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骨格筋 - Part 4の記事一覧
筋肉の筋細胞は筋線維と呼ばれています。筋線維はウエイトトレーニングをすると2~3倍に太くなりますが、筋線維が分裂して新たに繊維を形成するのでは無く、筋線維を構成する筋原縁組が増える事で太くなります。
これは筋肉に付随する腱や他の組織にトレーニング等の力学的な負荷がかかると成長ホルモンが、筋線維にミオシンとアクチンの収縮蛋白質を作る様に遺伝子を活性化するのです。
この蛋白質は筋原緯線が増えるのに必要になります。蛋白質を余分に作り出すと、細胞の容積と核の比率を一定に保つ為に核を増やす事になります。
筋線維には多くの核がありますがその核は分裂が出来ません。
その為に新たな核は、骨格筋表面に散在する、幹細胞の一種である衛星細胞(サテライト細胞)から作り出されます。
この細胞は単一の核を持ち分裂により複製し、筋運動の消耗度に応じて散らばるのです。
ある説によると激しい運動をすると筋線維の一部に微細断裂が生じ、その損傷部位が衛星細胞を引き寄せ、それが筋線維と混ざりあって修復の為の蛋白質を作り出すといいます。
更に衛星細胞が増えるに連れて、一部は筋線維上に残りますが、残りの細胞は筋線維内に取りこまれ、筋細胞の核となるのです。
こうした核の増加によって、筋線維は蛋白質を更に製造し、筋原纏綿を増やすのです。
修復している時には、損傷がそれ以上進まない様に休養が必要で、修復によって回復した筋肉は傷つく前より筋線維が太くなり、筋力も前より強くなります。
これを超回復といいます。
筋肉を強化する時は毎日激しいトレーニングをするのでは無くハード&スローが基本になります。
大腰筋、腸骨筋とで腸腰筋といいますが、この骨盤内のインナーマッスルは、骨盤、股関節、脊柱をつないで歩行や姿勢に関わる大切な筋肉群です。
腸骨筋は骨盤の上部から始まって大腿骨の小転子に停止する単関節筋で、大腿骨を引き上げるときに働きます。
大腰筋は第12胸椎と第1~4腰椎椎体という広い範囲から始まり、途中で腰骨筋と一緒になって大腿骨の小転子に付着する複関節筋です。
腰骨筋は大腿骨を引き上げるという単純な働きであるのに対し、大腰筋は股関節を曲げる、骨盤を立てる、腰椎を腹側に引いて脊柱のS字型を維持するという複雑な働きをします。
更に自律神経とも密接な関係を持つ重要な筋肉なのです。大腰筋が衰えると骨盤が後ろに傾き、内臓を支える腹筋等が緩んで内臓が下垂します。更に姿勢のバランスをとろうとして顎や胸椎が前に突き出し、猫背になってしまいます。
当然腰まわりの筋肉も弱まり、筋肉の代謝全体が悪くなって、内臓脂肪も皮下脂肪も溜まりやすくなるのです。
こうした状態では交感神経の働きも悪くなり、益々代謝が悪くなり冷え症や更年期障害、便秘を引き起こす様になります。
当然歩行能力にも影響し、つまづきや転倒の危険性が大きくなります。実際高齢者に大腰筋のトレーニングを行う事で歩行能力が著しく改善したとの報告もあります。
高齢になると大腰筋が衰えてきますが、最近では若い女性も運動不足の為大腰筋が細くなっていて、それが冷え症や隠れ肥満の原因になっていると考えられます。
簡単なやり方ではスクワットが効果的ですが、無理な場合は腰掛けたイスから立ち上がる事の繰り返しでも効果はみられます。
激しいスポーツや久しぶりにスポーツをした後に筋肉は硬くなり痛みを感じます。この筋肉痛は運動した当日よりも1日か2日経ってから痛みが出て1週間程度で改善しますが、その痛みを少しでも軽減するには運動後のアイシングです。筋肉の伸縮運動には伸長運動(力を加えながら筋肉を短く収縮する動作、エキセントリックな運動)、短縮運動(力を加えて筋肉を短くする動作。コンセトリック)、等尺運動(筋肉を一定の長さのまま維持する動作。アイソメトリック)の3種類がありますが、筋肉痛は伸長運動に多く出ます。この運動は最も力が出る割りにその運動に関与する筋線維の数が最も少なく、負担はそれだけ大きいので、筋線維やその周辺の結合組織に与える損傷も大きいのです。その損傷を修復する過程で起きる炎症や、浮腫が筋肉痛の正体です。アイシングは運動によって生じた損傷部分に、白血球が集まってきて活性酵素が発生し、炎症を拡大するのを防ぎ、回復を早早める効果があるのです。アイシングは氷嚢かポリエチレンの袋に氷と水を入れてO℃にして、氷が直接皮膚に触れない様にして行います。このアイシングにより、痛みが軽減されますが、筋肉や靫帯の損傷部分はそのままですから、あくまで応急処置ですので痛みが無いからといって無理をしない事です。
