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免疫 - Part 2の記事一覧
免疫には細胞性免疫と波性免疫があります。細脆性免疫はおもにT細胞がヽ液性免疫は抗体(免疫グロブリン)による免疫でB細胞が担当します。
TもBも骨髄のリンパ系幹細胞で生まれますが、Tは胸腺で、Bは肝臓や脾臓で処理されてそれぞれの働きをする様になります。
まず、異物が体内に入ると顆粒球や単球(マクロファージになって働く)は、異物を食べる、過酸化物質で殺菌する、加水分解酵素で分解する等して直接戦います。
しかしこれらの細胞は数時間単位で役目を終えます。
いわば病原菌との戦いの最前線の兵士と言えるでしょう。
この時マクロファージは抗原となる物質を認識してヘルパーT細胞に伝えます。
するとヘルパーT細胞は活性化して増え、インターロイキンを放出します。
そのインターロイキンは今度は液性免疫の主人公であるB細胞を活性化させて免疫グロブリンを作らせる様になるのです。
リンパ球は100日から300日の寿命で、長期戦を闘う部隊と言えるでしょう。
この様な働きをする事から、リンパ球の数や免疫グロブリンを調べる事によってそれぞれ細胞性、液性の免疫能を知る事ができる訳です。
そして細胞性の最初の戦いで利用される活性酸素を速やかに処理する事、免疫グロブリンを枯渇させない為には蛋白質をしっかり確保する事が免疫力をアップさせる事に繋がります。
精神神経免疫学は免疫系と心理的社会的要因の関係を明らかにするものです。
つまり心と体の繋がりを研究する学問だと言えます。この繋がりを示す例としてがん細胞もやっつける細胞性免疫のNK細胞が様々な心のストレスによってどの様な影響があるか調査した報告があります。
それによると免疫細胞数はストレスによって減少する事が分かっています。
配偶者の死や離婚や仕事上のトラブルや対人関係の悩みなど日常的によくあるストレスでもNK細胞は減少します。
感情を抑制したり、したい事がやれない等の抑制的対処行動でも減少します。
また、気分的に落ちこんだり、将来に対する希望が持て無かったり、全てがおっくうになる様な精神症状の時もNK細胞は減少していますし、失感情症でも同様です。
このようにNK細胞は大変ストレスに対する感受性が高い事が明らかになっています。
この具体的なメカニズムが脳の機能との繋がりによって明らかになってきました。
脳の視床下部の前部は副交感神経系を刺激する部位で、休息、生殖等快の感情が伴います。
一方、正中部は交感神経系と関係していて、感情的には不快な怒りや恐怖等を感じています。
脳の破壊実験で視床下部前部が破壊されると肺臓細胞数、胸腺細胞数の減少、同時にT細胞の増殖反応の抑制や、NK細胞の不活性が認められています。
つまり、視床下部の快の感情が伴う部位が破壊されると免疫細胞だけで無く免疫系に深く関与する臓器まで影響がある訳です。
現在ではこれらのリンバ系臓器が交感神経系の支配を受けている事も分かり、視床下部や大脳辺縁系との繋がりが明らかになっているのです。
免疫と言えば胸腺や骨髄等、もっぱら全身を巡る免疫システムの解明が進んでいます。
注射によるワクチン等も全身系に免疫応答を与える物です。
しかし、その様な全身的な免疫システムとは違った免疫システムを持つのが粘膜免疫です。
外界に面している皮膚に対して、「内なる外」である粘膜は皮膚の200倍以上の面積を持ち、様々な異物が体内に侵入する第一関門と言えます。
食べる事で入ってくる抗原に対してはパイエル板や盲腸等の腸管免疫システムが、呼吸によって侵入してくる抗原に対してはアデノイドや扁桃、気管支等の粘膜組織が働いています。
また泌尿生殖器や外分泌腺も含まれ、粘膜は一番大きな免疫臓器だと言えます。
粘膜では粘液や酵素等によって抗原が侵入し難くなっているだけで無く、分泌型lgAが中心になった体液性の免疫と、上皮細胞間のリンパ球や固有のT細胞等が連携を取りながら免疫システムを作っています。
粘膜免疫が面白いのは、例えばワクチンの注射によって全身性の免疫システムに抗原抗体反応が出来ても、粘膜系には免疫を作る事が出来ないのに、粘膜系に免疫応答が作れれば、全身系にもその免疫応答を誘導する事が出来る事です。
つまり口や鼻の粘膜を通してワクチンを投与すれば、粘膜にも全身にも免疫が出来るのです。
