- Blog記事一覧

Blog記事一覧

金属アレルギー

2019.09.27 | Category: 免疫

免疫反応は寄生虫や細菌、ウイルスといった種の大きく異なる抗原に対してより強く起こります。全て蛋白や糖質等のかなり大きな分子に対して反応するのです。しかし人間のアレルギー反応の中には、アクセサリー、義歯などに使用される金属冠に対して起きる金属アレルギーが有る事もよく知られています。しかし金属の分子は蛋白や糖質の分子量何千何万に比べるとケタ違いに小さくて、免疫系の受容体は金属分子を抗原として認識出来ません。外から最初に入ってきた細菌やウイルス等の抗原はまずマクロファージの中で消化されてペプチド化し、次にマクロファージ自身の主要組織に適合する分子(MHC分子)にくっついた物だけがT細胞の受容体と反応します。抗原だけでもMHC分子だけでも反応は起きません。ところがここに金属分子が入ってくるとマクロファージ自身のMHC分子の中に組み込まれてしまい、元々は全く抗原性の無かったMHC分子の立体構造を変えてしまう事が分りました。金属によって形を変えられた自分自身が非自己と認識され抗原となるのです。厳密には金属は抗原ではありませんが、マクロファージの蛋白分子に抗原性を持たせる事の出来る物質なのです。

将来は免疫抑制剤は不要?

2019.09.24 | Category: 免疫

臓器移植で問題になるのが移植臓器を異物とみなして攻撃する拒絶反応です。その為に免疫抑制剤で拒絶反応を抑えるのですが、その薬剤は免疫力を低下させ感染症などの副作用を起こさせ易くなります。そこでこの薬剤を使わないで抑制する事が出来ないかという研究が進められています。関西医科大学の池原進、上山泰男両教授の研究グループは、豚の皮膚移植の実験で提供豚の骨髄細胞を、移植を受ける豚の肝臓に繋がる門脈に注入すると、肝臓で増殖、分化して提供者由来の血液細胞が大量にでき、移植した皮膚を拒絶反応しない事を報告しました。この事は患者の血液中に臓器提供者のリンパ球が共存していると移植臓器を異物として認識せずに拒絶反応が起きない可能性があり、免疫抑制剤が不要になるかも知れないと言う事です。ただリンパ球がどうして共存すかるか、そのメカニスムは分かっていません。この実験では肝臓に行く静脈に骨髄細胞を注入すると拒絶反応が起き、門脈からは反応が無く成功しました。門脈には腸で吸収された栄養分が大量に含まれた血液が流れています。腸管では栄養は吸収され、異物は排除されるという相反する働きがあります。これはTGFβというサイトカインの二面性が働いているからです。腸管粘膜から侵入する異物を押さえ込むのは分泌型IgAでB細胞から作られますが、これを命令しているのがTGFβです。またTGFβは栄養物に関しては免疫が働かないようにします。肝臓はこの関所を通過したものは受け入れてしまうのかもしれません。海外では骨髄との同時移植、北海道大学順天堂大学では患者とドナーとのリンパ球と抗体を混合培養して拒絶反応を無くす手法、京大でも同様な研究をしています。

免疫を高める健康食品ー免疫ミルク

2019.09.23 | Category: 免疫

健康食品の中に免疫ミルクと言う物いうものがあります。母乳、中でも初乳と言われる出産後すぐの母乳は特に免疫力が強いと言う事をヒントに考え出されました。無害化した病原性細菌を牛に投与して牛にその抗体を持たせ、抗体を含んだ乳を分泌させたものです。抗体を口から摂取しても効果は薄いという見方もありますが、牛乳のlgGは蛋白分解酵素によって分解されにくい事や胃酸に対して強い緩衝作用がある為、小腸にたどりつき抗体としての力を発揮する事が出来るとされています。1958年にアメリカで開発されて以来の調査・研究でリウマチ性関節炎やアレルギー、動脈硬化、高コレステロール、高血圧更には虫歯、ニキビ、口臭などの緩和に有効だと認められています。これらの効果の多様性はブドウ球菌や化膿連鎖球菌、緑膿悍菌、ニキピ菌、挫創菌、肺炎双球菌、ミュータンス菌など人に感染しやすい26種の抗体を持たされた事によるものです。牛乳にアレルギーのある人や生まれつき乳糖不耐症の人、医者から牛乳を制限されている人以外は普通の牛乳として飲む事が出来ます。日本でも1995年から市販される様になりましたが、高価なのが難点です。

