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アレルギーは皮膚や粘膜に出やすいのですが、それは肥満細胞がアレルギー反応に深く関与しているからです。
肥満細胞と言っても脂肪を貯め込んでいる白色細胞や褐色細胞ではありません。細胞質の部分が大きく多くの化学物質の顆粒を含んでいる為肥満して見える為にこの名前があります。
この肥満細胞はlgE受容体を持つ細胞の1つで、特に気道や皮膚等の身体の表面に近い部分に多数存在しています。
異物が侵入すると免疫系のB細胞が放出したlgE抗体が肥満細胞の受容体と結合すると、そこにブリッジ構造をつくります。
このブリッジ構造によって細胞内に変化が起こり、アレルギー反応を起す多くの化学伝達物質が放出されます。
今まではこの化学物質の中でアレルギーを引き起こす犯人はヒスタミンと考えられていました。
最近の研究で更に新しい共犯者の物質が関係している事が明らかになっています。
それは肥満細胞にあるアラキドン酸から生成されたロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサン等です。
これらの化学物質も炎症を引き起こす事は分かっているのですが、その具体的な作用については十分に明らかにされていません。
また、アレルギー反応を引き起こすこれらの化学物質をケミカルメディエーターと言いますが、肥満細胞の他に、白血球の中の顆粒球(特に好酸球と好塩基球)にも存在しています。
しかし、肥満細胞の存在していない所ではアレルギーは発症しないと言われている様に、アレルギーの中心的な役割を果たしているのは肥満細胞である事は間違いないところです。
アレルギー体質を持つ子は成長する時期に従って色々な症状を次から次に発症して行く事が多く、これをアレルギーマーチと言います。
8割以上が最初の症状はアトピー性皮膚炎で、たまに気管支喘息から始まる事もあります。
アトピー性皮膚炎から気管支喘息、アレルギー性鼻炎へと移行したり複数の症状を併発すると言うのが最も多いパターンです。
こうしたアレルギー体質は親からの遺伝的要素が大変大きいものですが、その事を踏まえた上で、胎児の頃からアレルギーマーチを防ぐ工夫が必要でしょう。
食べ物が抗原になる感作は胎児期から起こりますから、妊娠8ヶ月以降から抗原性の強い卵を食べるのを控える(母乳の場合は授乳8ヶ月まで)だけでもアトピー性皮膚炎や喘息の発症を半分ほどに抑える事が出来ます。
また牛乳も抗原性が高いのでアレルギー体質の母には妊娠中には奨められません。lgE値が高いとアレルギーになる可能性が高いのですが、牛乳はこの値を高める事も分かっています。
離乳期以後は食べ物だけでなくダニやペット、その後も花粉等で感作されますが、lgE値の上昇が落ち付く6歳頃までは抗原性の強い食べ物や環境をコントロールして最初のアレルギー症状を発症させない事が、アレルギーマーチの連鎖を防ぐ有効な予防と言えるでしょう。
アナフィラキシーとは抗原が体内に入って急激に起こる全身性のアレルギーで、時にアナフィラキシーショックを起こして死をもたらす事もあります。
よく聞くのはハチ毒によるアナフィラキシーショックで、毎年日本でも30人から50入が死亡しています。
アナフィラキシーは以前に特定のアレルゲンによってlgEが出来ている所に、また同じアレルゲンが入って肥満細胞が刺激され、細胞内の化学物質(ヒスタミン等)が一気に放出される事で起こります。
症状としては呼吸困難、血圧低下、喘息様発作、意識障害等の全身症状を起こす物です。
ほとんどはその物質を取り入れて5分から15分以内に起こる事が多く、ショックは半数で1時間以内、大部分は5時間以内に治まるか死亡します。