これまでは体内に入ってしまった病原体に対して免疫を成立させる事が中心でしたが、粘膜免疫の研究がもっと進めば、最初のバリアである粘膜の部分で抗原抗体反応を成立させたり、または免疫寛容を作る事で免疫疾患を抑える事が出来るでしょう。
アレルギーの原因となるアレルゲンは私たちの身のまわりに数多くありますが、その中でラテックスゴムによる喘息や皮膚炎などのアレルギーが問題になってきています。
ラテックスの原料である天然ゴムは、ゴム樹液を採取するのにゴムの木の幹に切り傷をつけて行われます。
これはゴムの本にとってはかなりのストレスになり、ゴム樹液は防御蛋白質といえます。
これがアレルゲンとして体に侵入しアレルギー反応を引き起こしているのです。
アメリカでの1994年の調査よると2000万人の患者がいるという報告があります。
原因として自動車タイヤの磨耗により、空気中に放出される直径10マイクロメートル以下のラテックス粒子を吸引し、それがアレルゲンになっていると考えられています。
また、医療関係者の現場で問題になっているのが、ラテックスゴムの手袋によるアレルギーです。
AIDSや肝炎などの感染症からの感染防止用として、装着が徹底されてから増加してきています。
ラテックスゴムの分子は皮膚から入ることは出来ないと言われてきましたが、表皮に傷がある状態では皮膚中に入り込むことが動物実験で明らかにされました。
主婦が洗剤などで洗うと皮膚の皮脂や角質層にある脂分を流してしまい、皮膚がカサカサになってアカギレのようになって、皮膚の防御機能が低下するとアレルゲンが中に入りこみ、アレルギーを引き起こすことがあるのです。
症状は皮膚がかゆくなり湿疹ができます。アレルギーでこわいのはアナフィラキシーショックによる呼吸不全などです。
手袋装着している医療関係者や、患者の傷口からアレルゲンが侵入してアレルギー反応がおきたら重大な問題が発生します。
そこで現在は素材の違う手袋が開発されてきています。
この患者はアボガド、リンゴ、バナナ、桃、キウイなどの果実に対してアレルギー反応を起こすことが多いことから、植物由来の共通アレルゲンが存在するのではと考えられています。
サリドマイドといえば1950年代に歴史上最大の薬害をもたらした「悪魔の薬」です。
安全な睡眠薬として処方箋も要らずに広く使われ、妊娠中の服用によって胎児の四肢(特に上肢)に奇形を起こし、いわゆるサリドマイド児を5000人以上、日本でも309人の被害者を出しています。
そのサリドマイドが最近になって見直され、「福音の薬」として脚光を浴びています。
最初はイスラエルの医師がハンセン病の難治性の皮膚炎に劇的な効果があると報告したもので、その後全身性エリテマトーデス、ベーチェット病、エイズ等、難治性の粘膜皮膚疾患にも特効薬と言えるほどの有効性が確立されてきたのです。
更にサリドマイドには免疫抑制剤としての効果も発見されました。
体内にはサイトカインの一種であるTNF-αという物質があって、腫瘍組織を壊死させたり、抗細菌、傷の治癒に働きます。
しかし時としてTNF-αが増殖すると自己免疫疾患を起こしたり腫瘍の血管新生作用を引き起こします。
サリドマイドにはこのTNF-α(腫瘍壊死因子)の合成を選択的に抑制する働きがあるというのです。
つまりサリドマイドは免疫抑制作用として自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬症等)の改善に効果がある事が分かったのです。
免疫抑制の効果ではステロイドより効果があるとの報告もあります。
また血管新生を抑える為腫瘍の血管新生を止めたり、糖尿病性の網膜症や老人性黄斑変性症(いずれも血管新生が異常になる障害)にも有効だといいます。
日本でも既に個人輸入という形で医師の裁激で使用されているようで、日本でもサリドマイドの新しい使い方が検討されています。
妊娠24週未満に胎児が死んだり母体外に出てしまって妊娠が途絶することを流産と言いますが、自然流産が3回以上連続する場合を習慣性流産といいます。
その習慣性流産の原因は胎児では無く母体にある事が多く、検査によって免疫の異常、子宮奇形、子宮頚管無力症、膠原病、ホルモン異常等が分かる事があります。
しかし60%は原因不明といわれています。