足は第二の心臓 といいます。人間筋肉の約3分の2は腰から下に付いていて、足を使う事によってその筋肉を伸縮させる事で血昔の循環を促進させ、心臓を助けています。ですから身体全体の代謝にとっても足の筋肉は大変重要な働きをしている事が分かります。しかし、労働科学究所の調査では、20歳代の筋力は60歳になると背筋や腕力は70%の力を保っているのに、脚力はわずか40%になってしまうとされます。使わない器官は退化し萎縮するという汎用性萎縮の法則がありますが、現代人は足をしっかり使わない為にハッキリ退化して来ているのです。古代人と現代人の足形を比較すると、明らかに現代人は重心位置がしだいに踵寄りになっていると言います。つまり、そっくり返った姿勢になってきて、このまま重心の位置が更に踵側に寄れば、ちょっと押しただけで倒れてしまうかもしれません。この原因は、子供の頃から足指を使う事が無くなり、指がしっかり発達しないために前寄に体重を支えきれなくなって次第に重心位置がが後退してきたからです。1日1万歩で転ばぬ先の足を作る事がなにより大切です。
骨格筋は約400ありますが、ほとんどが全身の関節の動きに関与する筋です。しかし中には皮膚に付着して皮膚を動かす顔面筋、広頸筋など(皮筋)もあります。この運動を司る骨格筋の形態や機能を知る事は、我々の仕事の上で基本中の基本です。患者さんの症状には筋肉のコリや痛みが必ずあります。どの部位の節肉でも我々の手技でコリや痛みを即座に取り除く事が出来れば、患者さんはおおむね満足します。臨床上の痛みを疼痛を取り除く、それだけでは科学は終わりません。筋肉のコリや痛みが起こる原因は一つでは無いからです。この筋肉における痛みや機能障害を解明する為のアプローチは様々な分野に広がり、運動生理学は宇宙科学の分野でも研究されています。更に、分子生物学的な手法を用いた研究により、筋の収縮張力は収縮装置はもとより、筋細胞小器官であるミトコンドリアや筋小胞体、リソゾーム等の変化によつても影響される事が報告されています。この変化は発育、加齢、性差によつても異なること明らかになつてきました。
身体の腱や靭帯から脳に伝わる興奮は、脊髄から上行する求心線維で視床、大脳皮質、小脳に達するばかりでなく側枝を脳幹の網様体に送って、網様体を一定の活動状態に保っています。一方この網様体からはインパルスを大脳皮質に送って皮質を目覚めた状態にしています。この系を網様体賦活系と言い、この網様体が破壊されると深い眠りに落ち込みます。多くの麻酔薬はこの系を抑制するように働きます。運転していると眠気醒ましにガムを噛むと良いというのは、顎や噛む筋肉の刺激が脳幹の網様体にはいり、そこを刺激して目覚めの反応を起こさせるのです。長く同じ姿勢をした仕事の後に手足を伸ばすと気分転換になりますが、その刺激が脳の目覚めの反応を強くしているのです。日頃から筋肉や腱や靭帯など身体の各部分を伸ばすと言う事は、神経の興奮を脳に伝え、脳を活性化する為に重要な事なのです。身体を硬くして伸ばす事が出来ないと、その場所の神経を刺激する事が無い分けです。そうなると脳を刺激する神経の数はそれだけ少なくなり働きも衰えてきます。痴呆を防ぐ為にも腱や靭帯をいつも伸ばす事が良いといえます。
骨格筋細胞のタイプは収縮する時の特性から、遅筋線維のタイプと速筋線維のタイプⅡとに分けられます。以前は赤筋、白筋、等と分類されていたのですが、今ではその筋線維の収縮特性から遅筋とか速筋もしくはタイプ、タイプⅡと呼ばれるのが一般的です。遅筋とはその名の通り収縮速度が遅い筋線維で、エネルギーを産生するミトコンドリアの数が多く、また大きいのが特徴です。グリコーゲンの量が少なく中性脂質が多いのですがこの中性脂質は有酸素代謝でエネルギーを産生し、なかなか疲労しにくいというのが特徴です。ミオグロピンが多いので筋肉の色が赤みを帯びていた為赤筋と呼ばれていたものです。