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日本の医療は先端を歩んでいて、がん療法においても世界の中で進んだ方法を受けていると多くの人は信じています。
しかし日本で一般に行われているがん医療は欧米よりずっと遅れているというのが現実のようです。
特にがんの内科的療法においてはこの10年で放射線療法、化学的療法などが急激に進歩し、がんの種類によっては第一に選択されるものも増えているのに、あいかわらず外科手術一辺倒ですすめられています。
国内でのがん療法は病院や医師によって違っていて、胃がんの場合、進行度は同じでも5年後の生存率は大きな開きがあるとの学会発表もあるのです。
つまり日本のがん医療は標準医療といえるものがはっきりしていなくて、どの方法が最も効果的であるのか、その療法が何を目指してなされるのか(完治のためか、延命のためか、緩和のためかなど)もはっきりしないまま患者は手術を受け、副作用に耐えているわけです。
現に世界的にがんの標準薬として認められている薬でも保険診療で使用できない薬が多く、がん患者の会等は厚生労働省に対して早急の認可を求めています。
放射線療法は日本では海外に比べると低く海外では、第一手段として行われています。
放射線の効果を高める方法としてコータック療法ががんに対して有効ではないかと注目を集めています。
Kortuc療法とは過酸化水素(オキシドール)をがん患部注射してから放射線を当てる方法です。
10名中9人に効果があったとの報告もあり、初期の限局性のがんには有効ではないかと期待されています。
健康食品といわれるものはすっかり浸透していますが、「がんに効く」とか「がんから生還した」等のうたい文句は藁をもすがる気持ちを掻き立てます。
多くの医師は健康食品に対して好意的ではない様で、あからさまに反対はしなくても認めることはないので、医師に言わずに飲み続ける事も多い様です。
健康食品を用いる事のメリットは、・免疫力を上げて自然治権力を高める事、・放射線や抗がん剤等の副作用を和らげる事、・再発を予防する事、等で、がんその物を抑える効果の人に対するエピデンス(科学的根拠)が確立されているものは現在はありません。
とはいえ、がん患者のほとんどは何かしらの健康食品を飲んでいるとみられており、弱みにつけ込んだ詐欺まがいの製品も多く、玉石混淆の商品である事は事実です。
高いから効果も高いというものでもなく、確かな製品を選ぶ目と用い方に注意が必要です。
まず成分分折表が手に入るか、問い合わせに答えるか、領収書がもらえるかなどがメーカーを選ぶ際の目安になります。
また用いる場合、その健康食品がどの点に特徴があるのかを納得して用いる事が大切です。
つまり同じ作用の物を複数併用したりせず、作用の違うものを組み合わせる事が合理的といえます。
例えば免疫を高めるもの(AHCC、アガリクス、メシマコブ、乳酸菌エキス等)、血管新生を抑制するもの(サメ軟骨等)、アポトーシスを促すもの(フコイダイン等)等の作用を考えて目的とするものを用います。
また副作用もゼロでは無いので健康食品だからと過信するのも禁物です。
膵臓がんは粘膜に発生する胃がん等と異なり、実質臓器に発生する為に早期発見が難しいがんです。
しかも膵臓がんの90%は悪性度が高く、転移も早く、発見された時はすでに大半が3 cmを越える進行がんの段階で発見されているのです。
小さくて無症状の状態で発見された場合でも、手術してみるとリンパ節や肝臓に転移している事もあり、再発も早いのです。
膵臓がんは近年増加する一方で、2014年の膵臓がん死亡者は31.716人で男性5位女性4位になり、20年前と比べると倍の死亡率になっています。
従来のがん検診ではCT検査だと1 cm刻みの輪切り画像しか得られないため、1cmより大きいがんでないと発見できず、腫瘍マーカーもがんが小さい段階では陽性と出にくいのです。
しかし最近の画像診断技術は格段に進歩してきていて、「胆管・膵管磁気共鳴画像診断(MRCP)」や「ポジトロン断層撮影(PET)」を行われています。
