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妊娠すると胎児は母親から栄養を貰いながら10ヵ月をかけて育っていきます。
その母親からの栄養は胎盤から胎盤動脈、臍帯動脈を通って胎児に届けられるのですが、その胎盤動脈が発生してから役割を終える出産までの過程は、人の動脈の一生と同じ過程を辿ります。
動脈は、発生した後成長成熟し、やがて老化し動脈硬化となって行きます。胎盤動脈は10ヵ月の間にそれと同じ様な過程を辿るという分けです。
胎児が成長してそろそろ出産という2~3週間前からは胎盤動脈の内腔が厚くなり、出産時には全く閉塞状態になっています。
その組織学的特徴は人の動脈硬化の特徴と同じなのです。
流産や早産で10ヵ月に満たずに胎児が母体から出た時、その胎盤動脈は閉塞を起しており、10ヵ月経っても陣痛が無く、止むを得ず陣痛促進や帝王切開の処置をした時の胎盤動脈は閉塞が起こって無い事が多いそうです。
出産の時期は直接的にはホルモンによるものだとしても、この胎盤動脈の動脈硬化が影響している事は確かです。胎盤動脈の耐用期間を10ヵ月と決めて、妊娠期間で出産出来るよう、ホルモンだけでなく、栄養補給の装置の面からもプログラムしているのでしょう。
このp53のpはプロテインの略で53は分子の量を表しています。
この p53は核内癌抑制遺伝子として機能が最も明らかになっている物の一つです。
例えば、大腸癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、食道癌、骨肉腫等殆どの腫瘍で、このp53の異常が50%以上の頻度で見られます。
このp53の元々の機能は、今の所放射線や薬剤で障害を受けた細胞の細胞周期の進行を止めたり、異常な細胞のアポトーシス(細胞死)を引き起こす役割であると考えられています。
また最近は、直接か間接にDNAその物の修復を促進させる働きがある可能性も指摘されています。
このp53遺伝子の突然変異が、癌の進展にどの様な役割があるのかも、ある程度解析されてきました。
例えば、大腸癌では、膿腫の段階では異常は見られ無いのですが、腺腫から旱期癌への進展の段階でこのp53.はどうやら突然変異を起して癌を発生させる様です。
癌抑制遺伝子の内には、核だけで無く、細胞膜近傍、細胞質に関与する物もあって10種類近い癌抑制遺伝子が現在見つかっています。
因みに核に局在する物が最も機能明らかにされていますが、p53以外では網膜芽細胞腫の癌抑制遺伝子として明らかに なったRB遺伝子とウィルムス腫瘍の原因遺伝子の一つとして明らかになったWTI遺伝子があります。
アメリカのジョンズホプキンズ大グループが、肥満や糖尿病の発生率が高いアリゾナ州のピマインディアンの遺伝子を調べた所、内臓の脂肪細胞にあるベータ3アドレナリン受容体の64番目のアミノ酸1個の変異を見つけました。
この遺伝子が作る受容体は脂肪の分解を盛んにしますが、遺伝子変異でこの働きが低下すると脂肪が身体に貯まるのです。
この遺伝子変異を日本人で調べた所30~40%の人に見つかり、この変異があれば、一旦太ると痩せにくいことが京都府立医大の吉田俊彦講師により確かめられました。
肥満外来の女性患者88人(平均年齢54歳、平均体重80.6kg)に毎日1200kcalの食事制限と、1万歩歩行の運動療法をさせた所3ヵ月で、遺伝子が正常な女性は体重が8.3kg減り、遺伝子変異のある女性は基礎代謝が低く、平均減量も5kg台に止まったのです。
私達の食生活はちょっと前までは貧しいものでしたから、この遺伝子の変異は効率が良かった分けですが、今の様に高脂防食になると太る原因にもなる分けです。運動しても痩せられ無い人はこの遺伝子かもしれません。
