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痛みに精神的な要素が絡んでいることは慢性の疼痛を見れば納得がいきます。
怪我や炎症による急性の痛みは原因が無くなれば消えますが、実に多くの人が急性期を過ぎても慢性的な痛みを抱え込んでいます。
痛みというのはその人にしか分からず、痛がりの人もそうでない人もいます。また同じ人にとっても心身の状態によって強く感じられたり、弱く感じられたりします。
痛みの信号は末梢神経から中枢神経に伝えられますが、太い神経線維と細い神経線維によって伝達されます。
太い神経線維からの刺激は痛みのゲートを狭め、細い神経繊維からの刺激は痛みのゲートを広げてしまいます。
このコントロールは中枢神経の影響を受けているので、当然情緒や認知、考え方等と関係していて、色々な条件が痛みの同値を上下させます。
精神面では不安や抑うつ感、怒り等の感情、過労や筋の緊張によってゲートが広がり、一方幸福感や安定感、リラックス、温熱(温灸など)、寒冷(アイシングなど)によって痛みのゲートが狭まります。
つまりリラックスする為のイメージ訓練によって痛みを軽くする事が期待できるのです。
つまり、痛みは“気のせい”ではありませんが、ある程度自分でコントロールできるという考えを持つ事も大切です。
思考というのは感情や身体の行動と違って、変える事はできないと思いがちですが、思考も一つの習慣です。
明るい気分の時に将来の事を考える様にすれば、将来は明るく感じられる様になり、夜中など暗くて不安な時に考え続ければ将来は暗く感じられる様になります。
例えば何かしようとする時「失敗するに決まっている」等のマイナス思考を自動的に思い浮かべれば、その様な心身反応が反復され、実際に失敗しがちです。
一方、成功経験や成功可能性に即した思考も、何回も試みている内に望ましい心身反応が反復され習慣化し、セルフコントロールも上手く行く様になるのです。望ましく無い思考が起きた場合は何か別の望ましい思考を反復するように練習します。
人間は同時に二つの事を考える事はできないので、望ましい思考を練習の繰り返しで習慣化させるのです。
また行動の失敗の原因の求め方によってもセルフコントロールの上手い、下手が作られます。
うまく行かない事の理由を自分の具体的な行為に求める人はその行為を繰り返さない様にすればいいので、セルフコントロールも上手く行きます。別の方法を試みたり工夫ができる気持ちが持続できるからです。
しかし、失敗の原因をどうにもならない事、例えば自分の性格や生い立ち、遺伝等に求める人はセルフコントロールも下手になります。
それは今更どうにもならない事、コントロールできない事に原因を求めれば、セルフコントロールしようという動機づけが抑制され、“しない”という状態が正当化されて“できなくて当たり前”という気持ちがコントロールを妨害するからです。
この問題に対する原因の求め方も一つの習慣化した思考ですから、原因の持って行き方を変える練習をする事でセルフコントロールもより上手くできる筈です。
不潔恐怖等の強迫的な観念や行為に振り回されるのが強迫性障害(OCD)です
。強迫行為は普通専門のセラピストの指導を受けながら精神療法しますが、カリフォルニア大学の強迫性障害の研究者シュウォーツ教授らは「自分でできる認知一生物学的行動療法」を開発しています。
この方法の基本は、強迫観念や衝動の正体を知り、OCDが引き起こす恐怖や不安をセルフコントロールする方法です。
四段階で
第一段階(ラべルを張り替える)。この方法はしっこくつきまとう強迫衝動や観念は、例えば手を洗いたいという衝動の場合、手が汚いと思っているのでは無く、手が汚いというOCDの症状であるとラベルを張り替える。
第二段階(原因を見直す)衝動の起こる原因は大脳の尾状核の異常であり、脳の生物化学作用によるものだと認識する。
第三段階(関心の焦点を移す)衝動の関心を別のものに移す。
OCDへの抵抗として目標として15分間の抵抗を試みる。
そして、その時間を延ばす。
第四段階(価値を見直す)。これはOCDの症状を「額面通り」に受け取らずに見かけに騙されない様にする。
その為に公平な観察者の目をもって、起こっている事を客観的に見る努力をする。
このような方法で、摂食障害や衝動買いやギャンブル癖、薬物中毒、更に人間関係や自己イメージヘの不安等にも応用できるとシュウォーツ教授は述べています。
怒りが沸き起こる時というのは、「闘争か逃走か」の選択のスイッチが入り、身体の中ではアドレナリンやコルチソールが大量に放出されます。
その放出回数が多い人は、虚血性心疾患になる率が高いことが知られています。
中でもタイプAの人達は性急で敵対心や怒りに動かされやすく、競争心や功名心のレベルが高く、この傾向が顕著だと言われています。
この様な性格傾向の人達の怒りのセルフコントロールのやり方をアメリカの精神医学者が考えました。
