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最大血圧は心臓が収縮した時の最大値で、最小血圧は心臓が拡張した時の最小値の血圧を指します。
この血圧の値に影響を与える因子としては、心拍出量、循環血液量、末梢血管の抵抗、血液の粘性、太い動脈の弾性があります。
ところで、最大血圧の変動は収縮時の太い血管の弾力性と心臓の収縮力の強弱によって決定されます。
太い動脈は心臓が収縮した時弾性がある為拡張して、血液が一挙に細い末梢の血管に流れ込ま無い様にしています。
血管の弾性が弱くなったり、心拍出量が増えれば心臓の収縮時に最大血圧は当然高くなります。
また最小血圧は、この太い動脈にとめられていた血液が心臓が拡張する時に末梢に送られた時の血圧です。
その時、末梢の血管の内腔が狭くなり抵抗が高くなる時は最小血圧は高くなります。
最小血圧が高くなると言う事は、末梢の血管が締まったり、詰まってきたり、更に血液の粘性が高い等の動脈硬化が進行する因子が増大している事と言えます。
ですから、高血圧では最小血圧が高くなる事の方が恐い訳です。
一般に高血圧は最大も最小も共に高くなる事が多いのですが、70才を過ぎた高齢者は太い動脈の弾性が無くなる為、最大血圧が高くなり最小血圧は低くなる収縮期高血圧になる特徴があります。
ただ、アメリカの統計で、最大血圧だけ高い収縮期性高血圧でも心筋梗塞になりやすい事が分かったので、警戒する様になって来ました
血圧にとって食塩は絶対に減らした方が良いという意見と、余り関係が無いので神経質になる必要は無いという意見があります。
それは高血圧の人が食塩を減らした場合、確実に下がる人がいる一方で、下がら無い人がいるからです。そう言う違いが出るのは、人によって食塩の感受性が違っているからですが、その食塩感受性の違いをもたらす原因は腎臓にあるのです。
糸球体の濾過力が落ちたり、尿細管でのナトリウム再吸収が増えた場合、食塩感受性の高血圧になります。
糸球体の濾過力の低下は濾過面積や糸球体の数が減る等の異常であり、ナトリウムの再吸収が増えるのは糖尿病等で糖が尿細管で再吸収される場合に糖と一緒にナトリウムも再吸収されてしまう等です。
つまりは食塩の感受性は腎臓の機能低下によって高まった結果だと言える訳です。
食塩感受性が高い高血圧の場合は日内の血圧リズムのパターンも乱れ、血圧が夜でも低くなら無いという傾向があります。
また食塩感受性が高いと心血管系合併症、脳卒中共に起こす確率が高くなります。
また食塩の過剰は高血圧の合併症だけで無く、胃癌、骨粗粗症、白内障、気管支喘息等のリスクも高くしますからやはり減塩は必要なのです。
食塩感受性の高い人は食塩を抑える事で、血圧の日内リズムも正常に戻りやすくなります。
以前は高齢者の高血圧はあまり下げようとしなくて良いという考え方でしたが、今日では高齢者も下げた方がよいとされています。
つまり高血圧は加齢による自然現象では無く、病的な状態であり、高齢者でも改善した方が脳や心臓血管合併症、特に脳卒中等の予防効果があると言う事が分かったのです。
ただし高齢者の高血圧の場合、特有の特徴があるので、その点を認識して置く必要があります。高齢者の多くは動脈硬化が進んでいるので、末梢血管の抵抗が上昇の傾向にあります。
その為拡張期の血圧は変わらないか、かえって低くなるのに収縮期血圧だけが高くなる収縮期高血圧(140mmHg以上、90mmHg未満)となりやすいのです。
また血圧調節機能そのものが低下しているため血圧が変勤しやすくなっています。
普通夜間には下がる血圧が下がらなかったり、下がり過ぎたりして、脳卒中に結び付く事もあるので要注意です。
起立性の低血圧や食後低血圧も起こしやすくなっています。また白衣性高血圧も多いので一度だけの計測で判断することは避けます。
ただし血圧を下げるとはいっても、高齢者の場合は極ゆっくりと下げなければなりません。
また食事療法や運動療法が大切なのは高齢者も同じですが、余り厳格になり過ぎて楽しみを無くす様では逆効果でしょう。
高齢者の血圧コントロールが薬中心になるのはある程度やむを得ないかもしれません。
厚生労働省の人口動態統計のデータによれば、入浴死の85%は虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血が原因です。入浴行動から血圧の変動を調べると、脱衣後に血圧は急上昇、その後浴槽内で急陣下して、着衣後にやや上昇しその後安定します。
