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動物性脂肪と糖尿病

2021.03.04 | Category: 糖尿病

糖尿病はカロリーの摂り過ぎと関係が深いのは確かですが、糖尿病になる人が肥満だとは限りません。

最近の日本人が過食であると言う見方は常識になっていますが、実際はエネルギーの摂取量の増加は1960年代の後半がピークで、その後減少気味になっているのです。

もちろん個人差は大きいでしょうが、摂取エネルギーだけを考えるならば、糖尿病患者とその予備軍が急激な上昇傾向にある事が説明出来ないのです。

従って問題は摂取するエネルギーの過剰だけで無く、その内容にもあると言えるでしょう。

日本人の脂肪摂取は急激に増加し、戦前の3倍とも言われますが、この脂肪(動物性脂肪)の摂り方に問題があると見られるのです。

脂肪酸の中でも飽和脂肪酸の過剰な摂取はインスリン抵抗性が強くなる事が動物実験でも確かめられています。

細胞膜を作っているリン脂質の中で飽和脂肪酸が多くなると、細胞膜のインスリン受容体の機能が悪くなって細胞内への糖の取り込みが悪くなる、つまりインスリンが充分に作用し無くなるのです。

動物性脂肪には飽和脂肪酸が沢山含まれていますから、動物性脂肪の摂り過ぎはインスリン抵抗性をもたらし糖尿病に成りやすくさせると言えるのです。

カロリーを摂り過ぎない事はもちろんですが、飽和脂肪酸を摂り過ぎない様にすると言う事も大切です。

糖尿病と筋肉

2021.03.03 | Category: 糖尿病

体は血糖値を一定にする為に、膵臓のインスリンや肝臓の働きによって調整しています。

特に食事の後は唾液アミラーゼや十二指腸の糖質分解酵素などの働きで大量のブドウ糖が血液に流れ込む事になります。

当然血糖値は高くなります。これらのブドウ糖は門脈から肝臓に流れ込み、50%は取り込まれ、その内の10%はグリコーゲンに、60~80%は脂肪に変換され肝臓内に貯蓄されます。

残りのブドウ糖は、主に筋肉細胞と脂訪細胞に取り込まれる訳です。そのプロセスでインスリンが細胞の扉を開く鍵の役目をする訳です。

ところで筋肉細胞に送り込まれたブドウ糖は筋肉が運動をしていないと、余剰のエネルギーになります。

そこで、筋肉細胞では、余剰のブドウ糖をグリコーゲンヘと合成して、運動時のエネルギー供給のストックとして、筋肉細胞内に貯蔵して行くのです。

体重70kgの人のグリコーゲン貯蔵量は肝臓では約70gですが、筋肉にも約200 gも貯蔵する事が出来るのです。

ところで慢性的に運動が不足していると、筋肉細胞のグリコーゲンが満杯になっている状態が続いてしまい、筋グリコーゲン合成酵素活性が低下してしまいます。

その事は結果的にインスリン抵抗性を招いてしまうのです。多くの糖尿病はインスリンの分泌不足と共に、インスリンの作用不足が加わる事によって発症しているので、筋肉の運動が必要な訳です。

血糖値を正常に保つプロセスの中で肝臓と脂肪細胞と共に筋肉細胞の役割は非常に重要なのです。

糖尿病の分類と診断基準

2021.03.02 | Category: 糖尿病

以前糖尿病は「インスリン依存型」「インスリン非依存型」と言う様に、糖尿病の原因による分け方で分類されていました。

しかし今では病気の原因と症状の段階を併記する様に変わって来ています。インスリン依存型を1型、インスリン非依存型を2型とし、特定の原因(造伝子の異常、慢性膵炎や慢性肝炎等)によって引き起こされる糖尿病をその他の型としています。

更に妊娠糖尿病も別に分類しています。ただし実際に問題となるのは病気の段階ですから、病態の分類が採用される事になり、正常領域・境界値域・糖尿病領域とに区分し、糖尿病領域でもインスリン非依存状態とイスリン依存状態とに分けたのです。更に診断基準も厳しくなり、正常な血糖値(血液1dl中のブドウ糖の量)をこれまでは空腹時140mg以下としていたのを110mg未満まで引き下げています。

