- Blog記事一覧 -脳の記事一覧
脳の記事一覧
脳血管障害で倒れた後、そう言えばあの時その徴候があった、と言う場合があります。
又その徴候に気が付かないまま発作の可能性を抱えている場合もあり、脳血管障害の徴候を見逃さない事はとても大切です。
脳血管障害が疑われる時、次の事項を患者さんに確認すべきです。・身体の片側や一部に筋力の脱力があるか(筋力低下)?
・片側や一部が鈍くなってたり感覚の異常があるか?
・視力や視野に異常があるか?
・言葉を発し難かったり、理解出来なかったりしないか?
・ふらつくか?
・ろれつが回らなかったり嚥下障害はないか?
・痙攣や意識障害があるか?
・頭痛はあるか?
等が危険のめやすになります。
また既往症や家族歴も手がかりになるので、・高血圧・糖尿病・高脂血症・心疾患・不整脈・喫煙等を確認すると共に家族にその様な疾患の人が居るかどうかが参考になります。
一過性の脳虚血発作とは24時間以内に症状が消えるものですが、ほとんどは10秒から15分以内で、局所神経症状が表れるものですが、紛らわしいものに偏頭痛や低血糖、順位変換での回転性のめまい(良性)などがあります。
比較的軽症で、発作から3日以上経っていて、病状の変化がほとんど無い場合は緊急性は少ないと言えますが、なるべく早く受診するよう勧めるべきです脳血管障害が強く疑われる場合、救急医療が必要なのは勿論です。
脳の活動を調べる為には、動物の場合は電極を刺したり局所を切除する事でその機能を確認できます。
しかし人間の場合はこの様な事は出来ないので、事故や病気等で脳を損傷した患者を観察する事で推論していました。
しかし脳を損傷せずに調べ事が出来るPET(陽電子放射断層撮影法)が1990年代初期に出来、更に機能的MRIの出現により、脳の血流量の継時的変化を見て、約2mmの解像度で活動中の神経細胞群の位置が画像で分かる様になりました。
これにより前頭前野の活動の様子が分かり、我々の精神活動すなわち意識を司る中枢の存在が次第に解明されて来たのです。
その部位の事をワーキングメモリと名付けたのはイギリスの認知心理学者アラン・バトリーでした。
このワーキングメモリは「行動や決断の為に必要な様々な情報(記憶情報を含む)を一時的に保持しながら、それらの情報を組み合わせる事で、行動や決断を導き出すための認知機能」と定義しています。
さて、その意識の中枢として今脚光をあびているのが前頭連合野の特にその背外側部にある46野と呼ぱれている部位です。
この部位は空間情報や言葉をワーキングメモリに記憶する時に活発に活動している事が機能的MRIによって明らかにされたのです。
しかし脳の持つ複雑で多層的な活動と機能を考えるとこれが意識の中枢だという結論には至っていないのが現状です。
食欲調節の機能は視床下部の摂食中枢と満腹中枢にありますが、そのメカニズムは、脳液の中にある液性因子と、神経を介する調節によります。
食欲中枢を刺激する液性因子としては30種類以上が見つかっています。
その内の一つのブドウ糖と食欲調節機構を関係をみてみます。
何かを食べると血糖値が上昇して行きます。
例え蛋白質しか食べ無くても体内アミノ酸からブドウ糖が合成されますので、いずれにしても視床下部周辺の毛細血管中でもブドウ糖濃度が高くなります。
血管壁を通過したブドウ糖が視床下部を被っている液中に入ると、満腹中枢の中のブドウ糖感受性神経が興奮して、満腹惑が生まれます。
また摂取中枢側にもプドウ糖受容神経(ブドウ糖により抑制される神経)が働き摂食を抑制します。
また、神経を介した食欲調節は味、匂い、色、形、食感等の情報はそれぞれの感覚器で感知され大脳皮質連合野で統合されます。
その情報は更に扁桃体に送られ、そこで過去の食体験と照合され良し悪しの情報、つまり快・不快のいずれかに決定されます。