ですから、脱衣後の血圧の急上昇による脳出血と、浴槽に漬かって血管が広がり血圧が下がって起こる虚血性心疾患、脳梗塞が多いのです。
その落差が大きいほど危険な訳で、冬の様な寒い時は脱衣所は暖める工夫をする事も大切です。ここで都市生活研究所の賢い入浴法があるので紹介します。
1.一番風呂は避ける事。さら湯には酸素が大量に含まれているので、肌への刺激が強い事や、二番目以降では既に浴室の温度が高くなっている為体への負担が軽くて済みます。
2.シャワー給湯を利用する事。なるべく高い位置からシャワー給湯すると水蒸気が浴室に広がる事で浴室の温度が上がります。
実験によると15分で10度室温が上がるそうです。3.38~40度のぬるめのお湯に半身浴で入る。首まで長時間使っていると、血液の粘度を上昇させ、血管内に血栓を生じやすくさせます。
また水圧を緩和して心臓への負担を減らす為にもヘソ位までの入浴が良いのです。最後に入浴後は充分な水分を補給する事です。
脱水の為に血液粘度が増しているので、睡眠中の脳梗塞や心筋梗塞を予防する為です。
生物にはサーカディアン・リズムと呼ばれる「体内時計」があり、血圧にも24時間の周期で変動するリズムがあります。
朝の6時前後から上昇し、午前10時前後と夜7時頃の2度に血圧のピークがあり、午後9時を過ぎる頃から下降して、明け方前が最低となるリズムです。
おおむね誰でも昼間は高く、夜は低くなります。健康な人でも1日の内で30mmHg位は変動するので、血圧を測る時間には注意が必要です。
例えば午前I1時に測った時に、140mmHgならやや高いで済みますが、午後11時に測った数値であれば高血圧症であるといえるでしょう。
ただし夜間作業に従事し、午前中は寝ていると言う人はこの血圧リズムも夜型にズレています。
しかし人工的に強制されたリズムは自然な生理的リズムを狂わせているので、一般の人よりも疲れやすいのです。
最近増えている、若者の高血圧は夜ふかしタイプに多いのです。血圧リズムを1週間のサイクルで見ると、高血圧症の人は金曜日がもっとも血圧値が高く、1週間の仕事の疲れとストレスがピークに達するからだろうと思われます。
これを裏付ける様に脳卒中患者の発生も金曜日が最も多いのです。1年の周期で見ると、一般には血圧は冬に高く夏低いと思われていますが、夏や春秋に高い人も少なく有りません。
「血圧は冬高い」と言うより「血圧は寒いと高くなる」と言う事で、気温の急激な変化による温度差には要注意です。
市販の薬で最も高血圧との関連のあるのが胃薬(制散剤入り)です。胃薬は他の薬より長期間に渡り常用するので要注意です。
制酸剤には重曹を含む物が多く、この重曹はグラム当たりのナトリウム含量が多いのです。また漢方でも使う甘草には長期使用すると高血圧を引き起こす事があります。
甘草に含まれているグリチルリチン酸を含んでいて、鉱質コルチコイドに似たホルモン作用があり、これが体にナトリウムを為、逆にカリウムを排出する働きがあるからです。
性ホルモンであるエストロゲン製剤は更年期障害や不妊症等に使われ、経口避妊薬としても使用されていますが、血圧を上昇させる事があり、ピルの常用者の5%に高血圧が認められると言う報告があります。
また、心臓や血管の障害を起す副作用もあり、欧米では問題になっています。
うつ病の薬の中でモノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤では、食べ物との食べ合わせで上昇する事があります(チラミンを含んだチーズ、ビール、ヨーグルト、チョコレート等)。
しかし、意外なのは降圧剤による高血圧です。いいかげんな服用により血圧が上昇する事があります。飲んだり飲まなかったりしていると、知らず知らずにダイエットと同じ様にリバウンド現象を引き起こすのです。
降圧剤の中でも神経系に働きかける薬のいいかげんな飲み方によって血圧の上昇ばかりか、狭心症発作や心筋梗塞等の重篤な疾患も起す事も知られており、高血圧の薬を、かってに按配する事はくれぐれも厳禁です。
血圧は昼間に比べて夜の睡眠中は下がっています。昼間は交感神経の働きで心臓の拍動を高め、末梢血管を収縮させるのに対し、夜間は副交感神経の働きで心拍数は落ち末梢血管も拡張するからです。
高血圧患者にとっては血管への負担が軽くなるのでホッとする時間ですが、快適な睡眠の為に注意する事がいくつかあります。
まず、重い布団をかけていると酸素消費量が多くなるので、心臓に余計な負担をかけます。高い枕をしていると、首から上に必要な血液を送る為に、血圧を上げようとしてしまいます。