まず「自己説得法」というのは、腹の立つ事を、こだわり続ける価値があるほど自分にとって重要な問題かどうかを考え、怒る価値、正当性、対応の効果の3点について、自問して評価を下す方法です。
それで怒りを捨てられた時には、自分を誉めます。怒りが治まらない場合には、怒っている事で自分の心臓の血管が傷ついている様子をイメージします。
次ぎは「ストップ法」、敵対的な情動が起こったら、すぐさま「ストップ」と声を出して(あるいは黙ったまま)思考や判断停止の状態に自分をもっていきます。
「紛らわせ法」、周囲の注意を引くものに意識を集中して、怒りの対象から意識をそらす様にします。
それでも、怒りが収まらない場合は「瞑想法」。腹式呼吸や自律訓練法等を利用すると瞑想もより入りやすいと思います。
「節制法」は普段の生活で怒りを増幅させるような習慣をやめるようにします。
また、仏数的な考え方の中に怒りのセルフコントロールの方法があります。怒りの相手に対する「憐れみや悲しみの情への転化」という方法ですが、なかなか効果がある様です。
五臓六腑の機能の中で我々の意思で、モットモたやすくセルフコントロールできるのが肺臓の呼吸です。
ですから、呼吸法は世界の多くの養生法や健康法、リラクセーション法の中に採り入れられています。
特に、腹式呼吸は心身の調整の基本として、また宗教の修行の中にも見られます。腹式呼吸は筒単に言えば骨格筋由来である横隔膜の上下運動です。
その上下運動は横隔膜を貫いている消化管や大動静脈や迷走神経等を刺激して、かつ腹腔内をマッサージする事にもなります。
更に、腹式呼吸の特徴である深くてゆっくりした呼吸によるリラックス効果もあり、心身の調整になるのです。
また、アメリカの面白いデータがあるのですが、心臓発作に見まわれた患者に腹式呼吸法を日常的生活に取り入れる様に指導したところ、再び心臓発作になる確率が激減したそうです。
なぜ、横隔膜を使う呼吸が心臓発作を抑える事が出来たかは解剖学的にみると納得できます。
アメリカのアンドリュー・トーマス博士は心臓と横隔膜の関係について横隔膜が第二の心臓である根拠として次のような事を述べています。
心臓は横隔膜腱中心の真上にあり、心臓は心膜でしっかり横隔膜に結ばれています。その繋がっている部分は非常に広範囲に渡っています。
また、心臓は間接的に胸骨と首の下の関節に繋がっていますが、しっかり固定されている分けではありません。
横隔膜の上下運動は確実に、心臓に伝わる様になっています。
つまり、この構造から言える事は、腹式呼吸による横隔膜の上下運動は、その度に心臓をマッサージする効果があるという事になります。
心臓疾患や発作の危険性を持った患者さんはかなりいると思います。
ですから、心臓のセルフコントロールの手段として、腹式呼吸を指導する事は大切なのです。
人間の臓器のほとんどは、交感神経と副交感神経の自律神経支配を受けていますが、白血球に関しては知られていません。
血管や臓器等の細胞が神経支配を受ける場合には、神経の終末が細胞付近に存在するのですが、白血球の膜上にもアドレナリンやアセチルコリンの受容体が確認され、自律神経支配を受けている事が最近の研究で明らかになったのです。
白血球には大別すると顆粒球とリンパ球があって、顆粒球は侵入病原体や不要細胞を貪食する細胞性と、リンパ球が増えてアレルギー症状が現れたり、鬱状態に陥ったりします。
顆粒球やリンパ球の過剰状態によって引き起こされている疾病は数多くあり、自律神経を調整する事でこれらの疾病はかなり改善すると考えられます。
自律神経のセルフコントロールにはシュルツの自律調練法をはじめ、いくつかの自己制御法があり、これらの方法で自律神経を調整すれば白血球をコントロールする事が可能なのです。
生活習慣病はライフスタイルを変える事で予防・改善ができます。生活習慣を変えるのは非常に難しいものですが、行動療法を応用したライフスタイルのコントロールでは次のようなステップを試みます。
1.問題行動を具体的に捉える(セル フモニタリング)
例えば「どんな時に食べ過ぎるか」「その結果どう感じるか」等、行動とその時の状況との関係を知ります。記録や日記をつける事も有効で、これだけで行動が改善する場合もあるほどです。
2.効果があって、できそうな目標を立てる
「食べ物をストックしない」「必ず家族と食べる」等、具体的でできそうな事から試みます。一度に多く設けないで、7、8割できそうな事から始めます。
3.改善したらその変化を強化しながら新しい行動を少しずつかたち作る
「ウォーキングを始める」「血糖値や血圧を自分で測る」等、それまで生活の中に無かった新しく望ましい行動を始めます。
ポイントは、悪い所は自分で気づく様に工夫する事が大切ですが、まず長所を伸ばす事で欠点を目立た無くする事です。
目標は「意志を強く持つ」等の性格的な事や抽象的な事で無く、上記の様に具体的な行動を設定します。
過食や禁酒、禁煙ではじっと我慢せざるを得ない面がありますが、その時は「好ましく無い行動を起こしそうな状況にならない様にする(例:食べたくなったら外出する)」等して同時にできない行動に置き換えて環境を変える等の工夫をします。
