Blog記事一覧
最近口を半開きにしている人を多く見かけます。
これは単なる顔にしまりがないだけではなく、免疫にもかかわる重大事と警鐘を鳴らしているのが東大医学部口腔外科の西原克成医師です。
無意識に口を半開きにしているのは□呼吸をしているからで、この口呼吸はやがて色々な病気に繋がるというものです。
そもそも哺乳類は鼻腔と気管が鼻の奥で直接繋がっていて、呼吸は鼻でしかできません。
ところが人類は言葉をしゃべる為に口から空気を出す事が必要になった為、口腔と気管が繋がり、□呼吸ができる様になったというのです。
しかし口呼吸ができる事と、口で呼吸すれば良いというのとは違います。鼻で呼吸すると、鼻腔の粘膜によって空気中の異物が体内に入る事を防ぎます。
また吸気に適度な湿り気を与えて肺胞で酸素がスムーズに吸収されやすくなります。ところが口呼吸になると、本来は食べ物等についた雑菌の処理をしなければならない喉の扁桃リンパ輪が空気も処理しなければならなくなりオーバーワークになってしまいます。
しかも口呼吸で扁桃腺が乾燥して風邪をひいた状態になってしまうのです。この状態が常態になってしまうと免疫にも影響が出る事は想像できます。
またこうなると鼻の働きは嗅覚等も廃用的に衰えていきます。また睡眠時無呼吸も口呼吸が原因とみなされてります。
自分が□呼吸かどうかはなかなか気が付き難いものですが。
・朝起きた時、喉がヒリヒリする事がある
・鏡を見ると、口が「へ」の字
・クチャクチャと音を立てて食べる
・唇がいつもカサカサしている
・何かに夢中な時、□が開いていると言われる
・いびきをかく
の内3つに該当すれば、ほぼ口呼吸と考えてよい様です。
睡眠には二つの層があって、レム睡眠とノンレム睡眠で構成されているという事は定説です。
レム睡眠時には閉じた瞼の下で目玉がキョロキョロ動いているのに、体はぐったりとしていて脳が起きた状態、ノンレム睡眠時とはレム睡眠でない状態で脳が眠っている状態と理解されています。
そこで「ノンレム睡眠は脳の睡眠」、「レム睡眠は体の睡眠」といわれるのですが、しかしこれは誤解なのです。
そもそも睡眠というのは、脳が必要とするもので、その脳自身が脳のために行う“活動と休息”の働きのリズムで、レム、ノンレム、ともに脳の回復の為にあるものです。
進化の上ではレム睡眠が古く、骨格筋の緊張を解いて休息させる為のものでしたが、進化の中で大脳が発達して大脳を休息させる為のノンレム睡眠が必要となった様です。
するとレム睡眠はノンレム睡眠を覚まさせる役目を持つようになり、この二層のリズムが脳の休息を構成する様になったというわけです。
したがってノンレム睡眠は大脳を沈静化する睡眠、レム睡眠は大脳を活性化する睡眠、とみる事が正しいのです。
こうしてリズムを作って休息するのが脳なら、休息させるのも脳の働きで、脳は睡眠を作る為に体の状態を整えます。
神経のシステムではニューロンを活動させたり抑制したりして眠りを用意し、その影響として体内では分かっているだけで数十もの睡眠物質を分泌して睡眠を作って行くのです。
この睡眠物質の中にはニューロンの機能を回復させたり、ニューロンが作った細胞毒を解毒しているらしい事も分かっています。
夏の初め頃から咳や発熱等の風邪症状がでて、風邪薬や抗生物質が効かずに息苦しさが増してくる、という時は要注意です。
特に外泊した時は咳が出ずに息苦しくない、という場合、夏型過敏性肺炎の事がよくあります。
過敵性肺炎とは、カビ等の抗原を繰り返し反復呼吸する事でアレルギー反応が起きて、肺の間質に炎症が起きたもので、夏型は日本の過敵性肺炎の7割以上を占めているのです。
日本の高温多湿の夏、カビの種類は数あれど、腐った木材や畳や寝具などを栄養にして繁殖するカビの中にトリコスポロンというのがあり、これが夏型過敏性肺炎の原因です。
トリコスポロンは築後20年位の古い木造住宅の1階に多く発見されていて、患者は在宅時間の長い主婦が4割を占めています。
ところが最近では築10年程度のマンションでの患者も増えているといいます。
共通している点はいずれも陽当たりや通風・換気が悪くて、カビが発生しやすい条件が揃っている事です。