一方速筋は筋小胞体が大きくて収縮速度は速いのですが、筋の中に沢山貯蔵できないグリコーゲンの解糖系でエネルギーを作る為、エネルギーの持続性に欠ける筋線維です。速筋線維は更に2種類のタイプに分かれ、速筋でも酸化的にエネルギーを作る事のできるタイプⅡa線稚とそうでないタイプ Ⅱbに分けられます。タイプ ⅡaではタイプIほど長くエネルギーを作る事のできるものもありますが、タイプⅡb線維はすぐに疲労してしまってすぐにバテてしまいます。その分、すこぶる瞬発力を持っているので大きな力を出す事ができるのです。この遅筋と速筋タイプはその筋線稚を支配する運動神経のタイプに対応していて、刺激伝達が速くて大型の運動神経は速筋線維に、興奮が持続する緊張的な運動神経は遅筋線維に接続しています。
筋肉の起源を辿って行くと20億年から30億年前に出現した核質が核膜によって細胞質から隔てられている真核細胞にまでさかのぼります。筋肉の連動といえば収縮ですが、細胞の運動の中でこの収縮が重要な位置を占める事といえば細胞質分裂です。この分裂は、分裂面の細胞表層に現れる収縮環と呼ばれる環状構造が収縮する事によって起こります。この環状構造の主成分は筋肉と同じアクチンフィラメントで、少量のミオシンも存在しています。このアクチンフィラメントとミオシンが相互に作用して収縮環が小さくなり細胞質をくびり切るのです。また細胞運動には、アメーバ運動、貧食運動、更に細胞内小器官運動等様々な物があります。これらの主要な運動原理も筋肉と同様、アクチンとミオシンの相互作用によるものです。この原理は、動物細胞だけでなく植物の細胞質にもアクチンフィラメントがあり、原形質流動の動力源にもなっているのです。より複雑な運動を行う人間の平帯筋細胞ではアクチンとミオシンの相互作用がより効率良くしていく為の収縮装置が更に発達し、心筋や骨格筋などの横紋筋では筋原綾維という更に特殊化した収縮装置が形成されてきたのです。
スポーツや肉体労働で筋肉が疲労した時にマッサージをする事で筋肉の疲労が回復する事は誰でも知っています。しかし、どの程度の回復が得られたのかという具体的な数値までの報告は余り聞いた事はありません。持久力と回復能力を研究しているグループの未発表の資料に、筋活動の休息時間にマッサージ(軽擦法)をするとどの様な効果があるかという報告があります。マッサージをしない群とした群に分けて前腕の把握作業を最大筋力の3分の1の負荷で疲労困憊まで行い、これを5分間の休息を挟んでセット反復させた時のデータです。これによると、マッサージをしない群では1セット目は平均85回の把握作業でしたが、次第に落ち5セット目には35回になり約40%にまで減少しました。しかし マッサージをした群では、1セット目は87回から、5セット目でも70回と約80%を維持する事が出来ました。このようにデータ的には当然の結果が出たのですが、ここで注目したいのはマッサージ(軽擦法)のみでこの結果が出た事です。手技には様々な手法があり、更に鍼や灸などの物理療法も組み合わせてみると更に効果が上がるとも思われます。
筋は収縮運動によってエネルギーを消費しますが、全部が全部効率よく使われる分けではなく、75%以上は熱になっています。機械と比較すると非効率的な運動時のヱネルギー消 費なのですが、身体の体温維持という視点から見れば当たり前の話です。例えば重量を支える様な収縮のときは、仕事をしないのでエネルギーは全部熱になります。エネルギーのうち仕事になる部分と熱になる部分との比率は、引き上げる重重が大きいほど、また収縮速度が遅いほど良くなりますが、一定の重量を越えるか、あまりゆっくり短縮する場合はかえって悪くなります。例えば、音通の勾配の階段を上がるとき、2秒にⅠ段くらいの速度が最も効率が良い事になります。ですから、筋肉に運動させる時にもこの効率を考えた動きが大切です。また、筋肉の収縮を続けていると次第に筋力が弱っていきます。これは乳酸などの疲労物質が筋肉に溜まり、それにより筋肉が酸性に傾き種々の化学反応の触媒である酵素がうまく働かない為に起こります。その結果、コリになる訳です。もちろん、これ以外に神経から筋肉に興奮を伝達する物質が足り無くなったり、脳内の神経疲労も加わる為に、筋肉それ自体の疲労ではない場合もあります。しかし、このような場合も、血液中に乳酸や二酸化炭素のような酸が多くなる事がその原因になる事が多いものです。