高血圧者で無くても、重い布団や高い枕を避ける事は身体の休息には大切な事です。そして副交感神経は心臓や血管の働きを抑えてくれますが、血液の濃度まではコントロールしてくれません。
普通の人でも睡眠中にコップ1杯の汗をかきます、睡眠中の血液濃度は明け方に最高になり、ドロドロしてきます。
特に高血圧者は動脈硬化もあって血管が狭くなっていたり、血管壁がデコボコしていたりで、血流が悪くなっています。加えて疲労が溜まっていたり、夕食にこってりした物を食べたりしているとより一層血涙が悪くなり、最悪の場合、心臓が酸欠状態に陥って明け方に発作を起こすと言う事もあります。
これには、寝る前にコップ1杯の水を飲む事と、夕食は軽めに済ませるという習慣を付ければ、防ぐ事が出来ます。特に汗を沢山かく夏には、この水分補給がとても大切です。
生活習慣病の大きな原因のひとつが運動不足です。
運動をすると体内でタウリン、プロスタグランディンE、ドーパミン等の降圧物質が作られます。タウリンやプロスタグランディンは血管を弛緩させる働きがあり、ドーパミンは利尿作用があってナトリウムの排泄を進めるので血圧が下がると考えられています。
軽症の高血圧であれば食事療法と共に運動を持続すれば薬を用い無くても済む場合もあり、例え降圧剤が必要な場合でも運動する事で薬の量を増やさずに済んだり、目標まで下げられ無かった血圧を理想値に近づける事も可能です。
アメリカの指標ですが体力や身体の機能を向上する為なら中等度~強度の有酸素運動を20~60分週3~5回行う事また、病気になるリスクを減らす為ならば中等度の運動で合計30分以上を(8~10分の断続的な運動でも可)毎日行う事が推奨されています。
ハードな運動はかえってマイナスですが、運動量が多過ぎる為にその効果が無くなると見なされるのは1週間あたり3000kcalのエネルギー消費ですから、合併症等の無い人の場合、相当の活動量までは体力改善に有効だといえます。(速歩1時間で350~4ookcalの消費)
ヨーガや座禅で行う腹式呼吸法が血圧を下げる効果があります。
本感性高血圧の人に不安や緊張があると交感神経が緊張し、血圧が上昇して、呼吸も胸郭を動かす胸式呼吸が多くなってきます。
この時に深くゆっくりした腹式呼吸にすると、必要な酸素をうまく取り込こむことで、その酸素濃度を感知する頚動脈にあるレセプターから延髄にある呼吸中枢、循環中枢に情報を伝えます。
またこのゆっくりした呼吸の刺激が視床下部にも影響して、交感神経と副交感神経とのバランスが良くなり、血圧の低下や血流の改善に効果があると言われています。
腹式呼吸は、二次性の高血圧の人を除き、ストレスで高くなった血圧を正常化するのにも役立つ効果があるのです。腹式呼吸の基本は、腹をゆっくり膨らませながら、十分に息を吸い、ゆっくり腹をへこませながら息を吐き出します。
普段の生活の中で、自然にこの呼吸が出来る様になるには訓練がいりますが、慣れると、いつでも、どこでも、歩きながらでも、電車の中でも出来る様になります。
一日2回、1回5分を続ける事で、体の緊張と弛緩のリズムを作り、血圧をコントロールする事が出来るのです。医療従事者にとっては、ごく当たり前の事ではありますが、患者さんへのアドバイスとしては欠かせないものです。
高血圧の人の食生活にとって大切なミネラルがカリウムです。カリウムは余分なナトリウムを排泄して血圧を下げます。
ナトリウムは細胞外液に、カリウムは細胞内液に多く含まれていて、細胞膜にはカリウムを取り込み、ナトリウムを汲み出すポンプが備わっています。
汲み出された余分なナトリウムは腎臓から排出されますが、カリウムは、その排出を促す働きもあるのです。またカルシウムも血圧を下げると言われていますが、そのメカニズムはまだ解明されていません。
ただ高血圧患者ではカルシウムの代謝異常が起きている事です。血圧の高い人は細胞内液の中のカルシウムが過剰になっています。
また、腎臓では尿から排泄されるカルシウムが多くなる為に、血液中のカルシウムが不足という代謝異常が起きているのです。血管の筋肉もカルシウムが細胞内で濃度が高くなると収縮率が高まるので血圧を上昇させます。
カルシウムの細胞内への侵入を防ぐカルシウム拮抗薬が降圧剤になるのです。天然のカルシウム桔抗薬として注目されているのがマグネシウムです。
マグネシウムにも体内のカルシウムの量を調節して血圧を下げる働きがあります。ただし腎臓疾患のある人は、カリウム、マグネシウム共、副作用が出るので注意が必要です。