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つい最近まで糖尿病患者の運動の勧めの第一の目的はカロリー消費効果でした。
しかし、運動によるカロリー消費は実際のところ大した事はありません。
最近の糖尿病における運動の意義は、脂肪は落としても筋肉量は落とさない為であるとしています。
つまり支持組織維持、運動機能を保持する事が重要であると考えられる様になったのです。
更に、筋肉と糖の関係が分かった事で、運動の重要性がより重視されてきています。
そのキーワードがインスリン抵抗性です。筋肉はエネルギー需要に応じて、ブドウ糖を筋細胞内に取り込みます。
このとき筋細胞の小胞にある糖輸送担体(GLUT4)は筋肉収縮やインスリンに反応して、ブドウ糖を筋細胞の中に取り込む働きをします。
この糖輸送担体は脂肪細胞にも存在しますが、ブドウ糖の大半は骨格筋に取り込まれます。
しかし、40才以上の10入に1人いるとわれているインスリン非依存型糖尿病では、高血糖の状態が長く続きます。
この様な状態ではインスリンが常に放出されているので、しだいにインスリンに対してのGLIJT4の反応が鈍くなります。
これをインスリン抵抗性といいます。
このインスリン抵抗性が強いと血液中のインスリン濃度が高くなります。
最近分かったことですが、このインスリン濃度が高い状態は、血糖値が高く無くても動脈硬化性の心血管疾患に深く関与している事が明かになっています。
ですから、インスリン抵抗性を改善する事が非常に重要になるのです。
GLUT4の機能を改善するには、ブドウ糖を筋に取り込むもうひとつの方法である筋収縮をする事が必要になってくるのです。
これまでは有酸素運動でしたが、この様な事が分かった事もあり、抵抗運動やストレッチも取り入れた総合的運動プログラムが推奨されるようになってきました。
ただし、糖尿病の合併症がある場合の運動は時として非常に危険です。
特に網膜症や骨粗鬆症や動脈硬化等の検査は必要です。
インナーマッスルの中でも内臓と脊椎の間にある腸腰筋(大勝筋と腸骨筋)は大変大きな筋肉です。
腸腰筋は骨盤をやや前向きに維持しつつ、腰椎を腹側に引く事で脊柱をS字型に維持するという、人が背骨を立てて姿勢を支える上で、大きな働きをしています。
また大殿筋やハムストリングス等の大きな筋肉が足を前に出すとき、単純に股関節を曲げる(走る、跳ぶ等)働きをするのに対して、腸腰筋は骨盤を引き上げながら股関節を曲げるという複雑な動きを可能にします。
つまり股関節の動きをスムーズにするのです。
腸腰筋が太くて強いと大脊筋やハムストリングスもトレーニングによってより太く鍛える事ができますから、腸腰筋はスプリント能力に大変大きな意味を持ちます。
この腸腰筋の太さが黒人は白人よりも太いといわれ、黒人のスプリンターが強いのもそのせいではないかと考えられています。
また当然歩く事にも関係します。腸腰筋がしっかりしていると足を引き上げる事もスムーズで転びにくくなりますし、遠く歩く事もできます。
速足で転びにくい高齢者はそうで無い人に比べて腸腰筋が太いという調査もあります。
また腸腰筋が弱まれば骨盤がきちんと支えられず姿勢も悪くなり、腰痛も引き起こすというわけです。
関節は靭帯や関節包によってしっかりと結び付けられています。
しかしそれと同時に、できるだけ自由に動かす事ができるよう、外れやすいという矛盾も抱えています。
大きな筋肉が伸縮した場合、その力が直接関節にかかれば関節はダメージを受けやすく靭帯も傷つきます。
しかし、関節を安定化させてスムーズな動きをさせる為に桔抗的に働く筋肉もちゃんとあります。
それがインナーマッスルという、体の深部にある関節回りの小さな筋肉群です。
肩関節回りならば隷下筋、小円筋、肩甲下筋、股関節では中殿筋、小殿筋、恥骨筋、長内転筋、外閉鎖筋、方形筋、梨状筋等です。
