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骨格筋 - Part 2の記事一覧
四肢と言えば手足ですが、進化の過程で手は移動する為には使われ無くなり、より高度な動きを獲得しています。
この上肢は2つの骨で(肩甲骨と鎖骨を合せて上肢帯)で結ばれています。
重要なポイントとして背中は広背筋で、胸郭側は大胸筋、小胸筋で上半身が覆われている事です。
アウターマッスルの浅い筋肉層である胸筋と背筋は全て上肢帯か上腕骨に停止しています。
つまりお腹の部分を残して胴体にある表面の筋肉は全て手の動きに関係しているのです。
また上腕の前面には屈筋群、後面には伸筋群がそれぞれ発達して、特に親指には様々な種類の筋肉が付いて、より巧緻な作業が出来る様になっています。
これも胴体の表面の筋肉が全て腕に関わる事で可能になったのです。
ところが下肢の方は、下肢帯(腸骨、坐骨、恥骨、全体で寛骨)が背骨の一部である仙骨と結合して骨盤を形成しています。
下肢の筋肉は上肢と違って狭い骨盤の範囲から起こっているので、腸腰筋や大中小殿筋は大腿骨のほとんど前面に幅広く付き、特に内転筋は広く大腿骨に付着しているのです。
ですから、下肢は上肢に比べて運動の可動域は狭くなっていますが、しっかりした下肢の筋肉群により直立歩行に適した形になっていて、手を更に自由にする事に貢献しているのです。
骨格筋の中でも上腕二頭筋や大腿四頭筋等の大きい筋肉は、表面的にも、力を発揮する上でも“目に見え”ています。
これら、身体を覆っている様な骨格筋をアウターマッスルと言い、これに隠れる様に関節付近にある小さな深部の筋肉群をインナーマッスルと言います。
肩の周りでは棘上筋や棘下筋、小円筋、肩甲下筋などのローテーターカフ、腰の周りでは中殿筋、小殿筋、恥骨筋、長内転筋、外閉鎖筋、方形筋、梨状筋等です。
これらのインナーマッスルは腕を旋回させたり腰を動かす為にアウターマッスルが大きな動きをする時に拮抗して働き、肩の関節や股関節を安定化させ、スムーズな動きを可能にするのです。
例えば肩こりが僧帽筋の使い過ぎ等による物だとすれば、五十肩の場合は上腕骨と肩甲骨の位置を調節している肩のインナーマッスルが衰えて、アウターマッスルとのバランスが崩れ、上腕骨と肩甲骨がぶつかる様になって発症しているといえます。
インナーマッスルの衰えだけで無く、アウターマッスルが強くなり過ぎても五十肩になる事があります。
日常の動きの中でもスポーツのトレーニングの中でも気が付かずにインナーマッスルを酷使している事があり、くずぐすと治りきらない障害の要因になっている事も多いようです。
かつてスケートの橋本聖子が原因の分からないスランプに長く苦しめられた事がありましたが、詳しく調べるとその原因は梨状筋の肉離れによる物だったそうです。
このインナーマッスルのトレーニングにはチューブを使った方法があります。
このトレーニングはいわゆる筋トレの様な負荷はありませんが、正しく行えば効果は高いと言う事です。
スポーツマンだけで無く、五十肩や腰痛を抱えた人にとってもインナーマッスルのトレーニングは効果的でしょう。
骨格筋は反射以外では運動神経からの電気刺激によって収縮します。1個の運動神経が支配する筋線維を運動単位と言いますが、その1運動単位の中の筋線維の数は筋肉の機能によって違いがあります。
指や舌、眼球など精緻な動きが必要な部位では神経細胞1コ当たりの筋線維数が少なく、大ざっぱな動きで良い部分ではl個当たり多くの筋線維を支配するのです。
例えば広頸筋ではl個の神経当たり25個の、前脛骨筋では560個以上の筋線維を支配すると言う具合です。
