるのですが、高齢者は体温の高低の振幅が小幅な為にどうしても浅い眠りしか取れなくなるのです。
この就寝時刻の前倒し現象により、実際に体温が下がる時間、つまりまだ早い時間に入寝るようになるのです。
更に生物リズムの制御機構が衰えてくる為に24時間周期に身体を調整する同調因子の働きが弱くなり、睡眠覚醒リズムが悪くなる事が睡眠の質を低下させています。
ですから、睡眠の時間と質を確保するには、まずこの体温のリズムにもっとも影響のある昼間に日光を充分に浴びることが必要です。
また、日中に同調因子である活動性のリズムを強化する為の社会的な刺激(熱中できる仕事や趣味)を積極的にする事で、双方の同調を促す事が夜の熟睡の為に必要なのです。
この事からも、睡眠の問題は実は覚醒の問題でもあるといえます。
睡眠度と覚醒度はコインの表裏の関係にあるわけで、昼間の覚醒度を高くする事が睡眠度を高くする事になるのです。
高齢者のうつ病では、一般に下記にある様な症状が出ますが、不定形に現われる事が多く、身体疾患を伴うのが特徴です。
また風邪、下痢、腰痛、外傷などの一見軽い病気がうつ病の誘因になる事も多くあります。
脳卒中などの脳の器質的、機能的変化も原因になりますし、がん等の重大な病気の数週間前から数ケ月前に先立ってうつ状態があらわれる警告うつ病と言われているものもあります。
また、配偶者や友人や仲間の死、子供の独立あるいは同居、家族の病気の看病、夫婦関係、親子関係等の精神的ストレスが誘因になる事がかなりあります。
またうつ病に伴って被害妄想や幻聴等をきたしやすく痴呆症と間違われる事もあります。
更に高齢者のうつ痢は一般に自殺率が高く、特に不安、焦燥、妄想のあるものは要注意です。また、栄養不良、食欲不振、脱水等をおこしやすいので身体状態に特に注意が必要です。
アメリカ精神医学会のまとめた
DSM-IVの大うつ病性障害の診新基準
以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に;存在して、病前の機能からの変化を起している。
これらの症状のうち少なくとも1つは、抑うつ気分または興味または喜びの喪失である。
(1)患者の主訴(たとえば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察(たとえば、涙を流してしているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、ほとんどすべての活動における興味。喜びの著しい衰退(患者の主訴、または他者の観察によって示される)
(3)食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加(例えば、1ヵ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。
(4)ほとんど毎日の不眠、または睡眠過多。
(5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きが無いとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)
(6)ほとんど毎日の筋疲労性、または気力の減退。
(7)ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想であることもある。単に自分をとがめたり、病気になった事に対する罪の意識ではない。)
病気になった時、若い人にとってはその病気の完全な治癒が目的になります。
しかし高齢者にとっては元の健康体に戻る事は難しく、症状を和らげながら、いかにADLを保つかという事が目的になっていく事が多くなります。
また高齢者に特有の老化という生理現象に加えて複数の疾患等が重なっています。
したがって個々の疾患をターゲットとするより、様々な症状を症候群として捉える方がより正しく高齢者を捉えられるという事で、それらを一括して“老年症候群”という考えで扱うという動きが広まっています。