アデノシン・デアミナーゼ(ADA)という酵素はアデノシンを分解しますが、この酵素が遺伝子の欠損によって不足すると、重度の免疫不全症を引き起こします。発症後は早ければ2~3年以内に死亡しますが、改善法としては、ADAの注射を打ち続けるしかありませんでした。95年に北海道大学病院で日本最初の遺伝子医療が行われたのも、このADA欠損症の4才男児に対してでした。患者の血液からリンパ球を取り出し、ADA遺伝子を持った組み換えレトロウイルスを感染させて、組み換えリンパ球を作り、患者の体内へ再移植するのです。患者の体内でこのリンパ球がADAを作るようになり、開始時はリンパ球がmm³当り500個だったのが、96年4月には5700個の正常範囲にまで達しました。しかし幼児期にADA欠損症であっても、成長と共に症状が無くなる場合があります。米ニューヨーク医科大学のR.ヒルシュホルン博士らは、ADA欠損症だったにも係わらず12才までに回復した患者の遺伝子を調べた所、殆どのリンパ球の母方由来の遺伝子が正常に戻っている事が確認されました。これは、ADA酵素の欠損によって蓄積された有害物質がADAの合成に作用し、正常な遺伝子が回復したのだろうという事です。
人間の身体の諸器官も病原性微生物にとって見れば、定住しやすい所とそうで無い所が有ります。強酸性の胃袋には、唯一の生き物であるヘリコバクタ-・ピロリ菌が住んでいて、胃潰瘍の主因として知られる様になりました。インフルエンザウイルスは、鼻、気管支、肺等に定住します。水疱瘡・帯状庖疹ウイルスは、子・供の頃に皮膚に症状を出した後に、数十年の間神経線維に潜伏して、免疫系が弱って来ると神経にそって帯状の庖疹として蘇ります。ウイルスの場合、一つひとつの症状は、そのウイルスの好きな環境で大増殖する事からその器官の細胞カ破壊され、器官全体の機能が低下する事によって起こるのです。ウイルスがなぜ特定の器官に増殖場所を求めるかは、細胞のレセプター(受容体)との相性であると言われています。つまり、ウイルスの遺伝子を包むキャプシドと言う蛋白質やエンベロープと呼ばれる糖質が、細胞壁の外側に点在しているレセプターに働きかけ、特定の細胞のレセプターと反応して細胞内に侵入する事が出来るからです。勿論例外もあり、野口英世で知られている黄熱病ウイルスは、多くの器官の細胞と親和性をもっていますので全身症状を呈します。所で恐い話ですが、最近の日本でも突然変異をおこしたインフルエンザウイルスが脳や肝臓の細胞に侵入する事に成功した例も出てきています。
癌の死亡原因第1位は肺癌です。肺癌には原発性と転移性の癌がありますが、これから問題になるのは大気汚染や塵埃、喫煙が原因の原発性の肺癌です。肺癌は早期発見が大切なのですが、レントゲン検査をしても心臓の陰になって原発巣の発見が遅れたりします。その早期の異常を爪の変化で発見出来るのです。虎ノ門病院呼吸器科の本間日臣博士の調査結果によると原発性肺癌の60%の患者に太鼓バチ指がみられ、特に早期で肺癌の症状が見受けられない時にでも出現するというのです。太鼓バチ指はヒポクラテス指とも呼ばれ、紀元前400年前のギリシャの名医ヒポクラテスは、肋膜及び肺の炎症が化膿に移行する時は手の爪は曲がり、指の先端分厚くなると指摘しているのです。指を側面から見ると正常な爪は、爪甲と後廓部の間の角度が160度になっていますが、この角度が180度以上になると太鼓バチ指になるのです。太鼓バチ指は爪甲と骨との間の組織に液体が溜まり分厚くなり、それが長く続くと線雑組織が増加してくるのです。喫煙をしている人はいつも指先をチェックする事で早期に肺癌を見つける参考にして下さい。
アドレナリンは神経伝達物質として脳全体に分泌されています。このアドレナリンは驚いたり恐怖を感じる時に多く分泌されます。ドーパミンやノルアドレナリンの様に覚醒作用があり、エネルギーを最大限発揮出来る精神的高揚窓を与えます。しかし、脳内での働きは言わば片手間の仕事であり、アドレナリンと言えば、副腎髄質から分泌されるホルモンとして良く知られています。この副腎髄質は、実は内臓神経節(腹腔神経節)と同じ内臓の働きの調節をする交感神経節であったものが、無髄神経部分の神経線維が発達せずに、細胞だけのホルモン分泌細胞へ先祖返りしたものなのです。精神の高揚より実質的な役割の方が重要なのです。ですから、神経伝達物質というより、一般のホルモンと同じように血液中に分泌されます。このアドレナリンは血液中のブドウ糖量を増加させ、全身の活動を活発にさせる準備の為に作動します。興奮して、身体に元気をみなぎらせる為に働くのですが、その様な状況は身体に強いストレスが加わっているともいえます。その様な持続的なストレスが続くとアドレナリンの分泌過剰になり、ブドウ糖量が血液中に増加して糖尿病を招く危険性もあるのです。糖尿病の方は興奮しない事が大切です。