インナーマッスルは外からも分かりやすい大きな筋肉(アウターマッスル)の内側にあって、関節の動きを守り、スムーズにしています。
ウエイトトレーニングといえばベンチプレスなどのアウターマッスルを鍛え、筋骨隆々になる事だと考える向きがありますが、実はアウターマッスルが強すぎてインナーマッスルとのバランスが悪くて競技の成果が上がらない、怪我が多い等のトラブルを発生させる事が多いのです。
アスリートで無くても五十肩などは肩関節回りのインナーマッスルが弱くなって起こるものです。
インナーマッスルを鍛えるには、軽い負荷で、できるだけアウターマッスルを参加させずに正確に動作します。
筋肉自体を鍛えるというよりもその筋肉の支配神経を目覚めさせるといった目的でその筋肉に(分かりにくいのですが)意識して行います。
チューブを使ったトレーニングが多い様です。
運動不足の中高年にとってウォーキングは最も安全でお勧めの運動です。
確かに1日1万歩のウォーキングは生活習慣病の予防や改善に大変有効である事は間違いありません。
しかし、本当はウォーキングだけでは充分では無いのです。
運動習慣と骨密度とは関係が深い事が分かっている為、中年以降、特に女性の場合閉経と共に骨粗鬆症の危険性が高まるので運動が欠かせないのです。
そもそも筋肉と骨とはくっ付いているので、筋肉が収縮すれば骨に対して刺激が加わります。
筋肉が強く収縮すればそれだけ骨に対する刺激も強くなり、そういった刺激が骨吸収を押さえて骨密度を支えているのです。
骨は重力にも影響されるので、体重が多い方が骨量も多いと考えられていますが、実は体重その物よりも筋肉の量の影響の方が大きいのです。
つまり多くの筋肉の運動はそれだけ骨に対して多くの刺激を与える事ができるからです。
しかも筋肉の中でも持久的な筋肉より瞬発的な筋肉との関係が大きいのですが、老化によって衰える筋肉は瞬発的な筋肉の方が速い為、骨への刺激も衰えが早いのです。
骨粗粗症の予防の為にはウォーキングだけで無く、骨に対して瞬発的で負荷が大きくなる様なジョギング等の様な運動も必要です。
筋肉の病気には何十種類とありますが、中でも筋肉そのものが動かなくなる代表的な疾患には、「重症筋無力症」と「進行性筋ジストロフィー」があります。
「重症筋無力症」は筋肉には異常がなく、脳の指令を伝える神経筋接合部の伝達障害(アセチルコリンの代謝異常)で起こります。
しかし「進行性筋ジストロフィー」は脊髄や末梢神経線維に病変はなく筋肉自身に障害が起こり、大脳の指令は正常に筋肉に伝えられるのに、筋肉組織が次第に萎縮して動か無くなってしまうのです。
進行性筋ジストロフィーには、筋障害が顕著に現れる部位により「顔面・肩・上腕型」と「腰肢帯型」、19世紀末のフランス人発見者の名を付けた「デュシエンヌ型(DMD)(全身的な筋障害)」の代表的な3型があります。
筋ジストロフィー全体の罹患率は10万人に5人種で、DMDがその6割を占め、出生男児3500人に1人の割で発生します。
DMDは100年以上も前からその原因が探られてきましたが、解明されたのは遺伝子解析が進んだ為です。
DMDの遺伝子はX染色体に存在して、その1%を占める巨大な物である事が分かり、突然変異率も高いのです。
健常者の筋肉中にあってDMD患者に欠損しているジストロフィンという微量蛋白質は、筋原線維を形質膜に固定して補強材の役目を果たしています。
DMD患者の遺伝子は正常で無いのでジストロフィンが存在せず、その為筋肉の収縮時に細胞膜が損傷を受けて、筋肉中の化学成分が外に流れ出し、細胞外からカルシウム等が入り込み、筋蛋白質の分解が起こって筋肉が急に衰え、やがて筋肉組織が消滅してしまうのです。
最近では病的な筋肉に正常な筋芽細胞を注入する事で筋萎縮を防ぐ手術法がかなりの成果を上げてきているようです。
