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免疫の記事一覧
食べ物が免疫力に影響するのは言うまでもありませんが、その影響の仕方も色々です。
例えば病原となる異物を食べてくれるマクロファージや好中球等の白血球を増やしてくれる物に野菜があります。
緑黄色野菜は抗酸化作用を持つ事で発癌のリスクを減らすと考えられますが、白血球を増やすと言う力では淡色野菜が有力です。
野菜には多かれ少なかれ白血球を増加させる力がありますが、特に活性が強いものに、にんにく、シソ、タマネギ、ショウガ、キャペツ、ナガネギ、ホウレンソウ、ニンジン、パセリ、ナス等、果物ではバナナ、スイカ、ブドウ等があります。
これらを見るとビタミン含有量とも直接は関係無い様です。最近注目されている眠りのホルモンと言われているメラトニンには免疫賦活の力があり、バナナ、トマト、キュウリ等の野菜や果物にはこのメラトニンが入っています。
このメラトニンは必須アミノ酸のトリプトファンが原料ですので、豆腐等の大豆食品、鶏肉などを食べる事によって二次的にメラトニンを増やす事が出来るでしょう。タバコ、酒、カフェインはそのメラトニンを減らします。
激しい運動後に風邪をひいたり、子供が運動会や遠足の後に熱を出したりという話を聞きます。
これは運動が免疫に影響を与え、中でもNK細胞が反応しているからです.NK細胞は、ウイルス感染や癌に対する初期防衛の役割をし、運動強度に応じて活性が変化します。
適度な運動を継続している人の安静時のNK細胞活性は、標準の人より高い事が示され免疫力は高いのです。
問題なのは、無酸素運動による激しい運動や、2時間以上の運動後には顕著な低下が見られ、この時には免疫力が抑制され、感染の危険性が高くなります。
普通、活性低下は運動後6時間から24時間で元に戻りますが、時には1週間以上も戻ら無い事もあります。
ですから運動を急激に行うよりは、ウォーキングやジョギング等の有酸素運動を習慣化する事によって大きな免疫能力を獲得する事が大切なのです。
運動の目安はアメリカのスポーツ医学カレッヂによると最大心拍数の60~80%が理想で、自分の心拍数を計算する方法は220から自分の年齢を引いて、その数の60~80%の心拍数で約20分間の運動が効果的です。40歳の人であれば108から144の心拍数になります。
リンパ節は脾臓、胸腺、骨髄と全身に分布していて、血管やリンパ管によってネットワークを形成しています。
免疫細胞の一つであるリンパ球は、この連絡網を通路にして常に全身を動き回り免疫応答に備えています。
中でも脾臓は腹腔の左上部にある扁平状の重さ200gの実質臓器で、赤血球の貯蔵庫の赤髄とリンパ球の集まる白髄があります。
この脾臓はリンパ網内系と呼ばれ、単球から大食細胞を中心に、貪食作用により異物や破壊された細胞を処理する仕事や大食細胞が細菌等との接触で得た抗原情報をリンパ球に伝える機能を持っています。
脾臓はリンパ節と並んで交感神経と副交感神経の両方の自律神経の支配を受けています。
実験で交感神経を遮断すると、抗体の産生が盛んになり、電気刺激で興奮させるとNK細胞の活性が低下する事が確かめられています。
ストレスにより起こったNK細胞の活性が低下も脾臓に連絡する交感神経を切断すると起こら無くなります。
一方脾臓を支配する副交感神経が興奮すると神経終末からアセチルコリンが放出され、リンパ球のアセチルコリンレセプターを刺激して、抗体の変生やキラーT細胞の機能が高まる事も知られています。
ですから副交感神経が優位になる夜中に癌は作られると言われますが、その時間に交感神経を興奮させる様な生活をすれば癌は増殖しやすくなるのです。
病は気からと言われる様に強いストレスを受けると、そのストレスが視床下部から副腎皮質を剌激してコルチゾールが分泌されます。
このホルモンの作用の一つはNK細胞の活性を低下させて免疫系を抑制する事です。そのストレスが長期間続くと感染症や癌等の病気の原因になるのです。
この強いストレスを少しでも解消する事が免疫力を高める事になります。
その方法の一つに笑いの効用があります。漫才やコメデイ映画を観てお腹を抱える位に大笑いした後は、気分は非常にスッキリします。
この笑いが癌やウィルスを殺すNK細胞の活性を高める事が色々な研究で分かってきました。
笑いは楽しいという心の動きを生じさせ、身体的にリラックスさせます。
また、笑うという身体の動作は、最初筋肉を緊張させ、血圧が上がります。
例えば20秒笑うとこの身体の変化が3~5分間続くのです。
