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脳 - Part 2の記事一覧
脳は、エネルギー源がブドウ糖のみと一部の脂質という偏食で、その上小さい割に体全体のエネルギーの5分のlを使うという大食漢です。
ですから脳にとってエネルギー不足は最も深刻で、低血糖状態では疲労感、イライラ、集中力不足、不眠、めまい、記憶力低下等の症状が出ます。
慢性的な低血糖や、血糖値が激しく上下を繰り返す場合は人格変化や記憶障害、痴呆の危険性を高めます。
またブドウ糖をエネルギーに変えるにはビタミン、ミネラルが必要で、中でもビタミンB群は神経のビタミンともいわれるほど神経活動にとって必須のビタミンです。
B群が不足した場合の神経に関する欠乏症状は下表の通りです。
またビタミンCは抗ストレスビタミンでもあり、不足すると身体症状に加えて疲労感、うつ症状、倦怠感等が現れます。
脳はエネルギーの大食漢であると同時に酸素の最大消費臓器でもあります。
鉄が不足すれば酸素供給のヘモグロビンが減少し脳は酸欠状態となります。
カルシウム、マグネシウムが不足すると神経過敏、イライラ、うつ、集中力低下になる事はよく知られていますが、マンガン(お茶に多い)が不足すると子育ての放棄や子供に対する無関心等を示すといいます。
ビタミンB群が不足すると…(多く含む食べ物)
B1うつ、集中力低下(豚肉、うなぎ、玄米、胚芽米.)
B6: 神経過敏、不眠、月経前緊張症(かつお、まぐろ、さけ、さんま.)
B12:神経過敏、うつ、記憶力低下、集中力低下(レバー、かき、さんま.)
ナイアシン(B3、ニコチン酸): 頭痛、めまい、不安感、ノイローゼ(魚、レバー、肉.)
パントテン酸:居眠り、怒りっぽい(レバー、肉、魚.)
葉酸:神経過敏、うつ、健忘症(レバー.)
身体の運動は、自分の意志で動く随意運動と、その動きのバランスを整えたりスムーズにする働きの不随意運動があります。
随意運動は大脳新皮質の運動野から下行する神経線維が延髄の錐体と呼ばれる所で左右交叉して脊髄に行くので、錐体路系と呼ばれています。
そこを通らない不随意運動の神経系統を錐体外路系と呼んでいます。
その錐体路系が障害される典型的な疾患が脳出血や脳梗塞で、障害された脳の逆側に片麻痺を起させます。
一方、錐体外路系は多数の神経細胞が関与していて、シナプス部分も多く、ネットワークも複雑な為に、加齢に伴う血液循環障害や神経伝達物質の減少、外傷や薬物等様々な原因で障害が起こります。
よく見られる症状が「手の震え」で、この「手の震え」には大きく分けて静止時振戦、体位(姿勢)時振戦、動作時振戦の3種類あります。
パーキンソン病では典型的な静止時振戦があり、リラックスした状態でもピル・ローリング・トレモア(親指と人指し指で丸薬を丸めるような動作)が見られ、緊張すると更に強くなります。
一方、体位(姿勢)時振戦はリラックスした時は起こらずに、両手を前に伸ばしたり、特定の体位を取ると手が激しく震えるもので、代表的なものは本態性振戦です。
高齢者の場合は老人性振戦と呼ぶ事もあります。
この振戦はアルコールを飲むと殆んど消失します。
動作時振戦は動作をする時に手が震え始め、事に動作の終わり近くになればなるほど激しくなります。
これは小脳失調症に伴う企図振戦と呼ばれています。
手の震えではこの3種の他に、意外に多いのが甲状腺機能亢進症によるもので、若い女性ばかりで無く中年過ぎの男性にも起こります。
うつ病の人や強いストレスに長く晒された人の脳をMRIでみると記憶の入り口である海馬が萎縮している事が分かっています。
そこでその人達の血中、尿中および脳脊髄液中を調べるとコルチゾールの濃度の上昇が見られました。セリエのストレス学説で明らかな様に、ストレスに出会うと下垂体から副腎刺激ホルモンが出て副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが分秘されます。
このホルモンはストレスに対する抵抗性を増す様に代謝過程に影響したり、強力な免疫抑制として働きます。