日本人はインスリンの出方が悪い事が多い為、空腹時血糖値が126mg以下であっても、ブドウ糖経口負荷試験の2時間値が200mgになる人が4割ほどいるといわれています。

糖尿病を見逃さない為にも空腹時の検査だけで無くブドウ糖経口負荷試験を受けることが必要です。

脂肪の蓄積は赤信号

2021.03.01 | Category: 糖尿病

肥満には内臓脂肪型と皮下脂肪型がありますが、日本人は遺伝的に内臓脂肪型が多く、その内臓脂肪が糖尿病の危険因子なります。

脂肪細胞は内分泌細胞で、様々なホルモン(生理活性物質アディポサイトカインと総称)を分泌している事が分かってきました。

標準体重の正常な状態にある脂肪細胞は必要に応じて適切にホルモンを放出しますが、内臓脂肪が肥大、蓄積したBMI25以上の状態になると過剰に放出されたり、逆に放出されなくなるホルモンがあるのです。

蓄積された脂肪細胞からは、TNFα(腫瘍壊死因子a)が過剰に分泌されています。その作用は筋肉の糖の取り込みを促すインスリンの働きを抑え、インスリン抵抗性が増して、糖尿病の発現に関連する事が分かっています。逆に放出され無くなるホルモンにアディポネクチンがあります。

脂肪細胞から分泌されるのですが、脂肪が肥大、蓄積されるとその分泌量が少なくなるのです。このホルモンをインスリン抵抗性の高いマウスに与えると抵抗性が改善されるのです。標準体重の人の血中からはアディポネクチンが極めて濃度が高いのです。

また皮下脂肪が増えても変化しないのですが、内臓脂肪が増えると低下し、糖尿病患者を調べると低下している事が分かりました。

日本人の65%は太ってくると血中のアディポネクチンが低下する遺伝素因を持っているとされています。

内臓脂肪が蓄積される陽な食習慣は糖尿病を抑制するアディポネクチンが減少し、インスリンの抵抗性をもたらすTNFαの分泌を増やすのです。

過食と運度不足の為に脂肪細胞のバランスが崩れた結果が肥満からなる糖尿病につながるのです。内臓脂肪は運動すれば燃焼されやすい脂肪ですから、とにかく脂肪を蓄積させない事です。

日本人の糖尿病

2021.02.28 | Category: 糖尿病

2型糖尿病の発症は民族差や地域差が大きく、アメリカのアリゾナに住むピマ・インディアンは成人の半数が糖尿病です。

その原因のひとつが遺伝子の一箇所に変異が起こるSNPs(―塩基多型)で、β3アドレナリン受容体遺伝子にー塩基多型が起こっている事が分かっています。

β3アドレナリン受容体は熱産生、脂肪分解に関係していて、そこが変異していると基礎代謝や脂肪の分解能が低下し、腹部肥満、高血糖、血圧上昇、インスリン抵抗性を引き起こすので糖尿病になりやすいというわけです。

しかし考えてみればこの変異はエネルギーの節約遺伝子ともいえるわけで、厳しい食料事情の中ではかえって生き延びるには有利な変異だったといえます。

さて、日本人は同様の変異を持っている人が多い事が分かっていて、その頻度はイヌイット、ピマ、インディアンについで世界3番目に高く、欧米人の2~5倍にもなります。

欧米人では高度の肥満体型をよく見ますが日本人ではまれです。にもかかわらず日本人に2型糖尿病が多いのはこの遺伝子の変異によるものという事がいえるのです。

この変異を持つ人はそうでない人に比べて糖尿病の発症が約6年位早く、減量がしにくく、インスリン抵抗性や血糖のコントロールが改善しにくいのです。

さらに網膜症や腎症にもなりやすいようです。2型糖尿病の患者さんが全てこのパターンではありませんが、厳しく日常生活を律しても体重や血糖値をなかなかコントロールできない人はこの変異を持っている可能性が高いといえます。

