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高血圧と腎臓

2020.03.20 | Category: 循環器

人類は進化の過程で、海中から陸上に生活の場を移したのですが、この事を可能にした臓器のひとつが、泌尿器系の腎臓なのです。腎臓と血圧の関係で言えば血液や体液の流れを円滑にする為に働きますが、言い替えれぱ塩分が容易に摂取出来ない環境でかつ重力に抗して生きる為に、腎臓と血圧は密接に連動して働いているのです。塩分を殆ど摂取し無い民族を調査すると、高齢者になっても高血圧にはなりません。しかし、塩分に含まれるナトリウムは細胞の代謝に絶対必要な物です。そこで腎臓の重要な機能の一つにこのナトリウムをいかに体内から出さない様にするかがあります。所でで、塩分を過剰に摂取するとなぜ血圧が上がるのでしょうか。実は本態性高血圧の人は元々尿細管のセンサーがかなり高い血圧をかけないと塩分を排泄しない様にプログラミングされているからだと考えられています。つまり、本態性高血圧の人は、元々塩分を体内から排泄させない能力が通常の人より勝っているとも言えるのです。海洋民族と遊牧民族の様に環境における塩分の摂取量が異なる地域のこのプログラミングに違いが出て当然です。高血圧の無い民族も文明化して塩分を摂取する事になると、その能力の為に高血圧になってしまうのです。腎臓のこの機能を考えると、塩分が血圧にいかに悪いかがうなずけます。

しゃがむ姿勢と血圧

2020.03.19 | Category: 循環器

血圧は動作や姿勢を変えるだけでも、簡単に変化します。体位の中で一番血圧が低いのは仰臥位(仰向けになった状態)ですが、真っ直ぐ立った状態(立位)では少し血圧が上がります。これは身体を支える為に大腿の筋肉が緊張し、脚の血管も収縮し、血圧が下がらない様に交感神経が緊張して血圧を上昇させるからです。ところがもっと血圧の上がる姿勢はしゃがみ込む姿勢(蹲踞ソンキョ)で、大腿部が下腿部で圧迫され、末梢の血管が圧迫され、末梢血管の抵抗が上昇して血圧を上げるのです。それに身体を支える筋肉の緊張度はしゃがむ方が立つより高く、交感神経の緊張もより強く血圧に影響します。戦いの前に蹲踞の姿勢を取るものには相撲や剣道がありますが、この姿勢を取る事によって、適度な筋緊張を保ち闘争の意欲をかき立て、試合中の動きを良くすると考えられるのです。

冠動脈手術後再狭窄

2020.03.18 | Category: 循環器

心筋に血液を送る冠動脈が狭くなる狭心症の医療ではステント療法が一般です。以前はバルーン療法を用いてました。しかし、バルーン療法は、30~40%の確率で療法後6ヶ月から1年以内に再狭窄を起す事ことが分かりました。風船の圧力だけで血管を押し広げる際血管に傷がつき、傷の修復過程で再び脂質が溜まり、血管が狭窄するのです。その為、バルーン療法と共に、カテーテルの先に脂質を割り取るカッター療法や、脂質を溶かすレーザー療法が行われるようになりました。しかしバルーンで拡張したり、脂質を取り除くと血管がいびつになって、うまく広がらなかったり、広がっても元に戻ったり、療法中に血管が詰まったりする事があるのです。今ではステントという網またはコイル状の金属の筒で、広げた血管が再び狭くならないよう内側から支え、血管の狭窄を防ぐ方法が行われています。ステント手術後患部が再狭窄する事がありその場合はバルーンを用いたりしますが一般的には内側に再度ステント手術を行われています。最近は再狭窄を防ぐ為薬剤を塗布した薬剤溶出型ステントを用いたりしますが確率は下がるものの再狭窄はやはり起こります。それなら最初からバイパス手術が良いのでは無いかと思われますが開胸手術をして1カ月の入院期間等の患者負担も考えてステント手術が通常は行われています。

薬の食べあわせ

2020.03.16 | Category: くすり

高血圧をコントロールする薬は、飲み始めると長く飲み続ける事になります。所が案外見過ごされているのが、薬と食べ物との相性です。例えば減塩を厳しく守りながら利尿剤を飲むと、薬の効き目が強くなって急激に血圧が低下したり低ナトリウム血症になる場合があります。またβ遮断薬はアルコールとー緒に飲むと薬の血中消失が旱くなり効か無くなくなりますし、タバコと一緒でも薬効が失われてしまいます。Ca桔抗薬とグレープフルーツジュースを一緒に飲むと急な血圧降下や動悸、吐き気等が起こるのはグレープフルーツだけに含まれるある種のフラボノイドが肝臓の薬物代謝酵素のP450を阻害する為に、身体の中での薬の可動率が2倍以上にもなるからです。また血管を拡張させて血圧を下げる塩酸ヒドララジンは亜鉛を多く含む食べ物と一緒だと頭痛や頻脈、起立性低血圧等の副作用が出る事があります。亜鉛を多く含むのは牡蠣や豆類、カボチヤ等。所がACE阻害剤では亜鉛の吸収を阻害するので、長く服用している間に味覚異常が起こる事があります。最近の降圧剤は副作用も少なくなっていますが、食べ物やお酒、タバコによって影響を受ける事もあるので、軽視せず、変だなと思ったら医師、薬剤師に詳しい説明を求める事が必要です。

