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2002年4月日本リウマチ学会総会において従来の診断名「慢性関節リウマチ」は『関節リウマチ』へと病名が変更されました。
というのも、関節リュウマチの病態解明が進むに連れて早期発見、早期改善である事が解ってきたからです。
ですから進行してから受診するというイメージの『慢性関節リュウマチ』はふさわしくないとされたのです。
また、関節リウマチがすべて慢性という経過をたどるわけではない点も挙げられます。
この関節リウマチは膠原病と並んで自己免疫疾患の代表的な物で、病状の記述は古く黄帝内経常問にも「痺症」という病名で載っています。
正常な人の身体は、自己の成分に対して免疫応答を起こさない様になっていますが、それが過剰応答してしまうのが自己免疫疾患です。
身体を構成する特定の部分を攻撃してしまいますが、関節リウマチの場合は関節の滑膜を攻撃するのです。
その為に滑膜が炎症して腫脹や増殖が起こります。
そして次第に軟骨や骨にびらんができて行き、更には関節の破壊や変形へと進んで行きます。
初発症状では、朝の手足のこわばり感やぎこちなさが特徴です。
この関節リウマチは手指や足指の小さい関節にも好発しますが、肩・肘・手首・股関節・膝・足首等の大きな関節もやられます。
最初はバラバラに症状が出ますが、段々対称性に症状が固定し、関節の腫脹は紡錘型になります。
手指の場合、第二関節や指の付根の関節が腫れる事が多く、スワンネック変形、ボタン穴変形、尺側偏位がみられます。
特に初期症状のときには、非対称性におこる事もあり、関節リウマチの好発年齢の30才から40才台の肩の痛みは四十肩と重なり、間違いやすいので注意が必要です。
また関節リウマチの発症率は1000人に3~4人で、女性が男性の3~4倍多い事も特徴です。原因の全体像はまだ分かっていませんが、遺伝的素因やTリンパ球、生理活性物質のサイトカイン等と考えられており、初期受診が大切な自己免疫疾患なのです。
「アレルギー」の語は「変化した反応能力」を意味し。自己防衛能力がオーバーな反応を起こして自分に不利益な症状を起こす事をいいます。
アレルギーは抗原と接触してから症状が現われるまでの発症の機構によってI~Ⅳの4つの型に分けられます。
I型アレルギーは一般にいわれるアレルギーの事で、免疫グロブリンのlgE抗体が大量に作られて起こり、数分から数十分で症状が現われる「即時型」アレルギーです。
急激なショック症状を起こすアナフィラキシーもこの型で、花粉によるアレルギー性鼻炎や結膜炎、急性じん麻疹、卵や牛乳等の食物アレルギー、ダニやホコリによる気管支喘息(即時型)、薬物アレルギーもこのI型に分類されます。
Ⅱ型は「細胞障害型」ともいい、自己細胞に反応するlgG抗体やlgM抗体が移入・生成した時に起こり、代表的な物に血液型不適合の輸血反応やRh血液型不適合で新生児に起こる胎児赤芽球症、自己免疫性溶血性貧血等があります。
Ⅲ型は「免疫複合体型」アレルギーで、抗原と抗体が結合した免疫複合体が血管・リンパの循環系に塊となって残り、それを取り除こうとする好中球や補体による急性炎症反応によって起こります。
動物血清による血清病や溶血性連鎖球T菌感染による糸球体腎炎、様々な膠原病や肝炎・マラリア・梅毒・らい・結核等の感染症があり、過敏な人にとっては全身性の重篤な症状になることがあります。
Ⅳ型は「遅延型」アレルギーともいわれ、前3つの抗体反応型と異なってTリンパ球細胞が関与するので反応時間が1~2日かかります。
この型には多くの細菌・ウイルス・カビに対する反応(例えばツベルクリン反応)や金属・化粧品等に対する接触性皮膚炎、気管支喘息(遅発型)、移植片に対する拒否反応や自己反応性T細胞による自己免疫疾患があります。
興奮性の神経伝達物質のうち、ノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミンは、アミノ基を1個だけ持っている「モノアミン」という構造をしています。
これらを酸化分解する「モノアミン酸化酵素(MAO)」が盛んに働くと、体内のモノアミン濃度が異常に低くなり、神経伝達物質が不足してうつ病発生率が増加することが確認されています。
