- Blog記事一覧 -脳 - Part 4の記事一覧

脳 - Part 4の記事一覧

脳の老化

2020.08.16 | Category: ,

加齢により身体は小さく縮んできますが、肝臓など他の臓器と比べれば脳の萎縮の割合は大きいものでは有りません。

とは言え、加齢に伴って神経細胞は脱落して脳は縮んで来ます。

高齢になると確実に増えるアルツハイマー病の脳は脳の萎縮、脳への老人斑の沈着、神経原線継の変化が特徴ですが、それらは痴呆の無い老人の脳にも認められる物です。

では病気とは違う脳の生理的老化とはどの様な物なのでしょう。

一言でいえば生理的な脳の老化はバランスを保っていると言う事です。

例えばパーキンソン病では黒質と呼ばれる部分の色素を持った神経が異常に脱落していって、色素を持たない神経とのバランスを壊して行きます。

さて、大脳皮質は脳の中でも萎縮度が大きい場所で、神経細胞が20代の半分になってしまう部分もあります。

この大脳皮質は6層になって一つの単位を作っていますが、生理的な老化の場合、全体に萎縮していてもこの6層が保たれているのに対して痴呆の場合には例えば第2層と3層の神経細胞だけが崩れてしまう等、バランスが壊れてしまうのです。

つまり、脳が萎縮するにしてもあくまでも全体のバランスは保たれているのが正常な脳の老化と言えます。

また、脳と言っても大きく大脳・小脳・脳幹とありますが、老化に伴う萎緯度は違います。

大脳の萎縮度が一番大きく、脳幹と小脳は大脳ほどではありません。生命維持に必要な部分、つまり原始的な部分は萎縮が少ないのです。

嗅覚

2020.08.15 | Category:

匂いを感じさせる物質は40万種もあると言われますが、感覚器がその一つ一つに対応する受容体を持つのは不可能です。

視覚では赤、青、緑の三原色に対する受容体がその組み合わせによって無限にある色を識別していますから、嗅覚もその様な数種類の受容体の組み合わせで臭い感じるのだろうと考えられてきました。

それが匂いの分子を感じる受容体や、それを決定しているDNAが見つかる様になり、嗅覚の研究が進んできたのです。

それによると匂いの受容体は哺乳類では1000種類にも上ると考えられています。

匂いの受容体が1000種類と言う事は、それを決定している遺伝子は全遺伝子(全部で10万個)の1%も占める事になります。

匂いの受容体は鼻梁の裏にある1cm²の範囲にあって匂いの分子が結合すると神経細胞に刺激を与えます。

すると刺激された神経は匂いの種類によって4つ位に分類して嗅球という中継地点の特定の決まった場所へと伝えます。

そこで整然と分類されて嗅覚中枢へと送られ処理されるのです。

受容体は1000種類もありますから、新しい匂いに接したとしてもこれまでの経験の中から似た匂いと照合されて認識されると言う融通の効く感覚になっているのです。

また嗅覚の神経細胞では死んだり再生されている様ですが、そのシステムはまだ解っていません。

更に嗅覚からは視床下部のある辺縁系まで直接伸びている神経もあり、感情や情動に直接関係しているらしい事も解ってきました。

パーキンソン病

2020.08.14 | Category:

パーキンソン病の主症状は、振戦、固縮、無動、姿勢保持障書の4大症状です。

中脳の黒質一線状体系のドーパミンを分泌する神経細胞が変性・脱落し、線状体のドーパミン含量が20%以下になると発症します。

進行すると脳幹などのノルアドレナリン系神経も障害される為、様々な自律神経症状が起こってきます。

薬物療法としてドーパミンその物は血液一脳関門を通過出来ないので補えず、代わりにL-ドーパ(ドーパミンの前駆物質)を主に用います。

長期渡ってLドーバを服用していると、ドーパミンレセプターが壊れて減少し効果が落ちるぱかりで無く、ジスキネジア(不随意運動)や幻覚などの副作用が起きやすくなります。