つまり損傷組織への過剰反応を防ぐ為に抗炎症として働いて身体を守るのですが、そのコルチゾールが血中に多く分泌されれば視床下部の受容体と結合してフィードバックが働いてその分泌は抑制されます。
脳内にはコルチゾールの受容体が多くある事が分かっていますが、海馬には特に高濃度に分布しています。
その受容体にコルチゾールが結合すると視床下部のフィードバックが機能し無くなり、コルチゾールが過剰分泌される事も分かっています。
神経細胞はこのストレスホルモンによって形が変わったり死んだりします。つまり強いストレスが長く続くと海馬の神経細胞が死滅し萎縮するのです。
また、炎症疾患が長期化すると抗炎症作用のあるコルチゾールの制御異常が起きる事がうつ病と関連していると考えられています。
慢性関節リウマチ患者は殆んどがうつ病と診断されるという報告があります。
コルチゾールの過剰分泌が脳細胞に影響してボケやアルツハイマー病の原因ではないかと見られています。
脳も使わなければ衰えます。
脳を使うといえば深く考えたり本を読んだりする事をイメージしがちですが、脳を最も働かせるには体を動かす事が一番です。
筋肉は脳の指令によって動きますから、指令する分、脳を使うのだと理解されがちです。
確かに、からだの動きを目的に合わせて微妙に調節する為には、大脳運動野や感覚器から中脳や小脳等にも信号が送られ、脳は広い部分を使う事になります。
しかし、筋肉は単に脳からの指令で動くだけで無く、感覚器として脳を刺激しています。
そもそも筋肉の筋紡錐と腱紡錐は筋肉の長さや張力を感じる器官で、筋線維の状態や乳酸等の代謝や炎症などの免疫反応で生じた物質を感知する事ができ、その刺激は脳に送られています。
しかしそれだけで無く、筋肉の動きその物が脳に働きかけていると言う事が分かって来たのです。
ラットの実験では、運動をさせると運動野が活性化するだけで無く、視床下部の神経細胞も活性化されたといいます。
視床下部は脳下垂体を刺激して成長ホルモンを始め、様々なホルモンを分泌させます。
成長ホルモンは特に老化とも大きな関係があり、加齢による体脂肪の蓄積や脳の老化もこのホルモンの分泌が減る為だと考えられています。
成長ホルモンは痴呆の防止や改善、若返りのホルモンとして脚光を浴びています。運動はこの成長ホルモンの分泌を盛んにしてくれるのです。
筋肉を動かす事で脳に刺激を与えようとするには大きな筋肉を動かす事が効率が良く、その意味でも下肢の筋肉を大きく動かすウォーキングは脳の老化防止の為にもピッタリというわけです。
小脳は身体の筋肉運動や姿勢の制御にとても重要で、平衡感覚や全身の骨格筋や関節等の情報が入ってきます。
生物の中でも、動きの鈍いカエルやイモリ等の両生類は小脳の発達が貧弱ですが、鳥類や哺乳類では小脳がよく発達しています。
系統発生的に最も古い部分を片葉・小節(原小脳)といって姿勢制御の為の平衡感覚に関係し、次に古い前葉(古小脳)は、脊髄や脳神経からの筋肉や関節の情報を受け取っては筋緊張の度合いを調節しています。
新しい後葉(新小脳)は、大脳皮質が行おうとする手や指先の精巧な運動の調整や技能的な熟練に関係しています。
小脳で最も大切な機能は、運動の「比較測定装置」の働きで、これは大脳皮質の運動野から指令が出て随意運動を起こそうという時、その情報が同時に小脳皮質にも伝えられます。
運動開始で筋肉や関節が動くと、それらに分布する受容器からの感覚情報がリアルタイムに小脳にインプットされてきます。
その結果、小脳は運動野のプログラムと実際の運動とを比較して、もし一致していなければ脊髄の運動神経細胞に信号を送ってそのずれを矯正し、同時に運動野にも次の運動の為にデータをフィードバックするのです。
この比較測定装置の分かりやすい働きとしては、普通目を閉じていても鼻の頭を指先でさわれるのに、小脳が障害されると上手く触れ無くなる事等があります。
小脳皮質にあるプルキンエ細胞は特にアルコールに弱く、酔っ払た人の行動を見れば、この装置の機能障害がよく理解できます。