また膵臓がんの遺伝子診断はまだ実用化には至っていませんが、Kras遺伝子の変異やがん抑制遺伝子P53の欠損などはその糸口になるようです。
患者自身の注意点としては、がん細胞のために膵臓のラングルハンス島からのインスリン分泌が低下する事があるので、糖尿病発症して2年以内の人は検査を受ける事が必要です。
また膵管ががんで狭窄すると、急性膵炎に似た腹部の鈍痛や胃の裏あたりの痛みといった症状が出てきます
前立腺がんの症状は前立腺肥大症と非常によく似ていて、頻尿や残尿感、尿の勢いが無いなどの排尿障害があります。
進行すると尿や精液に血が混じったり、更にはがん細胞が骨に転移して腰痛を起こす事があります。
前立腺肥大症と合併する事が多く、前立腺肥大症の約15%にがんが見つかるという報告があります。
前立腺がんかどうかの診断は直腸診で前立腺に硬いしこりがあるかどうかを調べ、生検で確認していましたが、現在では血液検査で腫瘍マーカーPSA(前立腺の細胞でつくられる糖蛋白)の前立腺特異抗原と超音波検査法を組み合わせて、簡単で詳しく分かる様になりました。
PSA値は血液中3.0ng/ml以下が正常で、進行がんだと2000~3000ng/mlにもなります。
療法はがんが前立腺内に限局していれば、ホルモン療法・放射線療法・外科手術(前立腺全摘手術=前立腺と精嚢腺全てを切除)から病期段階によって選びます。
がんが前立腺周囲に拡がってしまった場合はまずホルモン療法(男性ホルモンを抑制)を行って前立腺を萎縮させてから、外科手術や放射線療法を行います。
前立腺がんは日本人等アジア系には少ないがんで、欧州の白人やアフリカ系米国人には大腸がんや肺がんと並んで発生頻度の高いがんです。
世界各地の50歳以上の男性を調べてみると、欧米人・アジア人に関係無くどの人種でも30%という確率で前立腺にがん細胞が発見されます。
これは病的な臨床がんに成長するとは限らない潜在がんです。
日本人の臨床がんは10万人中5、6人ですがハワイやロサンゼルスに住む日系人は10万人中35~40人とアメリカ人全体と変わらない罹患率になります。
これはやはり食事と生活環境からきていると考えられ、今後の日本は食の欧米化と高齢化が重なって、前立腺がんが一層増えてくるものと考えられています。
毎年約6万人が発病するとされる大腸がんは、女性は肺がんを抜いて1位になり日本人で最も多くなると予想されています。
大腸がんの検診も普及し、その時にポリープが見つかる事があります。
ポリープとはイボのような突起物を意味し、大腸の粘膜が内側に飛び出しているのです。
大腸のポリープはがんの可能性がある腫瘍性とがんとは無関係な非腫瘍性に分かれますが、将来の大腸がんを予測する重要なサインになります。
腫瘍性が全体の8割を占め、これを腺腫(良性)といいます。
非腫瘍性は潰瘍性大腸炎やクローン病で、大腸が炎症して粘膜が隆起した炎症性ポリープと、粘膜細胞が増殖して盛り上がった一種の老化現象である過形成ポリープがあります。
最近の報告では炎症性ポリープもがんになる事が分かってきました。
腺腫はS状結腸や直腸によくでき、症状はなく便潜血反応が陽性になり、内視鏡検査で発見されます。
腺腫は全てが前がん状態といわれていましたが、現在では膿腫の直径が1~2㎝になるとがん(悪性)になる可能性が80~90%になる事が分かり、その大きさの腺腫があれば切除する事になります。
また5mm以下では99%が腺腫、6mm以上では腺腫が88%で、がんが12%含まれるといわれ、6mm以上の腺腫は日本では摘出の指標になっています。
しかし専門家によっては発見されたポリープは全て切除するという考えもある様です。
ポリープを切除すれば大腸がんのリスクは減少するのですが、ポリープがある人はポリープができやすい体質であり、大腸がんになりやすいといえるのです。
腺腫を切除した人や5mm以下の小さな腺腫がみつかった人は定期的に大腸の検査を受ける事が大腸がんの予防に繋がる様です。