改善法として、黒質の近くの尾状核に小さな穴を開け患者白身の副腎髄質の断片を入れるという組織移植術が試され効果があるそうです。

欧米では80年代後半から、人工妊娠中絶した胎児の脳細胞を培養した物の移植が行われており、一定の効果を上げている様です。

日本では自治医科大学でLドーパの変換酵素を作る遺伝子をウイルスに組み込み再生させる取り組みを行なっています。

岡山大ではメラノサイト(チロシナーゼ)を脳内に細胞移植する事でドーパミン細胞に代わってドーパミンが産生される研究をしています。

記憶

2020.08.13 | Category:

身体の現象を遺伝子の配列とそれによって作り出される蛋白質という物質に還元しますが、記憶という現象はどうでしょう。

記憶は脳の中の物理的な痕跡として永久に保存されているという仮説を元に多くの研究者がその記憶痕跡{エングラム}を探しています。

長期記憶は、今のところ大脳皮質が関与しているという説が有力ですがその決定的な特定にまで至っていませんし、記憶痕跡という仮説そのものに異議を唱える学者もいます。

ただ、短期の記憶はかなり解明されてきました。

大脳辺縁系の一部にある海馬に短期記憶が保存されていると言う事は、海馬を損傷した患者さんが短期記憶を失う事で部位的には解っていました。

この海馬は下等な脊椎動物では最も重要な部分であり、ラットでは海馬は大脳とほぼ同じ大きさです。

ノーベル賞を受賞した利根川進を中心にしたMIT{マサチューセッツ工科大学}のグループは海馬に記憶回路を作る蛋白質の存在を明らかにして、更にその蛋白質を作る事を指令する記憶遺伝子を特定しました。

正常な状態で空間記憶を生み出す海馬のニューロンに対して、そのニューロンが繋がり合う時に必要な蛋白質が作られ無い欠陥遺伝子をもつノックアウトマウスを作り、そのマウスが全く短期記憶を持つ事が出来ない事で証明したのでした。

脳の男女差

2020.08.12 | Category:

身体だけで無く感情や思考にも男女の差はありますが、脳にも違いがあります。

脳の男女差の一番大きな違いは脳梁の太さで、女性の脳梁は男性に比べて太く、特に後ろの方が太くなっています。

脳梁には左右の大脳を繋ぐ2億もの神経細胞が詰まっていて、ここを通じて色々な情報をやり取りしています。

特に太くなっている脳梁の後ろの部分では、視覚神経がある後頭葉や、聴覚中枢や言語中枢等がある側頭葉後部から来た神経線維が通っています。

女性のこの部分が太いと言う事はそれだけ左右のの情報が頻繁にやり取りされ、情報処理に脳全体を活用していると考えられます。

一般に(個人差はありますが)女性の方が細かい事に気が付き易く、目が届きやすいと言うのも左右脳の情報の処理の仕方にあるのでしょう。

いわゆる言葉の脳と言われているのは左脳ですが女性の場合は男性よりも両方の脳を活用している事が脳波でも解っています。

女性の方が口が達者だと言うのもその為でしょう。

男性の脳は、色々な働きにおいて万遍無く脳を使うよりも、働く部分がくっきりと特化する傾向になります。

女性に比べて特定の才能を持った天才が男性に多いのも脳の使い方の違いによるものなのでしょう。

アルツハイマー

2020.08.11 | Category:

アルツハイマー病は神経細胞が変性し脱落が起こり、大脳皮質が萎縮する大脳変性疾患です。

1906年にドイツの神経生理学者のアルッハイマー氏によって発見されました。

アミロイド変性原因は、遺伝的要因、代謝異常。ウイルスの感染症、アルミニウムの中毒ではと考えられていましたが未だ決定的な事は分かっていません。

神経病理学的には脳の神経細胞に特殊な蛋白質が沈着して出来る老人斑、神経線維変化が特徴的です。この変化は健常老人の海馬にも見られるのですが、アルツハイマー患者では脳全体に著しく見られます。

しかしこの病理的変化の程度と知的機能障害の程度とは必ずしも一致せず、症状は身体的、心理的要因や環境要因によって大きく影響を受けて発病する事があるのです。

症状としては物忘れから始まり、次に思考力の低下、人格崩壊までと段階的に進んでいきます。

根本的な改善や予防にはまだ時間がかかりそうですが、研究で、北アジア、北アメリカ、ヨーロッバ等で異なる人種におけるアルツハイマー痢の罹患率を調べた所、いずれも学歴の高い方がかかりにくいという結果がでました。

