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筋肉の記事一覧
鶏肉の皮を剝ぐと薄くて白い膜が筋肉を包んでいます。
これが筋膜です。筋膜は線雄性の結合組織ですが、筋の全体を包む外筋周膜、筋線維を束ねる内筋周膜、それに個々の筋線維の間にもある筋内膜の三つの膜があります。
この筋膜によって骨格筋の構造を支持する枠ができて、その為筋細胞は崩れずに整然と配列していられるのです。
また、多くの神経や毛細血管の通路にもなっている重要な組織なのです。また、筋膜は同じ結合組織である腱と連続性を持っています。
その腱は骨を覆う骨膜としっかり結合しています。ですから、骨格を形作っているのはこの筋膜、腱、骨膜の連続性であるという事もできるのです。
また、筋群は身体に浅い筋から深い筋と幾重にも重層的に存在しています。
それらの筋群が自由な運動ができるのは、筋群を覆っている筋膜の繊維間の適度な水分が潤滑油の働きをしているからです。
また、筋膜を構成している結合組織の線維はあらゆる方向に走っている為、どの方向にも偏らない様に織り合わされています。
ですから、筋の大きさの変化にも適応して、伸張できて全ての方向に膨らむ事ができるのです。
ところが、その筋膜に炎症が起こると、筋膜は強く収縮しようとするのです。
ですから、そこを流れる血液供給が欠乏してなかなか治りにくくなるし、神経通路でもある為痛みが強調されるのです。
我々の治療において重要な鍵を握る組織でもあるのです。
スポーツのトレーニングといえばバーベルやマシーンを使ったウエイトトレーニングがイメージされますが、それらの多くは徐々に筋肉に負荷をかけて筋を肥大させることで筋力を高めることが目的です。
ところが、最近では初動負荷に注目したトレーニング理論が注目されています。従来のトレーニングでは最後の方に負荷をかけていく終動負荷が多いのですが、これでは筋肉が疲労し、乳酸や二酸化炭素が溜まったり、うっ血状態になって弊害が起こるというのです。
つまり大きな筋肉が力を発揮し続けるとパンプアップ状態になると考えられるのですが、バンプアップは筋力を一時的に低下させたり、筋肉の可動域を減らします。
つまり動きを必要とする筋肉作りにはパンプアップ状態は禁物となるわけです。
これに対して初動に負荷をかけるトレーニングでは最初に大きな負荷を筋肉に与えたあとは筋肉の反射を利用するかたちで収縮と伸張を繰り返します。
つまり大きな筋肉が続けて力を発揮する事が無いのでバンプアップが起こりにくいというわけです。
すると血がスムーズになるので乳酸などの疲労物質もすみやかに運び出されて柔軟な筋肉が作られるのです。
また筋断裂が少ないので筋肉痛が起こりにくく、続けてトレーニングができるとされています。
個々の筋細胞膜の表面は、ソフトタイプのコラーゲン繊維でできた「基底膜」で、その外にはやや厚い「筋内膜」で覆われています。
この筋細胞が数百で筋束を作り「筋周膜」に、更に表層を「筋外膜」で覆われ、これら筋内膜・筋周膜・筋外膜は張力に強いタイプのコラーゲン繊維でできています。
筋から腱へ力の伝達をする時、筋と腱を構成する蛋白質はそれぞれ性質が異なっていて、その接合部は数種の蛋白質が中継する複雑な構造になり、筋線維の端では細胞膜が凸凹しています。
これは筋の細胞膜とコラーゲン組織との接触面をできるだけ広くする為の様です。
腱と骨膜の構成成分は同じタイプのコラーゲン繊維なので、化学的結合で強力に接着していますが、やはり接触面積を広くするために骨表面に細かい凹凸(骨組面)があって、腱が骨にくい込む形で物理的にも強く接着しています。
腱のコラーゲン分子は棒状構造をしていて密集して平行に並び、長軸方向には引っ張ってもあまり伸びない性質を持っていますが、筋内膜や筋周膜のコラーゲン繊維では、分子の配列がランダムなので伸縮できます。
実際に腱が伸び始める時にはいくらかコラーゲン繊維に緩みがあって、バネの様な弾性がありますが、伸びきってしまうと硬くなって張力に強い抵抗を示し始めます。