また、小脳は被殻と共に運動技能の習得に深く関係していて、ピアノや自転車や水泳等、一旦身体が覚えれば一生忘れ無いというのは、小脳に記憶されるからなのです。
脳の中で記憶と深く関与している部位は海馬、側頭葉、被殻、扁桃体、尾状核等です。
記憶といっても“東京は関東地方にある”と言う様な知識としての記憶から、五感や感情を伴う個人的な記憶まで様々です。
当然、記憶の内容によって記憶の保管場所も変わります。
記憶の中心の海馬は側頭葉の皮質の下にある器官で、大脳の新皮質のほぼ全てのエリアと結ばれていて新しい情報がそこを中継して行き来しています。
この海馬が損傷を受けると、新しい事は全く記憶できなくなりますし、それまでの記憶も影響を受けます。
また、海馬は空間記憶を保存しており、地図等を思い描く事ができます。
側頭葉の新皮質には強く印象が残って何度でも思い出すと言う様な長期記憶が納められています。
この長期記憶は海馬から側頭葉の皮質の色々な場所に記号化されて送られているのです。
前頭葉は記憶の想起を促しますが、皮質に点在している記憶が、その想起によって集まり、より全体的なイメージとして脳裏に浮かぶのです。
また皮質では“ビールは苦い。苦いのはホップがあるから。ホップは植物の実である”と言う様な場合、“ホップ”は意味記憶として保管されています。
ホップはそのまま独立して知識として残っていきます。
被殻は小脳と共に、ゴルフの仕方や自転車の乗り方といった手順記憶が保存される場所です。
また、扁桃体では恐怖やフラッシュバックなど情動的なショックを受けた記憶が保存されています。
尾状核ではいわゆる本能の記憶が保管されているといわれています。
脳は神経細胞とその間を埋めるグリア細胞でできていて、その中をみっしりと毛細血管が走っています。
グリアとは膠(にかわ)の意味で、これまでグリア細胞は神経細胞の間を埋める充填材、せいぜい神経に栄養を与えていると言う位にしか考えられていませんでした。
ところがこのグリア細胞にも神経細胞に、ある神経伝達物質の受容体がある事が分かり、その働きもこれまで考えられていたよりも複雑で重要だという事が分かってきたのです。
神経細胞もグリア細胞も発生の時には神経幹細胞から分かれますが、グリア細胞の数は神経細胞の10倍にもなります。
そのグリア細胞は神経細胞に栄養を与えるだけで無く、成長因子を出して、神経から伸びるシナプスを誘導する働きをしたり、神経細胞がダメージを受けた時に修復する働きがある事も確認されています。
つまり神経細胞とグリア細胞は相互に作用を与え、与えられという関係にあるらしいのです。
また脳の中の毛細血管は他の体の血管と違って物質の透過が厳密に管理されてる血液脳関門システムを持っていて、それは毛細血管の内皮細胞によります。
その内皮細胞の外側にグリア細胞が伸びていて、血液脳関門システムにグリア細胞が何らかの働きをしているのではないかと考えられているのです。
また虚血状態等のように脳にストレスがかかるとグリア細胞はストレス蛋白を作り、更に神経細胞を維持する様な活性因子を作る事がネズミの実験でも確認されています。
この様な働きがもっと詳しく分かれば、痴呆の改善も一段と進む事でしょう。
神経細胞の数は生まれた後は増え無いというのが定説でした。
しかし嬉しい事に成人してからも増えているらしい、という事が分かって来ています。
それは成人の脳にも神経幹細胞があり、新しい神経細胞ができているという発見によるものです。
幹細胞というのは、“自己を複製できて、他の細胞に分化することができる”細胞です。
神経幹細胞は分裂して前駆細胞となり、それが神経細胞やダリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト等)に分化します。
この分化前の神経幹細胞は脳の色々な部位にあり、特に海馬では成人してもずっと神経細胞が作られている様です。
この神経細胞の新生は色んな影響を受けますが、ラットの実験によれば電気等の物理刺激によって新生率が上がります。
また外からの刺激だけで無く、環境による生理的な影響にも左右されます。