この肺炎は最初カビを少しずつ吸入してから、啖や痰、発熱等の症状が出始め、次第に悪化して呼吸困難になって行きます。
カビが抗原のアレルギー反応なのですが、スギ花粉症の様に抗原を吸い込んで直ぐに反応が出るのではなく、帰宅してから症状が現れるまでに4~6時間もかかるので、なかなか家が原因とは気付かないものです。
軽症なら入院する等家から離れるだけで症状が取れますが、中等症だと副腎皮質ホルモンを使う事になります。
問題は家のカビ対策で、畳替えや内装の張り替えだけでは間に合わない事もあります。
アレルギーとはいえ放置しておくと肺の繊維化が進み、命に関わる事もあるので、夏風邪が風邪薬や抗生物質を飲んでも症状が取れない様なら、一度住んでいる家の環境をチェックする必要がありそうです。
疲れに襲われ、日常生活も営めないという様な「慢性疲労症候群」の患者は、日本では0.3%位と見られています。
そこまでひどくなくても実際に慢性の疲労感で苦しんでいる人は多く、3人に1人は半年以上続く慢性的な疲労を感じているといいます。
そこで慢性疲労症候群が引き金となり、“疲労”の研究が進むに連れて様々な事が明らかになってきました。
慢性的な疲労の原因としては慢性的なストレスと慢性的な感染が考えられます。
慢性的にストレスが続くとナチュラルキラー細胞の活性が低下して感染症にかかりやすくなったり潜伏ウイルス等が再活性します。
すると免疫抑制のサイトカインが放出されて、内分泌を狂わされます。
その為幸福感や、やる気にかかわるDHEA-Sという神経ホルモンが異常に低下し、更にこれが脳の中での神経伝達物質の合成を阻害して強い疲労感となって行くのです。
検査しても特別な原因が見られない疲労感を訴える患者さんは、単なる気のせいでは無く、こうした体内での流れができていると考えられます。
時として慢性疲労症候群にうつの薬が効くのも神経伝達物質に上手く働きかける事があるからなのです。
この一連の悪循環を作るのはストレスだけで無く、サイトカインの放出を高める様々なウイルス、細菌、それも以前感染して潜んでいる病原によっても引き起こされます。
特にインフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ボルナ病ウイルス(馬の脳炎を起こすウイルス)、ヒトヘルペスウイルス、クラミジア、マイコプラズマ等様々なウイルスや細菌が影響していると見られています。
改善に効果が期待される事は何でもやってみる様ですが、ビタミンCの大量投与(4g/1日)や漢方薬の補中益気湯や十全大補湯等に効果があるといいます。
1987年に免疫学の抗体遺伝子でノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進氏はMIT大学で痛みについてグループ研究を続けています。
その中で、外傷等で神経の障害によって引き起こされる慢性の痛みが起こる機序に重要な役割をしている物質を特定しました。
これは脊髄の中の細胞内伝達系のPKCγ(プロテイン・キナーゼ・ガンマ)という物質です。
痛みを伝える神経が障害されると、触覚を伝える神経が新しい枝を伸ばし痛みの神経に接触して痛みを伝える神経回路ヘバイパスが形成されます。
ですから軽く触られたり、触れられたりする非常に弱い信号を脊髄の中の痛みの神経に伝えるのです。
そこでPKCγがその信号を増幅させ大脳皮質に送る為に、強い痛みを感じるのです。
ですから、利根川らのグループの実験で遺伝子操作してこの物質を欠損させたマウスは神経を損傷しても神経障害性の疼痛は起ら無かったと報告しています。
この様な脊髄の中で痛みの信号を増幅させる物質は他にも見つかっています。
よく知られた代表的なものにP物質(サプスタンスP〉や神経の興奮を伝える興奮性アミノ酸(EAA)などがあります。
特にひどい外傷や手術の跡等に、激しい痛みの聘激が脊髄に伝えられ続けると、触角を伝える細胞にP物質を作る遺伝子が誘導されてしまいます。
この状態が形成されると、傷口が治った後でもそこを触っただけでも痛みや痺れが起こります。
この様な状態を特に「アフロディニア」(異痛症)と呼んでいます。
いずれにしても、慢性的な痛みが起こるのは末梢から中枢までの神経回路の中で複雑なプロセスが生じて起こっているのです。