母体にとって、赤ちゃんの半分は自分の細胞ですが、残り半分は「異物」である夫の細胞です。
通常、妊娠中は胎児を「異物」として拒絶しないように免疫機能が働きますが、これを生殖免疫といいます。
この免疫バランスが崩れると、母体が胎児を拒絶してしまうのです。
現在考えられている説では夫婦の免疫型HLAの違いが大きいほど流産し難いといわれています。
これは胎児が着床した事がきっかけで母親の体の中に胎児を排除しようとする免疫反応を抑える遮断抗体ができるのです。
異物度が高いほどこの抗体が多くでるのです。HLA型の共通項が多く異物度が少ないほど遮断抗体が少ないので流産するというのです。
療法としては異物度が高める為の免疫療法が行われ、夫の血液中のリンパ球を母体に接種する事で、胎児を排除しようとする免疫反応を抑制するのです。
また最近では自己抗体である抗リン脂質抗体があると流産率が高い事が分かってきました。
細胞や血小板等の膜成分はリン脂質が主成分で、その膜を通して色々な物質が交通するのですが、この抗体が陽性であると、胎盤内の微小血管に血栓が生じて血管が詰まってしまい、胎盤の機能が低下して、流産、子宮内胎児死亡が発生すると考えられています。
従来、流産や死産を繰り返すと精神的な過度のストレスから異物を排除する働きのあるNK細胞が活性化され、免疫異常が起こるともいわれています。
習慣性流産は、多くの場合お母さんが仕事を続けていたからとか、重い物を持ったからといった不節制な生活が原因ではないのです。
西原克成氏は口腔外科の専門医ですが、あまりのユニークさとその壮大なスケールゆえに、アウトサイダー的な位置にいます。
その西原氏が2002年、NHK出版から「内臓が生みだす心」を出版し、この中で、免疫疾患について従来の免疫学には無い、発生学的な視点から次の様な大胆な仮説を提唱しました。
人間の呼吸には口呼吸(腸管呼吸)と細胞呼吸とがあり、この両者の関係の中に免疫疾患の原因があるとしたのです。
著書の臨床報告でも、多くの免疫疾患に対して鼻呼吸、咀嚼訓練と口腔の清浄、横隔膜呼吸(腹式呼吸)と腸管を温める事を勧め、それによってアトピー性皮膚炎や難病の自己免疫疾患等も改善したと報告しています。
西原理論ではあらゆる病気の根源に細胞呼吸の要であるミトコンドリアの代謝の障害があると考え、従来の免疫学では細分化されている免疫疾患も根本のところでは同根であるとしています。
その考えを概略すれば、鼻呼吸では無く口呼吸をすると常在菌の特に好気性菌等が不顕性の感染で身体中に巡ってしまいます。
口腔が不潔であればより不顕性感染が加速します。元々ミトコンドリアは発生学的には身体の細胞に住みついた奸気性の原核生物です。
ですから、ミトコンドリアの酸素を好気性菌によって横取りされてしまうと細胞内のエネルギー代謝がだめになり、細胞は不活性に陥ってしまうというのです。
また、冷たい物の摂取は腸管の細胞の冷えをもたらし、ミトコンドリアが不活性になり腸管免疫に障害が出るとしています。
もちろん、口呼吸や冷え以外にも薬物や汚染物質や食品など他にもミトコンドリアを障害する原因はあると指摘しています。
いずれにしても、ミトコンドリアの呼吸機能が障害される為身体のあらゆる細胞レベルの成長、発生、新陳代謝(リモデリング)が障害され、結果として免疫機構が壊れてしまうというのです。
あまりに大胆な仮説で賛否の分かれるところですが、東洋医学の考えに通じる理論でもあるので紹介しました。
ガンを放って置けば死にますが、ではガンによって何故死ぬのかは本当はよく分かっていません。
ガンが大きくなると体の栄養を独占する様になぅて死ぬという様にも考えられていますが、そう単純でもない様です。
動物実験ですが、Tリンバ球を持たないマウスにヒトの悪性ガンを移植すると、ガンはどんどん大きくなりマウス本体ほどの大きさになってもマウス自体は生きていたというのです。
つまり、ガンその物では生命を落とす事は無いわけで、死なせる原因はガンによって起こる悪液質なのです。
性質の違うガンでも最終的には悪液質の症状(全身の衰弱、るい痩、浮腫、貧血等)をもたらします。
この悪液質の原因はカケクチンと呼ばれていましたが、その本体はTNF-α(腫瘍壊死因子)だったのです。
