Blog記事一覧
高齢になると歩行中にほんのちょっとした段差でつまずいて転倒し、大腿部頚部骨折や橈骨下端骨折等といった大怪我を起こす事があります。この転倒を防止する一つの方法として歩行姿勢を見る事も大切です。足腰が弱った高齢者や膝などの関節に痛みがある場合には、どうしても姿勢が前屈みになっています。歩行の正しい姿勢は胸を張って背筋を伸ばし、腕を振りながら後ろ脚を蹴り出す様にし、歩幅を大きくします。着地が前足の踵から、足裏、つま先と順番に体重移動します。前かがみの姿勢になると後ろ足の蹴り出しの力が弱くなる為に踵から着地する事が出来無くなり、つま先から着地する事になります。この為段差があるとつま先が引っかかり、転倒する事になるのす。高齢の方が前かがみの姿勢で歩いていたなら、背筋を伸ばした姿勢にするようアドパイスをしましょう。また転倒防止のために杖やステッキを利用してとっさの時の支えとして積極的に利用し、その時も背筋を伸ばす事を意識して歩く事が大切です。綺麗な歩行は見た目だけで無く、転ばぬ先の杖としての役割があるのです。
下肢の循環器系の疾患の中で恐いのが閉塞性動脈硬化症(AS0)です。生浩習慣病の息者さんが年々増えて行くに従って、末梢の動脈硬化症も当然ながら増加しています。ASOの主訴と言えば間欠性跛行ですが、この症状が出て来る時はかなり進行しているのです。最初は末梢に冷感やしびれが現れたり、下肢の血の巡りが悪い状態ですので以前よりふくらはぎ (腓腹筋)がつったり痙宰を起こし易いといった症状が出てきます。(第一中足骨と第二中足骨)の間で脈の取れる足背動脈の左右差や滅弱等も目安になります。病状が進行すると足の皮膚が薄く弾力が無くなったり、足を上げると蒼白になり垂らすとチアノーゼになったりします。ASOは圧倒的に男性が多く女性は少ないのですが年々女性も増加傾向になってきました。原因になる生活習慣を初期の内に徹底的に改善して行く事が必要です。まず第一に禁煙と食事と運動等の規則正しい生活を実行させる事です。また、足を清潔に保つ事や足爪の手入れはしっかりやり,フィットした靴を撰ぷことも大切です。また、血行改善の為の足のマッサージ、入浴特に足湯は効果があります。これらの勧めは、ASO以外の循環器系の疾患でよく似ているバージヤー病(手足の先の小動脈に多く多発分節性の四肢慢性動脈閉塞症)や静脈系の疾患である下肢静脈瘤等にも効果があります。
心とは何でしょう、喜怒哀楽常に我々の感情は一定ではなく変化に富んでいます。一般に第三者に対して悪い影響を与える行為に対してそれを抑制する事に理性が働くと言われたりもしますが定義自体が曖昧で心をどう考えるかも定義が様々です。人はなぜ「キレ」たり暴力を振るうのでしょうか?人類の進化の過程でも残り続けているのは怒りです。どんなに高学歴やIQが高いからといって知的判断能力で抑制出来るものではなく激しく怒り恫喝する事もあります。人類は猿人から進化して行く過程で厳しい生活環境がありました。古代猿人の種族は1種類ではなく数種とされています。その中で強く気性の激しい種族は生き残り種の伝達が始まり文明が始まっても石器時代の矢じりでもただ先を細く鋭くするだけでは無くより殺傷能力の高い様に切れ込みを入れる等の細工をしていたそうです。弱い種は他の部族に滅亡されて行ったと推測され弱肉強食その末裔が我々です。その為誰もがその様な部分を持っているとする説もあります。
94年に改版された米国の精神障害の診断・統計マニュアルのDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)でそれまで診断名に使われた抑うつ神経症や神経症性うつ病は「気分変調性障害」に吸収されています。この気分変調性障害は、抑うっ状態になり感情レベルでは悲嘆、憂鬱、空虚惑、不安、絶望、自殺願望等が出てきます。この診断基準は、2年以上の慢牲的な抑うつ気分と6頭目の症状のうち2つ以上が条件です。[食欲減退又は過食・不眠又は過睡眠 ・気力低下又は疲労 ・自尊心の位下 ,集中力低下又は決断困難 ・絶望感] この気分変調性障害の原因としては遺伝因子、養育環境、性格因子等があります。それらが複合的に重なっているケースがほとんどです。この気分変調性障害の発症は20歳を境にして早発と遅発とある様に若い時期に起こります。早い例では児童期や思春期にも起こるのです。アダルトチャイルドの様に家族にアルコール症か人格障害が見られ、成長過程に離婚や死別等の両親と離別体験が多いのも特徴です。また悲観的な見方や容貌等のコンプレックスや低い自己評価や感情を抑圧する様な性格的な傾向も見られます。社会的な関係も希薄になり、核家族になり少子化という傾向が続く限り子供が最も影響を受けるのは親です。
感情が最も表れるのが顔です。そこで顔の表情を図案化したフェイススケールを使ってうつ病の進行状況や慢性関節リウマチの患者の痛みや精神的な気分の判定、小児科領域では子供の痛みの程度を判断しています。顔は感情が表に出た正に「表情」である訳ですが、しかしなぜ人は顔の表情に感情の差異を感じるのでしょうか。感情の脳の中枢は辺縁系が中心ですが、動物の脳ではこの辺縁系が多くの部分を占めています。この辺縁系は内臓脳と言っている学者もいる様に内蔵系の知覚と深く結ぴついています。更にさかのぼれば、太古の生物は体壁と内臓が一体となって辺縁系が支配していました。ヒトの表情筋は元々腸管系の鰓腸(さいちよう)branchial intestineであり内臓が脱口して顔を作り上げ進化して来たのです。その表情の差異を見分ける事で相手の腹の内の様々なシグナルを見極める事が生命活動に絶対に必要だったのです。それを逆手にとって表情を作り変えシグナルを誇張する技術が化粧です。また、無表情やマスクが不気味に感じるのも、相手の腹の内が読み取れない為に本能的な不安を感じてしまうからです。
