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糖尿病で高血糖状態が長く続くと毛細血管が障害されて、三大合併症といわれる網膜症、腎症、神経障害が起こります。
これらの合併症の中の網膜症で毎年3000人が失明しています。網膜にある毛細血管は内側の内皮細胞とそれに対になって外側に周皮細胞があります。
それぞれ細網線維の基底膜によって取り巻かれています。この周皮細胞が収縮と拡張を繰り返す事で毛細血管の中を流れる血流量は調節されています。
そして、この血管内を流れる血液成分は内皮細胞間の間隙を通って網膜には運ばれます。
しかし、むやみに透過しては神経細胞にとっては有害な物も出てしまいますので、内皮細胞間にはよく発達した接着装置があって血液成分の透過を厳しく制限しているのです。
脳に脳関門があるように、これを血液一網膜関門と呼んでいます。ところが、高血糖が続くとこの血液一網膜関門に機能異常が起こってくるのです。
そして、血管透過性の亢進、周皮細胞の脱落、基底膜の肥厚、毛細血管瘤の形成等が起こってしまうのです。
初期症状としては、毛細血管がもろくなる為に瘤や出血が出現します。しかし網膜の中心部が侵されない限り視力は低下せず、きちんと血糖をコントロールすれば、改善も期待できます。
少し進行すると「増殖前網膜症」といい、前記の症状以外に血管がつまって網膜に無血管領域が出現するために綿花状の白斑や網膜のむくみが現れます。
この時期でもある程度進行を食い止める事ができるレーザー光線照射(網膜光凝固法)があります。
しかし、これを過ぎると「増殖網膜症」といい、脆弱な新生血管がどんどん網膜に出現します。
この時期でもまだ視力が良い事も多いのですが、突然新生血管が破れて硝子体出血や眼底出血を起こし、見えなくなったり、網膜剥離を起こしたりします。
この段階になると改善が難しくなり、失明の可能性が高くなるのです。
歩いていると足が動かなくなり一度に長く歩くことができず、暫く休むとまた歩ける、という状態を間欠性跛行といいます。
高齢者に多く、脊柱の変形や圧迫で神経が障害されるために起こる事もありますが、四肢に行く動脈が詰まってしまう閉塞性動脈硬化によるものが増えています。
間欠性跛行では大動脈下部から大腿動脈等が詰まって血行障害が起こるので歩けなくなるのですが、動脈硬化は全身病ですから、当然他の血管も詰まりやすくなっていて、2~3割は心疾患や脳梗塞に進むとみられています。
血管性間欠性跛行の最初は歩行の困難さはなくても、足の皮膚色が悪く、冷えや痺れを感じる事があり、それが悪化すると間欠性跛行が起こってきます。
更に悪化するとじっとしていても下肢が痛むようになり、最悪の場合は全く血流がなくなり壊死から足の切断へといたります。
500m位歩ければ改善は可能で、運動をする事で血管をまたいで側副血行路が発達し、血沈が改善しますから、努めて歩くようにする事が大切です。
この間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症からそれによって引き起こされる心疾患や脳血管障害のきっかけにもなるので、高血圧や特に糖尿病の人は要注意です。
施術中に、特に中年過ぎの女性の患者さんの下肢に静脈瘤をよく目にしているはずです。
血管の病気の中で最も多く、女性では軽症の物まで含めると約40%に静脈瘤があり、中年以上では60%以上の人が何らかの症状を感じていると云われています。
下肢静脈には沢山の逆流防止の弁がありますが、この静脈弁が障害されると静脈血がうっ滞して静脈瘤になります。
表在静脈には20前後あり、深部静脈には10前後の弁があり、表在性の静脈瘤ではまさに蛇行して太くなった血管に何ケ所も膨らみがみえます。
この静脈瘤の初期では足が疲れ易いとか重い感じがするといった症状が表れます。とくに、昼間より夜、長時間立ったままでいると起こります。
また、下腿の痛みや足やくるぶしの辺りのむくみや、靴を履くと痛い等の症状も出てきます。
