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子供が訴える痛みで最も多いのが腹痛で次が頭痛です。どちらも広い意味で心身症の周辺疾患の場合が大変多いと言われています。
心身症の腹痛は反復性腹痛と言って3回以上、3ヶ月以上に渡り反復します。子供の10%前後に見られます。
原因不明の場合が多く、元々消化器系が弱く、性格的にもストレスに弱い為に消化器系の症状として現れます。
勿論、器質的疾患や起立性調節障害等でも起こりますから診断が必要です。
幼児期からこの症状は現れますが、思春期頃には約30%は改善していきます。
しかし、それ以降にも長期的に腹痛が続く場合は、過敏性大腸症候群の症状が出て来やすい傾向があります。
また頭痛は風邪をひいても、眼精疲労、虫歯でも起こる症状です。しかし原因が分からず、かつ反復性の頭痛は心身症の緊張性頭痛と言えます。
精神的な緊張感により持続的に頭部の筋肉や筋膜が緊張するため、肩こりや首のだるさが伴います。
また、この他の痛みで多いのは外傷、突き指、骨折、脱臼等や運動のやり過ぎによる筋肉痛や関節痛等もあります。
関節や筋肉の痛みの中に、成長痛と呼ばれている物があります。
10歳位までに起こり、検査しても異常が無い物を成長痛と呼んでいます。
この成長痛は神経質な子供に多く、実はこれも心身症の一つの症状と言われています。
この特徴は夕方から寝入りばなが多く、下肢に症状を表す事が特徴です。
この様に子供の痛みの背景には、未成熟な心の葛藤による場合が多くある事に留意する事が大切です。
アメリカ精神医学会の診断基準 (DS-Ⅳ)ではうつ病の症状として9項目挙げています。
抑うつ気分、興味・喜びの減退、食欲障害、睡眠害、焦燥感あるいは行動制止、易疲労感・気力減退、無価値観・罪責感、集中困難・決断困難、自殺観念で、このうち5項目以上あればうつ病としています。
この診断基準は子供にも適応する事が主流になっています。
しかし子供の場合、抑うつ的な状態や気分を言語的に表現する事が難しく、表情、態度、行動、身体症状等で表す事が多くなります。
時期によってその現れる形が違います。幼児期では遊びが単調、気が小さい、食欲不振や睡眠障害等が現れます。
学童期では、かんしゃくを起こしやすく、創造的な遊びが苦手で、友人も少ない傾向があります。
また夜尿症、爪噛み、性器いじり等のクセがみられます。
思春期では自殺について ほのめかしたり、物事に強く執着する、気分が変動しやすく、頭痛や腹痛等の身体症状をしきりに訴えます。
ただ、精神的に健康な子供でも抑うつ的になる事もありますから、これらの症状が必ずしもうつ病とは言えません。
思春期前までは男子が多く男女差が2対1ですが、それ以降は男女差はありません。
ほとんどのうつ病の原因は親子関係、対人関係等の心理的な要因や心的外傷(PTSD)等が挙げられます。
また、精神分裂病や抑うつ神経症による感情障害もうつ病に類似していますので素人判断せず、専門の児童精神科を受診する事が必要です。
高齢者は臓器、組織共に衰えて行きますが、知覚もかなり鈍くなる傾向があります。
ですから入浴時、体感的には気持ちょいと感じられるお湯も、実際にはかなり高い温度になっている場合が多いのです。
ところが、このお湯の温度は血液の粘性と密接な関係を持っていて、お湯の温度が42℃を越えると血栓の生成を促進すると言われています。
その危険因子は
1)凝固因子である血小板を活性化させる物質は42℃以上の熱い湯の中で血中濃度が高まる。
2)血栓を溶かす働きをするプラスミンの生成を促進する物質は38~40℃で増えます。しかし42℃以上では阻害する物質が増える。
3)血液の粘度が最も高いのが42℃の全身浴。最も低かったのが38℃の全身浴。
4)熱い湯は交感神経を刺激して血圧を上げる作用がある。
等です。この様に高齢者の熱い風呂の危険性は明らかです。
お湯の温度が39~40℃で心臓に負荷を掛けない為にみぞおちの下まで浸かる半身浴がお勧めです。
また、余り長湯をせず、一回3~5分位にして、身体を洗ったり、水を飲んだりしながら、何回かに分けた入浴が良いと思います。
特に高血圧症、糖尿病等動脈硬化の可能性のある高齢者にはぜひこの様なアドバイスをしてください。
日本の65歳以上の3人に1人は高血圧で、血圧が高いほど心臓血管病や脳卒中の危険が増します。
一般に血圧は加齢に連れて自然と高めになり、70~80歳にもなれば程度の差は有るものの動脈硬化が進行します。