TNF-αは本来ガンに働いてガンをアポトーシスに導く働きをする物ですが、ガンの進行に伴ってTNF-αが全身に作用し、その為にガンで無い部分の全身にアポトーシスの作用が及んで悪液質の症状をもたらしていると考えられるのです。
TNF-αは脂質、糖、蛋白質の代謝に対して異化作用を進め、また腫瘍の血管の新生も促進します。
上記のマウスにはこのTNF-αが欠けていた為に悪液質になる事なくガンと共存していたのです。
転移とTNF-αのコントロールをすればガンとの共存も可能となる可能性が高くなります。
ちなみにサリドマイドはこのTNF-αを抑える作用でも再評価されてきています。
炎症性腸疾患である潰瘍性腸疾患とクローン病は原因不明の特定疾患に指定されています。
毎年約4000人の患者が新たに登録され、総数は約10万人と、若者を中心に年々増加しています。
食事の欧米化に伴い、動物性蛋白と脂肪の摂取量の増加が一因と考えられていますが、原因は不明です。細菌やウイルス、食物中の食品添加物、化学物質、飽和脂肪酸や糖分の摂り過ぎによる代謝異常等から、腸内細菌の異常や腸管の血流不全、遺伝的素因、免疫異常等が関与していると見られています。
消化管は消化、吸収をしますが、微生物等の抗原は、消化管の粘膜免疫によって、侵入できない様になっています。
それが炎症性腸疾患では、免疫防御機構に異常がみられ消化管の炎症がひき起こされると考えられています。
潰瘍性腸疾甦では直腸を中心として潰瘍が始まり、大腸全体に慢性的に炎症が広がります。がん化する事もあります。
症状としては血便、粘液便、下痢や腹痛等です。
処置は副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤が使われますが、炎症の部分に集まった顆粒球を血液から除去するという装置が開発され、健康保険の適用を受け普及し始めました。
全国の重症潰瘍性大腸炎の患者約1000人に顆粒球除去療法が行われ、70~80%の患者で症状の改善が見られています。
クローン病は口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に潰瘍が見られ、特に小腸や大腸が好発部位です。
主な症状として腹痛、下痢、発熱、下血、痔等があります。下痢は1日6回以上あり、一ケ月で10kgの体重減少する事もあります。
処置は潰瘍性大腸炎と似ていますが、クローン病では食事制限が必要で成分栄養分(脂肪が無くて吸収されやすい物)を用いた栄養療法を行う事になります。
最近では胃潰瘍等消化管の内壁に生じる炎症が、骨髄移植する事で骨髄に含まれる幹細胞が消化器で分化、再生して内壁が修復される事を米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に東京医科歯科大と慶応大の研究チームが発表しました。
これは炎症性腸疾患等消化器の難病に役立つのではと考えられています。
事故による怪我や病気で脳神経組織が著しく障害を受けている患者の身体を、33度前後に冷やす事で脳の温度を下げると、神経細胞が死んでしまうのを防ぐことができます。
この脳低温療法は脳の損傷を最小限に抑えて、予後も非常に良かった事から、今では全国の多くの病院で採用されています。
ところがこの療法を始めた頃(゛91年以降)は、患者の体温の低下に伴って免疫力が落ちて重症の肺炎等の感染症を起こし、32~64%もの患者が感染症になりました。
しかし’96年から脳低温療法の際に成長ホルモンを補充を始めたところ、感染率が9%に激減したのです。
成長ホルモンの主な働きは発育を促す事ですが、このホルモンはT細胞やNK細胞、マクロファージ等を活性化させ、胸腺にも働きかけます。
脳低温療法で免疫力が落ちる原因のひとつに、脳の温度が下がって脳下垂体の働きが弱まり、成長ホルモンの分泌量が減る事にあったのです。
この様に体温と免疫力は密接な関係にあり、風邪の時に熱が出るのは視床下部の体温調節中枢が体温を上げる指令を出しているからで、ウイルス等の病原体に出会ったリンパ球が生理活性物質を使って、体温周節中枢の神経細胞に作用するのです。
そして体温が42度を越えそうになると、今度は免疫細胞は発熱を抑える物質を出します。
感染症にかかった時に発熱だけでなく、食欲不振や眠気といった症状が現われるのは、生体の活動量を減らし病原体との戦いに専念しようと、免疫系が脳に働きかけているからだとみる専門家がいます。