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脳 - Part 3の記事一覧

醒脳開竅法

2020.09.20 | Category:

脳の病気で多いのが脳出血や脳梗塞の脳血管障害です。

その障害が起こると運動麻揮、失語症といった後遺症があるので、早期から積極的なリパビリが重要になってきます。

その時に鍼療法が有効である事が報告されました。97年I1月に米国立衛生研究所(NIH)から、鍼療法に関して脳卒中後のリハビリにおいて代替医療的療法、あるいは総合的な管理計画の中に含めて鍼を利用すれば役立つ可能性があるとしています。

また、98年に第47回全日本鍼灸学会で脳神経外科の専門病院禎心会病院物理療法科の石井睦宏氏らは、「脳血管障害に対する中医学的鍼療法」と題して、95年1月から96年12月までに脳血管障害で同病院に入院した患者237名のうち、197名(脳梗塞137名、脳出血60名)にリハビリと中国式鍼療法を行ったところ脳梗塞は78%、脳出血は71%で麻痺状態が自覚的、他党的に改善。手の開きや、上肢挙上などの機能改善は35%、下肢の機能改善は90%にみられたと報告し、脳血管障害後遺症の麻痺に高い効果があると発表したのです。

この時の中国式の鍼療法とは、天津中医薬大学第一附属病院の石学敏院長が脳血管障害の改善に開発した醒脳開竅法という独特なものです。

内関・人中・三陰交のわずか3つを主穴とし、症状により若干のツボを補助穴として用いる療法で、中国では約3000名の入院患者で改善と著効が75%もあると報告されています。

脳は錆やすい

2020.09.17 | Category:

老化の原因としては体内で発生するフリーラジカルの影響が大きいと言う事は明らかですが、中でも脳はそのフリーラジカルの影響が他の臓器に比べて大きいと言えます。

脳はブドウ糖のみを栄養源にしている上に、酸素を大量に消費するため活性酸素が発生し易いのです。

しかも神経細胞は酸化しやすい不飽和脂肪酸やアドレナリンやドーパミン等のカテコールアミンが大量にある為にフリーラジカルが発生し易いのです。

活性酸素の中で反応性が弱い過酸化水素でも金属等と触れると反応性が高いラジカルを発生させます。

ですから例えば脳内出血等があれば鉄と反応してより酸化されやすく神経細胞へのダメージが大きくなるのです。

普通ラジカルが発生しても生体に備わっている防御機構、SOD(スーパーオキシドジムスターゼ)やグルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、また抗酸化物質であるビタミンCやEが処理してくれます。

ところが脳の中ではカタラーゼの活性は低く、ビタミンCより抗酸化力の強いEはあまり働きません。

つまり脳は酸化を受けやすいのに酸化を避ける事が出来にくい臓器なのです。

脳を守るには動脈硬化を予防して血圧をコントロールすると共に、頭に内出血を起こす様な外傷を受けない様にしなければなりません。

頭痛

2020.09.13 | Category:

頭痛は誰でも経験した事がある症状ですが、放って置いても自然に改善する頭痛から命に係わる危険な頭痛まであります。

慢性的頭痛は頭痛の9割以上を占め、筋肉が緊張して起こる筋収縮性頭痛と、脳血管が拡張して痛む偏頭痛(片頭痛)とがほぼ二分しています。

筋収縮性頭痛は、後頚部の僧帽筋を運動や寝違い等で傷めて起こる事が多く、神経質で物事に過敏に反応する人によく見られ、試験や就職等で疲労やストレスが重なる時によく起こります。

屑こりの改善や手部のマッサージが効果あります。

女性がよく訴える偏頭痛は血管性頭痛とも呼ばれ、脳内の血管が拡がる事で痛みを起こし、吐き気を伴う事もあります。

偏頭痛の特徴として、片側の眼の奥がズキズキと痛んだり、その前兆で目の前にチカチカ光るものが見える閃輝暗点という症状が起きる事もあります。

年を取って脳血管の動脈硬化が進んで来ると血管の拡がりが悪くなり偏頭痛が起きなくなります。

偏頭痛には完骨(乳様突起の後ろの窪み)や頭維(こめかみの斜め後ろ)の指圧が効きます。

これらの慢性頭痛と異なり、危険な頭痛は特有の症状を伴います。吐き気や嘔吐、38度以上の発熱があった場合は要注意です。

痙攣や知覚障害、激しい頭痛等があればすぐ病院の検査を受ける必要があるでしょう。

2020.08.23 | Category:

