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「ど忘れ」を見過ごさない

2021.06.16 | Category:

ある人物を話題にしたい時、顔は浮かぶのに名前が思い出せないという経験は誰にでもありますが、何度も繰り返すようなら、ひそかに脳機能の低下が進んでいる恐れがあります。

脳の活動に要求されるのは、正確さ・スピード・維持力です。言葉を考えて使わずに「あれ」「それ」等の代名詞ばかりで済ませていると、イザという時思い出せず必要な場面・速さで名前が出て来ません。

書く事でも同じで、ワープロに慣れていると自分の記憶中枢をほとんど使わないので、手書きで文章を書こうとしても漢字が思い浮かば無いのです。

記憶の原則は繰り返しで、言葉は使わないでいると直ぐに忘れ、身体機能と同じく脳機能も必要で無い物は低下して行きます。

「ど忘れ」は長期記憶のエラーですが、記憶中枢だけが機能低下したのでは無く、思考中枢や感情中枢など、他の中枢の機能も低下し始めている事が多いのです。

「ど忘れ」に気付いた時、その内容が長期記憶の中でも特に自分自身に関する事柄であれば、脳のどこかに問題があるのではないかと考えるべきです。

高次脳機能を調べるには、まず脳組織・脳血管・脳血流量・全身状態の異常の有無、脳機能の異常の有無を調べます。

脳組織についてはMRI等で調べられ、一見正常に見えても脳血流量が部分的に少なくなっていたりすれば脳機能低下を招く為、詳しい検査が必要です。

例え症状が無くても、無症候性の脳梗塞等が発見される事もあるので、特に身に覚えのある方は一度は高次脳機能の検査を受けた方が良いかもしれません。

口臭抑制に唾液の役割

2021.06.16 | Category: 口腔

口臭を防ぐ為にガム、飴等の防臭剤が数多く販売されていますが、口臭の原因の8割は、口の中の細菌でその数は200~300種類、400~500億です。

歯の表面に付着する歯垢1㎎中に含まれる細菌は約1億で、これが歯と歯ぐきの間に留まり続けると、空気を嫌う嫌気性菌が増え、これが蛋白質を分解し、その過程でメチルメルカプタン等の揮発性硫化物を発生させ、これが臭いの主成分になります。

この細菌が増えると、臭いが強くなり、更に炎症が起きて歯周病になります。

口臭を抑えるにはこの細菌を洗い流し、組織を湿らせて炎症を起こし難くする事で、その働きをするのが抗菌作用のある唾液です。

朝起きがけの口臭は、眠っている間に唾液の分泌量が滅って自浄効果が十分でなくなり、口の中で細菌が増加した結果です。

また緊張が続けぱ、自律神経の働きによって唾液の分泌が抑えられ口臭がきつくなるのです。疲れ過ぎたり、睡眠不足でも口臭が強くなります。

更に唾液量が少ないと、舌の上に細菌等が白く付着する舌苔が増え、これも口臭の原因になります。

それ以外には鼻や喉の疾患、糖尿病や肝臓病等内臓疾患があっても口臭が強くなります。

口臭を防ぐには丁寧な歯磨きや歯間ブラシ等で歯垢を残さ無い、舌を清潔にする、虫歯や歯周病があれば歯科に通院する、ニンニクやタバコなど嗜好品は口臭の元になるので注意する事です。

緑茶は細菌の繁殖を抑える成分が入っているので消臭効果があります。

高尿酸結晶

2021.06.16 | Category: 泌尿器生殖器

生活習慣病の一つである痛風は糖尿病や高血圧よりどこか軽んじられている所があります。

高尿酸血症になってもすぐさま致命的にならない事もあって、生活習慣の改善もせず、薬の服用もいい加減にしているケースがよくあります。

痛風発作が現れて初めて真面目に通院すると言ったケースがほとんどです。

現在痛風の予備軍である高尿酸血症は非常に増えていて、若年化も進み人間ドックで男性の約20%に見つかるといったデータもあります。

尿酸は体内で1日700㎎が生み出されますが、このうち75%は腎臓から排泄されます。

ところが尿酸が過剰になる様な生活や、腎臓からの排泄が悪くなると高尿酸血症が起こります。

血清尿酸値が7.0㎎/dl以上になると高尿酸血症で、この状態が数年続くと痛風発作が起こります。

また、9、0㎎/dl 以上では90%以上に痛風発作が起こります。

痛風発作は足の拇指の付け根の関節に起こる事は知られていますが、これは関節内に尿酸が結晶化して、それを白血球が異物として認識して貧食する事で急性関節炎になるからです。