その後笑いが終わると、筋肉が弛緩して、血圧も下がり、呼吸もゆっくりになります。
つまり交感神経の緊張が徐々に鎮まり、副交感神経が働いている状態になります。
この変化は適度に運動した場合と同じでこれがストレスの減少に繋がるのです。
ジョギングした後に脳内にエンドルフィンが出来た状態に近いと言えます。
エンドルフィンはNK細胞やT細胞の機能を高め、免疫系を賦活させる方向に働きます。
つまり笑う事でエンドルフィンを出して、免疫を高める事が出来るのです。
免疫には自然免疫と獲得免疫があります。リンパ球が主体になる獲得免疫系の免疫力は、20歳前後でピークに達して加齢と共に低下します。
免疫の主役でもあるT細胞は骨髄で作られた後、胸腺で体に入って来た異物を、自己、非自己と認識出来る能力を教えられます。
胸腺は10歳前後から縮小し始めて、60代では最大重量だった時の約40%、90代では10%以下になります。胸腺の縮小と共にT細胞に依存している免疫機能は落ちてきます。
機能の低下は縮小率ほど激しくは無いのですが、自己、非自己の識別能力が弱くなります。
T細胞からの情報でB細胞は抗体を作り体外から侵入して来た敵を即座に攻撃します。
人間は年を取るに連れて、様々な細菌と出合うので、B細胞の作る抗体は多くなっていますが、老化の為にT細胞の識別能力が低下し、その為に免疫システム全体が低下するのです。
その結果、抗体が自己を攻撃して、自己免疫疾患が発症しやすくなったり、癌細胞への攻撃力が低下して癌発生率が高くなると考えられています。
また老化で自然免疫のマクロファージやNK細胞の働きが低下すると、若い人には無害な、常在細菌が悪さをして病気になってしまう事もあります。
老人の死因で多いのが肺炎ですが、風邪等で弱った体に、普段は何とも無い細菌が感染して肺炎になってしまう日和見感染と言うケースが多くなるので、注意が必要になって来ます。
病は気からという言葉がある様に、気分や気持ちの状態と病気に因果関係がある事は誰もが気付いていました。
ヨーロッパの症例でバラ風邪(花粉アレルギー)の患者さんに造花のバラを見せたところ激しい咳と鼻汁が出て鼻腔は狭窄し、軽い呼吸困難の状態に陥りました。
あるいは逆に、偽薬により病状や症状を改善するプラセーボ効果の実験症例も数多く報告されています。
いずれの場合も物質的な反応に(例えばアレルギーなら抗原抗体反応)何らかの精神的な修飾が介在していると予測できます。
つまり、情動や精神の動きが身体的な反応を呼び起こしたのではないかと言う事です。
バラ風邪の様なアレルギー反応を起こす粘膜組織中のマスト細胞には、交感神経系のノルアドレナリンと副交感神経系のアセチルコリンのレセプターがあります。
医師からバラを見せられて、患者さんは情動的なショックにより自律神経に興奮が起こり、マスト細胞の顆粒に蓄えられたヒスタミンやプロテアーゼ等の炎症性化学物質の放出に影響を与えたとも推論する事が出来ます。
更に、もう一つ考えられるのは「暗示」効果です。暗示による精神の変化は、知覚、観念や意図、信念、行為ばかりでなく身体反応にも及ぶ事が実験で確かめられています。
何度もバラ風邪を引いた患者さんは、バラの花を見る事が暗示刺激になりマスト細胞から炎症性化学物質が放出されたとも考えられるのです。
精神と免疫の関係はまだまだ未知な所も沢山ありますが、我々の施術においても、重要なポイントである事は間違いありません。
一度罹れば二度同じ病気には罹らない、これが「免疫」の典型的な現象です。
さて二度罹ら無いと言う事は免疫系が特定の病原菌やウイルスを覚えていると言う事です。
ある病原体が体内に侵入すると、マクロファージやNK細胞等が活躍し、B細胞は抗体を作り始めます。
2度目に同じ病原体が侵入してきた時には、B細胞が素早く抗体を大量生産しキラーT細胞も作られて、発病する前に退治してしまいます。
一度作られた抗体は体内にいつまでも残っている訳では無く、他の蛋白質と同様にやがて分解され代謝されて行きます。
つまりB細胞やT細胞の部がメモリー細胞として数ケ月以上の寿命を持ち、特定の病原体を記憶する様になるのです。
しかし例えば麻疹の免疫記憶は数年、普通の風邪ならせいぜい一年程度しか記憶は維持されません。
麻疹のメモリー細胞が数年しか寿命が無いのに、なぜ二度と麻疹に罹ら無いかと言えば、それは免疫記憶が更新されるからです。
社会生活の中で近所の子供等から麻疹ウイルスの抗原刺激を受けると、その度に抗体やキラーT細胞が作り出され、メモリー細胞は新たに産生されます。
あたかも運転免許証の書き替えの様に、有効期限内に更新するのです。
