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白血球の一つである単球は血管壁にくっ付くと内皮細胞の下に潜り込んでマクロフアージとなって血液中の悪玉コレステロールと言われるLDLを取り込んで行きます。そのマクロファージは脂肪を溜め込んだ泡沫細胞になって血管壁にプラークを作る様になりますが、それが破裂すれば血栓となったり、血小板由来の血液凝固が起こったりして動脈硬化が進んで行くと考えられます。ところがマクロファージが貧食するのは同じLDLといっても、酸化したLDLなのです。LDLは酸化すると毒性を持ち、内皮細胞等を障害します。この毒性を持った酸化LDLを掃除するのがマクロファージと言う訳で、マクロファージはコレステロールを貧食する事が目的では無いのです。音通血液の中にはビタミンCやビタミンEなど多くの抗酸化物質やフリーラジカルを処理するシステムを備えている為、LDLにしても早々酸化される訳ではありません。しかし血液中にLDLが溢れると、血管壁に沈着する様になります。血管壁の付近では血管の真ん中ほど抗酸化物質が無い為に少しずつ酸化が起こり、そこを目指して単球が集まって来るという訳です。つまりLDLの量が多くても酸化される事が無ければ動脈硬化は抑えられるのです。
日本人の名前の付いた細胞は現在の所たつた2つしかありません。その栄誉にあるのが肝臓にある伊東細胞と脳にある間藤細胞です。この間藤細胞が実はスカベンジヤー細胞だったのです。スカベンジャーとは掃除屋という意味ですが、通常は免疫系で立要な役割を担うスカベンジャー受容体はマクロファージヤーにあつて、血管内で酸化LDLや変性LDL(悪玉コレストロール)を取り込み、動脈硬化巣で見られる泡沫細胞に関与して動脈硬化の発症に強く関わってしまいます。脳内に於いては、従来はミクログリア細胞がゴミ処理をしていると考えられていました。間藤教授は脳動脈の周囲に沢山の蛍光を発する細胞を発見して、この細胞が年を取るにつれて大きく膨れ上がり動脈を圧迫している事を突き止めたのです。この事から、この細胞は脳内の血液脳関門としての機能や異物や老廃物の処理をするスカベンジヤー受容体である事が明らかになつたのです。この細胞は溜まった異物や老廃物の為に変性して脳の血管を狭窄する原因になっています。ですから虚血性脳疾患の場合脳内部の動脈硬化による狭窄だけでなく外からの狭窄の危険もあるのです。
ヘルペスウイルスの種類であるサイトメガロウイルスは、感染しても普通は無症状で臓器移植等免疫が極度に落ちた状態にでもならなければ活性化される事は無いとされていました。ところが嚴近になって免疫に異常がない場合でも局所の炎症を起こしていると言う事が報告され、動脈硬化を促進しているのではないかとも考えられています。以前から動脈硬化の程度に符号する様に、動脈硬化の壁からヘルペス属のウィルスが検出されれてはいましたが、動脈硬化の発症に関係しているとは考えられていなかったものです。動脈硬化は、血管の内皮細胞の機能が変化して血液が固まりやすくなる事で発生しますが、サイトメガロウイルスに感染すると、血小板由来の増殖因子が増えたり、ウイルスが産生し蛋白質が癌抑制遺伝子であるP53蛋白に結合して血管の細胞を増値させる事で動脈硬化を起こさせるのではないかと考えられています。そしてこのウイルスの感染 が続く事で、局所的な免疫反応や炎症が起きたり、それを修復する為の過剰反応が続いて行く様です。ヘルペス属のウイルスには数種類がありますが、今のところ動脈硬化を発生させるのではないかと考えられているのはサイトメガロウイルスが確認されています。