死亡の原因は7割が呼吸器障害、2割強が循環器障害による物です。起因する物質はペニシリンなどの薬剤を始め、昆虫毒や食品等多岐に渡ります。
また運動誘発アナフィラキシーは運動の最中や後にアナフィラキシーショックを起こす物で、大抵は運動前に特定の食べ物を食べた後に発症する事が多い様です。
食べ物としては海老や蟹等の甲殻類によるのは10代~20代に多く、中年以降では小麦製品による事が多い様です。
疲労や睡眠状態、風邪を引いていた等のコンディションによっても影響を受けやすいのですが、一生繰り返すと事は少ないようです。
腸には食べ物だけで無く細菌や毒物等が入って来ますから、吸収する物と、排除しなければならない物を分別する腸管免疫系と言う自己防御反応システムを持っています。
異物が腸管を刺激するとB細胞が作られ、それによってlgAが出来てアレルゲン等の余計な物が体内に入らない様にします。
一方で経口免疫寛容が働いてlgEやlgGを抑制する事で食べ物等に対してアレルギーが起こら無い様にしています。
ところで腸内には悪玉、善玉の色々な常在菌がいますが、これらの腸内細菌が免疫寛容に大きな働きをしているのです。
マウスの実験による物ですが、腸内細菌が居ないマウスは経口免疫寛容出来ずに必要な物にまで抗体を作ってしまいます。
人においてもこの様な腸内細菌が免疫寛容を成立させているという事が言えるでしょう。
また免疫寛容は自分の腸内細菌に対して起こるのですが、潰瘍性大腸炎やクローン病では自分の腸内細菌に対する免疫寛容が無くなった為に発症するのでは無いかと考えられます。
ところで上記のマウスも若い内に腸内細菌を定着させると免疫寛容が回復するのですが、年をとってから腸内細菌を定着させても免疫寛容は回復しません。
若い内に良好な腸内細菌叢を作る事がアレルギー予防になるのかもしれません。
副作用の無い薬は無いと言われますが、薬による異常反応の全てが薬物アレルギーと言うわけではありません。
異常反応は薬物の常用投与量の間違いや複数の薬剤の飲み合わせによって起こる場合が80%を占めています。
しかし、残りの20%には投与量は正常かあるいは少量でも異常反応を起す事があります。その中に、免疫反応による場合とそうでない場合があり、明らかに免疫反応に基づく異常薬物反応だけが薬物アレルギーなのです。
この薬物アレルギーはアレルギー体質の人がそうで無い人より起こしやすい訳では無い様です。
ただし、抗生剤にアレルギーのある人の子供が抗生剤にアレルギーになる率は高いとされています。
またアトピーの人では造影剤によるアナフィラキシー様反応が起こりやすいと言うデータがあります。
この薬物アレルギーの症状は多彩で、関節痛やリンパ節の腫脹等の他全身的な症状や呼吸困難や血圧低下などのショック症状を起したり、特定の臓器を痛めつけ重症化する場合もあります。しかし、多くの場合その80%は薬疹です。
薬疹は投与量の間違いでも起こりますが、アレルギー性の薬疹は、リンパ球や抗体が出来てから発疹が生じますから、薬を飲み始めてから一定の期間(1~2週間が感作期間)があります。薬を飲んで直ぐに出て来る事はありません。
また、1回でも薬物アレルギーになると、同じ薬を内服するといきなりショック症状を起したりする場合もありますので、侮ってはいけません。
三大栄養素の一つである脂肪の主成分は脂肪酸ですが、その作られ方は体内で出来る物と、体外から摂取する物があります。
体外から摂取する脂肪酸にはリノール酸と㌁リノレン酸があり、この脂肪酸が無いと皮膚炎や成長障害を起こします。
またその摂取量のバランスでリノール酸が高いような食生活を続けているとアレルギー炎症を起こしやすい体質になります。
リノール酸はベニバナ油やコーン油等の植物油に含まれます。