さてモノアミン酸化酵素はヒトの腸壁や肝臓にあって、チーズやワイン等に含まれるチラミンや、マグロやブリ等の魚類に多く含まれヒスタミンに変化するヒスチジンなどの成分を代謝しています。
ところが抗うつ薬のMAO阻害剤を服用している場合、チラミンとヒスタミンが分解されなくなって体内に蓄積され、交感神経に過剰に働きかけて、顔面紅潮・腹痛・頭痛・血圧の変動等を引き起こします。
チラミン中毒とヒスタミン中毒は症状が似ていますが決定的に違うのは血圧の点で、チラミン中毒は血圧が上昇するのに対し、ヒスタミン中毒では低下します。
特にチラミン中毒では血圧が激しく上がる事があり、脳出血やクモ膜下出血を引き起こしたりします。MAO阻害剤を使用中の人はチラミンを含むチーズ・ワイン・ビール・そら豆・にしん・レバー等を摂らない事となったのです。
現在の日本では副作用の強いMAO阻害剤はあまり使われませんが、中毒を起こさない選択性の高い新しいMAO阻害剤を開発中です。
また他の薬でも、三環系抗うつ薬や抗不安薬をアルコールと一緒に摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上がる事が分かっています。
中枢が強く抑制される為に運動障害・呼吸抑制にまで至ると危険です。
うつ病になりやすい性格とは、几帳面、仕事熱心、堅実、律儀、責任感が強い、秩序志向等だといわれます。
これは執着気質といわれる性格ですが、ドイツのテレンバッハという精神病理学者はこうした性格に加えて、対人関係においても秩序志向や几帳面さが強く、他人に対して誠実で気を使い、衝突を避けるといった性格をメランコリー親和型としました。
うつ病になりやすい型の一つとして取り上げたものです。
しかし、このメランコリー親和型のタイプというのは多くの日本人にとっては望ましい、模範的とされている性格です。つまり日本の文化、社会構造、メンタリティーそのものがメランコリー親和型うつ病の病前性格を理想としているとも言えるわけです。
しかも管理が強化された社会ではメランコリー親和型の人にとっては過剰適応から適応破綻につながりやすいのです。
このメランコリー親和型うつ病では重症化すると自殺念慮も強くなりがちですが、抗うつ薬に反応ししや改善しやすいしやすいうつ病といえるようです。
一方、時代の流れで社会的規範が多様化する中、最近ではメランコリー親和型とは違う傾向のうつ病が注目されてきています。
過保護で葛藤のない養育過程や母子分離がなされないままに成長する等の自立不足による未熟的な逃避型抑うつの増加です。
自分に対する関心が大きく、病気に対する過度な気遣いをしたり、対人関係において過敏に反応しがちで、仕事にムラがあったりする事が特徴とみられています。
現実逃避的になり急に自殺を図ったりして周囲の人を困惑させたりします。
性格や環境の影響が大きく、依存や甘えが強い傾向があります。
長引く事が多くて抗うつ薬に反応しにくく、うつ病というより神経症に近いとみられています。
いずれにしても感情に関する障害は文化や社会状況と関係が深く、日本の文化的な特性という面から考える事も必要といえるでしょう。
女性のうつ病患者数は男性の2倍となっています。
思春期に入るまでのうつ病の発症率は男女同等で、11~13歳の間に少女のうつ病率がぐっと上昇し、15歳になると大うつ病の発症率が男性の倍に達します。
生殖可能な年齢でのうつ病の発生が男性よりも多い事からも、情緒や精神的問題と女性ホルモン産生が深く関連している事が分かります。
また結婚や出産がきっかけでうつ病になる事がよくあります。
出産後2、3日で新しく母親となった女性の半数が、理由も無く泣いたり赤ん坊に否定的な考えを持つ「ベビーブルー」という症状がありますが、この様な感情は正常であって1週間位で治まります。
しかし「産後うつ病」は出産後4週間位までに現れるもので、大うつ病と症状が重なるものが多くやや重症です。
女性ホルモンのバランスが劇的に変化する事によって、気分を調節している脳の活動に影響し、ストレスに対する抵抗力が弱くなるのです。
更に出産はホルモンの変動という生物学的な事だけで無く、身体的・精神的にもストレスが増える時期であり、これらが重なってうつ病が起きやすいと考えられます。
また更年期もうつ病が発症しやすい時期です。