また食生活を中心にしたライフスタイルを変える事も大切です。
子宮がんには子宮頚がんと、子宮体がんがあり、約70%が子宮頚がんで20~40代の若い女性に多いです。
子宮頚部の細胞は膣側が上皮細胞、体部側は腺上皮で、この境界は炎症やホルモンの作用で崩れやすく、この時に発がん因子が作用して異形成という前がん状態となります。
ほとんどは自然治癒しますが5%ががんになるといわれています。子宮頚がんの90%はこの異形成ががんに進行した扁平上皮がんです。
子宮頚がんは妊娠出産の回数が多い人、最初のセックスが早い人、セックスフレンドが多い人、喫煙歴のある人等に多く発生する事が統計調査で分かってきました。
子宮頚がんの細胞を検査すると、99%に性感染症(STD)の一つであるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染している事が分かりました。
それが発がんの重要な因子とみなされています。HPVはイボを作るウイルスの一種で、70種類以上のタイプがあります。
大多数のHPV感染は自然に治癒しますが、数種類のウイルスが子宮頚部の前がん状態をもたらすのです。
この前がん病変の早期発見法は綿棒で子宮頚部入り口当たりの細胞をとって診断する事になります。
子宮頚がんはその進展で0期からⅣ期までに分けられ、早期の子宮頚部に限局した0期か1期であれば5年生存率95%で、レーザーや高周波による方法でがんを削り取る事で子宮が温存できます。
子宮頚部を越え腺や子宮の周辺組織に広がっている場合には子宮の摘出手術が行われる事になります。
現在HPVウイルスの感染を防ぐワクチンの開発がされ、接種が行われています。
抗体ができれば、ウイルスが侵入しても感染を防げる上、既に感染している人でも増殖や発症を抑えられますが、副作用も報告されています。
高齢になるに従ってがんになる率は加速度的に高まります。
60歳でがんになる率は男女とも7%強ですが、80歳になると男性で36%、女性で21%になります。
老人医療センターで亡くなった人(5000人、平均82歳)の半数は直接の死因はともかくがんを持っていたという調査もあり、人は年をどればそれだけがんにかかりやすいのは確かなようです。
しかし高齢者のがんは若い人のがんとは違った面がある事も確かです。
例えば高齢者の乳がんは比較的大人しく、女性ホルモンに桔抗する薬がよく効くといいます。
70歳以上では乳がん摘出手術と薬だけの方法を比較して、両者の生存率が変わらなかったというイギリスの報告もあります。
つまり同じ部位のがんでも年齢によってその性質が変化するものがあるのです。
また療法だけで無く、検査方法にも配慮が必要になります。高齢者では生活習慣病などの合併症を持つ事が多く、心肺機能、肝臓・腎臓等の予備能力にも大きな個人差があります。
ですから組織検査の為の試験切除など、身体に負担のかかる検査は避けなければならない事が増えると同時に、医療に耐えられるかどうかの判断も必要になります。
更に複数のがんにかかる事もあって根治的改善が難しい場合も増え、緩和医療が主体となる事も多くなります。
代表的な血液のがんといえば白血病ですが「急性白血病」「慢性白血病」に分かれます。
また、「悪性リンパ腫」はがん化した細胞の性質の違いで「ホジキン病」と「非ホジキン病」に分かれます。そして他に「多発性骨髄腫」等があります。
この中で最も多いがんは急性白血病で細胞の違いにより、急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に分かれます。
この急性白血病の発症頻度は10万人あたり約6人で、成人では骨髄性白血病が80%を占めていて、急性リンパ性白血病は小児がよく発症する事が知られています。
急激に悪くなり短期間に死亡する為に大変予後の悪い病気の印象があります。
更に抗がん剤の副作用で頭髪がすっかり抜けたりと厳しい投薬というイメージもあると思います。
しかし、「骨髄移植」だと完治するがんでもあるのです。
