- Blog記事一覧 -抗うつ薬とチラミン
興奮性の神経伝達物質のうち、ノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミンは、アミノ基を1個だけ持っている「モノアミン」という構造をしています。
これらを酸化分解する「モノアミン酸化酵素(MAO)」が盛んに働くと、体内のモノアミン濃度が異常に低くなり、神経伝達物質が不足してうつ病発生率が増加することが確認されています。
さてモノアミン酸化酵素はヒトの腸壁や肝臓にあって、チーズやワイン等に含まれるチラミンや、マグロやブリ等の魚類に多く含まれヒスタミンに変化するヒスチジンなどの成分を代謝しています。
ところが抗うつ薬のMAO阻害剤を服用している場合、チラミンとヒスタミンが分解されなくなって体内に蓄積され、交感神経に過剰に働きかけて、顔面紅潮・腹痛・頭痛・血圧の変動等を引き起こします。
チラミン中毒とヒスタミン中毒は症状が似ていますが決定的に違うのは血圧の点で、チラミン中毒は血圧が上昇するのに対し、ヒスタミン中毒では低下します。
特にチラミン中毒では血圧が激しく上がる事があり、脳出血やクモ膜下出血を引き起こしたりします。MAO阻害剤を使用中の人はチラミンを含むチーズ・ワイン・ビール・そら豆・にしん・レバー等を摂らない事となったのです。
現在の日本では副作用の強いMAO阻害剤はあまり使われませんが、中毒を起こさない選択性の高い新しいMAO阻害剤を開発中です。
また他の薬でも、三環系抗うつ薬や抗不安薬をアルコールと一緒に摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上がる事が分かっています。
中枢が強く抑制される為に運動障害・呼吸抑制にまで至ると危険です。
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