腱がこの様に弾性を持つ事で筋収縮のエネルギーを弾性エネルギーとして一時的に腱に蓄え、その後の連続筋収縮運動のエネルギーが少くて済むような仕組みになっています。
アキレス腱の働きでいうと、走ったりジャンプしたりする時、このメカニズムで筋収縮エネルギーを節約していると考えられています。
遅筋(タイプⅠ)と速筋(タイプⅡ a、タイプⅡ b)という筋肉のタイプは、持続力や瞬発力の違いとしてだけで無く、代謝の違いとしても考える事ができます。
瞬発力に優れたタイプⅡbは白筋とも呼ばれますが、エネルギー源は糖質だけで代謝に酸素を使わないので血液からの酸素補給も必要ありません。
したがってミオグロビン(酸素の貯蔵体)やチトクローム(酸化還元にかかわるヘム蛋白質)がほとんど無い為に白く見えるのです。
反対に遅筋のタイプⅠはエネルギー源に脂肪を使いますが、その脂肪の代謝サイクルでは酸素が絶対に必要なので筋線維の中にミオグロビンやチトクロームを沢山含んでいます。
タイプⅡ aはその中間で糖質と脂肪をエネルギーにする事ができるのでミオグロビンやチトクロームもその中間となりピンク色に見えます。
したがって脂肪を燃やす筋肉はタイプⅠとタイプⅡaということになります。速筋に運動刺激を与え続けるとタイプⅡ bはタイプⅡ aに変化する事ができます。
つまり糖質だけしかエネルギーにできなかった筋肉が必要に迫られて脂肪をも処理できる様になれるのです。
また筋肉は熱も変生していますが、糖や脂肪のエネルギーを直接熱にするのがUCP-3という蛋白質で、そのUCP-3を一番多く含むのがタイプⅡ aの筋肉なのです。
つまりⅡbからⅡaに変化した筋肉は筋肉が動いていなくてもせっせと熱を変生し続けるようにというわけです。
筋肉を増やすと基礎代謝が上がるというのはタイプⅡbがタイプⅡ aになってUCP-3が沢山できるからです。
筋肉がlkg増えると、基礎代謝は40キロカロリー程度上がるといいますから、筋肉を増やす事は脂肪が燃えやすい体になる事なのです。
ただし、持久的なトレーニングを続けると、体はエネルギー節約型になり、UCP-3はかえって減少するといいます。
つまりマラソンランナーは走りをやめると太りやすい体になっている事も考えられます。その意味でも脂肪を燃焼させるにはレジスタンス運動によって筋肉の量を増やす事が必要なのです。
意識しないのに起こる身体の反応を「反射」といいますが、美味しそうな物を見た時にヨダレが出たり、「とっさ」の身体のバランス調整等も反射です。
最もよく知られているものは「膝蓋腱反射」ですが、腱反射といっても腱の反射ではなく、腱が叩かれる事で大腿四頭筋の伸張に対応する筋紡錘の反応なのです。
細い筋線維に神経が巻き付いてちょうど紡錘形をしている事からこの名前が付いています。筋紡錘は伸張に対して電気信号を感覚神経を経て脊髄に送ります。
一部は脳に上行し、一部は脊髄でUターンして運動神経を伝わり元の筋肉に到運します。その信号によって筋肉の収縮反応が起こるのです。筋肉に遅筋と速筋があるようにこの筋紡錘にも遅筋タイプと速筋タイプがあります。
また筋紡錘は筋線維と並列になっているので、受動的に引き伸ばされたときは刺激を受けるのですが、能動的に収縮する時には筋紡錘はたるんで刺激を脊髄に送らないようになっています。
筋肉の動きの速さや強さを自動的に調節する為の感覚器といえます。ですから、この筋紡錘の働きが鈍ると身体のバランスをとるのが上手くいかない事になります。
高齢者は筋肉と同時に筋紡錘も衰える事でとっさのバランスがとれなくて転倒する事が多くなるのです。また、過剰なストレスで交感神経が興奮すると筋紡錘も興奮して筋肉を収縮させてしまう事も分かっています。
同時に血管も収縮してしまうのでエネルギー不足になり、それがコリの原因になるのです。その様な状態が続いてしまうと、筋紡錘は疲労して感覚が鈍くなる為、過伸展等を起こし、それが筋肉の損傷や筋肉痛の引き金にもなります。