この時期も女性ホルモン分泌の変化によって身体的・精神的な不調が現れやすくなります。
また家庭内でも、子供の進学や就職・夫婦関係の問題・親の病気や介護・老後への不安等、様々なストレスが更年期の女性にのしかかる事が多く、うつ病が発症しやすいのです。
中年頃までのうつ病が内因性のうつ病である事が多いのに対して、老人のうつ病では身体性や心因による傾向が強まります。
風邪等、壮年であれば何でも無い軽い疾患が引き金になったり、脳卒中やパーキンソン病など脳の変性による事も多くなります。
また老年期そのものが、配偶者や友人など人間関係を始め、仕事や社会的役割、経済力、更には自分の健康など、様々なものを喪失していく時期でもあって、そうした新しい状況が一層うつ病へと追いやります。
老人のうつ病の症状では不安や焦燥感、神経症的傾向が強く、自殺率も高いのでより注意が必要です。
症状としては身体化された症状がよく見られ、中でも便秘の訴えは非常に多く、身体症状への強いこだわりも起こります。
身体症状の中身はめまいや頭痛等多彩ですが、共通的なのは睡眠と食欲に障害が起こっている事です。
また妄想も起こりやすく、貧困妄想や罪業妄想、被害妄想等で自分はいない方が良いとか、迷惑をかけている等と信じ込む事もあります。
また身体活動も思考も低下して、-見痴呆の様なうつ病性の偽痴呆が起こる事もあります。
痴呆の症状が急激に起こった時はまずうつ病が考えられますがうつ病による偽痴呆では抗うつ剤によって可逆的に回復する事ができます。
ただ、高齢では薬の副作用も出やすく、他の疾患の薬との相乗作用も起こりやすいので細心の注意が必要となります。
脳血管障害後に発症するうつ状態を脳卒中後うつ病(P S D : post-stroke depression)と呼んでおり、脳卒中後1年以内の20~50%に発症すると言われています。
PSDはリハビリや社会復帰の妨げになりますし、患者さんのQOLの為にも早期の診断と適切な処置が必要です。
ところが、日本では脳血管障害のうつ状態は、身体機能の障害による心理的なショックで起こる抑うつ状態であると考えられていました。
しかし、既に1981年にはアメリカの研究者が脳内の神経細胞の直接的損傷によるうつ状態であると報告しています。
特に、脳損傷が左半球の前頭に近い程うつ状態の頻度も重傷度も高い報告も出ています。
ただ、脳の損傷の部位や程度により、まだら痴呆、知的機能の障害、無感情状態、失語等の症状がある為に脳卒中後のうつ病の鑑別は難しいのです。
そこで日本ではPSDのうつ状態に、意欲改善、情緒障害改善や痴呆症薬でもある脳循環代謝改善薬が使用されてきたのです。
この脳循環代謝改善薬は田辺製薬が最初に子供の精神発達遅滞に伴う意欲低下等の薬として開発し1978年に厚生省の承認を受けて製品名「ホパテ」として売り出しました。
その後1983年、脳血管障害の後遺症の改善薬としての効能が追加された事をきっかけに、痴呆症やうつ状態の患者さんへの使用量が激増していきました。
ところが、98年にホパテの副作用で11人の患者が死亡したのをきっかけに、再試験の結果、改善薬としての効能を取り消したのでした。
後発の同種の5種類のうち4種類の薬は「効果が認められない」、残りの1種類も「データに疑義あり」として、最終的には情緒障害の効能が取り消されたのです。
つまり、ホパテに類する全ての薬はうつ病には効果が無かったわけです。
これらの4種類の薬だけでも1990年代の後半から販売され、これまでの売上総額は約8000憶円にも上ります。
日本では1998年まで、脳血管障害によるうつ病は放置されたに等しかったのです。
一般にうつ病の身体症状の訴えとして、最も多いのが睡眠障害ですが、倦怠感・易疲労感、首・肩のコリ、頭痛・頭重態の順で訴えがあります。
また臓器別系では、当然ながら自律神経失調が伴いますから、消化器系が最も多く、次ぎに循環器系、呼吸器系と続きます。
この消化器系の症状として、ほとんどのうつ病患者が訴えるのが食欲不振です。
また、体重減少、便通異常(主に便秘)、ガス症状、吐気、咽喉・食道の違和感、腹痛、胃部不快感等があります。
これらの症状を引き起こす背景に倦怠態・易疲労感等の精神運動停止である決断力低下やとりかかり困難等があるのです。