心筋と骨格筋は共に横紋筋ですが、その作用と働きが全く違うので、別種の筋肉だと一般には考えられています。
事実、心筋の細胞は生まれて暫らくすると分裂をしなくなり、同じ細胞が世代交代をする事もなく一生疲れも見せず働き続ける事ができます。
しかし骨格筋に人工的な電気刺激を断続的に与えて心臓と同じ様に収縮させると、やがて痙攣を起こして刺激に反応し無くなってしまいます。
これは骨格筋が疲労物質の乳酸をすぐには排出できずに細胞内に溜め込んでしまうからですが、心筋細胞は栄養を取り込むと同時に、発生した乳酸をすぐさま代謝して近くの血管に排出する事ができ、疲労を溜め込まない構造になっているからです。
心筋細胞には大きいミトコンドリアが多量に存在し、冠状動脈血から酸素と栄養を効率よく取り込んでエネルギーに変える能力が格段に優れているのに対し、骨格筋細胞のミトコンドリアは心筋に比較して小さくて数も少ないのです。
さて心筋梗塞等で心筋の一部が壊死した患者に対し、患者の広背筋の下方の一部を体腔内に入れて心臓に縫い付けるという方法があります。
最初は患者の心臓の収縮ペースの何回かに1回だけ、人工ペースメーカーで弱いパルスを送って筋肉を収縮させますが、次第に電気刺激を与える間隔を徐々に狭めて刺激の強さも増していきます。
するとトレーニングを始めて2ヶ月後には、骨格筋でも患者白身の心臓の洞結節が発する収縮信号と同じペースでの強い刺激にも、痙攣を起こす事無く耐えられる様になるのです。
これは鍛える事で筋肉を取り巻く毛細血管が増え、骨格筋の細胞中のミトコンドリアの数も増えて代謝能力がアップし、筋原線維の蛋白質の構造が心筋の物に近づいてきたわけです。
筋肉の萎縮というのは、平たく言えば筋肉がやせ細ることです。
しかし、萎縮には元通りになるものとならないものがあります。
つまり、萎縮は筋線維の萎縮と筋線維数の減少があるからです。
筋線維の萎縮であれば筋肉に負荷をかければ元通りになりますが、例えば老化する中で起こる筋線維数の減少は元には戻りません。
これは筋細胞の構造を支える細胞骨格や収縮装置の崩壊や再構築ができなくなる為に起こります。
また、筋萎縮の病態としては崩壊だけでなく、変性、壊死へと進む事が分かっています。
これらの細胞の萎縮や数の減少は、角度を変えてみれば細胞を構成する蛋白質が分解してしまう為といえます。
実はなぜ筋肉の細胞内の蛋白質が分解してしまうか完全には解明されていませんが手がかりはあります。
その一つは筋小胞体です。例えば、ギプス等で運動できない状態になると、神経からの伝達に関与している筋小胞体でのカルシウムの取り込みが減少する為、細胞内のカルシウム濃度が高くなると蛋白質分解酵素の活性が高まるのです。
また、筋細胞内のリソソーム(細胞小器官)は細胞内の不用物処理器官として働いていますが、除神経や腱切除やギプスで筋肉の活動が止まるとこのリソソームの中にある蛋白質分解酵素であるカテプシンが増加する事がわかっています。
ですから筋萎縮は身体のシステムである使わない物は必要無いという廃用の原理に基づいているのです。
萎縮を遅らせるには、筋肉の収縮運動をしっかりやる以外に方法はありません。
筋肉の筋細胞は筋線維と呼ばれています。筋線維はウエイトトレーニングをすると2~3倍に太くなりますが、筋線維が分裂して新たに繊維を形成するのでは無く、筋線維を構成する筋原縁組が増える事で太くなります。
これは筋肉に付随する腱や他の組織にトレーニング等の力学的な負荷がかかると成長ホルモンが、筋線維にミオシンとアクチンの収縮蛋白質を作る様に遺伝子を活性化するのです。
この蛋白質は筋原緯線が増えるのに必要になります。蛋白質を余分に作り出すと、細胞の容積と核の比率を一定に保つ為に核を増やす事になります。
筋線維には多くの核がありますがその核は分裂が出来ません。
その為に新たな核は、骨格筋表面に散在する、幹細胞の一種である衛星細胞(サテライト細胞)から作り出されます。