ゲノムという考え方

2019.09.21 | Category: 遺伝子

ゲノムを物質として言い表せば4つの塩基で構成されたDNAと言えます。しかし”ゲノム”と言った時には単なる物質としてでは無い、生命のシステムとして見るという事が必要になります。生物は全てDNAを命の設計図として持っていて、それは大腸菌でも象でも同じです。しかしよく見るとそのDNAが作っているそれぞれの遺伝子は、象の遺伝子、大腸菌の遺伝子と言うよりも、ひとつの酵素の遺伝子、ひとつの蛋白質の遺伝子等が長い年月をかけて組み合わされた物だと言えます。ですから「大腸菌での真実は象でも真実だ」と言われるのはその通りですが、かと言ってそれぞれの遺伝子が大腸菌でも象でも同じような働き方をしている訳では無いからこそ色々な種が生まれてきたのです。また個々のゲノムは象を作ったり大腸菌を作る共通のゲノムではありますが、同時にA象とB象の違いも持つ、個別的なゲノムでもあります。つまりゲノムは種として見る事も出来れば、個としても見る事の出来る、生命のシステムだと考えれば良いでしょう。2003年4月14日に解読終了宣言をしましたが蠅と人とはほとんど同じであり、全ての生物のゲノムが明らかになれば、これらのゲノムと人ゲノムとを比較する事で、生物の進化や共通性、多様性が明らかになるだけでなく、生命とは何かという大問題も随分みえてくる事でしょう。

クローン羊の「ドリー」

2019.09.21 | Category: 遺伝子

クローンヒツジドリー誕生の時のお話です。それまでのクロ-ン技術は受精卵が分裂して四個の細胞(胚)になった時に別々の代理母の子宮に注入する胚移植でした。1996年にイギリスのイアン・ウイルムットの研究チームがベンチャー企業と共同で、多くの難関をクリアして6歳のメスヒツジの乳腺細胞からのクローンヒツジを誕生させたのでした。難関の第一は核の入れ替えの時期の設定でした。従来は双方の細胞が分裂しかかる活動的なG₁期に設定していました。しかしこれでは上手くいかなかったので、細胞を飢餓状態において活動を極端に抑え、不活性な状惣であるG₀期に設定して成功したのです。理由ははっきりしませんが、DNAの鍵がはずれ易くなったものと考えられます。未受精卵の卵子の外側にある透明体にある極体(遺伝子の集まり)と染色体を取り除きます。次に透明体に開いた穴から乳腺細胞を一個入れます。この段階では何も起こりません。これに電気刺激を加えると、乳腺細胞と卵子がくっついた所に穴が開き、細胞の融合が起こります。そこで乳腺細胞の核が卵子から抜きとられた核の後釜になると、結果的に核の移動が起こった為に、発生が始まるのです。この方法で作ったクローンの受精卵277個で発生したのが29個、代理母に移植出来たのが13個、その内生まれたのが一頭のドリーでした。

遺伝子の細胞での仕事

2019.09.21 | Category: 遺伝子

人には全部で23対(46本)の染色体がありますが、その長い物から順に番号が付いています。最も長いものが第一染色体で、23対の染色体全てに約10万個の遺伝子が乗っています。 1989年に始まり数十年かかると言われていた人ゲノム計画は、遺伝子操作の技術の急速な進歩によって2003年4月にはマッピングが終了しました。この遺伝子のマッピングとは何番目の染色体のどの位置に遺伝子があるかを決める事です。明らかになった人遺伝子が細胞でどんな役割を果たしているかの統計があります。第一位は遺伝子と蛋白質に関わるもので、例えば蛋白質のアミノ酸配列を命令する遺伝子やどの遺伝子を転写するかを決める遺伝子等が22%ありました。第二位は代謝に関する遺伝子が17%第Ξ位は細胞間にシグナルを送るホルモンをコードする遺伝子と、免疫と恒常性を維持する蛋白質の遺伝子が共に12%。そして細胞の材料や細胞を勤かす為の遺伝子が8%。細胞分裂やDNAの合成に係わる遺伝子が4%です。またどの分野にも入らない遺伝子が25%あります。10万個の遺伝子の中には、その遺伝子によって病気になったり、あるいは病気に罹り易くなる様な遺伝子が沢山含まれています。

遺伝子療法って何?

2019.09.21 | Category: 遺伝子

感染症と違って、原因が遺伝子の異常にある疾病の場合には薬や免疫力に期待できないので、遺伝子療法が求められます。これまで行われて来た遺伝子療法の多くは正常な遺伝子を入れるもので、肝癌や皮膚癌等に応用され、最初にADA欠損症で成功しています。一般的な方法としては患者さんの体から取り出した細胞に、遺伝子組み替えで必要な遺伝子を持たせたウイルスを感染させて患者さんの体に戻すと言うものです。この遺伝子療法は根本的な医療行為として期待されていますが、実際はまだまだ多くの課題をかかえています。例えば目的の遺伝子を運ばせるウイルスが目的通りの運搬をするとは限ら無いという正常な遺伝子を持った運搬ウイルスを作れたとしても、体に戻された時にその遺伝子が核の中のDNAの正しい部分に挿入されると限りません。挿入されたウイルスが細胞の酵素によって攻撃されて壊れる事もあり、その為ため正しい遺伝子が有効に働かない事が多いのです。しかも従来の方法も併用しているので、はっきりと遺伝子による治癒なのかは断定できないのが現状です。一方で遺伝子が働か無いのでは無く、悪い遺伝子が働いて疾病をもたらす場合には、良い遺伝子を入れるだけでは有害遺伝子の発現を消す事は出来ません。体細胞では悪い遺伝子だけを取り除く事はできないのです。IPS細胞を使っての再生医療はこれから進んで行くと思われますが癌ではウイルスを使って体内に組み込みインターフェロンを放出させ癌を縮小させる等の効果が出ていますがIPSの癌化問題がまだ解決できた訳では無く、その先の本来理想とする体の異常細胞を形成しているDNAが全て正常細胞に置換して健康体になる目標はまだ先にあり、これからの研究が期待されます。