脳の性差については昔から、脳の重さが男女で違う事が研究され、女性蔑視の材料として利用されたりもしました。
同じ身長・体重・体表面積に補正して考えても男性の脳の方が女性の脳よりも約100g重いのです。
しかし女性の脳は小さくても神経細胞の総数には男女差がなく、女性の脳の方が神経細胞の密度が高く、一般的な知能IQに男女差は無い事等から、女性の脳の方が効率良く働いているといえます。
構造面での男女差の最も顕著な部分は脳梁の形態です。
脳梁は左右の半球の連合野同士を連絡する交連線維の束の事で、脳梁の後部にある脳梁膨大の形が、女性では丸く膨らんだ球形をしているのに、男性では膨らまないで管状になっているのです。
女性の脳梁膨大が大きいという事は、女性の方が神経線維の数が多い、または髄鞘形成が良くて線維が太い、の両方が考えられ、視覚情報や聴覚情報や言語情報の処理の仕方が男女で異なっているらしいのです。
脳梁膨大の球形化と言語能力テストの関係を調べた研究では、相関関係があると出ています。
脳梁の他にも大脳辺縁系の情報の左右連絡を受け持つ前交連は男女差がハッキリしていて、前交連の断面積は女性の方が太く、情動反応に関する神経線維が多い事から、女性が情動的に繊細である理由になると考えられます。
他にも電子顕微鏡で観た場合、神経回路のシナプスの接合様式に男女差がある事が判りました。
シナプスに性差があるという事は男女で神経回路の配線に違いがある事を示し、脳機能の男女差がここからも生まれるのです。
最近はMRIの検査を受ける人が増え、その結果初期症状がない無症候性脳梗塞がかなりある事が分かってきました。
梗塞の大きさが数ミリ程度の微小な梗塞が出現して段階的に梗塞が増え、本格的な梗塞になりやすい事から隠れ脳梗塞、脳梗塞予備軍ともいわれています。
梗塞を起こす原因にはラクナ梗塞、アテローム梗塞、心原性梗塞があります。
この無症候性脳梗塞の8割がラクナ梗塞(微小な脳梗塞)で、脳梗塞の40%を占めると考えられています。
ラクナ脳梗塞は高血圧等によって脳の深部の極めて細い血管(穿通枝)が詰まり、小さな梗塞が起こります。
特にラクナ梗塞は大脳基底核の内包の周囲、被殻、視床等運動に関する神経細胞付近に発生する事が多いのです。
実際40代で4人に1人、50代で3人に1人、60代2人に1人、70代でほぼ全員といわれ、脳の老化現象といえます。
症状がゆっくり出現し、意識は無くなる事はなく、朝起きた時に手足の痺れ、感覚が鈍くなる、食事中に箸を落とす、ロレツが回りにくい、めまいがする等段階的に悪化し、脳血管性痴呆の最大の原因とも言われています。
専門の医師は、脳の障害や老化等の状態変化は第2の脳といわれる手の運動に現われやすいので、手を使った動作や簡単な体操などで自己診断し、疑わしければ脳ドック検査を受ける事を勧めています。
例えば「両手合わせテスト」で(1)左の手のひらを上に向け、右の手のひらを重ねる(2)右手を反転させて甲を乗せる(3)この動作を繰り返し、左右を逆にしてもう一度試みる。
単純な動作ですが、脳に障害があるとスムーズに出来ません。
また、コップの水を移し替えたり、箸で大豆と豆腐を交互につまむ等、手の器用さや集中力が要求されますが、震えの為に水をこぼしたり、箸の力の加減ができない様だと、隠れ脳梗塞の可能性があります。
隠れ脳梗塞は生活習慣の改善が鍵を握ります。健康な身体が隠れ脳梗塞を防ぎます。
突然やって来て、いきなり生命を奪う怖い病気がくも膜下出血です。脳をカバーしている三層の膜の内、外の硬膜と内の軟膜の間の僅かな空間にクモの巣の様に張ったものがくも膜です。
このくも膜の大切な働きは脳を走る血管を支える事です。
この血管が破裂してしまうと、くも膜下腔の脳脊髄液中に血液が混入してしまいます。
その状態を「くも膜下出血」と言うのです。
くも膜下出血は頭の外傷や血管奇形からも起こりますが、全体の70~80%は脳動脈瘤の破裂です。
この動脈瘤が脳に出来やすいのは脳そのものの構造と機能にあります。
脳の重さは体重の僅か2%前後なのに、エネルギー消費は全体の20%にも達します。