アメリカの老年学者B.アイザックは高齢者の重大な障害を“4大兆候”として痴呆、転倒、寝たきり、尿失禁をあげていますが、老年症候群の中でも高齢者のADLやQOLを低下させる筆頭といえます。
これらの疾患は、最初はひとつの病気で始まった場合でも不可逆的に慢性化しやすく、老年症候群となり複数の疾患同士が悪循環を作り上げて要介護状態になりやすいのです。
この老年症候群という捉え方は医療やケアの現場でも一般的になりつつあります。
老年症候群
認知障害をもたらすもの 抑うつ、せん妄
廃用性萎縮をもたらすもの 寝たきり、骨折
感覚障害をもたらすもの 視覚障害(老眼や白内障など) 聴力障害(難聴)、味覚障害
その他 低栄養、脱水、褥瘡
髪の毛の色はすべて毛根にある色素細胞(メラノサイト)が作り出すメラニン色素によって決定されます。
着色物質であるメラニンには2種の基本的成分があって、これらの色素の割合によって濃い色や薄い色等の髪の毛の色が決まるのです。
いったん毛根で着色された毛の色は後で変わる事はありません。
白髪になるのは加齢によって、メラノサイト機能が乱れてきて発生するのですが、普通は何年もかけてゆっくりと進行するので、一夜にして白髪になる事はあり得ないのです。
よく恐ろしい体験や心配事の為に一晩で白髪になった、という報告がありますが、実はゆっくり白髪化しているのに本人が気づかなかっただけなのです。
確かにストレスや心配事が白髪化を促進する事がありますが、毎日約100本の毛が失われ、新しく白い毛が生えて来て目立つ様になると、急に白髪になった様に感ずるのです。
白髪年齢はほぼ遺伝的に決定されていて、親の形質を受け継ぎます。また白髪になるのには男女差があり、おおむね女性の方が男性よりも早く白髪になります。
メラノサイトは意外に早く老化し始め、25歳までに4分の1の人で白髪が現れます。老化してメラノサイトの機能が乱れて来ると、色素生産をスピードアップさせ、細胞が死ぬ前に最後に色素を出す事があり、いったん白くなった髪がまた一時的に黒く生えて来るという事もあります。
甲状腺疾患や脳下垂体の病気等でホルモンの異常があるとメラノサイトの機能不全が起こったり、狂ったりします。
またメラノサイトが集団で崩壊すると白斑になり、そこから生えた毛は全て白髪になってしまうのです。
女性が更年期になるとひどい肩コリを訴える事がありますが、更年期の屑コリは女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌異常から来る血管運動障害で起こります。
卵巣は他の臓器(胃・肝臓・心臓)に比べて老化が早く、35歳位からその徴候が始まり、40代後半になると老化が急速に進み、女性ホルモンも急に減って、やがて閉経を迎えます。
平均50歳を中心にして前後10年位が更年期です。エストロゲンは40代後半から次第に減少、閉経を境に急激に低下します。
プロゲステロンはエストロゲンよりも排卵が無い分だけ激しく滅少します。
これらの女性ホルモンの分泌異常が、自律神経中枢に影響し、様々な症状が起こる様になります。
血管運動障害を起こすと、顔は異常に発汗したり紅潮するのに手足が非常に冷たくなったり、肩コリや腰痛、関節の痛み等が起こります。
更年期によく見られる精神的な不安や心因性の欝症状が加わったり、運動不足がちだと、非常に頑固な肩コリになります。
精神的なリラックスをアドバイスし、軽い体操やストレッチングがお勧めです。
肩コリを訴える患者さんが更年期だと思われる時は、婦人科系疾患の改善を行う事が当然必要になる訳です。
若い子から嫌われる“おじさん臭ざは、単なる蔑視的な比喩ではなく、実際におじさんの体臭として存在する事が突き止められました。
人の体臭成分は数百種類あると言われ、多かれ少なかれ年に応じた臭いを発していますが、多くは汗や皮脂腺から分泌される脂肪酸による物です。
汗腺や皮脂腺から分泌された脂肪酸は、紫外線や空気中の酸素などによって酸化して過酸化脂質になったり、皮膚に住む常在菌によって分解されて別の脂肪酸になったりします。
それが臭いを発する様になるのです。加齢臭の臭いは”ノネナール”という炭素数が9の不飽和アルデヒドと言う物質で、青臭さと脂臭さを持ち、ほんの少量でも臭いを発します。