アルファリノレン酸はシソ油やナタネ油に含まれます。アレルギーを起こす場合、アレルゲンが肥満細胞に来るとlgEと反応を起して細胞を変化させてロイコトリエン、プロスタグランジンと言ったアレルギー炎症の伝達物質を作るのです。
この伝達物質の元になるのが細胞膜にあるアラキドン酸で、これはリノール酸が体内に入って変化して出来るのです。
ですからリノール酸を多く取るとアラキドン酸を多く作る事になるのです。反対に㌁リノレン酸は体内に入ると魚介類にも多く含まれているエイコサペンタン酸(EPA)になり、伝達物資の産出を抑制します。
愛知学泉大家政学部教授の鳥居新平氏は37人のアトピー性皮膚炎の患者(平均12.8歳)にアルファリノレン酸強化食品を4週間投与した結果、プラセボ投与群に比べて皮膚炎の著明な改善が認められたと言う臨床報告をしています。
アレルギー患者には脂質のバランスを考えた食事が大切なのです。
アトピー性皮膚炎は以前は「乳幼児に起こる皮膚湿疹」と言う捉え方がされてました。日本皮膚科学会は「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、搔痒のある湿疹を主病変とする疾患」と定義し、患者の多くがlgE抗体を産生しやすい体質を持ち、家族にアレルギーを持つ人がいるというアトピー素因を持っています。
アトピー性皮膚炎はしばしば他の湿疹と見分けが付きませんが、①年齢と共に湿疹の現れる部位が変化する②左右対称性に見られる③強い疹みが皮疹出現前に起こる、といった特徴があります。
この左右対称性に見られるという特徴は、他の皮膚炎と異なり、アトピー性皮膚炎に体質や遺伝的素因が関与している事を示しています。多くは小学校高学年になると自然に良くなるのですが、最近では思春期以降に持ち越す例が増えています。
また年齢によって原因アレルゲンは異なり、腸管の発育が未熟な0~3才までは食物アレルゲンの影響を強く受け、4才以降はダニやカビなどの環境アレルゲンが主な原因といわれます。
対策には原因アレルゲンの除去療法や減感作療法や薬物療法以外にも、体質改善法や民間療法まで実に様々な対策法があり、それだけに根治の難しいアレルギー疾患だと言えます。
食品添加物とアレルギー現在使われている食品添加物は約850種、その中で合成食品添加物は約350種ですが、ある種の合成食品添加物はじんましん、鼻炎、気管支炎、浮腫等のアレルギーを起こす事が知られています。
合成添加物でなぜアレルギーが起こるのか詳しいことは別っていませんが、lgE抗体が増える為では無い様です。と言う事は、アトピー素因を持つ、持たないにかかわらず起こりえると言う事を意味します。
アスピリンや非ステロイド系抗炎症剤によるアレルギーを持つ人は安息香酸ナトリウムやパラオキシン安息香酸エステル類、黄色4号によって喘息が誘発される事がある事からすると、添加物によるアレルギーはアスピリン感受性のたぐいだと見てよい様です。
アスピリン感受性は家族内発症は余り無いので、遺伝的要因はないと考えられます。
特に要注意の合成添加物
保存料: 安息香酸ナトリュウム パラオキシン安息香酸エステル贈(パラペン)
酸化防止剤:亜硫酸水素ナトリュウム
着色科:黄色4号,赤色102号
調味料:L・グルタミン酸ナトリュウム
アレルギー疾患の増加は先進国一般の傾向となっていて、増加傾向にあると見られています。
これはアレルギー体質を持つ人の増加では無く、アレルギーを発症させる環境要因が増えているからだと考えられます。
日本では特に住環境の変化が大きく冷暖房が整えられるに従って部屋は密閉化し、その為ダニの繁殖は数十年前に比べて1.5倍になっていると言います。
カーペットの使用や畳の虫干しをし無くなった等の影響も大です。
室内でペットを飼う事も増えた為そのペットの毛やフケなどもアレルゲンになります。
密閉化によってカビの影響も受けやすくなっています。