脳細胞を刺激してシナプスを多く作る事が一番の予防になるのかもしれません。

眠りの正体

2020.08.10 | Category:

松果体は、松の実状で長さ8ミリ、径5ミリほどの小さな器官です。

この松果体はセロトニンやメラトニンなどが含まれていますが、この両方の量の差が明暗の変化に対応して、サーカディアンリズムの睡眠周期に深く関与している事が解っています。

しかし、昼間の退屈な会議や電車の中で突然起こる強い眠気は、このリズムとは関係なく起こります。そこで、脳のどこかにこの突然の眠りを誘うスイッチがあるのでないかと研究が進められています。以前から部位的には視床下部にある事はラットの実験で明らかになっていました。

最近になってボストンの病院の研究グループは、ラットの脳細胞に活性化し蛋白質を特定する為の追跡化学物質を用いて、フォスという蛋白質が関与している事を発見しました。

このフォスは眠らせないラットでは脳の大部分にありますが、眠らせたラットには、脳全体には無く視床下部の前部にあるVPNと呼ばれる2~4万個のニューロンに大量に貯蔵されていました。

更に、このVPNは他の脳細胞を活活性化させる神経伝達物質(GAVA)も作り出していますので、覚醒、目荒め、意識に関係する、すべての神経伝達物質を制御していると言われています。

眠りの機能の最も重要な事は脳の組織の再活性ですので、眠りスイッチとしての役割もその一環として考えられる訳です。

絶対音感

2020.08.09 | Category:

絶対音感とは楽器などの助けを借りずに、音の高さや音名を識別する能力の事を言います。

普通の人の音感は相対音感で、前後の音との比較をしなければその音の高さは分かりませんが、絶対音感ではある音を聴いただけで、その音の周波数を判断してドなのかミなのか、言い表す事が出来るのです。

耳から入って来た音は鼓膜を振動させ、三半規管のリンバ液に伝達され聴細胞に伝えられます。

聴細胞に達した振動はそこで電気信号変換され、大脳の聴覚野から連合野に伝えられて情報処理されます。

絶対音感のある人の脳は、聴細胞のどの部分に電気信号が付いたのかをデジタル的に理解しているのです。

普通、言語は左半球優位で、音楽は右半球優位で聴いているのですが、絶対音感を待つ人の器合は全ての音を左半球で聴いているとか。サイレンや鳥のさえずりや雑音さえも全て音階で聴こえるのです。

この絶対音感は、3~6歳頃の幼児に音感教育をする事で身に付くと言われそれ以降はどんなに努力しても身に付かないのは、聴覚野の発達過程で臨界期があるからです。

乳幼児期に片方のみ一定期間眼帯をしているとその方の視力に回復出来ないダメージを与える様に、絶対音感の臨界期は6歳頃だと言えます。

磁気で脳の機能が分かる

2020.08.08 | Category:

脳の病気は、X線CTやMRIで脳の断面や脳血管の様子が分かり、どの部分に病変があるのか正確に診断出来る様になりました。

更に、脳のどの部分がどんな働きをしているのかも短時間で分かります。ブロードマンが大脳皮質の構造を顕微鏡で調べ、その細胞の形態や配列状態等の違いから48個の皮質領域に番号を付けて分類した脳地図があります。

この地図は運動野や感覚野などと適合すると言う事で長い間使われていましたが、これからは磁気を利用した脳磁図で一人一人のより精密な脳の機能が分かる様になって来ました。

神経細胞が興奮して活動電流が発生すると頭皮表面に磁場を作ります。その磁場の大きさは10兆分lテスラ。地球磁場が10万分の1テスラですから、極めて微弱な磁場なのです。

この磁場の検出は超伝導量子干渉素子SQUID(スクイッド)という高感度の磁場センサーで可能になりました。例えば、患者さんに視覚、聴覚、体性感覚等の刺激を与えたり、文字を読むとか、単語を聞くと言う様な刺激を与える事で脳の機能を診断して、脳磁図が作製されるのです。

この脳磯回とMRIで診断した脳の構造を組合わせる事で、1人1人の正確な機能部位を把握して改善に役立てるのです。

当院のスケジュール