快感をもたらす情報は摂食中枢を刺激させ、不快感をもたらすものは満腹中枢を刺激させ摂食を中止させるのです。
まずい物を食べると食欲が落ちるのはその為なのです。
不快な雰囲気も食べ物と共に快・不快を修飾しますので食欲は減退してしまうのです。
日本人に多い痴呆は第一に脳血管障害による痴呆、次にアルツハイマー病ですが、最近ではそれが逆転して来たとも言われています。
しかし、浜松医療センターの金子満雄氏は、はっきりとした病因が見つかるのは全痴呆の7%程度で、大胆にも残りのほとんどが廃用性の痴呆だとみています。
脳卒中後に起こる様に見える痴呆も、直接の原因は脳卒中後の生活態度の悪さによる廃用性の痴呆だという訳です。
痴呆とは大脳が広範に障害を受けた場合に起こる症候群で、前頭前野、海馬、大脳後半部連合野の細胞が侵されやすいので、原因は違っても痴呆の症状や予後には類似がみられます。
その原因というのは広範囲の脳血行障害、広範な脳変性疾患、感染症、萎縮によるとしています。
この様な障害は、一過性の心停止や反復された頭部外傷(ボクシングなど)、首を絞められる、廃用性萎縮等によって、大脳全体、もしくは広範囲に虚血状態にならなければ起こり得ないとしています。
つまり限局された脳出血や脳梗塞では一部の脳の機能が傷害されても、痴呆に陥る筈は無いのです。
従って現在血管性痴呆という診断の多くは信憑性が無いとしています。
高齢で発症するとされるアルツハイマー型の痴呆も同様に多くが廃用性の痴呆とみなせるものとしています(アルツハイマー病は高齢では発症しない)。
つまり多くの痴呆は、左脳優位、感性・意欲が欠如した生活習慣病と言えるので、ライフスタイルこそが本当の痴呆予防のカギを握っていると断言しています。
ある人物を話題にしたい時、顔は浮かぶのに名前が思い出せないという経験は誰にでもありますが、何度も繰り返すようなら、ひそかに脳機能の低下が進んでいる恐れがあります。
脳の活動に要求されるのは、正確さ・スピード・維持力です。言葉を考えて使わずに「あれ」「それ」等の代名詞ばかりで済ませていると、イザという時思い出せず必要な場面・速さで名前が出て来ません。
書く事でも同じで、ワープロに慣れていると自分の記憶中枢をほとんど使わないので、手書きで文章を書こうとしても漢字が思い浮かば無いのです。
記憶の原則は繰り返しで、言葉は使わないでいると直ぐに忘れ、身体機能と同じく脳機能も必要で無い物は低下して行きます。
「ど忘れ」は長期記憶のエラーですが、記憶中枢だけが機能低下したのでは無く、思考中枢や感情中枢など、他の中枢の機能も低下し始めている事が多いのです。
「ど忘れ」に気付いた時、その内容が長期記憶の中でも特に自分自身に関する事柄であれば、脳のどこかに問題があるのではないかと考えるべきです。
高次脳機能を調べるには、まず脳組織・脳血管・脳血流量・全身状態の異常の有無、脳機能の異常の有無を調べます。
脳組織についてはMRI等で調べられ、一見正常に見えても脳血流量が部分的に少なくなっていたりすれば脳機能低下を招く為、詳しい検査が必要です。
例え症状が無くても、無症候性の脳梗塞等が発見される事もあるので、特に身に覚えのある方は一度は高次脳機能の検査を受けた方が良いかもしれません。
アルツハイマー病は複数の原因遺伝子が発見されていて、遺伝的素因が大きい病気である事は間違いないといえます。
特に遅発型の遺伝的な素因としてはアポリポ蛋白E-4の遺伝子を持つ人は発症率が高いのです。
しかしE-4の遺伝子を保有していても発症する率が低い地域や商い地域があったりするので、遺伝的素因の他に環境による影響が大きいとみなさざるを得ません。
その環境の一つが食事です。疫学的調査によると、アルツハイマー病群では高い割合で偏食が見られています。