筋肉痛とアイシング

2020.03.15 | Category: 骨格筋

激しいスポーツや久しぶりにスポーツをした後に筋肉は硬くなり痛みを感じます。この筋肉痛は運動した当日よりも1日か2日経ってから痛みが出て1週間程度で改善しますが、その痛みを少しでも軽減するには運動後のアイシングです。筋肉の伸縮運動には伸長運動(力を加えながら筋肉を短く収縮する動作、エキセントリックな運動)、短縮運動(力を加えて筋肉を短くする動作。コンセトリック)、等尺運動(筋肉を一定の長さのまま維持する動作。アイソメトリック)の3種類がありますが、筋肉痛は伸長運動に多く出ます。この運動は最も力が出る割りにその運動に関与する筋線維の数が最も少なく、負担はそれだけ大きいので、筋線維やその周辺の結合組織に与える損傷も大きいのです。その損傷を修復する過程で起きる炎症や、浮腫が筋肉痛の正体です。アイシングは運動によって生じた損傷部分に、白血球が集まってきて活性酵素が発生し、炎症を拡大するのを防ぎ、回復を早早める効果があるのです。アイシングは氷嚢かポリエチレンの袋に氷と水を入れてO℃にして、氷が直接皮膚に触れない様にして行います。このアイシングにより、痛みが軽減されますが、筋肉や靫帯の損傷部分はそのままですから、あくまで応急処置ですので痛みが無いからといって無理をしない事です。

瘢痕とストレッチ

2020.03.14 | Category: 整形

激しい運動で無くても、ちょっとしたアクシデントで怪我をしてしまいます。しかし、例えば打撲、捻転、過伸展等で筋肉や靭帯等を損傷すると直ちに再生と修復が行われます。まずは急性炎症反応が起こり血液供給を増やし酸素と栄養物を豊富に提供します。更に損傷を局所に留める為に大食細胞が活動し損傷を受けた周辺部位の残留物や分解産物等を取り除き綺麗に掃除をします。所で、骨格筋や靭帯には再生能力は殆どありませんので、この後は瘢痕形成が進められ線維化によって周囲の結合組織も含めて組織を修復します。7日目位で肉芽組織にある繊維芽細胞によって血管に富んだ瘢痕が出来ますが、引っ張るとまだ弱く簡単に裂けてしまいます。この時期に過度な運動をやると出血と炎症を繰り返す事になり、これが慢性の捻挫です。日が経つにつれ段々結合力を増してきますが、この時期にストレッチ等で筋肉や靭帯にある程度の負荷をかけてあげると瘢痕の線維が引っ張られる方向に平行に形成される様になります。この時期に規則正しいストレッチをする事が大切なのは、線雄も長く伸びて、しこりの無いある程度たわみのある瘢痕が形成されるからです。

ストレスが体に与える影響

2020.03.13 | Category: 腰痛

ストレスと腰痛に関して興味深い本があります。

夏樹静子「椅子がこわい」文芸春秋、定価(1238+税)です。かなり前に私が読んだ本で作家の夏樹静子さんも既に亡くなられています。

図書館にも置いてある本だと思いますので、読みやすい内容なので腰痛の方は一読されてはいかがでしょうか。

この本の帯付にある「私は、1999年1月から約3年間原因不明の激しい腰痛とそれに伴う奇怪とさえ感じるほどの異様な症状や障害に悩まされた。考えられる限りの医療―最後に、どうしても最後まで信じられなかった唯一の正しい改善法に辿りつくまでーを試みたが、何ひとつ効かなく、症状はジリジリと不気味に悪化した。私は心身共に苦しみぬき、疲れ果て、不治の恐怖に脅かされて、時にはしを頭に浮かべた」(本文より)