また抗原性を持つアレルゲンその物の種類が増加している事の影響も見逃せません。
これまで身の回りに無かった化学物質、例えば建築材料(塗料、接着剤)を始め、洗剤や殺虫剤、プラスチック等の化学物質もアレルギーを促進します。
ホルムアルデヒドの発癌性等は良く知られていますが、発癌性だけで無くホルムアルデヒドに暴露されると様々なアレルゲンによる感作が促進されると言う報告もあります。
つまりアレルゲンその物を増加させていると同時に複合的にアレルギーを増悪させていると言う面も無視出来ません。アレルギーは複合汚染の結果だとも言えそうです。
アレルギーの即時型反応のlgE抗体が関わるI型アレルギーには花粉症や喘息やじんま疹、アトピー性皮膚炎等があり、対応策には原因となる抗原の防除や減座作療法や薬物療法があります。
選薬としては①I型アレルギー反応の中心である肥満細胞に作用して、症状の発現を抑える抗アレルギー薬(化学伝達物質遊離抑制薬)と、②発現している症状に対して速やかに効く対症薬があります。
①の抗アレルギー薬の薬理作用は、肥満細胞内のカルシウム・イオン制御によって、ヒスタミン等が遊離したり、ロイコトリエン等が合成されるのを防ぐ働きをします。
抗アレルギー薬は、ステロイド等の抗炎症性のある対症薬と違って作用が穏やかでゆっくりと効き、投与してから効果が現れるまで2週間はかかります。
だから花粉症予防の様に、アレルゲン飛散開始時期が予測出来る場合には、2週間前から快い始めて花粉飛散中は断統的に使えば、花粉症の全ての症状を軽くする事が出来るのです。
この様に症状の発現を前もって防ぐと言う意味から、抗アレルギー薬を予防薬とも呼んでいます。
抗アレルギー薬の一部には抗ヒスタミン作用があり、抗ヒスタミン薬よりも中枢抑制作用や抗コリン作用等の副作用が少ないのが特徴です。
有効性と安全性が高いと言われ、アトピー性皮膚炎や喘息や花粉症に、広く使用されています。
花粉症は抗原とlgE抗体の結合による典型的な即時型アレルギー反応です。日本の花粉症の8割はスギ花粉症ですが、抗原としての花粉は50種以上あります。
60年代まで日本に花粉症は知られていませんでした。
戦後日本では・58年以降、天然林を皆伐して人工造林するという拡大造林政策の元で、スギ1種類だけが一斉に植えられました。
そして76年にスギ花粉症の最初の大発症が起き、以来何度も大発症しています。
年々スギ花粉のlgE抗体を持つ人が増え、子供の花粉症も増えています。
世界的にも「都市化」により花粉症の増加がみられ、花粉症の増加と大気汚染、特にディーゼル排出粒子との関係が深い事が分かっています。
マウスの実験ではディーゼル排出粒子に特異lgE抗体産生完遂作用のある事が確かめられました。例えば東京の多摩地区でスギ花粉が多い所よりも、花粉源から離れてはいますが大気汚染の多い大田区の方がスギ花粉症有病家が高いのです。
また都会の気密度の高い住居ではカビ・ダニ等が発生しやすく、花粉症患者の約40%がダニにもアレルギーを起こします。
花粉症には“減感作療法”という、薬によって予防する方法が最も効果的だといわれています。この方法は、数ヶ月から数年にわたって花粉症のアレルゲンを注射し続けるもので、約70%の患者に効果が認められています。
ですが、効果が表れるのには、個人差が大きいとされていて、絶対的な効果ということではないようです。
そこで“DNAワクチン療法”が開発され、今までの減感作療法より安定した成果が期待されています。
“DNAワクチン療法”とは、スギ花粉からアレルギーの元となる花粉のDNA(抗原遺伝子)を取り出して「プラスミド」というベクター(遺伝子を運ぶ箱)に組み込んで、花粉症患者の体内に送り込み、アレルゲンへの耐性を高めていく方法です。DNAワクチンは体内でアレルゲンが作られていく仕組みなのです。