遺伝子組み換え植物と環境

2019.09.20 | Category: 遺伝子

遺伝子組み換え農作物の安全性に対する不安の声は強いのですが、食糧では無い樹木や草花に対する遺伝子組み換えは、「環境に優しい」と言うキーワードの下、積極的に開発が進められています。日本の)地球環境産業技術研究機構(RITE)は光合成に関する「ルビスコ」酵素り遺伝子を組み込んだ植物を開発、この植物は普通の2倍の二酸化炭奪を取り込み光合成を効率良く行います。東京農工大の研究室では、紙の原料となるセルロースの比率めた新種のポプラを作り出しまた。同じ重さの木材から、より多くの紙が作れ、森林資源の保護に繋がります。「プラシカ・ジェンセア」という植物は、硫黄・鉛・ニッケルなどの重金属を根から吸収します。植物の力を利用し、化学物質や重金属を土壌や水から排除するのが「植物修復」(ファイトレメディエーション)という低コストの技術で、非常に期待されています。悪環境に強い植物の開発には、国内研究機関が活躍しています。農水省の国際農林水産業研究センターや理化学研究所が共同で開発した「スーパー植物」(アブラナ科のシロイヌナズナ)は乾燥や凍結、塩害などの劣悪環境に耐える事が出来るのです。また、海水でも育つイネを作ろうとする研究機関もあります。荒野や砂漠を緑地化しようというのですが、これらの遺伝子組み換え植物は、はたして進行する環境破壊を防げるのでしょうか。

自分に合った薬が分かる

2019.09.20 | Category: 遺伝子

DNAを解析する事で病気の有無や重症度を診断する事を遺伝子診断と言います。その診断の一般的な方法は、DNAを制限酵素というDNAの特定の配列を認識する酵素で目的の部位を切断し、その後電気泳動で解析すると、DNAはその大きさに従ってバーコードの様に配列し、そのパターンから病気の診断、食中毒の原因菌、個人を認識するのです。この診断を更に迅速にする方法として遺伝子の塩基配列を読み取る、DNAチップがあります。これによりSNP(スニップ)を見つけ出す事が出来ます。30億の塩基の並びが理想とする物から1塩基だけ違っている為癌化したり、お薬の副作用が出たりする場合があります。このSNPは意外に多く約1000塩基に1とされています。これらの理由からDNAチップは有効で例えば、癌患者の癌細胞から採取したDNAに色素標識をしておき、そのDNAを様々な癌遺伝子を張りつけたDNAチップの上に流します。すると患者のDNAはチップに相補的ながん遺伝子がある場合にだけ互いに結び付き発色します。発色している癌遺伝子がどの様な物か事前に分かっているので、患者の癌の原因となっている遺伝子も瞬時に分かるのです。この時に必要な遺伝子は「卵細胞一つ」の微量で解析出来るのです。DNAチップに採血した血液を数滴流すだけで、どの遺伝子に問題があり、又どんな病気か、その為にはどの薬が良くて、副作用もどの位出ると要った事も解ると期待されています。海外では更に進み原因不明の難病の患者さんに対してその人の30億全てのゲノム解析をしてその中から病気の原因となるDNA配列を見つけそれを医療行為に役立ててますが膨大な時間と労力がかかり現状では普及していません。

変異原対p53

2019.09.20 | Category: 遺伝子

常遺伝子にダメージが加わると細胞の寿命や増殖をコントロールする蛋白質が異常になり、その為細胞が癌化してしまう事があります。遺伝子が変異を起して細胞が異常になる原因は沢山ありますが、それらを総称して変異原と言います。変異原は明らかにされた物を数え挙げたらキリが無い程ありますが、大きく分ければ化学的、物理的、生物学的の三つの因子に分けられます。化学的な物としてはアスベスト、アフラトキシン、ベンッピレン等があります。物理的な物はX線、紫外線、放射線等です。生物的なものは肝炎ウイルスやヒトパピロマウイルスやピロリ菌等かあります。どの変異原も細胞に取り込まれると、核の中にまで侵入して、そこのDNAにぷつかりダメージを与えます。しかし、このダメ-ジに対して直ぐには変異は起こりません。そこにDNA修復酵素を出す遺伝子があるからです。この遺伝子が癌抑制遺伝子として知られているのがp53遺伝子です。遺伝子は第17番染色体の短腕にあり、そこから作り出される修復酵素はDNAに異常が無いか常にパトロールして、異常を発見するとその複製をストップさせます。そして自ら大量に酵素を作りDNAを修復します。修復が効かない程のダメージがある時は自殺(アポトーシス)を指令する正にDNAの守護神なのです。

当院のスケジュール