また、見た目では判らない深部静脈の瘤の場合は、とくに強い痛みをひき起す箏があります。
この様な状態が10年以上続くと、下腿の内側、くるぶしの周囲に血液がもれて褐色の色素沈着が起こったり、水泡を伴う静脈瘤性湿疹がおこります。
この湿疹は強い痒みが起こり、掻きむしる為に、潰瘍になってしまう事もあります。この静脈瘤性潰瘍はなかなか治らないやっかいな合併症です。
また静脈壁の炎症性傷害も起こる事があり、血流の悪くなる事で血栓ができ易くなります。
静脈血栓症はチアノーゼや腫脹やひどい痛みをひき起します。この血栓が飛んで肺まで到達すると肺動脈塞栓症になる事もあるのです。
ですから、静脈瘤はなにより早期の受診が大切です。
改善法として軽症の場合は弾性ストッキングや足を高くしたマッサージが有効です。
悪化した場合は静脈瘤の外科的な切除、瘤への硬化剤の注入等を併用します。
運動時や緊張した時等に日常的にみられる多くの動悸は病的ではありませんが、心臓疾患等の不整脈で最も多く訴える症状は動悸です。
動悸を起こす原因は様々で、心臓疾患、甲状腺機能亢進進症、貧血、心理的要因による心臓神経症から、タバコの吸い過ぎ、コーヒー、紅茶、緑茶等の飲み過ぎ等でも動悸を生じるので原因を絞り込む事は大切です。
拍動は洞結節から始まり刺激伝導系を使って心臓全体に伝わります。
洞結節以外で刺激があると不整脈が起きますが、動悸は心臓の心拍出量の変化によるものです。
最も多い不整脈はリズムが不規則になる期外収縮で、心房性(上室性)と心室性に分けられます。
正常な拍動における心臓収縮で80~10mlの血液を送り出しますが、心室性期外収縮では20 ml位で60~80 m1の血液は心臓に残る事になります。
期外収縮の後の正常な拍動の時に2倍近い血液を送り出す事になります。
この解き大量の血液が大動脈壁にぶつかって壁に緊張がはしり、左胸や脇腹に血管痛がでます。
頻脈性不整脈では1分間に100~150回以上の脈を打ち、心房細動に最も見られます。中には突然死に結びつく心室性細動の場合があります。
送り出される血液量が少ないので脈が遠くなります。
徐脈性不整脈は1分間に50回以下の脈を打ち、完全房室ブロックや洞不全症候群でみられます。
徐脈によって、心拡張期の延長で一回の抽出量が増加して、遅く力強い拍動が起きるのです。
心臓疾患を伴う極端な徐脈や頻脈による不整脈が起きると血液が脳に充分行かない為に、脳虚血状態になり失神、めまい、胸苦しい、呼吸困難、疲れやすい等の症状が見られます。
この不整脈が数秒以内に回復しない場合は、心停止と同じ状態となる場合があるのです。
動悸が起きたら、何がそのきっかけになったのか、脈を数え、どんな乱れ方をするのか、整理しておく事が大切です。脈に異常がある間に心電図をとってもらう事も大切です。
上の血圧(収縮期の血圧)と下の血圧(拡張期の血圧)の差を脈圧といいます。
健康な人の血圧は上が100~130㎜Hg、下が60~80㎜Hgですから、脈圧は40~50㎜Hg位が望ましいという事になります。
一般には高血圧では上も下も上昇すると思われがちですが、高齢者では上ほど下が上がるわけではなく、むしろ下がりがちになります。
これは高齢になると動脈硬化が進むため、柔軟性がなくなる為だと考えられます。ですからどれ位の風圧がいいのかは年齢にもよるので一概にいえません。
ただし脈圧が大きくなるということはそれだけで心疾患の危険性が増す事は分かっています。
脈圧が60㎜Hgだとそれだけで心筋梗塞の危険性が高くなります。脈圧が極端に大きい時は大動脈閉鎖不全症や甲状腺機能亢進症も疑われます。
さて脈圧が小さい場合、下の血圧だけが高い場合は拡張期高血圧ですが、高血圧だった人が高い方の血圧だけ低くなって脈圧が下がった場合は心機能の低下が疑われます。
また上が170位もあって脈圧が小さいという事は下の血圧は130~140㎜Hgほどもあるという事になり、高血圧として危険域ですから腎臓の検査や眼底検査を行わなければなりません。
