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将来は免疫抑制剤は不要?

2019.09.24 | Category: 免疫

臓器移植で問題になるのが移植臓器を異物とみなして攻撃する拒絶反応です。その為に免疫抑制剤で拒絶反応を抑えるのですが、その薬剤は免疫力を低下させ感染症などの副作用を起こさせ易くなります。そこでこの薬剤を使わないで抑制する事が出来ないかという研究が進められています。関西医科大学の池原進、上山泰男両教授の研究グループは、豚の皮膚移植の実験で提供豚の骨髄細胞を、移植を受ける豚の肝臓に繋がる門脈に注入すると、肝臓で増殖、分化して提供者由来の血液細胞が大量にでき、移植した皮膚を拒絶反応しない事を報告しました。この事は患者の血液中に臓器提供者のリンパ球が共存していると移植臓器を異物として認識せずに拒絶反応が起きない可能性があり、免疫抑制剤が不要になるかも知れないと言う事です。ただリンパ球がどうして共存すかるか、そのメカニスムは分かっていません。この実験では肝臓に行く静脈に骨髄細胞を注入すると拒絶反応が起き、門脈からは反応が無く成功しました。門脈には腸で吸収された栄養分が大量に含まれた血液が流れています。腸管では栄養は吸収され、異物は排除されるという相反する働きがあります。これはTGFβというサイトカインの二面性が働いているからです。腸管粘膜から侵入する異物を押さえ込むのは分泌型IgAでB細胞から作られますが、これを命令しているのがTGFβです。またTGFβは栄養物に関しては免疫が働かないようにします。肝臓はこの関所を通過したものは受け入れてしまうのかもしれません。海外では骨髄との同時移植、北海道大学順天堂大学では患者とドナーとのリンパ球と抗体を混合培養して拒絶反応を無くす手法、京大でも同様な研究をしています。


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