ところで骨格筋線維は脳からの刺激を受けて収縮しますが、一つ一つの筋線維の収縮の強弱は、刺激の強弱による物ではありません。
刺激を受けた筋線維は収縮しないか、収縮するかの違いがあるだけで刺激の度合いによって収縮の度合いが変わる訳では無いのです。
筋線維の収縮が起こるぎりぎりの最小刺激を閾値と言いますが、その閾値に違すれば筋肉は最大の収縮をします。
刺激がいくら大きくても収縮がより強く起こる訳では無いのです。もちろん実際の骨格の動きには強弱があります。
これは、筋線維毎に刺激に対する閥値が様々だからです。
刺激が弱ければ同値が低い筋線維だけが動きますが、刺激が大きくなれば同値の高い筋線維も加わり、収縮する筋線維の総数が増えて大きな動きに結び付くのです。
骨格筋は様々な大きさの運動単位からなり、筋線維のタイプ゚や活動電位がどの様な頻度で発せられるかの違い等によっても動きにバリエーションが生まれるのです。
筋肉を付ける時は激しいトレーニングをして、2~3日は楽なトレーニングをするハード・アンド・イージーが最も効果的と言われています。
トレーニングをして筋線維の微細な構造が壊れると成長ホルモンの指令により蛋白質を材料に修復されます。
この修復によって回復した筋肉は傷つく前より筋線維が太く筋力も前より強くなりますが、その修復には2~3日かかり、これを超回復と言います。
また材料となる蛋白質を摂る量や運動する時間も大切です。
蛋白質の必要量は通常体重1kgに対して1gとして考えますが、筋肉を付ける場合は約1、3~1.4倍が目安になります。
食物中に含まれる蛋白質が消化吸収されてアミノ酸に分解され、それが全身の組織に運ばれて、細胞内のDNAの指令に従って様々な蛋白質を合成しますが、その合成を促すのが成長ホルモンです。
成長ホルモンは運動という刺激で分泌が多くなるので、筋肉を付けるには食後3時間後に運動をするのが良いのです。
これは摂取した蛋白質がアミノ酸になって組織に行くに約3時間かかる為です(プロテインの場合運動直後)。
また成長ホルモンは就寝して間もなくが最も多く分泌されるので、寝る1時間前に蛋白質を摂るのも効果があります。
蛋白質を摂る時には体脂肪に注意し低脂肪、低エネルギーの食品を摂ります。
更に一日蛋白質を150g以上摂ると身体に過剰な負荷がかかり腎機能が低下するので注意が必要です。
筋肉両端の腱の骨付着部分を顕微鏡で拡大して見ると、まるで沢山の針の東が骨に突き刺さる様に食い込んでいます。
この形状は腱が筋肉の微妙な張力を骨に伝えるのに、腱線維1本1本の直径が小さければ小さいほど効率が良い為だからです。
また狭い範囲内で繋がる面積を広げ、総合力を強くする為でもあります。
筋肉は筋線維という細胞から出来ていてエネルギーを消費して収縮しますが、腱はコラーゲン緯線とその中に散在する線維細胞もしくは線維芽細胞からなり、強靭ですがほとんど収縮しません。
腱は栄養や酸素をあまり必要としないので、血痕の供給はほんの僅かで済みます。
ところで筋線維の束の幾つかが切れた状態が一般に肉離れと言われています。
急に走り出そうとした時に、ふくらはぎや大腿に激痛を伴い動かせ無くなる事があるのですが、原因は筋肉の一部が周りの筋との協調を無視して過剰に収縮して断裂してしまうからです。
筋線維は普通同じ高さで切れずに少しずつずれて切れるので、切れ口が解離すると言う事はありませんが、切れた部分では内出血を起こし後に炎症を起こします。
肉離れは手術を要する事はなく、安静にしていれば自然に治っていきますが、腱の断裂となるとそうはいきません。
腱は筋肉と違って線維が同じ高さで切れる事が多く、筋肉の収縮に引っ張られて断裂部が解離してしまうので、多くは手術をして繋ぎます。