この様な状態の中で特に中高年の家庭の主婦の場合、食欲不振や消化器症状が常にある為に料理を作る事は拷問に等しい苦痛となります。
ですから起きて朝食を作る事が困難になりますが、身体が動けるのに朝飯すらできないという風に、周囲は怠け病と思いがちです。
この様なケースではなにより家族の理解が大切になるのです。
これらの消化器症状は心身症でも同じ様にでますが、うつ病の場合は感情障害が必ずある事と、全身性である点が限局性の心身症とは違います。
また、心身症でよく知られている胃・十二指腸潰瘍はうつ病でも合併する事が知られています。
うつ状態になる前の前駆症状として出たり、うつが軽決すると潰瘍が悪くなるという事も興ります。
また、様々な不定愁訴を起こす自律神経失調症の中にうつ病が紛れ込んでいる可能性がありますが、自律神経失調症即ちうつ病という関係ではありません。
お酒を飲むのも、気分転換で飲んだり、楽しいお酒を適量であれば良いのですが、二日酔いになるほど深酒をしたり、仕事の接待等ストレスが高い中で大量のアルコールを飲むと気分が憂うつになり、気分障害を起こす事があります。
その時の脳を調べると心の安定や気分を良くするのに重要な役割をする神経伝達物質のセロトニンが少なくなっている事が分かっています。
過度のアルコールはこのセロトニン代謝を抑制すると考えられているのです。
アルコールを飲む事でうつ気分や悲哀感へと、気分障害が激しくなりやすい人は、飲む量を控える事が大切です。
更にアルコールを多く飲むと、寝つきは良くても、深い眠りが得られ無かったり、朝早く目覚める等睡眠のリズムが乱れてきます。
仕事の疲れを取る為や、睡眠薬変わりにアルコールに依存する様になると抑うつ感や不安といった気分障害であるうつ病の危険が増すのです。
米国の精神科医シュキット博士が577人のアルコール依存症患者と面接調査をしたところ、重度のうつ病は30%、軽度を含めると70%にうつ病が認められ、そのほとんどは、アルコールが脳に作用してうつ病が引き起こされたというのです。
抗うつ薬による薬物療法はあまり効果がなく、アルコールを断つ事で、速やかにうつ病が改善したというのです。
またうつ病の合併症としてアルコール依存症には注意が必要です。
憂うつ気分から逃れる為にアルコールで紛らわせようとして量が多くなって行くのですが、感情の起伏が激しくなり夫婦不和や児童虐待、暴力行為など破滅的な生活になり、うつ病からの改善を遅らせる原因にもなります。
軽いうつ病の場合でも、適度な運動が抑うつ的な症状を軽減するのに役立つ事が知られています。
ストレスや嫌な事が起きると、情動の中心である扁桃や帯状回の神経回路が興奮して元気や精神安定に役立つセロトニンの分泌が抑えられ不安や抑うつ感が増幅されます。
この状態が継続的に続くとうつ状態に入っていく事になるのですが、その状態を防ぐのに運動が有効なのです。
運動する事は悩みと関係がない脳の神経回路を使う事になり、悩みで興奮している神経回路が抑制されると考えられているのです。
運動で気分を向上すると扁桃や帯状回の興奮が抑制されセロトニンの分泌が促がされ、活力も高まり、睡眠や食欲の状態も改善する事ができるのです。
米国のデューク大学の心理学者が軽度から中等度のうつ病を有する高齢者156名を、無作為に45分間の運動を週3回、抗うつ薬+運動、抗うつ薬のみの3つの方法を行うグループにわけて、4ヶ月後に調べたところ、運動だけのグループでも、他のグループと同じ位の効果がある事が分かりました。
更に6ヶ月の追跡調査をしたところ定期的に運動した人は他のグループに比べ再発率が低かったといいます。
運動としてはウォーキングなど有酸素運動を行いますが、うつ病の危険年齢である中高年の人は1週間に3回、30分位のウォーキングをする事が、不安障害や軽症うつ病の予防効果になる様です。
その運動も太陽の日差しを浴びながら行うと、更に効果が高まります。
セロトニンは肉、魚、大豆と言った食品に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから作られています。
このセロトニンは光が視床下部に刺激が加わる事で増加するのです。更に夜になると酵素が働いて睡眠に重要なメラトニンになります。
太陽の下で運動する事が、脳を活性化させて元気が出るのです。