最近、小児の高脂血症,動脈硬化性病変が見られる様になりました。日本人は元来、動脈硬化の極めて 少ない人種として注目を集めていたので、米を主食に味噌汁、魚や野菜の煮物、おひたしといった、動物性脂肪が少なく植物性繊維が多い食事は欧米で理想とされました。心筋梗塞による死亡率が日本の5倍以上あった米国は、1960年代より子供を中心に動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らすという食生活の改善運動を行い、1990年までに米国民の血清コレステロール値は低下の一途 をたどり、心筋梗塞の死亡率も下がりつつあります。日本人は食事療法 を特別にしなくても良いので無いかと言う意見がありますが、それは成人の場合です。血清総コレステロール値を年代別に比較すると、おおむね25歳上はなる程米国人に比べるとコレステロール値は低いのですが、子供では日本人の方が米国人よりずっと高いのです。これは特に最近の食生活のアメリカナイズによるものと考えられます。ピザ、ハンバーガー、フライドチキンといった動物性脂肪の多いファーストフードが好まれて、高コレステロール血症が増え始めました。ほほ時を同じくして外で遊ぶ事が少なくなり、全体に運動量が減っています。子供時代の食習慣がそのまま青年期にも続くのは動物性脂肪の多い食事で味覚が慣れてしまうと、それらを止めるのが極めて苦痛になるからです。子供の内に、植物性繊維が多く動物性脂肪に偏らない食習慣を付ける事が大切です。
タバコの煙の主要成分であるニコチンはカテコールアミノの分泌を刺激して、血圧の上昇に関わります。またトリグリセリドの生合成を促してVLDL(超低比重リポ蛋白)の生成を増加して、その代謝産物であるLDLの血中レベルを上げるのです。動脈硬化の原因の1つと言われているLDLは体内で酸化変性して酸化LDLになるとマクロファージに取り込まれ細胞内に入り動脈硬化の原因になります。特に喫煙者のLDLはタール成分の活性酸素により非喫煙者に比べ著明に酸化するのです。また血中には抗動脈硬化作用があるHDLがあります。これは細胞内に蓄積されたコレステロールを引き抜き肝臓へ転送する作用があり、コレステロール逆転送系と言われています。喫煙者ではこの作用もかなり低下している事が解ってきました。米ウェークフォレス大学のジョージ・ハワード博士らが米医師会雑誌に45歳以上65歳未満の男女約11000人を対象に喫煙と動脈硬化の関係を約3年間追跡調査し、画像診断で動脈を調べた拮果、1日1箱以上のたばこを30年以上吸っている人は、喫煙経験が全く無い人と比べて動脈硬化が進む度会いが平均50%高かったと報告しています。ニコチンには血小板凝集能も亢進する作用もあります。喫煙する事で、動脈硬化の原料である酸化LDLを作り、ニコチンで血管を硬めると言う事になるのです。
現代人は便利な生活を手に入れましたが、その弊害も出てきました。中でもヒトがヒトである基本の立つ、歩く事を支える足、腰の衰えは顕著です。足腰は骨格で言えば下段に当ります。下肢は体幹の背骨とジョイントする下肢帯の寛骨(腸骨、坐骨、恥骨)と自由下肢骨の片側で8種3l個の骨で構成されています。また下肢の筋肉は、下肢帯筋 (寛骨筋)・大腿筋・下腿筋・足の筋の4つの群に分ける事が出来ます。人間は足腰から衰えると言いますが、それは重力に抗して体重を支え続ける直立二足歩行の宿命でもあります。昔はその足腰を酷使する事で腰が極端に折れた老人を見かけましたが、現代では以前の様に腰の曲がった方は少なくなって来ました。しかし、変形性膝関節症を筆頭に足腰の痛みに悩んでいる人は返って増加傾向にあります。また、足は第二の心臓と言われる様に血液循環に大変な影響を与えています。運動不足になりがちな現代人は、下肢の筋肉や関節や骨の衰えだけでなく血液循環の停滞に直面しているのです。歩く事が「足り無い」事が回り回って生活習慣病に拍車をかける事にもなるのです。