高血圧症の95%は遺伝や肥満等、複数の要因が関与していて原因が特定できない本態性(一次性)高血圧と、原因となる病気が特定できる二次性高血圧があります。
高血圧全体からみれば二次性高血圧の頻度は低いのですが、原因さえ取り除けば高血圧が全快する事も多いので、きちんと改善する事が大切です。
二次性高血圧の中で最も多いのが腎性高血圧で、次いで腎血管性高血圧が多く、後は内分泌性、薬物誘発性が知られています。
腎性高血圧は主に腎炎(糸球体腎炎)と腎孟腎炎が原因で、腎炎は糸球体が炎症を起こし、尿を作り出す等の腎機能が低下してくる病気です。
急性腎炎は溶連菌感染症の後で起こる事が多く、慢性腎炎は尿検査で蛋白尿や血尿等で発見される事が多いのですが、血圧は最初は低く、進行するに従って上がっていきます。
腎孟腎炎でも腎機能低下が起きると血圧が上がります。
腎血管性高血圧が起きるのは、まずアテローム性の動脈硬化症があり、腎動脈の入り□付近が狭くなって腎血流量と糸球体濾過量が少なくなります。
すると強力な血管収縮作用を持つ腎ホルモンのレニンが傍糸球体から放出され、レニンは血管収縮因子のアンギオテンシンⅡ産生を増加させるのです。
アンギオテンシンⅡは全身の血管にも収縮作用を及ぼし、副腎に働きかけてアルドステロンの分泌を促すので、ナトリウム・チャンネルの生産が高まってナトリウムの再吸収が促進され、体内の塩分貯蔵量が増します。
またカリウムの排泄を促進するので、低カリウム血症になる結果、体液増加が起こり高血圧となるのです。
リンパ浮腫は先天性のものもありますが、多くはがん(乳がん、子宮がん、前立腺がん)等の手術でリンパ節を切除後に二次性浮腫がよく起きます。
術後すぐ起きるとは限らず、数年たってからでもケガ等による細菌感染から蜂窩織炎やリンパ管炎を起こすと、何度も炎症を繰り返して皮膚組織は固く象皮化してきます。
片側の脚や腕が大くなりますが痛みは無く、放っておいても命にかかわるわけではないので、医者もあまり重要視せず、患者一人で悩む事になります。
心臓の1日の血液拍出量は約8000リットルで、末梢の毛細血管壁の隙間から血液成分の一部が漏れだし(1日20ℓ)、細胞で使われた後毛細血管の静脈側に再び入っていき(16~18ℓ)、差し引き2~4ℓがリンパ管に集まって、首の付け根近くで静脈に合流して心臓に戻ります。
リンパ液には赤血球は含まれず、血漿に近い成分で透明な淡いクリーム色ですが、腸管での脂肪吸収があると白濁します。
リンパ管は静脈よりも細くて弱い管で、逆流しないよう弁膜があり、軽い圧迫で簡単にリンパの流れは止まってしまいます。
リンパの流れは非常にゆるやかで重力の影響を受けやすく、リンパ節切除をした場合はゴムのきつい下着だと、流れが滞るので日頃から注意が必要です。
寝る時には浮腫のある四肢をやや高くして自然な環流を促し、軽い運動やマッサージでむくみを減らし、弾性ストッキングやスリーブを着用してそれ以上むくまない様にします。
マッサージのポイントはまず流れ込む先を空けるため、首の付け根(頚静脈角)を最初にマッサージし、ついで胸腹部、脇の下、上肢、あるいは鼠径部から大腿、下腿をそれぞれ求心的にマッサージします。
二次性リンパ浮腫では皮下組織間隙に蛋白や脂肪の塊等ができている事があるので、それをほぐすように揉んだり圧迫したりなどの手技も必要となります。
高血圧に合併する心筋梗塞や脳梗塞等の怖い循環器疾患はもっぱら収縮期の血圧を問題とする事が多いのですが、拡張期の血圧も90㎜Hg以上は高血圧です。
高血圧という場合は収縮期、拡張期とも上昇する事が多いのですが、まれに収縮期血圧はさほど高くないのに、拡張期の血圧だけが上がる事があります。
一口に血圧といっても、収縮期の血圧は血液の心拍出量に、拡張期血圧は血管の循環抵抗に関係しています。
したがって下の血圧だけが高くなるという事は、大きな動脈まではあまり変化していないものの、小動脈や細動脈の血管抵抗が増加しているという事で末梢血管の抵抗が高まっている、つまり血液の流れが滞っている状態だといえます。
