- Blog記事一覧 -10月, 2019 | 伊勢原市笠窪 鶴巻温泉治療院 - Part 3の記事一覧
10月, 2019 | 伊勢原市笠窪 鶴巻温泉治療院 - Part 3の記事一覧
1億種類もの異物を認識出来る抗体は免疫グロブリン(Ig)と言われる物で、大きさや機能の違いで現在5つのクラスに分けられていて(表参照一順番は血清中で濃度の高いもの順)、各クラスはそれぞれにやや性質の違ったサブクラスを持っています。これらの抗体は
・毒素蛋白と結合して中和させる
・ウイルスや細菌を固まりにして凝集させ感染源の数を減らす
・異物に穴を開ける
・補体と一緒になってマクロファージなどに取り込みやすくさせる
等の働きをします。この様な働きは主にIgGとIgMとが中心にりますが、これらは粘液中の蛋白分解酵素によって分解されるので、粘膜では働けなくなります。すると今度はIgAが異物に付いて粘膜上に付くのを妨ぎ防御するように、それぞれの働きで協調して体を守っているのです。
免疫グロブリンの種類
IgG 組織内防御、血清の中で一番多いわゆるγグロブリンの事。胎盤を通して胎児を守る
IgM 組織内防御赤血球凝集反応に対する抗体
IgA 粘液中での防御ほとんどは分泌型だが血清型もある。母乳に多く含まれる
IgE 過敏症(アレルギー)反応寄生虫排除
IgD 微量存在し、よく分かっていない
免疫系の最も大切な機能は生体防御だと一般に理解されていますが、それは結果であり、本来の機能は自己と非自己を見分ける事です。身体の中で自己主張する部分は胸腺で、成人では甲状腺の下部胸骨の裏にあり子供の拳ほどの大きさで、中にはリンパ球T細胞がぎっしり詰まっています。胸腺を学校に例えれば、T細胞は生徒、胸腺上皮細胞が教師です。まだ未熟な段階で入学して来て、胸腺上皮細胞の遺伝型と同一の物を自己だと認識する教育を受けるのです。具体的には、骨髄からの幹細胞が胸腺に到着し、まずT細胞抗体受容体の遺伝子断片の再構成が始まります。しかし全くランダムに行われるので、目的に添って作られる事は無く、ほとんどのT細胞は「自己反応性T細胞」として生まれてしまいます。胸腺で出来るT細胞は殆どが危険分子となるので、アポトーシス(プログラムされた細胞死)により死滅します。また、胸腺上皮細胞上の自己成分と全く反応出来なかったT細胞も何の刺激も与えられない為に死滅、無事卒業出来る5%にも達しません。自己と極めて弱く反応したT細胞だけが増殖のシグナルを与えられ分裂増殖して、末梢リンバ組織のT細胞となり免疫反応に携わる様になるのです。
免疫系には様々な役割を担った細胞や物質がありますが、この中で免疫細胞の多様な生理機能を調節する重要な役割を果たしている蛋白質分子のーつがサイトカインです。サイトカインは炎症、発痛物質とのイメージですが数百種類あり免疫に深く係わっています。外からの刺激によってT細胞やマクロファージ、B細胞等で合成され免疫系が正常に働く様に作用しますが抗体とは違う幾つの特徴があります。サイトカインは寿命が短く超微量で産生細胞周辺にある細胞に作用します。サイトカインは元々どの抗原にも働きます。また、サイトカインには多くの種類があり相互にネットワークを形成していて、多様な働きと重複性を示しながら作用を調節しています。このサイトカインの中で免疫系の中心的な働きをするのが18番まで明らかになっているインター(細胞間)ロイキン(白血球)です。このインターロイキンは炎症反応の促進やT細胞の活性や抑制など多様な働きがあります。この他にも抗ウイルス作用をもつインターフェロン(INF)、腫瘍壊死因子(TNF)、マクロファージの抑制と好中球の活性化を促すトランスフォーミング増殖因子(TGF-β)等があり、血液細胞の分化・増殖等に関わるコロニー刺激因子(CSF)などもサイトカインのネットワークの一員なのです。