また家族の中に糖尿病発症者がいる人はこの遺伝形質を持っているものと考え、一層の注意が必要です。最もメキシコで伝統的な食事と労働をしているピマ、インディアンはアリゾナのピマ・インディアンに比べて平均で26kgも体重が少なく糖尿病も少ないのですから、食生活や環境でコントロールできるという基本は日本人でも同様です。

老人の風邪

2021.02.27 | Category: かぜ

老人の多くは複数の病気を抱え、抵抗力も弱くなっているので、風邪にもかかりやすくなっています。

お年寄りの風邪は、熱が余り高く無く、食欲が無い、全身がだるい、ちょっと息切れがすると言った症状を訴える程度で症状が軽いように見える事があるので油断しない事です。

この時は身体の抵抗力も落ちるので、風邪ウイルスが進行して肺炎を起したり、口腔や上気道にいる常在菌が繁殖して日和見感染を誘発し肺炎へ進行したりします。

特にインフルエンザの流行時には肺炎の発生率は7~15%と言われ、インフルエンザによる電撃型肺炎を起すと発症後1~2日で死亡する事があります。

また嚥下機能の低下と共に気管入口の閉鎖機能も低下し、食物や細菌が侵入しやすくなり、これを誤嚥性肺炎と言い、老人の肺炎の10~30%を占めています。

肺炎は65歳からの死因を見ると第4位、85歳以上になれば第3位と命取りの病気になるので、老人が風邪に罹って、1週間経っても体の不調を訴えたら肺炎に注意が必要なのです。

また、老人は足腰が弱っているので絶対安静が艮く続くと風邪は治っても、足腰が立た無くなってしまい、風邪がきっかけで寝たきりにてしまう事があるので、寝たきりになら無い様にする事が大切です。

風邪薬の飲み方

2021.02.26 | Category: かぜ

風邪をひいた時の発熱は身体に対する警戒信号と防御作用で、各種免疫系に緊急体制を敷く為に必要で、発熱して直ぐ解熱剤を使用するのは望ましくありません。

鎮痛・解熱剤を安易に使うと風邪をかえって長引かせるので、使用するなら38度以上の熱が続いて食欲が無い時とか、身体中が痛むと言う場合です。

子供は高熱が続くと熱性痙攣が心配なので、身体を冷やしつつ様子を見て、38.5度を越えて苦しそうであれば1回限りの頓服の様に使用するのが安全です。

よく使われるアスピリン(バファリンを含む)はインフルエンザや水痘の時に使うと、小児の脳症と肝臓の脂肪変性を起こすライ症候群という危険な病気を発症させる事があるので注意が必要です。

A群β溶運菌による扁桃炎の場合、喉の痛みや高熱が出てから全身の皮膚に化膿が起きるまで悪化すると、リウマチ熱や急性糸球体腎炎になる事があるので、直ちに抗生物質を使用しなければなりません。

また喘息や肺気腫・過去に肺結核の持病のある人・心臓病や糖尿病のある人・リウマチなどでステロイド剤を使っている人等は細菌感染を起こしやすいので、風邪から回復しても体調を見ながら抗生物質を続ける必要があります。

高齢者では他の病気で出されている薬との相互作用が問題です。総合感冒薬の中に含まれている気管支拡張剤には血圧を上げる物があり、副交感神経遮断剤では尿閉が起こります。

高齢者は代謝能力が低下していて薬の体内滞留時間が長く、血中濃度が高くなり、思わぬ副作用が起こるので注意が必要です。

風邪は夜に制すべし

2021.02.25 | Category: かぜ

風邪の潜伏期間は短いので、うつったかなと思った翌日には風邪症状が出ると言う事もあります。

しかし、大抵は朝起きた時に何とも無ければ、その日中はあまり風邪の症状は出無いものです。と言うのも、風邪は夜ひく事が多いからです。

風邪のウイルスや菌は鼻や喉等の上気道の粘膜に感染すると、その場所で急激に増殖し炎症を起します。腫脹や疼痛等の症状もその感染部位から始まる事が多いのです。

しかし日中は飲食やおしゃべりの為口中の唾液も多く、粘膜に定着する間もなく胃へと送られます。

しかし夜になるとその条件が崩れます。副交感神経が優位になるので消化活動は高まりますが、唾液の分泌は減り、口中は乾燥状態になります。

また嚥下は物理的に菌やウイルスを洗い流すだけで無く、嚥下運動そのものによって上気道全体を刺激し、咽頭や口蓋、舌等の扁桃からなっているワルダイエル咽頭輪という免疫組織を剌激して免疫力を高めています。