大脳の神経細胞は140億個以上ありますし、脳、脊髄の総神経細胞は1000億個位はあると言われています。

更にこの神経細胞はニューロンとも呼ばれますが、多くのシナプスを伸ばし、別のニューロンとネットワークを形成しています。

枝葉であるシナプスの数はニューロン1個におよそ10000個はあります。

脳の機能は、大きく分けて認識。連動制御、意識、情動、記憶学習がありますが、それぞれの働きは脳の決まった場所で行われています。

その全てがバラバラにあるのでは無くまとまって感じる場所を心というのですが、同時に複数の領域が活動している為心は複雑な面があります。

脳を構造的にみると、脳と脊髄を合わせて中枢神経系という言葉を使いますが、下から順に脊髄。延髄、橋、中脳、間脳、小脳そして大脳が形づくられています。

この脳の進化が下等動物から人間になる過程でもあるのです。

脳のメカニズムの研究は分子レベルの研究により、より詳細に明らかにされてきました。

また多くの脳の機能的疾患や器質的疾患も様々な分野からの成果が次々に出てきています。

脳は身体の組織と比べ10倍のエネルギーを消費しています。

脳の可逆性

2020.08.22 | Category:

人間の脳は、生後の環境や学習等様々な外的因子により脳神経のネットワークが組み変わり、次第に変化していきます。

コンピュータのようにメモリーが最初から固定されたものではなく、配線が次々と増えてネットワークが複雑化していく柔軟性があり、粘土の様に自由に変化することを可塑性があると言います。

一つ々神経細胞は互いにシナプスで接合していますが、結合しているのでは無く、1万分の2~3ミリの間隙を隔てて神経伝達物質のやり取りを行い、情報を伝達しています。

ある神経細胞が壊れて死んでも隣の細胞に影響は及ばず、脳全体の機能が失われる事はありません。

脳神経が傷ついて運動機能が障害されても、リハビリを根気良く行えば機能が回復することはよく知られています。

これは失われた脳細胞とは別の部分が代わりに働く様になった物で、若い時は可塑性は強く、歳を取ると弱くなってきまず。

神経細胞が死んでも、隣の神経細胞の軸索部分から新たに神経線維が発芽して新しいネットワークが形成され、機能が回復します。

この発芽現象は神経細胞が死滅しただけでなく、常時ネットワークの組み換え時に行われています。

意欲を持って脳を使えば、この可塑性は十分発揮されますが、逆に使われずにネットワークを形成出来なかった神経細胞は、アポトーシスによって死滅・消失していきます。

脳の血管・血流

2020.08.21 | Category:

脳の毛細血管は他の臓器の毛細血管とは違って、血液脳関門という選択性のあるフィルターの働きを持っています。

原則的に脳の血液脳関門を通過出来るのは酸素やブドウ糖、神経細胞に必要なアミノ酸等で、蛋白質、リン酸、脂質などは通る事が出来ません。

最もアルコールや覚醒剤や向精神薬、シンナー、ある種の神経毒等はこの血液脳関門をすり抜ける事が出来ます。

しかし基本的には、異物は通さないという血液脳関門のシステムがあるので脳は末梢血から毒物などが脳に侵入する事を防ぐ事が出来るのです。

エネルギー源としてもブドウ糖だけを利用します。

つまり脳は他の組織とは違った独自の代謝をしながら脳を守っているのです。

ただ視床下部や延髄の付近ではこの血液脳関門は厳密では無く、毛細血管と神経細胞とがいくぶん物質のやりとりを行っている事が解っています。

つまりホルモン分泌の指令塔である視床下部が、各臓器から分泌されて体内を循環するペプチドホルモン等を受け取る事が出来るとすれば、その情報のフィードバックを行えると言う事になります。

この事は体のホルモン情報が直接脳へ送られ脳を剰激している事が予想出来ます。

また血液脳関門の維持にはダリア細胞も手を貸していて、このダリア細胞は神経栄養因子やサイトカイン等を分泌しています。

脳の高速進化

2020.08.20 | Category:

脳の進化を見ると第一は最も古い部分である後脳で、脳幹の大部分を含みます。

それは基本的には原始的な脊椎動物の脊髄の先端の小さい膨らんだ部分と同じ物です。

哺乳類以前の時代、5億年以上かかって進化した部分で多くの科学者はこの部分を爬虫類の脳に相当する物と考えています。

第二は中脳で、脳幹の最上端の小さい部分です。

この部分が大脳辺縁系で2~3億年前に作られました。爬虫類の前脳の大部分はこの辺縁系で、もっぱら嗅覚に係わっています。

この辺縁系は哺乳類で高度に発達しているので哺乳類脳とも呼ばれています。

脳のこの部分こそホメオスタシスの中枢です。第三は前脳で一部古い構造も入りますが、大脳新皮質を含めて最も新しく発達した物です。

人間の脳の進化の歴史をみて驚く事に、400万年前に生存した人の祖先と言われているアフリカのアウストラロピテクスの脳が400ccになるのに3億年もかかったものが、僅か数百万年で1250~1500ccの脳になった事です。

この過程で脳の大きさは3倍になったのですが、チンパンジーとの共通祖先から人が分岐した後に起こった脳の進化は、人の遺伝子には全く刻印されていないのです。

20万年前に現れたネアンデルタール人の段階でほぼ現在の我々の脳と同じ容量になっており、高速進化が起こったのはネアンデルタール人の段階までなのです。

しかし、この20万年以後、脳の構造そのものが基本的には変化を遂げているのです。

前頭部が劇的に発達した事が頭骸骨の比較でも解り、前頭連合野の発達がうかがわれる訳です。

最近この前頭連合野がこれまで以上に言語と関係している事が分かってました。つまり、ネアンデルタール人段階以降に質的な発達が出来たのは10万年前に生まれたと言われている言語を獲得したからなのです。