ストレスは大脳辺縁系→視床下部→下垂体→副腎へとホルモンを通じて伝えられ、副腎は最終的にコルチソールを分泌して免疫を落とします。これがセリエのストレス学説です。体が危機に直面した場合免疫を落とすのでは無く高めた方が良さそうにも思えるのですが、体はまず神経とホルモンとでストレスに対処します。エネルギーを沢山必要とする免疫はとりあえずストップさせるのでしょう。ところで視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRH)は下垂体に働きかけるだけでなく脳内ホルモンであるエンドルフィンの生成も刺激しています。エンドルフィンは免疫系ではT細胞を増やしたり活性化させ、更にナチュラルキラー細胞やマクロファージの活性も高めます。視床下部から放出されるホルモンは9種類で、その内CRHも含めて5つが免疫に直接作用する事が分かっています。また交感神経の興奮で副腎髄質からアドレナリンが分泌しても免疫の反応は高くなります。この様にストレスは多くのルートで免疫に作用する訳で、免疫に対してもプラスに慟いたりマイナスに働いたりと、一様ではありません。ホルモンや神経伝達物質がリンパ球でも作らていますし、体は神経・内分必・免疫の各系で同じ物質を使っている事が分かって来ています。正に神経とホルモンと免疫は三位一体の関係にあると言えます。
「血液の癌」と言われている急性骨髄性白血病や再生不良性貧血病等の医療には骨髄移植をします。移植する為には提供者と移植者の白血球の型(HLA)が適合する人から骨髄を採取するのですが、全身麻酔をかけたりして提供者に肉体的な負担も多いのです。そこで提供者の負担が少なくて済む方法として赤ちゃんのへその緒や胎盤から採取した臍帯血を使うのです。隋帯血には骨髄と同様、赤血球、白血球、血小板など血球の元である造血幹細胞が含まれ増殖力も強いのです。また免疫能力が低い事から、骨髄移植よりも拒絶反応や移植片対宿主病も少ないのです。課題としては採取量が少ない為に小児には移植出来るのですが、成人には出来ない事です。東北大学血液免役科張替秀郎教授らは研究を進めています。またこの細胞を特洙な培養法で50倍に増やして、成入に移植し成功した報告がされています。また骨髄や臍帯血の造血幹細胞の移植で慢性関節リウマチ等の自己免疫疾患の患者に移植する事で改善をしようという試みがあります。これはたまたま骨詮移植を受けた患者が併発していな自己免疫疾患が改善してしまったという事が報告されたからです。もし効果がある事が分かれば、現在、厚生労働省が特定疾患(難病)指定している130の半数の自己免疫疾患に対してこの医療行為が可能になるのです。
身体に良いと言う事で運動をしますが、その運動は免疫システムから見ると適度な運動が免疫力を高め、感染症、癌、心臓病から守ってくれます。免疫力を高める適度な運動とは、有酸素運動で一日最低20分を週3~4日行う事です。アメリカ、スポーツ医学カレッジによると、トレーニングのし過ぎによる免疫低下を防ぐ為には最大心拍数が60~80%が理想です。自分の心拍数を計算する方法は220から自分の年齢を引きます。50歳の人なら、170になり、その60~80%である102~136の心拍数を20分間行うのが最も効果が高いそうです。適度な運動をすると免疫力は強化され、その中でマクロファージ、顆粒球、NK細胞の働きが活性化され、バクテリア、ウイルス、癌細胞を活発に食べる様になります。この免疫変化は運動後、15分から2時間で運動前に戻り、一日中続くものではありません。過度な運動では運動後にはリンパ球の増殖能力が低下し、免疫力も落ちます。過度な運動は血中のストレスホルモンの量を増やし免疫力を弱める傾向にあるのです。また交感神経からアドレナリンが多く放出されると顎粒球やNK細胞の働きが弱くなる事も研究で報告されています。ハードな運動をする人は感染症に罹りやすいと言われるのはこの為です。休養や食事で予防する事が大切になるのです。