例えば単純な環境(普通のケージ)のラットに比べて、豊かな環境(広くて遊び道具等がある)のラットでは新生する神経細胞の数が多かったというのです。
また心理的ストレスに晒されると1時間で新生率が低下し、ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンを投与した場合も新生率が下がる事から、ストレスは脳の再生にとって大変な悪影響を与えているという事が言えるのです。
年を取るとステロイドホルモン濃度が上がる上に血液脳関門での物質の選択も弱るので、ストレスの影響はより強く受ける事が考えられます。
老化による記憶の低下は海馬の神経細胞の新生が少なくなった事によるのかもしれません。
脳の細胞には大きく分けて脳細胞(ニューロン)とグリア細胞の二種類があります。これまでグリア細胞は脳細胞のサポート的な存在であると考えられてきましたが、研究が進むにつれて多様な働きと種類がある事が分かってきました。
グリア細胞には神経幹細胞から生まれたアストロサイト、オリゴデンドロサイト、それに脊髄由来のミクログリアがあります。
アストロサイトは、シナプスの形成やその維持、シナプスの情報伝達を効率よく行うだけでなく、細胞外液の恒常性維持、血液脳関門の形成等に重要な役割を担っている事が分かってきました。
またオリゴデンドロサイトはアストロサイトと同様に神経幹細胞から生まれていますので、ニューロンと密接な関係を持っています。
神経軸索に巻き付いて有髄神経を形成したり、神経線維を束ねます。末梢神経線維にミエリン鞘を作るシュワン細胞と同系の細胞です。
一方、ミクログリアは脳内の免疫系としての役割を担っています。同じ骨髄由来の白血球は免疫系の代表的な細胞ですが、この白血球は脳関門を通過することができません。
その代わりに実質的に脳内の免疫防御を担っているのがミクログリアなのです。ミクログリアは通常は突起を沢山伸ばして周囲のニューロンに接触して異常が無いかを監視しています。
ニューロンの異常が起こると、修復を手助けするような成長因子を出します。
また、腫瘍細胞や細菌を発見するとそれを殺すようなサイトカインや蛋白質分解酵素、あるいは活性酸素等を放出します。
更に、死んだニューロンや不必要な他の脳細胞等があればそれを捕食して、脳内を清掃する仕事もしているのです。
このように脳の免疫系に重要な働きをしているミクログリアですが、一旦その働きが異常になると、正常なニューロンも殺してしまう事かあり、アルッハイマー病は、このミクログリアの暴走によるものであると考えられているのです。
神経細胞は1日に10万個死滅していると言います。確かに私達の脳の重さは20才代で最大になり、それ以降減少しています。
しかし50才代までは非常に僅かな減少であり、それ以降は急激に減少して、隣り合う年代との差がハッキリ現れます。
80才代をピークに、その後の萎縮は軽減して、90才も100才もあまり変化していません。
この様な計時的な変化を見るとこの1日10万個という数字はどうも信用出来ません。
とは言え高齢になると脳の機能的衰えは確実に起こって来ます。感情や記憶を司る海馬の細胞も60才代では20%が失われると言われています。
しかし、高齢になるほど脳の萎縮に個人差がハッキリ出て来ます。その中で100才までしっかり元気で知的な生活をしている人の脳は萎縮も軽く、なにより重要なのは脳全体のバランスが大変よく保たれているのです。
特に大脳皮質では6層の円柱が無数に林立している形態をしていますが、その6層の階層がまとまって消失している場合はネットワークにほころびが起こりません。
しかしこの消失が地震で見られる様に2階3階だけが崩れた状態になると病的な症状が起きてしまいます。
その様な状態になる主な原因は梗塞や血栓や出血等の血管障害です。つまり脳細胞に行き渡る栄養のバラツキや片よりが生まれたり、血液の毒性により脳細胞がやられてしまうからです。
ですから、身体の健康を維持する事が脳のバランスを保つ、一番の健脳法である訳です。