血管そのものの状態に影響されるのはもちろんですが、細い毛細血管では、赤血球がくっ付いていたり、変形しにくくなって流れがスムーズでなくなっても、血管の循環抵抗が高まってしまいます。
拡張期の高血圧は若い人では腎性の高血圧等のように二次性高血圧の可能性もありますが、そうでない場合の多くは、肥満、運動不足、大量飲酒、喫煙等の影響が大きいとされています。
エアロビクス等、等張性運動の後等では拡張期の血圧が低下しますから、生活習慣の改善によって低下させる事ができやすい高血圧といえます。
胸痛発作や胸部不快感等の症状は狭心症、心筋梗塞の虚血性心疾患でみられます。
胸痛が起きるのは心臓を取り巻く動脈壁のあちこちに、小さな蛋白質からできた血管の圧力感知センサーがあり、血管が詰まったり、破れたりすると、血液の流れが落ちて、その異変が脳の自律神経中枢にある血圧調節機能に働き、血管の幅を広げたり狭くしたり調整します。
その血管調整作業が緩やかに行われていれば、何も症状は出ませんが、血管が急に縮んだり、広がったりすると知覚神経の刺激となり痛みが出るのです。
狭心症は心筋が虚血した為に胸痛が発生します。
ところが最近、痛みがない狭心症ともいえる無症候性心筋虚血症が注目されています。
痛みに対する閾値が高い人の場合や血管の反応が鈍い人の場合にあるようです。発症頻度は痛みのある狭心症と同じ位です。
冠状動脈にひどい動脈硬化が数カ所あってしかも昼夜を問わず、虚血反応を起こしても胸痛がないのです。
運動負荷心電図や24時間心電図で初めて分かる病気なのです。胸痛がないので病気に気づくのが遅れたり、油断して心筋梗塞に進行します。
健康と思っていた人が過労で突然心筋梗塞になるのはこの事が考えられます。心筋梗塞は激痛が伴いますが、全体の10~15%には無痛性の場合があります。
高齢者や糖尿病患者では更に割合が増えて発病する人の約35%は無痛性といわれています。動脈硬化で硬くなった血管は調整機能の働きが鈍くなっていると考えられています。
また逆に血管の圧力感知センサーの過剰反応で血管が突然痙攣を起こす血管性攣縮性狭心症による胸痛発作があります。
夜間から朝方にかけて睡眠中に起こり、冠状動脈の血管が約1cmの長さで攣縮して数秒から数分間血流が停止するのです。動脈硬化が合併していれば心筋梗塞の危険があります。
アテローム性の動脈硬化は、血管壁に脂肪のプラークが溜まって血管が狭窄したり閉塞すると思われがちですが、プラークが血管を塞いで、その為に組織が死んでしまうわけではありません。
動脈硬化が怖いのは作られたプラークが破裂する事で、プラークが破裂すると凝血塊ができ、その凝血塊が動脈を塞いでしまうからです。
問題はそのプラークが単なる脂肪の塊ではなく、常に炎症物質を産生させる働きを持つところにあります。
悪玉コレステロールのLDLは血液と血管の内皮の間を行き来していますが、あふれたLDLは血管の内膜に溜まり酸化されたり糖化されます。
すると血液中から単球やT細胞が内膜に入ってきてLDLを処理しようとします。
単球はマクロファージになってLDLをたらふく取り込み(泡沫細胞)、それらがプラークを形成していくのです。
この時マクロファージとT細胞は多くの炎症物質を作ります。
泡沫細胞から作られた炎症物質は組織の結合を弱めてプラークを破れやすくし、そのプラークが破れるとそこに凝血塊ができるのです。
つまり動脈硬化はプラーク内でさかんに作られる炎症物質によって破綻することでさまざまな危険を引き起こすのです。
LDLの値が高くなくても心臓発作や脳梗塞が起こってしまうのは、プラークそのものというよりもこの炎症作用が影響が大きいからだと考えられます。
善玉コレステロールのHDLが動脈硬化を予防するという働きには血液中のLDLを取り除く働きがあるとされていますが、それだけでなくLDLの酸化を抑えたり、炎症を抑制する作用があるのかもしれないとみられています。