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抗がん剤イレッサ

2021.06.10 | Category: がん

アストラゼネカ社(英国に本社)が開発し、世界に先がけ日本で2002年7月に承認されたイレッサ(ゲフィチニブ)は「分子標的薬剤」といって、がんの原因となる酵素や受容体の分子だけに作用する抗がん剤です。

イレッサは細胞膜上の上皮細胞成長因子受容体の内側にある受容体型チロシンキナーゼに作用します。

がん化している細胞では受容体型チロシンキナーゼが常にリン酸化していて、細胞増殖のシグナルが出続けて、がんが増殖するのですが、イレッサはシグナル伝達のメカニズムを阻害して、受容体型チロシンキナーゼがリン酸化する事を妨げるのです。

開発段階での臨床試験では、外国人52人中9.6%、日本人には51人中27.5%に効果があったのです。

投与後数日から数十日で末期の肺がんが消失した、という「劇的」な報告が相次ぎました。

肺がんの特効薬といわれたイレッサですが、実際にはどのように細胞に作用しているのか解明されていなかったのです。

厚生労働省はイレッサを申請後5ヶ月という異例の早さで承認したのですが、重篤な副作用の問質性肺炎や急性肺障害を起こした523人中177人の死亡が報告されています。

イレッサは投与を始めて1~2週間で効く人と効かない人にはっきり分かれますが、がん細胞の遺伝子を分析した東大医科学研究所の研究では、効いた人はがん細胞の増殖に関する遺伝子が働かなくなり、効かなかった人ではこの遺伝子が活性化している事が分かりました。

非小細胞がんに延命効果があるとされます。大きな期待をされていましたが副作用があり、段々とプラセボとの臨床比較から効果の無いがんも多く使用は注意がいる薬となりました。


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