「肉好き・魚と野菜嫌い」、「アルコール・甘い物・甘味飲料等の多飲」が特徴的で、魚や牛乳、野菜、キノコ類、海藻類等の摂取が少なかったのです。
栄養素では蛋白質や各種ビタミン、ミネラルの摂取が発症していない人に比べて少ないと言う結果が出ています。
更により大きい要因として考えられるのは不飽和脂肪酸、中でもω3の系列(αリノレン酸系列)の脂肪酸の影響です。
E-4遺伝子を持っていてもω6(リノール酸系列)の脂肪酸に比べω3をしっかり摂っている人はそうでない人に比べて発症するまでに20年の違いが認められています。
またE-4遺伝子を持っていなくてもアルツハイマー病になる事があるのですが、その人たちはω3系列の脂肪酸が不足すると共に、ビタミンB群、ビタミンC、カロチン、ミネラルの摂り方が少なかったのです。
つまり運悪くE-4遺伝子を持っていても、魚や野菜を充分に摂る事で、アルツハイマー病の発症は免れる事が出来るかもしれないのです。
その意味でも後発性のアルツハイマー病は生活習慣病と言えるのかもしれません。
ω3系列の脂肪酸が豊富な食べ物エゴマ油、シソ油、魚類、海藻類、野菜(特に冬野菜)等があります。
睡眠には二つの層があって、レム睡眠とノンレム睡眠で構成されているという事は定説です。
レム睡眠時には閉じた瞼の下で目玉がキョロキョロ動いているのに、体はぐったりとしていて脳が起きた状態、ノンレム睡眠時とはレム睡眠でない状態で脳が眠っている状態と理解されています。
そこで「ノンレム睡眠は脳の睡眠」、「レム睡眠は体の睡眠」といわれるのですが、しかしこれは誤解なのです。
そもそも睡眠というのは、脳が必要とするもので、その脳自身が脳のために行う“活動と休息”の働きのリズムで、レム、ノンレム、ともに脳の回復の為にあるものです。
進化の上ではレム睡眠が古く、骨格筋の緊張を解いて休息させる為のものでしたが、進化の中で大脳が発達して大脳を休息させる為のノンレム睡眠が必要となった様です。
するとレム睡眠はノンレム睡眠を覚まさせる役目を持つようになり、この二層のリズムが脳の休息を構成する様になったというわけです。
したがってノンレム睡眠は大脳を沈静化する睡眠、レム睡眠は大脳を活性化する睡眠、とみる事が正しいのです。
こうしてリズムを作って休息するのが脳なら、休息させるのも脳の働きで、脳は睡眠を作る為に体の状態を整えます。
神経のシステムではニューロンを活動させたり抑制したりして眠りを用意し、その影響として体内では分かっているだけで数十もの睡眠物質を分泌して睡眠を作って行くのです。
この睡眠物質の中にはニューロンの機能を回復させたり、ニューロンが作った細胞毒を解毒しているらしい事も分かっています。
脳の性差については昔から、脳の重さが男女で違う事が研究され、女性蔑視の材料として利用されたりもしました。
同じ身長・体重・体表面積に補正して考えても男性の脳の方が女性の脳よりも約100g重いのです。
しかし女性の脳は小さくても神経細胞の総数には男女差がなく、女性の脳の方が神経細胞の密度が高く、一般的な知能IQに男女差は無い事等から、女性の脳の方が効率良く働いているといえます。
構造面での男女差の最も顕著な部分は脳梁の形態です。
脳梁は左右の半球の連合野同士を連絡する交連線維の束の事で、脳梁の後部にある脳梁膨大の形が、女性では丸く膨らんだ球形をしているのに、男性では膨らまないで管状になっているのです。
女性の脳梁膨大が大きいという事は、女性の方が神経線維の数が多い、または髄鞘形成が良くて線維が太い、の両方が考えられ、視覚情報や聴覚情報や言語情報の処理の仕方が男女で異なっているらしいのです。
脳梁膨大の球形化と言語能力テストの関係を調べた研究では、相関関係があると出ています。
脳梁の他にも大脳辺縁系の情報の左右連絡を受け持つ前交連は男女差がハッキリしていて、前交連の断面積は女性の方が太く、情動反応に関する神経線維が多い事から、女性が情動的に繊細である理由になると考えられます。