行動療法では具体的な目標を実効する事が達成感にも繋がり、この技法自体がストレスを軽くする効果があるといえます。
行動療法とは1950年年代に出現した心理療法です。他の心理学が人間の深層心理や無意識の面から、人間全体にアプローチしていく様な哲学的な体系が多いのに対して、対象とその反応(=行動)を変化させる為の技術的方法の全体に過ぎないといっても良いでしょう。
その考え方のベースにあるのは、人の行動は言葉で説明する事ができ、予測や制御をする事ができる、つまり定式化できるという事です。
人は刺激に対して反応し、その繰り返しの仕方が、その人特有の生活パターンや行動パターンを作ります。
つまり、行動療法とは刺激と反応の枠組みの中で行動を捉え、そこで明らかになった問題を実際の場面で応用する技術なのです。
もちろんその場合、単なる“行為”だけでなく、不安や憂鬱感等の感惰、思考や物の見方等も含めます。感情や思考も、ある刺激とそれに対する反応が積み重なって、その人のパターンとなっています。
もちろん行為と感情と思考は互いに作用し合います。その様に刺激・反応の繰り返しで出来上がったその人の行動パターンを言語化する事によって、問題点を自覚させます。そして好ましく無い習慣や行動を変えようとするのです。
ですから行動療法では、「なぜその様な行動をするのか、行動に隠された意味は?」という分析は問題にしません。
その行動は「現にどの様に起こっているか」に注目します。つまり当面の好ましくない行動(感情も含む)を変化させるためには、「今できる事」に注目して実行する事で、自動的になっている反応に介入して望ましい行動ができる様に仕向けるのです。
ですから具体的で、セルフコントロールとして誰でもが応用しやすい方法だといえます。
現に行動療法は、精神医学や心身医学の分野だけでなく、健康医学、リハビリ、教育、司法、環境など、実に広い分野で効果を上げており、方法も技術化されていて、バリエーションも実に多彩です。
セルフコントロール、というと誰もが知っているのが心理療法である自律訓練法です。
この自律訓練法はドイツの神経料医のシュルツが1932年に「自律訓練法一注意集中性自己弛緩法」を出版してから世界的に広まったストレス対処法です。
この訓練法は、当初催眠療法的な色合いが強かったのですが、次第に科学的訓練法として受け入れられるようになり、リラクセーションばかりでなく神経症や心身症の療法して発展してきました。
元々ストレスとは生物が生命の危機に面した時の緊張や不安が、自律神経系や内分泌系の反応を引き起こした状態だといえます。
このストレスに対応するための心身のリラックスを自分で訓練する事によってできるようになるといいます。
自律訓練法には、基礎的な標準練習、瞑想練習、自律性中和法、自律性修正法などがありますが、七段階の練習からできている標準練習が全ての基盤にあります。
自律訓練法では、原則として、必ず同じ言葉の「公式」を心の中で繰り返し唱えます。
背景公式(安静感練習)「気持ちが(とても)落ち着いている」
第一公式(四肢重量感練習)「両腕両脚が重たい」
第二公式(四肢温感練習)「両腕両脚が温かい」
第三公式(心臓調整練習)「心臓が静かに(自然に)規則正しく打っている」
第四公式(呼吸調整練習)「楽に(自然に)呼吸をしている」
第五公式(腹部温感練習)「太陽神経叢(あるいはお腹)が温かい」
第六公式(額部涼感練習)「額が(心地よく)涼しい」
このような順序で公式にそって、練習は一回3~5分程度、1日2~3回。初めの内は短めにした方が、集中が途切れずに良い様です。
また、訓練を終了する時には、屈伸、深呼吸、開眼の順に消去動作を行なうと良いでしょう。
生活習慣病の予防・改善の為の運動としてはウォーキングなどの有酸素運動(エアロビック エクササイズ)が重要な事は間違いありません。
しかし、最近ではそれだけでは十分ではないという考え方が出てきています。
有酸素運動の継続は心肺機能のアップだけでなく、インスリン抵抗性の改善等に有効ですから、第一番に考えるべき運動である事は間違いありません。
しかし下半身の筋力や柔軟性が衰えれば日常生活の活動が狭まったり転倒等に結びつき、QOLがひどく低下します。そこで、アメリカスポーツ医学会によってウエルラウンド・エクササイズ(Well-rounded Exercise)という考え方が推奨されるようになってきたのです。
ウエルラウンドとは、「十分に発達した」とか「バランスの取れた」という様な意味で、有酸素運動に加えて筋肉づくり(レジスタンス トレーニング)と柔軟性トレーニングも欠かせ無いという分けです。
これに加えてバランス運動も大切です。特に加齢に従って筋力の低下率が大きくなりますから、運動量の低下は生活習慣病やその悪化に結び付くので筋力の維持はどうしても必要なのです。
米国スポーツ医学会では次の様な指針を出しています。