この細胞は単一の核を持ち分裂により複製し、筋運動の消耗度に応じて散らばるのです。
ある説によると激しい運動をすると筋線維の一部に微細断裂が生じ、その損傷部位が衛星細胞を引き寄せ、それが筋線維と混ざりあって修復の為の蛋白質を作り出すといいます。
更に衛星細胞が増えるに連れて、一部は筋線維上に残りますが、残りの細胞は筋線維内に取りこまれ、筋細胞の核となるのです。
こうした核の増加によって、筋線維は蛋白質を更に製造し、筋原纏綿を増やすのです。
修復している時には、損傷がそれ以上進まない様に休養が必要で、修復によって回復した筋肉は傷つく前より筋線維が太くなり、筋力も前より強くなります。
これを超回復といいます。
筋肉を強化する時は毎日激しいトレーニングをするのでは無くハード&スローが基本になります。
鶏肉の皮を剝ぐと薄くて白い膜が筋肉を包んでいます。
これが筋膜です。筋膜は線雄性の結合組織ですが、筋の全体を包む外筋周膜、筋線維を束ねる内筋周膜、それに個々の筋線維の間にもある筋内膜の三つの膜があります。
この筋膜によって骨格筋の構造を支持する枠ができて、その為筋細胞は崩れずに整然と配列していられるのです。
また、多くの神経や毛細血管の通路にもなっている重要な組織なのです。また、筋膜は同じ結合組織である腱と連続性を持っています。
その腱は骨を覆う骨膜としっかり結合しています。ですから、骨格を形作っているのはこの筋膜、腱、骨膜の連続性であるという事もできるのです。
また、筋群は身体に浅い筋から深い筋と幾重にも重層的に存在しています。
それらの筋群が自由な運動ができるのは、筋群を覆っている筋膜の繊維間の適度な水分が潤滑油の働きをしているからです。
また、筋膜を構成している結合組織の線維はあらゆる方向に走っている為、どの方向にも偏らない様に織り合わされています。
ですから、筋の大きさの変化にも適応して、伸張できて全ての方向に膨らむ事ができるのです。
ところが、その筋膜に炎症が起こると、筋膜は強く収縮しようとするのです。
ですから、そこを流れる血液供給が欠乏してなかなか治りにくくなるし、神経通路でもある為痛みが強調されるのです。
我々の治療において重要な鍵を握る組織でもあるのです。
“元気のない高齢者は脱水症状を疑う”というほど高齢者は脱水症状になりやすいといえます。
高齢者では筋肉の減少によって細胞内教量が少なく、体内の水分量が減少します。
また老化による腎機能の低下で尿を濃縮する機能が落ちるので尿の量自体は増えます。
さらにホルモンの変化等でも体内に水分を保持しにくくなっているなど、様々な原因で脱水になりやすいのです。
しかも口渇感覚も鈍くなっているので、体に水分が足りなくても、喉の渇きとして感じる事ができにくくなっています。
夜間のトイレを用心するあまり自ら水分を摂るのを控えてしまう場合も多い様です。
また高齢者は持病の薬を飲む事が多いものですが、降圧剤、利尿剤、糖尿病や腎臓病の薬等で水分を余計に排泄させる事になり、ますます脱水状態をひどくさせがちです。
まして発熱や下痢症状があれば、あっという間に脱水症状になってしまいます。
高齢者の脱水は、水分不足の為血液が濃くなり循環障害を起こし、ひどくなると筋肉の痙攣やショック症状で意識障害も起こります。
腎機能が低下して尿が作れなくなる急性腎不全、昏睡や心不全等で命を落とす事もあるのです。
7、8月に東京都老人センターに救急車で運ばれる高齢者のほとんどに脱水があるといいますから、夏場は特に要注意です。
元気がない、食欲がない、目がくぼむ、皮膚に張りが無いなどの症状に気をつけましょう。
また脇の下は普通湿っていますが、脱水があると乾いた状態になるのも一つの目安になります。
一度に沢山の水分を摂るのではなく、口の渇きを感じなくても少しずつ頻回に水分を摂るようにしなければなりません。