これは中高年になって分泌が増える「9-ヘキサデセン酸」と言う脂肪酸が皮膚上で酸化したり常在菌による分解を受けて、ノネナールになると言う訳です。
男女共に40代から歳と共に増えて行きますが、男性の方が沢山分泌される為に、おじさんはいわゆる“おじさんの臭い”がする様になるのです。
このノネナールは石鹸が有効です脂質の為水溶性では無いので水や拭き取りでは除去出来ません。
こまめな洗浄で脂質の変性が進む前に対処しましょう。石鹸の香りがするおじさんの時代です。
骨粗鬆症で骨折しやすいのは腰椎や大腿骨頚部です。
今ではかなり高齢の人にも人工骨頭等を利用した手術が行われるので、長期臥床による寝たきりやボケを心配する事はありません。
日本人の腰椎を測定した結果、女性は閉経後5~10年間に急激に骨量が減少、70~80代になると7割の人がいつ骨折してもおかしく無い状態になります。
これは閉経前は女性ホルモンが骨の吸収を抑え形成を促進し、骨を守るという役割を果たしていたからです。
一方、男性は70代後半まで大きな骨量の変化はありません。
骨粗鬆症に間しては肥満の方が痩せた人より有利といわれ、おそらく体重が重いと骨にかかる荷重が多くて骨が鍛えられるという説や、肥満細胞中のアンドロゲンが閉経後もエストロゲンに変換されるといった説が考えられています。
小柄で痩せた人は骨粗鬆症になりやすいのです。改善法は「骨代謝マーカー」の測定を行い、骨の吸収が促進しているタイプか形成が低下しているタイプかの見極めも可能になってきました。
前者ならカルシトニンやカルシウム製剤、エストロゲン等を、後者なら活性型ビタミンDや蛋白同化ホルモンをと言う使い分ける事が出来ます。
また、運動不足は大きな危険因子です。若い時から食事や運動に注意し、骨量を高めて置く事が予防となります。
日本では50才代になると義歯を使う人が増え、80才代では7割の人が総入れ歯になってしまいます。
義歯になると咬合力は4分の1から6分のlになってしまい健康な歯の力とは比べものになりません。
噛めないと栄養素、中でも特に蛋白質、ビタミン、ミネラル等が不足する上に、消化器官に負担を掛ける事で栄養状態は益々悪化してきます。
また唾液の分泌が減る(60代では20代の10分のl)と口中の粘膜に滑らかさが無くなり、食べたり話したりする事が困難になり、免疫力も低下します。
しかも噛まない事で脳の活動が低下し、記憶力等も悪くなりQOLが低下していきます。
また唾液は入れ歯と歯茎の接着剤の役目もしていますが、唾液が少ないと歯茎の粘膜を傷め、歯茎の血流も悪くなって益々萎縮し、入れ歯が更に合わなくなってしまいます。
例え良くフィットする入れ歯を作っても、歯茎は老化によって萎縮していきますから、5年も使っていると合わなくなってくるのが普通です。
全身の健康の為にも入れ歯は合わなくなったら我慢せず、定期的に調整してフィットさせておかねばなりません。
た歯が抜けたままにしておくと残った歯が動いたり、噛みあわせが悪くなるので部分的にでもきちんと入れ歯を入れておく事も大事です。
女性で尿失禁に悩まされている人は、30畿代で10人に2人、60歳以上では10人に4人とも言われています。
咳やくしゃみの時にお腹に力が入ってしまい、まだしてはいけないと思っても膀胱が勝手に縮んで尿が漏れてしまうという「腹圧性尿失禁」が70%以上です。
女性に尿失禁が多いのは、骨盤の筋肉が出産や運動不足等で弱くなる事が原因です。
健康な女性は膀胱と尿道の角度は110度ですが、骨盤底筋群が緩むとその角度が徐々に広がるからです。
それと膀胱出口の膀胱頚部の平滑筋をみると男性では括約筋の輪状構造となっていますが、女性では筋繊維が斜め方向の構造の為に膀胱出口の締まりが悪くなっているので、漏れ易くなっています。
それと、尿道の粘膜および粘膜下組織の弾力性はエストロゲンの影響を受けていて、閉経するとエストロゲンが欠乏し弾力性が失われ、益々締まりが悪くなり失禁し易くなるのです。
改善法には、失禁の程度に応じて、運動、薬物、手術療法の三つがあります。軽度の人や予防の為の対策としては、骨盤底筋の訓練や膀胱訓練を行うと95%が改善されるそうです。