この本は売れっ子作家が突然腰痛を発して病院に行って診察を受けたお話しである。

経済的にも裕福な方である事から全国の名医と言われる病院を訪ね歩いた放浪記で、怖いのはリアリティを出すためにすべて実名を挙げている事です。

あそこに行って改善しなかった、ここでは病名が違って言われた等と本の中で書き記した内容なので、当時はある意味凄い本が出たと話題になりました。

ある朝から突然腰痛が起こり、着替えをするのも辛い状態が始まり、腰から背中にかけて鉄の甲羅を張り付けた感覚に襲われた。

どんな鎮痛剤、座薬、注射も効かない、椅子に座る事が痛くてできない。いくらか正座の姿勢の方がまだましだがそれも5分ほどで我慢ができなくなる。

立っていた方がまだ楽だがそれも10分ほどで痛みでしゃがみ込みたくなる。

腰かけられない、立てない、で何もできない状態で外出、仕事、喫茶店、映画等なにもできないでいました。

不思議な事に痛みには波があり、比較的楽な状態の日もあれば、まったく痛みの為に何もできない日もあるのでした。

その前までは自分でも呆れるほど丈夫だっと書き記しています。ギックリ腰なども一度もやった事のない仕事人間だったのです。

その前の予兆も耳鳴りが始まる耳鼻科、内科、そして最後は慈恵医科大学脳神経外科鈴木敬教授から心配ないから耳鳴りを気にしないで下さいと説明をうける。

次に眼精疲労は眼科医にかかり近所の評判の良い眼科医、九州大学眼科で眼精疲労の診断、東京医科歯科大学付属病院眼科助教授坪田一男先生はドライアイの診断の目薬をもらった事があった。

腰痛になりホームドクターの吉永拓国先生に受診そのうち改善するでしょうといわれるが痛みが強くなる。

腰痛の為に近所でも評判の高い福岡整形外科副院長徳永純一先生を受診して骨粗鬆症の兆しはあるが、腰痛問題ないとの診断。痛みはまったく改善しない。

福岡大学体育学部助教授の先生の置き鍼を受けるも効果なかった。

その後東京の有名な鍼灸師鳥倉鶴久にかかり、圧痛が無いの事を先生が不思議がり、診察を受けるも変わらない。

内臓からきているかもと九州大学整形外科で精密検査を行い杉岡洋一教授から筋力が弱まっている事を説明をうける、そこから産婦人科の中野仁雄教授を紹介され診断の結果問題無しとなる。

ヒーリングではと手かざしが効果があると聞いてして高塚光さんに診察を受けるが効果が無い。

愛宕神社で護摩焚きを受ける。

紹介で光安整形外科を受診安岡知夫先生を受診九州大学出身とまで書き記す。ここでも筋力低下の診断。

プールでの運動は以前からしていたが、これらを鑑みてプールに熱心に通う様になる。

一発で遠藤周作夫人の腰痛を改善したという有名な気功師遠藤睦雄先生に気功を受けるも気すら感じる事ができない。

更に中川式気功の創始者中川雅仁氏に気功を受けるが変わらない。

私自身(夏樹静子)が非科学的な事に否定的な見解なので効果を感じる事ができなかったのかもしれないと書かれている。

中川雅仁氏の紹介の博多駅裏、足裏マッサージに通うも変わらない。

定期的に受診している光安整形外科を受診安岡知夫先生が自律神経失調症からきているのでは無いかと言い出す。

ホームドクターの良永拓国医師からも同一意見を言われる。

荻窪の東京衛生病院アメリカ人カイロプラクティックでも故障は無いと言われる。

カメラマンに腰痛が多いので名人を知っているとカメラマンの紹介の赤坂にある中国鍼にいくも変わらなかった。

気功と鍼をする劉勇先生は名医とのふれこみが凄い先生であったが九州まで来て頂いたが変わらなかった。

精神安定剤を服用するようになる。

作家の白石一郎さんがかかっているマッサージ師の施術を受けるが変わらない。

九州大学整形外科精神科の田代信維教授からうつ病の薬を出される。

川蔦整形外科病院に入院ストレス性腰痛と診断

東京の東大和市にある堀江院で堀江高志氏にカイロプラクティックを受けるが良くならない、更に堀江高志氏が霊が付いていると言われて、本格的にその霊のご供養をするが良くならない。

知人の村山妙映さんが霊が付いていると言われて塔婆を作りお経をあげたがまったく変わらない。

福岡の整体研究所をかかるが変わらない。

東京女子医科大学東洋医学研究所で代田文彦先生の診察を受けるも変わらない。

新宿の検診センターで平木英人医師から硬膜ブロックを受けるが痛みが変わらない
平木医師から典型的な心身症と言われる。

平木英人先生から心理療法の森田療法を勧められる。

南熱海温泉病院に入院絶食療法、カウンセリング、心理テストを受ける
痛みに変化が無いので騙されたと反抗的な態度をとる。

そこで意識の変革に気づきようやく痛みが取れ退院したという事です。

この本は改善した形で出版されてますが、一時的には本人もそう思ったのでしょうが実はその後も依然として継続して予後不良のまま人生を終えられています。

正常眼圧緑内障

2020.03.12 | Category:

日本での失明のトップは糖尿病網膜症ですが、二番目に多いのが緑内症です。その緑内症の症状の特徴は眼圧上昇、視野狭窄、視神経障害で、それが診断基準にもなっています。ところが眼圧が高くならないのに視野狭窄や視神経障害が出てくる緑内障が結構多いのです。これまでも眼圧が高くならない緑内症があることは知られていたのですが、1989 年の調査によると眼圧が高くなら無い緑内症は高くなる緑内症の約3倍という数字が出て緑内症の考え方に影響を与えました。これまでの緑内症の考え方では眼圧が高くなって、それが視神経を侵すと考えられていて、高くなった眼圧を低くすることが医療の目的となっていました。普通正常眼圧は11~21mmHgですが、この眼圧が誰にとっても安全とはいえないわけで、眼圧が高い事を診断の判定にしていると初期の発見が遅れる可能性が出て来るのです。正常眼圧緑内症の原因としては、視神経への血流量の低下が大きいと考えられ、多くは循環障害を伴っている場合が多い様です。高血圧も小皿管の血流に障害が出ますし、低血圧でも十分な血液が眼に行かないので要注意です。40歳以上の約30人に1 人が緑内症を持ち、そのうちの8割が医療を受けていないと推定ざれています。40歳以上になったら健康診断で眼圧と共に眼底の検査を受ける事が大事です。身内に緑内症がある人、糖尿病、強度の近視・ステロイドホルモンを使っている人は特に定期的な検査を受けるべきです。

がん転移のメカニズム

2020.03.11 | Category: がん

癌は1cm位の大きさだと、重さは1g程度として細胞数約1億個になっています。この癌は増殖の性質があっても、転移するメカニズムが無ければ、致命的になる率はもっ低下する筈です。しかし、癌細胞は細胞と細胞の間で枠組みを構成しているマトリックス蛋白質を分解する酵素を使って組織を破壊しながら増殖する能力を持っているのです。血管の回りにもコラーゲンやエラスチンのマトリックス蛋白質があるのですが、癌細胞はそれを分解してしまいます。そして血管やリンパ管の壁を破って血管の内側に潜りこみ、血流に乗って体のいたる所に流れて行くのです。もちろん流されて行くだけなら、その内マクロフアージに食べられたりして死滅します。ところが、癌細胞にはもう一つの性質として接着因子をその細胞膜の表面に持っているのです。これを利用して血管の内皮細胞に接着し、その下の組織へ潜り込んで行くのです。転移した臓器に入り込み、マトリックス蛋白質を分解する酵素素を沢山出して、そこでまた増殖してしまいます。増殖する為に必要な酸素や栄養をえる目的でVEGF (血管内皮増殖因子)を分泌して周りに血管を伸ばさせて更に大きくなって行くのです。転移を防ぐ医療法の開発が行われていまが、残念ながら決定的な方法は今のところありません。

うつ病の物質的基盤

2020.03.10 | Category: 精神科

最近の研究では、うつ病も物質的な説明がつく疾患である事が分かってきました。これまでに分かった事は、神経伝達物質ノルエピネフリンとセロトニンが不足しているという事です。神経伝達物質の働きは放出された神経伝達物質の量と、やりとりする神経細胞の間にその物質がどれ位保たれるかによります。ですからシナプスから一旦放出されたノルエピネフリンやセロトニンがそのシナプスに再び取り込まれる事を遮断すればうつ症状が軽減されるのです。その様な作用を持った最近のうつ病薬は効果も高く、副作用も少ない為多くのうつ病が薬で改善出来る様になったという訳です。ところがこれらの抗うつ薬が効かないうつもあり、その場合はホルモンの異常が考えられます。それは視床下部 一下垂体―副腎系のホルモン異常です。人はストレスにさらされると、視床下部から下垂体、副腎と順送りにホルモンを出させて最終的に副腎皮質刺激ホルモンを放出させ、身体に戦いの準備をさせます。視床下部からのホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)は食欲や性欲を抑制して集中力を高めますし、副腎皮質ホルモンは筋肉へのエルネギー取り込みを増やします。つまりこの系が活性化したままになっている状態がうつ症状なのです。動物の脳に副腎皮質刺激ホルモン放出因子を与えると不眠、食欲、性欲 の減少、不安などの症状が表れますし、現にうつ病患者の脳脊髄液中の副腎皮質刺激ホルモン放出因子濃度は高く、それを産生するニューロンの数も増加している事が分かっています。ストレスでうつ病になったのも、そのストレスがきっかけで視床下部―下垂体―副腎系が活性化されたまま固定されたのだといえます。

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