この痛風患者の生活パターンは、大食、過度の飲酒、そして激しい運動を好む傾向が指摘されています。

まさにスポーツマンタイプの人達です。痛風発作の症状自体は致命的にはならないのですが、この様な生活習慣は高血圧症や虚血性心臓疾患や脳卒中を引き起こしやすいので、あなどってはいけない疾患である事は間違いありません。

粘膜免疫

2021.06.16 | Category: 免疫

免疫と言えば胸腺や骨髄等、もっぱら全身を巡る免疫システムの解明が進んでいます。

注射によるワクチン等も全身系に免疫応答を与える物です。

しかし、その様な全身的な免疫システムとは違った免疫システムを持つのが粘膜免疫です。

外界に面している皮膚に対して、「内なる外」である粘膜は皮膚の200倍以上の面積を持ち、様々な異物が体内に侵入する第一関門と言えます。

食べる事で入ってくる抗原に対してはパイエル板や盲腸等の腸管免疫システムが、呼吸によって侵入してくる抗原に対してはアデノイドや扁桃、気管支等の粘膜組織が働いています。

また泌尿生殖器や外分泌腺も含まれ、粘膜は一番大きな免疫臓器だと言えます。

粘膜では粘液や酵素等によって抗原が侵入し難くなっているだけで無く、分泌型lgAが中心になった体液性の免疫と、上皮細胞間のリンパ球や固有のT細胞等が連携を取りながら免疫システムを作っています。

粘膜免疫が面白いのは、例えばワクチンの注射によって全身性の免疫システムに抗原抗体反応が出来ても、粘膜系には免疫を作る事が出来ないのに、粘膜系に免疫応答が作れれば、全身系にもその免疫応答を誘導する事が出来る事です。

つまり口や鼻の粘膜を通してワクチンを投与すれば、粘膜にも全身にも免疫が出来るのです。

これまでは体内に入ってしまった病原体に対して免疫を成立させる事が中心でしたが、粘膜免疫の研究がもっと進めば、最初のバリアである粘膜の部分で抗原抗体反応を成立させたり、または免疫寛容を作る事で免疫疾患を抑える事が出来るでしょう。

PTSDとEMDR

2021.06.16 | Category: メンタル

PTSDは、「(心的)外傷後ストレス障害」と訳され、地震などの自然災害や大きな事故、レイプや強盗などの犯罪被害、テロや戦闘体験などの出来事に曝された精神的後遺症です。

阪神淡路大震災のような大災害でなくても、家庭内暴力や虐待なども原因になります。

その症状には

①出来事の不快な記憶が繰り返しよみがえる再体験症状
②出来事について考えたり話したり、思い出させる場所や品物を極力避けようとする回避症状
③いらいらして怒りっぼく、眠れなくなり、物事に集中できないなどの覚醒昂進症状

があります。これらの症状が1ヶ月以上続けばPTSDで、1ヶ月以下の場合は急性ストレス障害と診断されています。

PTSDの療法にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や抗不安薬による薬物療法や、認知行動療法などさまざまな療法が行われています。

面白い療法にEMDR(眼球運動による鋭感作と再処理法)という、心的外傷場面を思い出させながら眼球運動を行うことで苦しみを与え続ける記憶を普通の記憶と同じように再処理するという療法があります。

1989年にフランシーン・シャピロが考案したものです。

単純な方法にも関わらず、PTSDをはじめ恐怖症、反応性うつ状態、パニック障害など外傷的記憶が関係する病気を、短期間かつ高率で改善できたとする報告があります。

EMDRのメカニズムは大部分がまだ仮説の段階ですが、急速眼球運動が情動に対して非常に大きな影響力を持っていて、不安を制止するという説などが有力です。

アルツハイマー病と偏食

2021.06.16 | Category:

アルツハイマー病は複数の原因遺伝子が発見されていて、遺伝的素因が大きい病気である事は間違いないといえます。

特に遅発型の遺伝的な素因としてはアポリポ蛋白E-4の遺伝子を持つ人は発症率が高いのです。

しかしE-4の遺伝子を保有していても発症する率が低い地域や商い地域があったりするので、遺伝的素因の他に環境による影響が大きいとみなさざるを得ません。

その環境の一つが食事です。疫学的調査によると、アルツハイマー病群では高い割合で偏食が見られています。

「肉好き・魚と野菜嫌い」、「アルコール・甘い物・甘味飲料等の多飲」が特徴的で、魚や牛乳、野菜、キノコ類、海藻類等の摂取が少なかったのです。

栄養素では蛋白質や各種ビタミン、ミネラルの摂取が発症していない人に比べて少ないと言う結果が出ています。

更により大きい要因として考えられるのは不飽和脂肪酸、中でもω3の系列(αリノレン酸系列)の脂肪酸の影響です。

E-4遺伝子を持っていてもω6(リノール酸系列)の脂肪酸に比べω3をしっかり摂っている人はそうでない人に比べて発症するまでに20年の違いが認められています。

またE-4遺伝子を持っていなくてもアルツハイマー病になる事があるのですが、その人たちはω3系列の脂肪酸が不足すると共に、ビタミンB群、ビタミンC、カロチン、ミネラルの摂り方が少なかったのです。

つまり運悪くE-4遺伝子を持っていても、魚や野菜を充分に摂る事で、アルツハイマー病の発症は免れる事が出来るかもしれないのです。

その意味でも後発性のアルツハイマー病は生活習慣病と言えるのかもしれません。

ω3系列の脂肪酸が豊富な食べ物エゴマ油、シソ油、魚類、海藻類、野菜(特に冬野菜)等があります。

貧血と低血圧

2021.06.16 | Category: 循環器

若い女性はめまいや立ちくらみの症状を訴える事がありますが、その時に「貧血だから」とか、「低血圧だから」など、その区別がハッキリしない事があります。

貧血は血液成分の問題で、低血圧は血液を送り出す力が弱い為に起こるもので、その対処は違ってきます。

貧血の多くは鉄欠乏性貧血で、赤血球は鉄を含んだ蛋白質のヘモグロビンが、全身の組織や臓器に酸素を運ぶ役目をしますが、鉄分が不足すると、ヘモグロビンが十分に作られ無い為に貧血になるのです。

特に女性は生理の出血でヘモグロビンが少なくなりやすく、そこへ間違ったダイエットや偏食をすると更に鉄不足が悪化するのです。

鉄分は1日に12mgが必要ですが、鉄分が多いのはレバーや赤身の肉類です。

ひじきや小麦フスマ、小麦胚芽にも鉄分が豊富ですが、植物性食品の鉄は非ヘム鉄で吸収率は劣ります。

またビタミンCを一緒に摂ると吸収しやすくなります。慢性貧血が続く様な場合は鉄剤を処方してもらった方が良いでしょう。

低血圧は最高血圧が100mHg以下の状態で、全身の血液循環が悪くなる為に起きます。

何らかの病気が原因となる2次的低血圧もありますが、90%は原因が無い本態性低血圧で、遺伝や体質の問題が考えられます。

バランスの取れた食事、早寝早起き、適度な運動と言った、生活習慣を改善する事が重要になります。

低血圧の人は食も細いので貧血も同時に起している場合もあります。

貧血と低血圧は血液検査や血圧測定で直ぐに分かるので、症状がある場合は原因を早めに知る事です。

乗り物酔いはどうして起こる

2021.06.16 | Category: 自律神経

乗り物酔いは、吐気、嘔吐、顔面蒼白、冷や汗、唾液の異常分泌等が起こりますが、これは全て自律神経失調の症状です。

これらの症状はめまいを起した時の随伴症状としても知られています。

乗り物酔いが起こる原因は内耳の三半規管と耳石器を総称した前庭迷路と視覚等の感覚器の異常、更に中枢の前庭小脳の機能混乱に伴う精神的な緊張等が挙げられます。

まず、回転運動を感じる三半規管と身体の傾きや加速を感じる耳石器から前後、上下、左右、あらゆる方向からの揺れや振動の過剰な情報が脳幹にある前庭神経核に伝えられます。