ところが近年、子供の時に麻疹を経験していても、自分の子供が麻疹に罹った時に一緒に罹る親が出て来ました。
少子化や核家族化によって、免疫記憶の更新を受ける機会が減った事が原因だと考えられています。
体を守る免疫系の中でも消化管の免疫系は複雑で、大切な役割を持っています。食べ物は口から入って消化されて吸収されますが、食べ物と一緒に色々な病原菌や微生物が入って来ます。
特に栄養が吸収される小腸では免疫器官が密集していて、人体最大の免疫器官と言える程です。
小腸の粘膜の下にはパイエル板というリンパ節が密集し、病原菌等が入って来るとパイエル板は免疫グロブリンAを作って排除します。
腸での抗原抗体反応はこのグロブリンAが中心です。
そのパイエル板の下には更に腸管膜リンパ節が発達してリンパ球やマクロファージがスタンバイしています。
B細胞の70~80%は小腸付近にしていると言われています。
さて腸管は病原菌を侵入させない様にしなければならないのですが、そもそも食べ物自体が体にとっては異物なのですから、腸は良い物と悪い物を巧妙に分別しなければなりません。
その為には経口免疫寛容という、良い異物(栄養となる物)に対しての免疫抑制や免疫不応答の働きによって絶妙なバランスも取っているのです。
このバランスが崩れて免疫グロブリンEの産生を押さえる事が出来ないと食物アレルギーになると考えられます。
これら小腸の免疫は腸管内の酸性度や腸内フローラの状態、嬬動運動によっても維持されているのは言うまでもありません。
ビフィズス菌や乳酸菌等一部の腸内細菌は免疫賦活作用を持つと考えられています。腸を良好に保つ事、それが免疫強化に繋がるのです。
昨今の結核の集団感染は、若い世代と高齢者の2大群に分かれます。
若い世代は乳幼児期にBCG(弱毒化結核菌)の予防接種を受けますが、この効果はおよそ10~15年しか続かず、高校生になる頃には結核に対してほとんど無防備になっています。
若い世代全体が結核菌に対する抵抗力を持た無い為、いったん結核菌に出会えば非常にもろいのです。
結核菌が侵入するとまずマクロファージが立ち向かい、結核菌を盛んに貪食します。
ヘルパーT細胞はマクロファージの殺傷力を高める生理活性物質ガンマー型インターフェロンを出し、強化型マクロファージを作り出します。
ここで多くは免疫系が勝つのですが、結核菌は死滅はせず通常型マクロファージの中に潜んで冬眠状態に入ります。
ほとんど活動しなくなるので免疫系の攻撃を受けず、また抗結核薬の多くは活動期の菌に働くものなので殺す事が出来ないのです。
保菌者の免疫力が低下すると、結核菌が冬眠から目覚め再活動します。
特に高齢者は生活習慣病等を抱えていたり、老化による免疫力の低下によって発病してしまうのです。
高齢者世代が若かった時代には結核が蔓延していたので、70歳代で約半数、80歳代だと7~8割が感染していると考えられます。
ただ中高年になってからのBCG接種には効果が無いという説もあり、なおさら免役力を高める事が結核予防には大切です。
多くの病気は細胞、組織、器官が酸化する事によって、故障したり、衰退する事が知られています。
その原因は体の中に活性酸素が生じて、細胞や組織を酸化する事で傷つけてしまうからです。
しかも酸化が細胞表面だけで無く細胞内のDNAまで傷つけたり破壊すると細胞が癌化する事も起こります。
もちろん免疫系にも影響を与えます。酸化によって紺胞の表面にあるレセプターが破壊されると、細胞の内と外とのやり取りが妨害されます。
それは免疫細胞でも例外では無く、この場合は抗原を認識する力が弱まる事になります。
また、酸化される事でT細胞やB細胞の増殖、NK細胞の活動、抗体の産生か弱まる事も明らかにされています。
一方では白血球は細菌を殺す為に活性酸素を自ら作り出して利用していて、活性酸素は体にとって有益に働く場合もあります。
しかし多くの場合、エネルギー代謝の過程や、食べ物中の過酸化脂質、放射線、日光から生成されたり、薬剤や発癌物質等から出来て、マイナスに働くのです。
また精神ストレスが強い生活では活性酸素が強く生成される事も証明されています。そこで重要な働きをするのが抗酸化物質です。
抗酸化物質としてはビタミンやミネラルがありますが、フラボノイドやポリフェノール等の成分も抗酸化作用が強いという事が分かってきています。
中でもビタミンCはこの抗酸化物質の代表ですが、リンパ球の働きを高めたり、NK細胞の活動や免疫調節をするインターロイキンの産生を促します。
抗酸化物質は免疫システムにとって欠かせない頼もしい味方なのです。