小脳

2020.08.19 | Category:

小脳の容量はおよそ130~150gあります。確かに大脳と比較しては小さいのですが、他の動物の小脳と比較すると大変発達しています。

この小脳の表面は、まるでコンピュータの回路図のように大変規則的な構造になっていて、密度も濃くしかも折り込まれているため、その重さに比べて広い面積になっています。

また小脳表層は厚さ1mm程の灰白質で三層の神経細胞層が立体的な美しいパターンを作っています。第三層の顆粒細胞層は人体の組織では最も細胞の分布密度が高い場所です。

第二層にはプルキンエ細胞と呼ぶ極めて特殊な西洋梨状の大型細胞が一層に並んでいるのが特徴です。小脳の中心部は神経線維が充満する髄質という構配になっています。

小脳の働きと言えば運動や動作を円滑に調整する適応制御系である事は知られています。

例えば、野球の投手の直球を打とうとする時、動体視力や反射的な運動能力による的確なバットコントロールが必要です。

この時打者はスピードや球筋を見極めながら、瞬間的にバットスウイングの微妙な誤差を小脳回路が修正している筈です。

よく、新人ピッチャーに捻れられ完封されるのは小脳回路に相手のパターン情報が少ない為に修正が難しい為です。

また、自分の身体の切れなど日々変化している事で起こる様々な動作時の誤差も実は小脳回路で修正しているのです。

ただ、小脳全体ではこの適応制御系の働きばかりで無く、まだ分からない部分多くがあります。

小脳に疾患があると言語がおかしくなる事から言語に関係する場所がある筈ですが特定されていませんし、運動の器用さだけでなく、頭の働かし方の器用さにも小脳が関係しているという仮説も出てきています。

中枢神経再生研究

2020.08.18 | Category:

以前は脳や脊髄の中枢神経は再生しないと思われていましたが、神経栄養因子によって再生すると言う研究報告出てからは末梢神経だけで無く中枢神経も再生する事があります。

末梢神経は、ニューロンから出ている線維である軸索がシュワン細胞と呼ばれる細胞に取り巻かれています。

この末梢神経が切断されるとシュワン細胞にある神経線維の再生を促す、神経成長因子が作りだされ神経細抱が死なずに守られたり、軸索の再生が促進されるのです。

この神経成長因子で最初に発見されたのがNGF(Nerve Growth  Factor)と言う蛋白質です。

中枢神経にはシュワン細胞は無くダリア細胞に取り囲まれていますが、この細胞には神経再生能力は無いと言われています。

しかし京都大学医学部の川口教授が生後1~2日のラットの脊髄を胸のあたりで2髄節ほど切り取り、その隙間にラットの胎児から取り出した同じ部分を移植した所再生したのです。

胎児の未熟なダリア細胞には神経線維を再生するNGFがある事が証明されたのです。

成長したダリア細胞にはその因子が無いか、神経線維の再生を阻む因子があるのかもしれません。

海馬

2020.08.17 | Category:

人は危機的な状況に遭遇すると生物的生態反応を起こします。

排卵、免疫系、成長等のとりあえず必要では無い機能を減退させて、そのエネルギーを筋肉に振り替え大量のコルチゾールを放出するのです。

このコルチゾールはアドレナリンと同様、身体の瞬発力を高め、血圧を上げ、脂肪や肝臓に貯えられたエネルギーの燃焼を促進します。

コルチゾールが過剰に分泌されるとクッシング症候群になりますが、ストレスに晒された人も同様の症状が起こります。

このクッシング症候群の特徴の一つに記憶障害を伴う事が知られています。

ストレスに晒されている人の脳内でもコルチゾールや他のステロイドホルモン等が大量に分泌されています。

その影響を最も強く受けるのが海馬です。

海馬は脳の奥に左右一対あり短期記憶の中心的な役割や学習等に関与していますが、そこが萎縮している例が多く報告されています。

萎縮は細胞自体が減ったのか、樹状突起の萎縮によるものか諸説がありますが、PTSD(心的外傷後ストレス精神障害)やAC(アダルト・チルドレン=幼児期の被虐待)の人は、同年齢の人に比べ短期記憶が40%も低いという報告もあります。

海馬だけがコルチソールの影響を受けて萎縮してしまうのは、PTSDやACの人は、短期記憶が過去の忌まわしい記憶に結び付き易く、それが精神的な苦しみや悩みを増幅してしまうからでしょう。

記憶の機能を落とす事で消極的な生体防衛反応を起こしていると言えるかもしれません。

事実、ラットの実験でストレスを遮断する薬を与えた所、退化した海馬の樹状突起が甦った報告もあります。

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