睡眠中は嚥下そのものが起こりませんから、上気道の免疫力も低下しているのです。

また眠っていると口呼吸になりやすく、そうなれば口、喉の粘膜は更に乾燥します。全く風邪に対して無防備な状態となるのです。

風邪の流行る時期、夜中に目覚めたらカフェインの入って無い番茶等を一ロ飲むのも風邪予防になるでしょう。

風邪予防には洗う

2021.02.24 | Category: かぜ

風邪予防には、外から帰ったらまず手洗いを、と言うのがシンプルですが最も効果的です。

風邪が流行っている季節、一人の感染着が居ればその人の咳やクシャミは至る所に微粒水滴を撒き散らしますから、直接吸い込む事もあれば、それらが付いた物を触った手で自分の鼻や口を触れば感染する事になります。

人は食事の時だけで無く無意識のうちにも顔を触るものですから、手からの感染は非常に多いのです。

ところがこの手洗いも、意外にきちんとされていません。トイレから出た時には手を洗うものですが、なんと多くの人の手洗いは平均5秒といいます。

この程度の時間では、手は綺麗になりません。手の作りは大変複雑でシワ等もありますから、この程度では清潔になったとは言えないのです。

手の甲や手の平の多くが洗い残され、特に指の股、指先、親指等は最も洗い残しが多い部分なのです。

またほとんどの人は手首まで洗う事はほとんどありませんがその部分もきちんと洗うべきです。

衛生的な手洗いとしては石鹸を泡立てて60秒、水を流しながら60秒が目安となります。

私たちの仕事は直接患者さんに接するわけですから、感染を予防する為にも、病原菌の媒介者にならならない為にも念入りな手洗いは習慣にしておきたいものです。

また荒れた手は菌等が付きやすく残りやすいので、クリーム等でケアをしてガサガサにしておかない事も必要です。

ワクチンの是非

2021.02.23 | Category: かぜ

インフルエンザのワクチンは1970年代までは学童のほとんどに接種されていました。しかし、ワクチン接種の効果に疑問がある事、接種するワクチン株と実際にその年に流行するインフルエンザの株にズレが生じる事、重篤な副作用が起こる事もある、等の理由によって現在では任意の接種になっています。

最近では流行株とのズレは改善されつつあり、効果にしても感染を完全に予防出来ないまでも重症化を抑えられる事は確かだと認められている様です。

しかし副作用の危険性については解決した訳では無いので、現在でもインフルエンザワクチンに対する是非は賛否両論で任意の接種になっています。

ただハイリスクの人にとっては非ハイリスクの人に比べてインフルエンザに感染した場合死亡率が高くなるのでワクチンを接種した方が良いと言うのが、世界的な傾向の様です。

ハイリスクな人とは、糖尿病、心血管系や呼吸器系に疾患のある人等を指します。これらの疾患を持っている人はインフルエンザに感染した場合重症化しやすいのです。老人に対しては日本の場合ワクチンの接種を助成金援助で受ける傾向にありますが、本来は老人もハイリスクの人に入ります。

イギリスやアメリカ等ではワクチン接種を受ける人の優先順位が決められていて、消防救急、警察、医療関係者は一番目に指定されています。

そして老人施設の入居者や65才以上の老人すべても優先的に接種を受けるべきグループに位置づけられています。

医療関係者は感染しやすい上に、感染させやすい仕事であるので出来るだけワクチン接種が望ましい職種だとされているのです。

もちろん充分な説明を受けた上で接種を受けなければなりません。特に卵に対するアレルギーがある入、妊娠している事がハッキリしている人は避けるべきです。

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