運動会等でよく起こるアキレス腱断裂は、ウオーミングアップ不足か疲労による下腿三頭筋の異常収縮が原因です。
筋肉の運動にはエネルギーの持続的な供給が必要です。
筋収縮の直接的なエネルギー源はリン酸化合物のアデノシン三リン酸(ATP)ですが、筋細胞内には極めて微量しかありません。
筋収縮を持続的に起すにはエネルギーをつぎ込んでATPを再合成する事が必要です。ATPの再合成はリン酸化合物のクリアチリン酸がクレアチンと燐酸とに分解する時に出るエネルギーを使っています。
また解糖系(乳酸系)では炭水化物(グリーゲンやグルコース)が解糖をするとATPと乳酸が生成されます。
この内クリアチリン酸と解糖系による再合成は酸素を必要とし無いので無酸素による筋収縮が可能です。この反応は細胞質で起こります。
しかし、無酸素系は持続時間としてはATP系は約8秒で解糖系が約33秒で合せても僅か約40秒程度に過ぎません。
ですから持続的な運動にはもう一つのエネルギー供給系である有酸素系がある訳です。
この酸化系ではもちろん酸素を必要としますので、有酸素系あるいは好気的エネルギー供給系と言い炭水化物や脂肪を二酸化炭素と水にまで分解する時に出るエネルギーを使ってATPを再合成します。
この反応は細胞内のミトコンドリア内で起こります。
筋肉の持続的な力はこの細胞内のミトコンドリアの数と大きさにより、持久力に優れた遅筋は速筋に比べてミトコンドリアの数と大きさがはるかに勝っています。
この三つのエネルギー供給系がバランスを保ちながら滑らかな筋肉の運動を支えているのです。
捻挫、肉離れ、打撲等の損傷の直後に行う効果的な応急処置は、氷嚢等を用いたアイシングで、その後の回復時間も早める事になります。
アイシングの効用は1.血管を収縮させて出血や内出血を抑え血腫形成を抑制し、腫れを最小限に抑える。
2.炎症を起こす酵素や化学物質の反応を抑える。
3.障害を受けた組織は血行障害によって低酸素状態になり組織障害が進む事があるので組織の二次的ダメージを少なくする。
4.神経系の機能を低下させて疼痛を軽くする。
5.障害があると筋緊張が充進し、痛みが増したり、局所の酸素消費量が増すが、アイシングする事で筋紡錘の働きを抑え筋緊張が緩和する。
等です。
アイシングを行う時間は約20分で、1回につきそれ以上行っても意味はありません。
約20分で血管があるところまで収縮しきり、無感覚の状態になって、それ以降は体に変化が起きないのです。
そこでアイシングを外して1時間ほど開けて、血管の正常な収縮を待ってから、再びアイシングを繰り返すのです。
長時間で強力なアイシングをすると逆に血管壁の透過性が増して腫れが増大したり、無感覚になっているので凍傷が生じる事になるので注意が必要です。
またアイシングをした事で疼痛が緩和され、障害を過小評価してしまう事があるので障害の程度を把握する事は大切です。
良い姿勢とは何でしょう。ヒトが起きている状態では、頭や体幹は重力によって下前方に引っ張られますから、筋肉はその反対方向に引っ張り上げなければなりません。
その時重心が安定し、骨、靭帯、筋肉をつなぐ力が最小限の状態というのが一番疲れません。つまりそれが“良い姿勢”といわれるものです。
ですから“悪い姿勢”というのはその反対に体を上に牽引しようとする時、筋肉に余分な力を使わせる状態だといえます。
しかも筋肉だけでなく靭帯にも過度の緊張を与え続ける事になり、ひいては骨だけで無く内臓の働きや呼吸にまで悪影響を及ぼす事になります。
猫背等の習慣や癖が作った悪い姿勢では、最初はその姿勢が楽でも筋肉が不用に緊張させられていたり、反対に体を支える為に必要な力が抜けている為、疲れやすかったり、ふらついてしまいます。