全身の細胞に行き渡らねばならない血液が血管の内径が小さくなる為に減少するのを、心臓のポンプの力を強める事で補う為に血圧が高くなると考えられます。
老人科専門の診療所等の方針では、比較的若い高齢者に対しては中年と同様に生活指導と平行して降圧剤等でとにかく血圧を低く保つようにしますが、70歳以上の高齢者に対しては投薬は慎重に行う要です。
食事・運動・嗜好の指導等の非薬物療法が主流で、血圧がとても高ければ少量の投薬から始めます。
高齢になればなる程薬による問題が起こる率が高いのです。
若者に比べて薬が体内に残る時間が長く、始めの内血圧が下がら無くても2、3カ月後に急に下がったりする事や、病院で多数の薬をもらっている人の場合「多剤併用」による副作用が起き易い事が大きな問題になっています。
降圧剤を服用している高齢者が急に元気が無くなったり、フラついたり、呆けた要な時はすぐに血圧を確認します。
収縮期血圧がかなり下がっていれば転倒やせん妄を起こす危険があるので注意が必要です。
高齢の方で、脚の痺れや冷えがあり、歩くと太腿やふくらはぎが痛み、休憩すると痛みが取れる等の間欠性は跛行の症状を訴える人がいます。
この場合加齢による筋肉の衰えや座骨神経痛だけで無く、足の動脈が徐々に詰まって行く閉塞性動脈硬化症に注意する事が必要です。
歩行する為には筋肉に酸素が必要になりますが、動脈の内径が狭い為に、血液が十分に行か無いので酸素不足になり、この様な症状が現れ、休憩すると血液が供給されるので痛みが無くなるのです。
この時は関節が痛くなる事はありません。更に動脈硬化が進むと安静時も痛くなり、放置すると壊死を起こし、切断する事になりかねません。
脚の痺れ、冷え、歩くと痛いと言う症状を訴える場合には、閉塞性動脈硬化症が無いか、必ず左右の脚にある動脈の脈拍の強さを比較したり、足の色が紫や白色になっていないか、感覚麻痺が無いか等確認する事です。
方法には血管拡張薬や、抗血小板、抗凝固薬、更に悪化するとバイパス手術といった対症療法が行われます。
また血液循環を良くする運動が改善と予防にもなり、運動する事でバイパスの内径が広くなります。
痛くなるまで歩く事も大切で、痛くなったら休み、を繰り返して歩行距離を伸ばし新しいバイパスを発達させる事が大切です。
肺塞栓症と言えば、最近話題に上る様になったのが「エコノミークラス症候群」です。
湿度がほとんど無い陰圧にした飛行機内に長時間身動きの取れない状態でいると血栓が出来て肺に塞栓を引き起こす疾患です。
この様な特殊な条件下だけで無くこの肺塞栓症は高齢者に次第に増加している疾患です。
肺塞栓と言っても、血涙障害の程度は様々で血栓の大小によって無症状から突然死まで幅があります。
突然死の場合は、急激に肺の多数の血管が血栓、塞栓によって閉塞して、肺へ血液を送る右の心臓に強い負荷がかかり、急性の右心不全を起す為です。
肺塞栓症はほとんど下肢の深部静脈血栓症が引き金になっています。
その危険因子として肥満による血液粘度の上昇や凝固機転を発生させるストレスや糖尿病や煙草等による凝集粘着の亢進等があります。
更に、長期臥床や手術後に高率で発症する事が分かっています。
静脈血栓は血液がうっ帯する所に起こり易いので、うっ滞を解消する為のマッサージや軽い体操が非常に効果的です。
肺塞栓症は病院内の発症が多く、約60%は入院患者に起こっています。
しかし、今後は高齢化が一層進み、在宅介護が進む中で、病院外でのこの肺塞栓症が増えて行く事が予想されます。
総コレステロールの値は男性で45歳以降、女性では更年期以降、年齢が上がるにしたがって高くなっていきます。
ピークは60歳代で、以後70歳代、80歳代と高齢になるに連れて減少していきます。
70歳以上になるとコレステロールの吸収や合成が低下する事が原因と考えられます。
一般に高脂血症は様々な生活習慣病の危険因子で、確かに75歳位までの高コレステロールは虚血性心疾患の危険因子である事は確かです。
しかし80歳以降の高コレステロールが心疾患の危険因子である事は疑問視されています。
もちろん高血圧や糖尿病の疾患があったり、かつて虐血性心疾患になっている人は薬物などによって速やかにコレステロール値を下げなければなりませんが、その既往症のない80歳以上の人にとって薬物的な療法は必ずしも必要とはされないのです。
しかも、高コレステロールだと、心疾患は確かに増加しますが、かえってコレステロールが低いと脳卒中や癌、肺炎などの感染症に罹り易くなってしまうのです。