他にも電子顕微鏡で観た場合、神経回路のシナプスの接合様式に男女差がある事が判りました。
シナプスに性差があるという事は男女で神経回路の配線に違いがある事を示し、脳機能の男女差がここからも生まれるのです。
最近はMRIの検査を受ける人が増え、その結果初期症状がない無症候性脳梗塞がかなりある事が分かってきました。
梗塞の大きさが数ミリ程度の微小な梗塞が出現して段階的に梗塞が増え、本格的な梗塞になりやすい事から隠れ脳梗塞、脳梗塞予備軍ともいわれています。
梗塞を起こす原因にはラクナ梗塞、アテローム梗塞、心原性梗塞があります。
この無症候性脳梗塞の8割がラクナ梗塞(微小な脳梗塞)で、脳梗塞の40%を占めると考えられています。
ラクナ脳梗塞は高血圧等によって脳の深部の極めて細い血管(穿通枝)が詰まり、小さな梗塞が起こります。
特にラクナ梗塞は大脳基底核の内包の周囲、被殻、視床等運動に関する神経細胞付近に発生する事が多いのです。
実際40代で4人に1人、50代で3人に1人、60代2人に1人、70代でほぼ全員といわれ、脳の老化現象といえます。
症状がゆっくり出現し、意識は無くなる事はなく、朝起きた時に手足の痺れ、感覚が鈍くなる、食事中に箸を落とす、ロレツが回りにくい、めまいがする等段階的に悪化し、脳血管性痴呆の最大の原因とも言われています。
専門の医師は、脳の障害や老化等の状態変化は第2の脳といわれる手の運動に現われやすいので、手を使った動作や簡単な体操などで自己診断し、疑わしければ脳ドック検査を受ける事を勧めています。
例えば「両手合わせテスト」で(1)左の手のひらを上に向け、右の手のひらを重ねる(2)右手を反転させて甲を乗せる(3)この動作を繰り返し、左右を逆にしてもう一度試みる。
単純な動作ですが、脳に障害があるとスムーズに出来ません。
また、コップの水を移し替えたり、箸で大豆と豆腐を交互につまむ等、手の器用さや集中力が要求されますが、震えの為に水をこぼしたり、箸の力の加減ができない様だと、隠れ脳梗塞の可能性があります。
隠れ脳梗塞は生活習慣の改善が鍵を握ります。健康な身体が隠れ脳梗塞を防ぎます。
突然やって来て、いきなり生命を奪う怖い病気がくも膜下出血です。脳をカバーしている三層の膜の内、外の硬膜と内の軟膜の間の僅かな空間にクモの巣の様に張ったものがくも膜です。
このくも膜の大切な働きは脳を走る血管を支える事です。
この血管が破裂してしまうと、くも膜下腔の脳脊髄液中に血液が混入してしまいます。
その状態を「くも膜下出血」と言うのです。
くも膜下出血は頭の外傷や血管奇形からも起こりますが、全体の70~80%は脳動脈瘤の破裂です。
この動脈瘤が脳に出来やすいのは脳そのものの構造と機能にあります。
脳の重さは体重の僅か2%前後なのに、エネルギー消費は全体の20%にも達します。
つまり、脳はそれだけ膨大なエネルギーと酸素を必要とする為に、沢山の血液の安定供給が不可欠なのです。
その為に太い動脈が脳を複雑に走っているのです。
頚椎の横突孔を通って左右の椎骨動脈が合流して脳底動脈となり、これと左右の内頚動脈とが一緒になって脳に血液を供給しています。
つまり、椎骨動脈と内頸静脈の間を血管が結び、環状構造のウィリス動脈輪を作り、血液の供給が絶対に途絶えない様な仕組みになっているのです。
そこから大脳に行き渡る血管が沢山枝分かれしています。
この血管群は脳という狭い空間の入り組んだ中を通る為に、身体の他の血管より、かなり無理な方向の転換を強いられます。
その為に血管の走り具合によって血管の壁は激しいスピードで血液が当たり、内壁が侵食され易い所も出て来るのです。
たまたまその様な構造の血管の極端な物に動脈瘤ができ、くも膜下出血を起こしてしまうのです。