この脳幹の前庭神経核には手足や首の筋肉や関節からの情報や視覚情報等の感覚が集まる所です。

その情報に対応して前庭神経核の中の、姿勢を制御する為の前庭脊髄運動系、目を動きに合わせる前庭眼運動系、内臓機能と対応する為の前庭自律神経一系、より細かい運動に対応する前庭小脳系、学習の為の前庭皮質系の5つの反射系が出力する仕組みになっています。

これらによってより細かい姿勢調整、眼位の調整を行います。

また、大脳皮質にも情報が送られる為に、乗り物酔いの不快な気持ちが記憶され、乗り物に乗る事への情動的な不安も引き起こされるのです。

ですから、乗り物酔いは直接的には耳、眼、小脳の情報の混乱による一過性のめまいが起きた為に、自律神経系の過剰反応が誘発されるのです。

更に、これまでの不快な記憶によりそれがより強化される為に引き起こされるのです。

細菌の自己防衛

2021.06.16 | Category: くすり

細菌側から見れば抗生物質はやっかいな敵です。ペニシリン登場後の1950年には細菌感染による死亡数は半減して、その後更に減少して人間側の勝利と思われていました。

しかし、数年後には細菌も防御態勢を整えて抗生物質に耐性を持つ赤痢菌や大腸菌が登場したのです。

とくにペニシリンを分解する酵素、ペニシリナーゼを持つ黄色ブドウ球菌の登場は人間側には脅威でした。

1960年にはこの酵素に分解されないメチシリンという抗生物質を開発したのですが、1年後にはメチシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌(MRSA)が出て来ました。

1980年代には多くの細菌に効く第3世代と呼ばれるセフエム系抗生物質が数多く使われる様になりました。

しかし、この抗生物質は黄色ブドウ球菌には効き目が弱かった為に、両方に耐性を持つMRSAが爆発的に増えて、院内感染の問題が次第に深刻になったのです。

高齢者や手術後の免疫力が落ちた状態では感染が致命的になりますが、今のところバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニン等の抗生物質が有効です。

しかしイタチゴッコで先を越されるのは時間の問題だと言われています。

また細菌側にはもう一つの防御法があります。

それは身体に侵入して、特定の場所に定着して増殖する時に細菌の表面から粘っこい物質を作りお互いにくっついて塊りになり、抗生物質の攻撃を避けようとします。

このバリアーをバイオフィルムと言いますが、このネバネバ物質により、体内でしぶとく生き延びて潜伏しているのです。

これに唯一対抗出来るのがエリスロマイシンという抗生物質なのですが、元々殺菌力は弱く、どうもバイオフィルムを作るのを妨害する働きがある様です。

いずれにしても、これからも人類と細菌の闘いはエンドレスに続く筈です。

激化する特許戦争

2021.06.15 | Category: 遺伝子

病気に関する遺伝子の研究が進むにつれて、遺伝子の特許争奪戦が激烈になっています。

その先端にあるのがアメリカですが、米特許商標庁は「ステルス特許」を禁止するガイドラインを発表しました。

ステルス特許とは、“何の遺伝子かは分からないが、とりあえず遺伝子だから特許をとっておこう”という様な特許です。

こういった特許を禁止するというのは当たり前と言えるでしょうが、一方で、はっきり何かは分からないが何らかの有用性(それを利用して薬を作る事が可能など)を証明すれば遺伝子の断片でも特許を認めています。

そもそも自然に存在する遺伝子に関して特許が認められるかという疑問の一方で、遺伝子の研究には膨大な研究費が必要であり、その為にも特許が必要であるとの立場が優勢です。

しかし、一度特許が得られると、その遺伝子を研究するにも特許料を支払わなければならなくなったり、その為に利益を生みそうに無いと分かった研究(極まれな病気に関した遺伝子のような場合)が進まないという事も起こってきます。

現にカナバン病を発症した子供の病原遺伝子を発見したマイアミの子供病院は、特許をとって他病院ではカナバン病の検査ができなくなるという様な事や、ある会社が持つアルツハイマーを診断するための遺伝子が自由に使え無くなり、特定の場所でしか研究でき無くなった等という事が起こっています。

また特許に触れるのを恐れて研究を中断したり断念するという研究所や研究者も増えているといいます。

特許を取った会社が安価な薬を提供するのか、医療に莫大なお金を使わなければならなくするのかは会社の意向次第という事になるのです。

このような事態は法的には問題がないとしても、倫理的には問題が大きいと言わざるを得ません。

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