一方で胸を張り背筋を伸ばしてきおつけをした状態というのは一見よい姿勢に見えますが、肩や背中に余計な緊張があって、呼吸も浅くなり、長い時間続ける事ができません。
したがって、良い姿勢というのは両足を肩幅に開き、腰の上に上半身がすっと乗り、胸、肩の力を抜き、みぞおち、下腹を真っ直ぐに立てて膝の力も抜いてリラックスして立った状態です。
いわゆる臍下丹田に重心がある状態で、重心を中心軸からそれない様にします。
膝は突っ張らずに軽く曲げ加減にすると振動が吸収されて外からの力に対してもよろけず柔軟に対処する事ができます。
しかしこうした良い姿勢を保つには下半身の力が必要で十分な下半身がなければ上半身の力を抜いて正しく支える事ができません。
加齢によって筋肉は萎縮していきます。ただし一様にではなく、上半身は比較的ゆっくりですが、下半身の筋肉は真っ先に細っていきます。
生活の中で腕を使う作業は多いのに、体全体を動かす必要が減った生活のせいで大腿四頭筋や腹筋等の大きな筋肉を使う頻度が少なくなったからでしょう。
つまり廃用性萎縮が進んでいるわけです。それを防ぐには筋肉に負荷を加えるレジスタンストレーニングが必要となります。
ウォーキングは心肺機能を鍛えて血液の循環を良くし、脂肪も燃やしてくれます。
しかも安全なので中高年に適した運動であることは間違いありません。
しかしウォーキングだけでは加齢に伴う筋肉の廃用性萎縮を防ぐ事にはならないのです。
廃用性萎縮を防ぐには常に筋肉を作り続ける事が必要で、それには最大筋力の40%以上の力を発揮しなければなりません。
筋力の10%位しか使われないウォーキングでは筋肉を維持することは難しいのです。
しかも中年のうちに筋肉を鍛えて蓄えておかないと、高齢になった時の足腰は日常生活すら維持できない位衰えていく事が予想されます。
ですから中年ではウォーキングと共にある程度の筋トレが必要なのです。
筋肉を作る筋トレは、20回反復するのがやっとという負荷を15回程度行うという事が一つの目安となります。
ダンベルやチュープなどを利用すれば便利です。しかし最初は無理をせずウォーキングの後に少しの筋トレを加え、筋力が付いてきたら負荷を上げていきます。
また関節のトラブルを避ける為には腹筋、背筋等の体を支える筋肉も鍛え、ストレッチもお忘れなく。
顔面の筋肉には表情筋と咀嚼筋があり、表情筋は骨から起始して皮膚に停止する皮筋で顔面神経がその運動を支配しています。
咀嚼筋は頭蓋骨と下顎骨をつなぐ骨格筋で三叉神経が支配しています。クーラーなどの冷たい風に当たったまま眠ったり、風邪を引いたりこめかみ等に外傷を受けたりすると顔面神経が障害を受けて麻痺を起こす事があります。
また顔面神経が頭蓋から出てくる辺りで、化膿性中耳炎や耳下腺腫等の炎症が及んだり、圧迫を受けたりしても麻痺が起こりますが、末梢神経麻痺としては最も多く見られるものです。
多くは片側に現れ、患側の顔面筋が弛緩して無表情になり、額や眉間にしわを寄せる事ができなくなります。
眼裂は異様に広く開き、特に下眼瞼は重さの為に下垂して目を閉じる事ができなくなって「兎眼」と呼ばれる状態になります。
意識してまぶたを閉じようとすると眼球が上内方に移動して、白眼をむいてしまい、これを「ベル徴候」といいます。
鼻の光は健側に引かれて歪み、鼻唇溝も薄くなり、口角が下がって発音が不明瞭になります。
口笛を吹いたり唾を吐いたり頬を膨らませるといった事もできなくなります。
これらの症状は脳卒中の後遺症など中枢性の麻痺にもみられますが、違う点は中枢性は顔面の上半分が侵される事が無くて額にしわを寄せる事ができ、顔面の他にも片麻痺がある事で末梢性と区別できます。