- Blog記事一覧 -9月, 2019 | 伊勢原市笠窪 鶴巻温泉治療院 - Part 2の記事一覧
9月, 2019 | 伊勢原市笠窪 鶴巻温泉治療院 - Part 2の記事一覧
人には全部で23対(46本)の染色体がありますが、その長い物から順に番号が付いています。最も長いものが第一染色体で、23対の染色体全てに約10万個の遺伝子が乗っています。 1989年に始まり数十年かかると言われていた人ゲノム計画は、遺伝子操作の技術の急速な進歩によって2003年4月にはマッピングが終了しました。この遺伝子のマッピングとは何番目の染色体のどの位置に遺伝子があるかを決める事です。明らかになった人遺伝子が細胞でどんな役割を果たしているかの統計があります。第一位は遺伝子と蛋白質に関わるもので、例えば蛋白質のアミノ酸配列を命令する遺伝子やどの遺伝子を転写するかを決める遺伝子等が22%ありました。第二位は代謝に関する遺伝子が17%第Ξ位は細胞間にシグナルを送るホルモンをコードする遺伝子と、免疫と恒常性を維持する蛋白質の遺伝子が共に12%。そして細胞の材料や細胞を勤かす為の遺伝子が8%。細胞分裂やDNAの合成に係わる遺伝子が4%です。またどの分野にも入らない遺伝子が25%あります。10万個の遺伝子の中には、その遺伝子によって病気になったり、あるいは病気に罹り易くなる様な遺伝子が沢山含まれています。
感染症と違って、原因が遺伝子の異常にある疾病の場合には薬や免疫力に期待できないので、遺伝子療法が求められます。これまで行われて来た遺伝子療法の多くは正常な遺伝子を入れるもので、肝癌や皮膚癌等に応用され、最初にADA欠損症で成功しています。一般的な方法としては患者さんの体から取り出した細胞に、遺伝子組み替えで必要な遺伝子を持たせたウイルスを感染させて患者さんの体に戻すと言うものです。この遺伝子療法は根本的な医療行為として期待されていますが、実際はまだまだ多くの課題をかかえています。例えば目的の遺伝子を運ばせるウイルスが目的通りの運搬をするとは限ら無いという正常な遺伝子を持った運搬ウイルスを作れたとしても、体に戻された時にその遺伝子が核の中のDNAの正しい部分に挿入されると限りません。挿入されたウイルスが細胞の酵素によって攻撃されて壊れる事もあり、その為ため正しい遺伝子が有効に働かない事が多いのです。しかも従来の方法も併用しているので、はっきりと遺伝子による治癒なのかは断定できないのが現状です。一方で遺伝子が働か無いのでは無く、悪い遺伝子が働いて疾病をもたらす場合には、良い遺伝子を入れるだけでは有害遺伝子の発現を消す事は出来ません。体細胞では悪い遺伝子だけを取り除く事はできないのです。IPS細胞を使っての再生医療はこれから進んで行くと思われますが癌ではウイルスを使って体内に組み込みインターフェロンを放出させ癌を縮小させる等の効果が出ていますがIPSの癌化問題がまだ解決できた訳では無く、その先の本来理想とする体の異常細胞を形成しているDNAが全て正常細胞に置換して健康体になる目標はまだ先にあり、これからの研究が期待されます。
遺伝子療法で最も多様な試みがされているのは癌で、癌の医療行為を見れば遺伝子療法が良く解ります。ひと口に遺伝子療法とは言っても、どの様に遺伝子を働かせようとするかのアイデアも様々です。アンチセンス療法と言われる物は有害な遺伝子が作る蛋白質の合成を抑制しようと言う物です。この考え方は、癌に限らず様々な遺伝子疾患に対して試みる事が出来るでしょう。また壊れてしまった癌の抑制遺伝子を補うという物や、癌遺伝子その物を抑制して癌の増殖や転移を押え込もうとする方法があります。更に免疫療法は抗癌免疫反応を強化するもので、数的にもこの方法が最も多く試みられています。本来は癌細胞も免疫機構によって抑えられている筈ですから、その免疫機構を強めて癌を押え込むと言うのは最も合理的な方法であるとも言えます。更に癌ならではの方法として、癌の化学療法に対して正常細胞その物に、抗癌剤に対する耐性を持たせようとする方法もあります。反対に癌細胞その物に薬剤に対する強い感受性を持たせ、アポトーシスを起こさせて自滅させようと言う医療行為も考えられています。
遺伝子療法には患者の細胞を体外から取り出し、試験管の中で遺伝子を組み込み再び注射で体りに戻す方法と、遺伝子を組み込んだベクター(運び屋:核の中こ遺伝子を運びこむウイルスの事)を直接体内に注入する方法があります。遺伝子療法の世界初の成功例は1990年アメリカで行われてアデノシンデアミナーゼ酵素欠損症(ADA)による重症複合免疫不全症の女児に対して前者の方法で行われました。後者の方法では「心臓の冠状動脈付近に血管を新生させる」と言う医療行為です。アデノウイルスを用いたベクターにVEGFと呼ばれる血管内皮細胞新生因子の遺伝子を導入し、これを心筋梗塞等で狭窄した血管付近の心筋に注射すると、2週間程で新しい血管が狭窄部位を避ける様にバイパスして新生し、心筋への血流量が完全に回復するほどの成績を上げているのです。又、実験段階ですが肝硬変のあるラットの筋肉に肝細胞の増殖を促す肝細胞増殖因子(HGF)を使った遺伝子療法が行われています。約8割のラットで肝硬変で肝細胞が破壊されて起きる繊維症が完全に消失し、残り2割にも繊維症が約80%消失したという報告があります。