つまり、脳はそれだけ膨大なエネルギーと酸素を必要とする為に、沢山の血液の安定供給が不可欠なのです。
その為に太い動脈が脳を複雑に走っているのです。
頚椎の横突孔を通って左右の椎骨動脈が合流して脳底動脈となり、これと左右の内頚動脈とが一緒になって脳に血液を供給しています。
つまり、椎骨動脈と内頸静脈の間を血管が結び、環状構造のウィリス動脈輪を作り、血液の供給が絶対に途絶えない様な仕組みになっているのです。
そこから大脳に行き渡る血管が沢山枝分かれしています。
この血管群は脳という狭い空間の入り組んだ中を通る為に、身体の他の血管より、かなり無理な方向の転換を強いられます。
その為に血管の走り具合によって血管の壁は激しいスピードで血液が当たり、内壁が侵食され易い所も出て来るのです。
たまたまその様な構造の血管の極端な物に動脈瘤ができ、くも膜下出血を起こしてしまうのです。
脳は、エネルギー源がブドウ糖のみと一部の脂質という偏食で、その上小さい割に体全体のエネルギーの5分のlを使うという大食漢です。
ですから脳にとってエネルギー不足は最も深刻で、低血糖状態では疲労感、イライラ、集中力不足、不眠、めまい、記憶力低下等の症状が出ます。
慢性的な低血糖や、血糖値が激しく上下を繰り返す場合は人格変化や記憶障害、痴呆の危険性を高めます。
またブドウ糖をエネルギーに変えるにはビタミン、ミネラルが必要で、中でもビタミンB群は神経のビタミンともいわれるほど神経活動にとって必須のビタミンです。
B群が不足した場合の神経に関する欠乏症状は下表の通りです。
またビタミンCは抗ストレスビタミンでもあり、不足すると身体症状に加えて疲労感、うつ症状、倦怠感等が現れます。
脳はエネルギーの大食漢であると同時に酸素の最大消費臓器でもあります。
鉄が不足すれば酸素供給のヘモグロビンが減少し脳は酸欠状態となります。
カルシウム、マグネシウムが不足すると神経過敏、イライラ、うつ、集中力低下になる事はよく知られていますが、マンガン(お茶に多い)が不足すると子育ての放棄や子供に対する無関心等を示すといいます。
ビタミンB群が不足すると…(多く含む食べ物)
B1うつ、集中力低下(豚肉、うなぎ、玄米、胚芽米.)
B6: 神経過敏、不眠、月経前緊張症(かつお、まぐろ、さけ、さんま.)
B12:神経過敏、うつ、記憶力低下、集中力低下(レバー、かき、さんま.)
ナイアシン(B3、ニコチン酸): 頭痛、めまい、不安感、ノイローゼ(魚、レバー、肉.)
パントテン酸:居眠り、怒りっぽい(レバー、肉、魚.)
葉酸:神経過敏、うつ、健忘症(レバー.)
身体の運動は、自分の意志で動く随意運動と、その動きのバランスを整えたりスムーズにする働きの不随意運動があります。
随意運動は大脳新皮質の運動野から下行する神経線維が延髄の錐体と呼ばれる所で左右交叉して脊髄に行くので、錐体路系と呼ばれています。
そこを通らない不随意運動の神経系統を錐体外路系と呼んでいます。
その錐体路系が障害される典型的な疾患が脳出血や脳梗塞で、障害された脳の逆側に片麻痺を起させます。
一方、錐体外路系は多数の神経細胞が関与していて、シナプス部分も多く、ネットワークも複雑な為に、加齢に伴う血液循環障害や神経伝達物質の減少、外傷や薬物等様々な原因で障害が起こります。
よく見られる症状が「手の震え」で、この「手の震え」には大きく分けて静止時振戦、体位(姿勢)時振戦、動作時振戦の3種類あります。
パーキンソン病では典型的な静止時振戦があり、リラックスした状態でもピル・ローリング・トレモア(親指と人指し指で丸薬を丸めるような動作)が見られ、緊張すると更に強くなります。
一方、体位(姿勢)時振戦はリラックスした時は起こらずに、両手を前に伸ばしたり、特定の体位を取ると手が激しく震えるもので、代表的なものは本態性振戦です。
高齢者の場合は老人性振戦と呼ぶ事もあります。
この振戦はアルコールを飲むと殆んど消失します。
動作時振戦は動作をする時に手が震え始め、事に動作の終わり近くになればなるほど激しくなります。
これは小脳失調症に伴う企図振戦と呼ばれています。
手の震えではこの3種の他に、意外に多いのが甲状腺機能亢進症によるもので、若い女性ばかりで無く中年過ぎの男性にも起こります。