免疫系の重要な仕事に抗体の産生があります。自然界には多数の抗原物質を持つ病原体があります。この抗原と抗体は良く比喩的に鍵と鍵穴に例えられますが、この鍵と鍵穴の関係は抗原と抗体の分子全体についてでは無く、それぞれの分子が特徴的に持つアミノ酸数個分に相当する部分によって成り立っています。この抗体を産生する為には抗原提示細胞、T細胞それにB細胞等の免疫系の細胞が協力して働きます。抗原提示細胞が異物の侵入を確認してT細胞に情報を伝えると、T細胞が抗原のと、その指令を受けたB細胞が分化して形質細胞(抗体産生細胞)になり、その情報のアミノ酸分子を合成・分泌します。しかし、この抗体を作る能力は人の遺伝子で見るとせいぜい数万個程度しか無いのに、億単位の違った鍵穴を持つ抗原に対抗出来る事が謎でした。この謎を解き明かしたのがノーベル賞を受賞した利根川進です。彼は抗原の鍵穴であるレセプターと結合するB細胞の鍵は単一の遺伝子では無く、複数の遺伝子の断片が結合している事を明らかにしたのでした。その為ランダムに一つ選ばれて結合するのでその組み合わせは膨大になり、億単位の抗原の鍵穴に対する鍵を作る事が可能になったのです。
免疫系の中でサーカディアンリズム(日内リズム)と連動して働いているのがリンパ球と白血球の60~70%を占める頼粒球(好中球、好塩基球、好酸球)です。人間は日中には身体を活動させている為に自律神経系の交感神経が緊張状態になり、夜間には内臓の活動を促進させる副交感神経優位になっています。日中には交感神経を刺激するアドレナリンが増していますが、顆粒球はこのアドレナリンのレセプターを持っています。またリンパ球にはアセチルコリンのレセプターがあります。その為類粒球は日中に増加して、リンパ球は夜間に増加するリズムが生まれるのです。他の血液成分である赤血球と血小板も自律神経系に影響を受けて顆粒球と共に増加傾向を示します。この赤血球や顆粒球の増加の理由は活発に身体を動かす為であり身体が傷ついて侵入した細菌をやっつける顆粒球を増やしておく事が必要だからです。また、夜間にリンパ球が増えるのは食べ物と共に侵入した病原体を腸管免疫系のリンパ球が処理する為です。また、実験でも日中の顆粒球はしっかり活動するとより増加して、それに呼応する様に夜間のリンパ球も増加する事が確かめられています。現代の様に運動不足と不規則な生活リズムはこの免疫のリズムを大きく狂わせてしまうのです。
老化のひとつに免疫の低下があります。年をと取ると共に心臓や肝臓など臓器の重量は低下しますが。中でも脾臓と胸腺は最も減少率が激しいものです。特に胸腺は思春期以降急速に縮み、40代にはピーク時の重量の10分の1程の重さになります。免疫力が自力で働き始めるのは生後3ヶ月頃からで、20歳位でピークになった後は低下の一途。をたどり免疫力は70歳頃には10%ほどに低下してしまいます。免疫機能は低下するのに自己抗体は上昇してしまうので自己免疫疾患も増えやすくなります。これはT細胞の教育を担っている胸腺の萎縮によって説明が付くでしょう。また食細胞による免疫力は年を取っても保っているのではないかと考えられていましたが、マクロファージではインターフェロンy(ガンマー)やインターロイキン1Lに対する反応が鈍くなって活性されない為サイトカインを産生する能力等が低下します。また殺菌作用や腫瘍障害活性も低下しています。この様に生体防御の第一段階の戦力が弱くなっている訳ですから日和見感染を含む感染症に罹り易くなります。60歳以上の直接の死因の半分は感染症裂症ですから高齢者にとって最もも恐いのは感染症だといえます。