血液は脳の中に入って行く事は出来ませんから、当然体の免疫をつかさどる白血球も脳の中に入っていけません。この為脳には免疫機能は無いと考えられてきました。所がが脳には特有の免疫システムがあって、担当しているのがグリア細胞の一つのミクログリアである事が分かって来たのです。普段ミクログリアは多くの突起を回りの神経細胞にまとわり付かせて異常を監視しています。神経細胞に異変が起こると守りに入りますが、その様子はマクロファージとよく似ています。つまりミクログリアもサイトカインを分泌したり腫瘍細胞を殺します。また成長因子を産生して、傷んだ神経細胞の修復をしますし、プロテアーゼや活性酸素をも産生して細菌を破壊します。しかも白血球等の免疫が悪さをして自己免疫疾患を引き起こす様に、ミクログリアも時として正常な神経細胞を殺してしまう事もあるのです。健康な人ではその様なマイナスの働きを制御しているのですが、制御が効かなくなると異常に活性化して様々な病気をもたらす訳です。アルツハイマー型痴呆症、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側素硬化症等はこうしたミクログリアの異常な活性が大きく関係しているのでは無いかと疑われています。脳にも自己免疫疾患があるのかもしれません。
夏、外気温が上がって体表の温度も上がると、発汗量が急に増して汗の性質が変わってきます。寒い頃に運動して一時的に発汗した時と比べて、汗の塩分濃度が薄くなるのです。汗腺の分泌管で作られた汗の原液に含まれる食塩は、導管でかなり再吸収され、外に出る汗は原液よりかなり塩分濃度が薄くなっていますが、発汗量が多くなればなる程再吸収出来ない食塩量が増える為に、身体から失われる塩分量も多くなってしまいます。だから急に暑くなった頃は、体液中の電解質のバランスが崩れ、体調も崩しやすいのですが、夏の暑さに慣れる頃になると導管の食塩再吸収の機能が高まって、汗が多い割には食塩濃度は低く、急激に塩分が失われない様になるのです。所で、汗腺を顕微鏡で観察すると汗の噴き出しが終わる度に、出た汗が少し引き込まれるのが認められます。汗腺の分泌管か導管の管腔が汗の排出直後に少し広がる様で、その時汗を引き込んでいる様です。温泉療法で、1日の内に何回も温泉に入ったり出たりするのを繰り返すのが効果的とされるのは、この療法で汗が引いた時に温泉成分が汗腺に吸い込まれ、導管から体内に吸収される為かも知れません。
東洋医学では日、月、季節による身体の変化を陰陽五行で説明していますし、昔の人は様々な疾患が天気と関係している事を経験的に知っていました。現在この気象の変化が身体に及ぼす影響は学問的に研究されていて気象医学というジヤンルになっています。例えば、フェーン現象の時は、情緒が不安定になり易く、労働災害や交通事故が起こり易いとか、移動性高気圧が喘息の発作を誘発する等が分かっています。最近明らかになった興味深いものに、免疫系の白血球のリンパ球と顆粒球と気圧の関係があります。これは新潟県立坂町病院の福田先生が、2年に渡り虫垂炎の手術をした112人の患者さんと天気の関係を記録し分析した所、低気圧の時の虫垂炎は軽症で、高気圧の時は重症例が目立つ結果が出たと言うものです。血液データを見ると、高気圧の時はリンパ球が減少して顆粒球が増加していました。更に新潟大医学部の安保教授グループらが気圧と血液との関係以外に、呼吸数と脈拍の変動とも関連付けて研究した結果、呼吸と脈拍は高気圧では高まり、低気圧では低下していたのです。この反応には自律神経が当然関与しています。更にリンパ球と頼粒球を調べると、リンパ球には副交感神経の刺激物質アセチルコリンの受容体があり、類粒球は交感神経のアドレナリン受容体を持っていたのです。正に、神経系と免疫系が協同して天気に対応していたのです。しかし、気圧の変動で何故このシステムが働くかは、確定されていません。