骨折の治癒担程は、整模して固定した骨折部位の隙間に一次性仮骨という軟骨に近い可塑性の骨が出来て、それが糊の役目をして接着します。その部分がしだいに骨化して完全な骨になり治癒になります。しかし、骨折の医療行為で固定期間を十分過ぎても固定したままで体重をかけてみて痛い時には偽関節の疑いがあります。こんな時に負荷を掛け過ぎると骨折部位がまた折れてしまいます。骨折の程度や部位によって治癒までの期間は同じではありませんが、8ケ月以上経っても治癒し無い物を偽関節とします。この偽関節とは骨端と骨端が癒合出来ずにあたかも関節の様な状態になった物です。その原因として、骨の部位によって血液循環の悪い所(下肢では大腿骨頭頚部、脛骨の下三分の一、距骨など)の場合。癒合の面に筋肉や靭帯が挟まったり、整復が上手く行か無くて間が空き過ぎの場合。牽引のかけ過ぎで骨の周りが伸ばされて筋肉も細くなり、血管を圧迫し血液の循環が悪くなった場合。固定が不十分で癒合面が動いてしまい癒合が上手く行か無い場合。骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症 、ぺーチェット病、等別の病気がある場合。ですから骨折の後療法ではこの事を十分に意識する必要があるのです。
50mほど歩くと臀部から足にかけて焼けるようなジンジンした痛みや知覚異常や脱力惑が起こって歩け無くなり、暫く休めばまた歩ける様になる症状を示す病気があります。原因として神経性の脊椎管狭窄症と血管性の閉塞性動脈硬化症があり、前者はしばしば両方の足に放散痛がありますが、後者は大抵片側に起こります。脊椎管狭窄症になる原因は、脊椎が老化し関節や靭帯が厚くなって脊椎管内に飛び出し、中を走る馬尾神経を圧迫するのです。この圧追は脊柱を後ろに反らした時に更に強くなり、人によっては歩かずとも立っているだけで同様の発作が起こる事もあります。この時しゃがんだり腰を前屈したり脊椎管を拡げる姿勢を取ると楽になります。 自転車なら長時間こげるのに、歩くと痛くなる人は脊柱管狭窄症です。軽症の場合は軽く腹筋を続けるだけで改善する事があります。閉塞性動脈硬化症は、四肢末梢動脈に粥状硬化が起こり、動脈内腔が狭くなっていく全身疾患です。軽症では冷感・しびれ感程度ですが、中等症になると運動時の下肢筋肉痛が出てきて間歇性跛行を訴えます。間欠性跛行が短い距離で頻繁に起こる様だと、経カテーテル血管形成術やバイパス等の手術が必要になります。この血管性と神経性の間欠性跛行は症状が良く似ていますが、休息時姿勢が前屈位で寛解なら神経性、姿勢と無関係なら血管性です。そして足背動脈や大腿動脈の左右差をみると、どちらかの拍動が減弱か消失していれば血管性です。患者さんが足の痛みを訴える場合、座骨神経痛とも間違いやすいので、この点も要注意です。
糖尿病は動脈硬化の危険因子で、症状が進行すると細小血管も詰まった為に足先からの壊疽や網膜症や腎症等の致命的な合併症を次々引き起こします。これらの合併症が出来る時に既に深刻な状態になっている場合が多いのです。最も早期から起こり頻度も高いのが、足の痺れやザラザラ感などの知覚異常や痛み等の末梢神経障害です。この足の末梢神経障害が起こる原因は、末梢神経系の解剖学特徴と高血糖との生化学的な特徴によって説明できます。末梢神経は長い軸索を伸ばして標的臓器である足の筋肉や皮膚に分布しています。その神経末梢部は間質に露出している為毒素や代謝異常の影響を受け易いのです。また末梢神経でもエネルギー維持の為に血管が必要ですが、中枢神経に比べ血管密度が低い為、虚血になり易い傾向があります。更に神経内血管部に神経繊維分布が無くて、神経内血流は自動調節機能が働かないのです。更に末梢神経系の神経節部分は血管壁に窓があり異物が通過し易いので、高血糖のような代謝異常の状態では末端ほど影響を受ける事になるのです。高血糖により神経繊維の変性が進行して脱落も起こります。正常であれば修復の為に神経成長因子や神経栄養因子が働くのですが、高血糖の状態ではその因子が欠乏しているのです。