この筋紡錘をリラックスさせる為には心身のリラックスが必要で、少し強めのストレッチも有効です。そして短くてもいいですが、多い回数の運動が大事なのです。
指先を使う人は長生きだとか、体を良く動かす人はボケ無い等といいます。
実際指を動かす時には脳の運動野の広い領域が働いている事が分かっていますし、体を動かす為には筋肉の微妙な動きを調節する必要がある為に脳を総動員して働かせています。
つまり筋肉を動かす為に脳は働かなければならず、それが脳自身の刺激になっていると考えられるのです。
筋肉はそれ自体が感覚器でもあり、自分の筋肉がどの様に動いているのかは目を閉じていても分かるだけでなく、筋肉で生じた疲労物質などの代謝物質などの情報を脳に送る働きもしています。
しかし、最近の脳科学の進展によって神経が筋肉を制御しているだけでも、感覚器として情報を脳に送っているだけでなく、筋肉の動きそのものが脳を刺激、制御しているという事が分かってきたのです。
運動をすると大脳運動野が活性化されますが、同時に視床下部も活性化して成長ホルモンや副腎皮質ホルモン等を分泌させます。
その時、大脳からの運動指令とは関係無しに、筋肉の運動そのものがその部分を刺激するらしいのです。
最近では神経細胞も増殖したり成長したりしているという事が分かってきましたが、それを担っているのが神経栄養因子で、いくつもの物質が見つかっています。
筋肉の動きによって分泌されたホルモンは神経細胞の核に届いて神経栄養因子を作らせる遺伝子に働き、それで増えた神経栄養因子によって脳は神経細胞やシナプスを増やすのだと考えられます。
マウスの実験でも運動によって海馬の神経細胞が増える事が確認されています。
ひどい「うつ」は脳の海馬の部分の萎縮を伴っている事が分かっていますが、うつの治療に運動が効果的であるのも、筋肉の動きが海馬の神経細胞を増やすからだといえるでしょう。
筋肉は脳からの指令を受けるだけでなく、脳を作っているといってもよいでしょう。
筋肉疲労を説明する時に、疲れの物質として代表的なものとして乳酸をとりあげています。
この乳酸は筋肉のエネルギー代謝の過程でブドウ糖を分解する時にピルビン酸になるのですが、昔は、この乳酸からはエネルギーを作る事ができないので、乳酸は筋肉内から血中にながれ、肝臓でブドウ糖に変換され、再度エネルギーとして使用されるというのが一般的でした。また、乳酸が筋肉内に残ると疲労感が伴うとも説明していました。
しかし、乳酸の肝臓での代謝のされ方は、運動時も運動後にもたいして重要ではない事が明らかにされたのです。
確かに乳酸は肝臓でブドウ糖に代えられますが、それはあくまで安静時の時の事で、運動中の肝臓に流れる血液流量はかなり減少するので、糖を作る能力は低下しているのです。
東京大学の八田秀雄氏は、運動中や運動後の乳酸は主に酸化されているという新たな知見を述べています。
それによると運動量が増えると速筋も動員されるのですが、乳酸が作られるのはこの速筋においてです。
心筋や骨格筋の遅筋線維では、乳酸はピルビン酸に戻され、ミトコンドリアに入り酸化されます。
つまり、乳酸は作られたら溜まるだけの単なる老廃物ではなく、遅筋で使用されているというのです。
確かに、糖を乳酸にするだけではエネルギー的に非効率であり、これを肝臓で糖に戻すには余計なエネルギーを消費する事になり、合理的で無駄のないシステムである人体の機能を考えるとおかしなことなのです。
そして乳酸をピルビン酸にする乳酸脱水酵素は心筋や遅筋に多く存在して、ミトコンドリアに接して存在するという報告も出ているのです。
特に心筋では血中乳酸濃度が高くなると必要なエネルギーの多くを乳酸の酸化で得ています。このように乳酸の働きに関して新しいデータが出てきています。
乳酸は単なる疲労物質という説明は変わってきました。
ウォーキングは最も安全な運動として高齢者にも薦められますが、本当はウォーキングだけでは不足です。
日常的にウォーキングをしている高齢者を調べた結果、みんな息切れなく歩く事はできても、下肢の筋肉、特に大腿四頭筋の大きさにはバラツキがあって、かえって平均よりも劣っている人もあったといいます。