強い怒りは冷静な判断を失わせ、暴力に向かわせるなど喜ばしい感情ではありません。しかしこの怒りも、実は動物が環境に適応する為の必要な情報処理と言えます。自己が他者から脅かされたりした時、冷静に状況判断等している余裕はありません。頭を巡らせてアレコレ戦術を巡らす手間をかけたりせずに、とっさに行動を起こす事が必要です。つまりある危機を回避する為には自動的に行動に移す事が必要で、その様な場合を情報処理のシステムとして怒りという感情を利用すると言えます。怒りの感情に囚われると体は興奮状態になって、血圧が上がり心拍や呼吸が増えます。つまり自動的に戦闘スタンバイの状態になれる訳です。ある刺激からある行動への自動処理は自転車に乗るのと同じで、慣れればペダルやハンドルを意識しなくても自動的に身体が動いてく処理は認識の省エネとも言えるでしょう。一連の行動の引き金に怒りを利用しているのだと考える事が出来るのです。ただ、この処理の仕方は速やかに行われる代わりに、一旦始まると途中で修正したり、中止するという事は難しいので、野生の生活の中では必須であったシステムも、社会生活の中では理不尽な感情として制御しなければならなくなっている訳です。
心の動きは脳で決められていると考えられていましたが、最近、肝臓が心の動きに影響を及ぼしている事が分かってきました。そのきっかけになったのが、肝臓移植で、移植を受けた患者さんは自分が自分でないという感覚を持つというのです。そこで出てきた説が、体液が性格に関係していると言う事です。ギリシャ時代の医学の考えでは性格、精神、健康などは、身体を構成している体液によって決まると考えられていました。この体液には血液、粘液、黄色胆汁、黒色胆汁の四種からなり、病気はこの四種の割合の不調和から起きると考えられていました。更に性格もこの体液の割合で決まり、血液の多い人は元気が良く、粘液質の人はコツコツ物事をやる人、黄色胆汁の人は怒りっぽく、黒色胆汁の人は陰気だと考えられていました。この体液を作っているのが肝臓です。また、脳内の物質の元になる物質も生成されています。例えばセロトニンの材料はトリプトファンというアミノ酸ですが、これは肝臓で蛋白質が分解されて作られます。このトリプトファンは不眠症やうつ病の薬として外国で販売されています。また性ホルモンの元になるDHEAは肝臓で分解され、脳内での意識、性欲、睡眠などに大きく影響します。肝臓が心を動かす物質を作っているのです。
今、小・中学校では「学級崩壊」が問題になっていますが、そうならないまでも1学級に必ず1~2人の落ち着かない子供がいます。先生の話に集中出来ない、忘れ物が多い。飽きっぽい、すぐカッとなる、軽率な行動を取る、等が挙げられます。こうした行動の原因は、家庭の躾や愛情不足のせいだと考えがちですが、これは脳の微細な働きの障害に基づく、れっきとした(注意失陥多動症)という”障害”なのです。多動症は発達障害の中でも極めて発症頻度が高く、全児童の3~6%に存在し、男女比率も3~6:1と男児に多いのです。主要症状は、多動、注意障害、興奮性、衝動性です。こうした子供は何をするにも失敗しやすいので、よく叱られてばかりいますが表面的にはしょげたりしないので、周囲の人はその子が内心は深く傷つき劣等感が強いと言う事に気が付きません。次第に学校社会から脱落し非行に走りやすく、非行少年の多くが多動症児である事は一般には余り知られてはいません。多動症の原因はまだ解明されていませんが、遺伝は重要な因子で、他にもアレルギ一体質や食品添加物等が挙げられています。改善方法は薬物療法、心理療法等が柱となります。薬物にはリタリンという中在刺激剤が有効で、抑制系ニューロンを賦活させます。副作用を心配する声もありますが、児童精神医学の先進国であるアメリカでは既に常識になっています。薬を飲まないで放って置くと問題がより深刻になるケースが多くなります。
感情が心身に影響を与えていると言う事は普段の生活で誰でも感じてます。この、感情と心身の疾患との関係を明らかにする基本的な概念がアレキシサイミアで、I970年前半にハーバード大学医学部精神科教授のピーター・シフニオスが提唱しました。最初は心身症の患者の臨床的な観察から発展していき、心身症の因子として内的葛藤より、むしろ感情あるいは情動の認知的処理における障害である事を示唆する報告がなされました。そこから発展して現在アレキシサイミア構成概念は下記のように定義されています。
①感情を認識し、感情と情動喚起に伴う身体感覚を区別する事の困難
②他者の感情について語る事の困難
③空想の乏しさに明らかな、限られた想像過程
④刺激に規定された外面性思考の認知様式
とあります。現在までの臨床研究でも、感情の障害は心身症だけでなく身体表現牲障害、薬物依存、PTSD(心的外傷ストレス障害)、過食拒食症や様々な精神疾患、更に癌や心疾患などの身体疾患との関連も報告されています。まだまだ、学問的には研究途上ですが、感情制御や調整の障害という観点から心と体の疾患を捉える考え方は、現代社会が抱える問題である衝動的な行動や犯罪にも新たな視点が提供される可能性があります。