疫学調査ではコレステロール値200前後と言う数値が一番長命だという結果が出ており、東京都老人研の小金井市の疫学調査でも低い人は高い人よりも寿命が短いという結果が出ているのです。
心疾患の徴候が無く、脳卒中や癌等を患った家族が居たり、現に脳卒中の心配がある人のコレステロール値はある程度高めでもよいのです。
健康な後期高齢者の場合、コレステロール値260位までは薬等を使って無理に下げる必要は無いと考えられます。
下肢の静脈の血液は筋肉ポンプ作用と逆流を防ぐ静脈弁で心臓に還ります。
この弁が静止したままの立ち仕事、遺伝、妊娠が誘因となって障害されて血液がうっ滞し、表在静脈が曲がりくねってこぶの様に盛り上がった状態を下肢静脈瘤といいます。
30歳以上の女性で60%、50歳以上の男性で50%の人に認められるのですが、高齢につれて運動不足から筋肉ポンプ作用も低下して、静脈瘤の膨隆が増し、脚が疲れやすい、重い、だるい、痛い、また就寝中にこむら返りが起き易くなります。
鬱血状態が10年以上続くと下腿の内側や、足首を中心に静脈瘤から血液成分が滲み出て茶褐色、黒褐色の色素沈着となり、更に皮膚や血管も脆くなり、軽い打撲で皮下出血したり、皮膚の栄養障害による湿疹、痒み、又傷が出来易くて、治りにくい為に、傷が広がり潰瘍化して行きます。
更に細菌感染の抵抗力も低下し、ブドウ球菌などの細菌の為に、皮下組織が化膿し炎症を起こす蜂寓織炎が起き、脚が痛み、赤く腫れ上がり、高熱が出る事があります。
最悪の場合は敗血症になる事もあるのです。
静脈瘤は中々元に戻る事は難しいので、進行を遅らせる為に初期の段階で弾性包帯や弾性ストッキングを使用する事です。
重症になれば血管に硬化剤を入れてその血管を塞いだり、その血管を抜き取る手術が行われます。
老年期痴呆症の分類は以前は、日本では脳血管性が約60%でアルッハイマー型が約30%、残りが混合型とされてきました。
しかし欧米では逆にアルツハイマー型が過半数を占め、脳血管性は約30%にとどまっていたのです。
この理由として欧米人に内頚動脈等の動脈硬化の程度が重く、頭蓋内脳動脈の動脈硬化は軽いのに比べ、日本人では頚部の動脈硬化は余り見られないのに頭蓋内脳動脈の硬化が著しいという事実が挙げられています。
しかし近年は日本の脳血管性痴呆は減少傾向を示し、欧米での統計に近づきつつあります。
その理由には脳梗塞後遺症に抗血小板薬や脳循環代謝改善薬が繁用される様になり、脳梗塞の再発を抑えていると考えられています。
欧米では脳血管痴呆への関心が薄く、DSM-Ⅲに精神疾患の国際基準とされる米国精神医学会の診断基準DSMの再々改訂版(現在はDSM-Ⅳ)に、ようやく脳血管性痴呆(以前は多発梗塞性痴呆)という診断名が出たのです。
この診断基準では
①痴呆が存在する
②既往歴や臨床症候から脳血管障害の証拠がある
③2つの障害の合理的な関連として明確な脳卒中後3ヶ月以内に痴呆が発症する、とあります。
日本では、脳血管障害があって2年位経って痴呆が出現しても脳血管性痴呆としているのです。
脳血管性痴呆の病態として、最も多く見られるのが基底神経核部及び大脳皮質下白質に存在する小梗塞巣で、大脳皮質の障害は比較的軽い事ですの変化が少ないので、2つの型を見分けるのに役立ちます。
高齢者の貧血は結構多い物ですが、老化と言う事だけで片づけられません。
確かに高齢者では赤血球系の幹細胞が減少しますが、だからと言って造血刺激に反応する力や血球の寿命までが劣って来る訳ではありません。
つまり血液を作る予備能が弱いとは言えますが、本来血液中の細胞数までが大きく減ると言う事は無いのです。
高齢者は何らかの病気を抱えているものですが、厳密に基礎疾患(複数の事も多い)の影響を除いて考えると高齢者だから貧血になると言う事は必ずしも言えないのです。
つまり、高齢者が貧血だという場合、老化と片づけないで別の疾患を考えなければなりません。
鉄欠乏性の貧血と言われるものも食事の偏りが原因というよりは、消化管の潰瘍や腫瘍よる出血である事が多く、高齢者に多い逆流性食道炎による出血も多いものです。
その他に癌や感染症、腎疾患、膠原病等も貧血の原因になっている事が多いのです。
特に高齢者の貧血では胃癌と大腸癌は疑うべきです。従ってこうした2次疾患としての貧血は基礎となっている疾患が改善すれば改善する筈です。
一般に高齢者では貧血の特徴である顔面蒼白、疲労感、動悸、息切れ等の典型的な症状が出にくいので見逃されたり、軽視される傾向があります。
しかし時として鬱状態やせん妄をひき起こしたり、動脈硬化や呼吸器疾患等を合わせ持っていると、心不全等になって重症になる事もあるので注意が必要です。