大腿四銀筋は加齢によって最も影響を受ける部分で、80歳では30歳時の40%にまで低下します。
しかもこの大腿四頭筋は膝の屈伸や立ったり座ったりするのに重要で、高齢者の多くにみられる膝のトラブルはこの大腿四銀筋力の低下が大きな原因になっています。
ウォーキングは心肺機能や持久力を高め、高血圧などの循環器疾患や肥満、糖尿病などを改善する事は確かなのですが、筋肉への負荷としては不十分なのです。
筋肉を強くするためには最大筋力の50%以上の負荷をかける事が必要です。しかしウォーキングでは最大筋力の20~30%しか使われません。
この位では筋肉は強化されず、筋肉は衰えてしまうのです。QOLを保つ為にも高齢者こそ筋トレが必要といえるのです。
高齢者は様々な疾患を抱えているので、どの筋トレが良いかは一概にいえませんが、高齢者向けのマシン等も開発されてきているので、これからはきめ細かい高齢者の筋トレが浸透していくはずです。
高齢社会のキーワードに“サルコペニア”があります。サルコペニアとは筋力減少症という意味で、加齢に伴って骨格筋の量が減少したり、筋力が低下する現象の事です。
廃用性の筋萎縮は老齢に限りませんが、サルコペニアは老化に伴う筋肉減少を指します。
高齢になると筋線維数の減少と筋線維の細りが同時に起こり、筋肉の減少率は平均で1年間l%に達するとみられています。
また人の基礎代謝は加齢によって減っていきますが、これは基礎代謝の中で40%を占める筋肉が減少するためです。
また筋肉が少なくなると酸素を取り入れる量も少なくなり、疲れやすくなります。
しかも筋肉が少ない為に蛋白質の合成そのものが低下して行くという悪循環に陥っていきます。
特に筋力の低下は下腿三頭筋、大腿四頭筋、腸腰筋等に著しく、転びやすくなったり早く歩けなくなります。高齢者の歩く速さは健康度にも関係し、歩く速さが遅い人は速い人に比べて10年後の死亡率が6倍にもなるといいます。
つまり筋肉量は生命を左右するともいえるわけで、高齢者は運動不足に気をつけるだけでなく、積極的に筋肉量を増やすよう努力する事が大切なのです。
高齢者でもトレーニングによって筋肉量は増えるという事も分かってきて、安全に気を付けながらレジスタンス運動で筋力を付ける事が勧められます。
筋収縮に関わる運動神経の細胞体は脊髄にあり、脊髄腹側から出た軸索が目的の筋肉まで達しています。
神経の軸索は途中で幾度か分岐しながら、数十から数千の筋線維には神経一筋接合部という終板で筋肉と接合しています。
1つの神経細胞とそれが支配する筋線維の集団を、運動単位(モーターユニット)といいます。神経も筋肉も「全か無か」「Oか1か」のデジタル型の法則に従うので、運動単位も全体として「全か無か」の作用しかできず、個々の筋線維レベルでは微妙な調節ができません。
これに対して心筋や平滑筋では自律神経の働きによって、個々の筋細胞が無段階に変化するというアナログ的な制御を受けています。
しかし骨格筋は、実際には重いものを持ち上げられる一方で、軽くて壊れやすいものをつまむといった、微妙でなめらかな動きも行うことができます。
1つの筋は数百から数干の様々な大きさの運動単位からなり、運動単位の種類も速筋線維から成るものや遅筋線維から成るもの等の種類があります。
運動単位の活動電位の発し方も低頻度(周波数が少)から高頻度(周波数が多)まで様々な組み合わせがあって、ひとつの運動を行った結果をフィードバックして中枢で巧みにコントロールしています。
運動単位のレベルでいえば、骨格筋は全身が一律な神経支配を受けているのではなく、運動単位の大きさや数が、筋力調節の「大まかさ」「細やかさ」を決定します。
運動単位は長期に渡る学習の結果、一般に上肢の筋で小さく、下肢の筋で大きくなります。
例えば掌にある虫様筋では1個の運動神経は約90本程度の筋線維支配で繊細な動きを行いますが、下腿三頭筋では2000本を支配して大出力を発揮するのです。