ただし、患者さんの症状が急激に悪化することやHLAの適合性やドナーの問題もあり、なかなか移植が難しいのも現状です。
最近ではよりドナーの負担を軽減する事ができる「末梢血幹細胞移植」や「臍帯血移植」等の新しい方法も実施されています。
いずれの方法も2000年には保険適応となっています。
また、化学療法もカクテル療法(数種類の抗がん剤を組み合わせる)で、急性骨髄性白血病の約80%はがん細胞が無い「寛解期」に移行する所まで来ています。
また、1970年代中国では昔から医療用に使用していた猛毒のヒ素をペーストにした薬剤で白血病を治していてある程度効果をあげていました。
そこに目をつけたアメリカのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターが、1998年から急性前骨髄性白血病(骨髄や血液中で未熟な白血球が増加)に投与したところ、12人中11人が完全に白血病が消えたという報告もあります。
現在白血病薬としてFDA(米食品医薬品局)も承認したのです。
発がん性でも知られているヒ素には意外な薬効があるのです。
アストラゼネカ社(英国に本社)が開発し、世界に先がけ日本で2002年7月に承認されたイレッサ(ゲフィチニブ)は「分子標的薬剤」といって、がんの原因となる酵素や受容体の分子だけに作用する抗がん剤です。
イレッサは細胞膜上の上皮細胞成長因子受容体の内側にある受容体型チロシンキナーゼに作用します。
がん化している細胞では受容体型チロシンキナーゼが常にリン酸化していて、細胞増殖のシグナルが出続けて、がんが増殖するのですが、イレッサはシグナル伝達のメカニズムを阻害して、受容体型チロシンキナーゼがリン酸化する事を妨げるのです。
開発段階での臨床試験では、外国人52人中9.6%、日本人には51人中27.5%に効果があったのです。
投与後数日から数十日で末期の肺がんが消失した、という「劇的」な報告が相次ぎました。
肺がんの特効薬といわれたイレッサですが、実際にはどのように細胞に作用しているのか解明されていなかったのです。
厚生労働省はイレッサを申請後5ヶ月という異例の早さで承認したのですが、重篤な副作用の問質性肺炎や急性肺障害を起こした523人中177人の死亡が報告されています。
イレッサは投与を始めて1~2週間で効く人と効かない人にはっきり分かれますが、がん細胞の遺伝子を分析した東大医科学研究所の研究では、効いた人はがん細胞の増殖に関する遺伝子が働かなくなり、効かなかった人ではこの遺伝子が活性化している事が分かりました。
非小細胞がんに延命効果があるとされます。大きな期待をされていましたが副作用があり、段々とプラセボとの臨床比較から効果の無いがんも多く使用は注意がいる薬となりました。
がんと言えばまず外科手術でがんの病巣を切除し、転移や再発を防止する為に抗がん剤等の術後補助療法が行われる、というのが一般的な流れです。
しかし、この術後補助療法はがんの種類やステージによって効果が違い、全てのがんに有効なわけではありません。
術後の補助化学療法に効果があると確認されているのは乳がん、卵巣がん、大腸がん、膀胱がん等少数ですが、これらのがんでもステージによって、手術の内容によって評価が分かれます。
例えば胃がんの場合、日本では術後補助化学療法がよく行われていますが、実際には胃がんの術後補助化学療法による生存率は改善されず、欧米ではこの療法は行われていません。
また前立腺がんでは術前にホルモン療法をしてから手術をする事が多くなっている様ですが、前立腺がんに効く抗がん剤はなく、補助療法は標準的な方法として確立されていません。
こうした術後の補助療法は、再発の危険性を考えるとやらないよりやった方が良いと考えるのは間違いで、効果が期待できない方法を受けても副作用やQOLの低下に苦しむ事になります。
術後の補助療法を受ける場合は、手術だけの場合の再発の可能性、補助療法を受けた場合のリスクの低減の度合い、補助療法の副作用とリスク、等をきちんと理解して行うべきでしょう。