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下肢 - Part 2の記事一覧
1950年代、イギリスのパーパラ・ロックウソドという美女が突然死しました。殺人では?という疑いもあったのですが検死の結果は殺人ではありませんでした。その謎を解いたのはアメリカの整形外科医のレジナルド・ペイン博士で、彼はパーバラが履いていたハイヒールが犯人だとしたのです。バーバラは1日の半分を12cmもあるハイヒールを履いていた為ひどい外反母趾でハンマートゥ、足の裏には大きなタコを作っていました。つまりハイヒールによる足への刺激が姿勢を狂わせ、ホルモンの異常な反応や分泌をもたらし、死に至らしめたと結論をしたのです。別の整形外科医のレミントン・プリストル博士は女性の胃腸障害患者の8割以上が日常的にハイヒールを覆いており、その人達の多くは血液循環が悪く、生理不頂のみならず流産の原因になると言っています。人の体重は素足の状態では踵にほぼ80%、指の付け根に20%ほどがかかっています。ところが10cmのヒールを履いた場合は足の付け根の体重は60%を超えます。しかもヒールが高くなっているので腓腹筋や臀筋が緊張します。歩くのも蹴り出しを強く出来ず、あおら無いで靴底を地面に置くと言うすり足の歩き方になってしまいます。当然体は前傾するので姿勢を保つ為には、膝が曲がり頭蓋は中芯軸より前方に移動し腰椎は生理学的前湾を保持出来なくなります。姿勢は毎日の事ですのでやがて本人は異常な姿勢に違和感すらも感じず、時期を遅れて姿勢が原因とされる多くの病気が発生します。
最も敏感な病的反射であるバピンスキ一反射は、足の裏の外縁部をこすると足の親指が背屈して、他の指は扇上に幾分開きながら低屈する現象です。脊髄損傷などの上行性運動ニューロンの疾患や脳性麻痺や脳血管障害等で起こります。この反射は生後半年位までの乳児期に見られますが、これは新生児の三ヶ月頃まで見られる手の握り反射と同様に脳の前頭葉の発達によって反射が抑制される為に消えて行きます。この反射はサルでは乳幼児期を過ぎても見られる事から、手と同様に足もつかむ行為に必要な樹上生活の名残だと言う人類学者もいます。直立二足歩行によって手足の機能分化が起こり、手は握る、つかむ事が主体になり、人は体重を支え二足歩行が専門になった為に足趾の機能が退化したのです。しかし、足趾の動作は訓練すれば手とほとんど同様の働きをする事が出来ます。手に障害を持った方の中には、健常者の手先以上に足先を器用に使う事が出来る人もいます。更に、とっさの時に役立つ反射という経路も日常生活の中では必要はありませんが,これも訓練次第で再現すると言う報告もあります。毎日足の裏をこするようにすると、この反射機能は戻り親指は背屈する様になるそうです。
身体の中で汚い所と言えば、排泄物の出口や手などを思い浮か べます。しかしお尻は排便後にはペーパーで拭いたり、ウォシュレット等も普及して来たので案外清潔です。それよりも汚いのは足、それも足の趾の間です。東京の城南病院の石像忠椎院長の細菌培養による調査では、下着に包まれた腹部を1とした時、靴を履いていた足の裏部で40倍、足趾の間に至っては70倍もの細菌コロニーが発生しました。足は音通考えられている以上に汚いのです。と言うのも、足は手と共に汗腺の密度が濃く汗をかきやすい部位です。しかも精神的に緊張したり興奮したりすると発汗するアポクリン性の汗が圧倒的に多いのです。アポクリン性の汗は不潔な状態にして置くと不快な悪臭を発する腋臭症の原因にもなる汗です。足の皮膚温は裸足では32℃位ですが、靴下、靴を履いて いる時37~40℃にもなります。夏場や運動をした時には48℃にまで上昇する事もあります。加えて汗をかきやすい上に靴を履いている為蒸発するのは約6割、湿度も高い為細菌が発生する最適の場所なのです。しかも顔や手と違って日中には足を洗ったりしませんから不潔度は極まります。水虫で無くてもマメに靴下を替えたり、靴下を脱いだら直ぐに足を洗う等のケアが必要です。
昔と比べて杖を突いている人が時に少なくなった様です。元気なお年寄りが増えたと言う事もあるでしょうが、杖イコール年寄りと言う悪いイメージがあるせいでしょう。手術後などに一時的に杖を使った人も、杖無しで歩ける事が回復のバロメーダーともみなされて、杖を手放して不自由を我慢する事も多い様です。二足歩行は人間の特徴ですが、二点で立位のパランスを取るのは実は大変な事なのです。ですから三本目の足としてもっと積極的に杖を使う事を奨励したいものです。足腰の一部に弱い部分が有るとその部分を補おうとする為、反対側に負担をかける事になります。それがまた痛める原因にもバランスを崩す原因にもなります。またどうしても狭まりがちだった活動範囲が杖をつく事により広がって結果的に健康的な日常をもたらす事にもなり,ます。更に肉体的な面だけで無く、杖を持つ事で、周りの対応が柔らかくなり、駅や商店等で若い人から急かされたりイライラされたりする事が無くなって外での生活がやり易くなったという効用の声も聞きます。体に合った杖の長さは手を真横に挙げて、正中線から手の爪先までの長さと言うのが目安です。材質も色も様々な物が出ていますので、オシャレ一の一部としても明るく三本目の足を使う事を患者さんに奨励したいものです。
高齢になると歩行中にほんのちょっとした段差でつまずいて転倒し、大腿部頚部骨折や橈骨下端骨折等といった大怪我を起こす事があります。この転倒を防止する一つの方法として歩行姿勢を見る事も大切です。足腰が弱った高齢者や膝などの関節に痛みがある場合には、どうしても姿勢が前屈みになっています。歩行の正しい姿勢は胸を張って背筋を伸ばし、腕を振りながら後ろ脚を蹴り出す様にし、歩幅を大きくします。着地が前足の踵から、足裏、つま先と順番に体重移動します。前かがみの姿勢になると後ろ足の蹴り出しの力が弱くなる為に踵から着地する事が出来無くなり、つま先から着地する事になります。この為段差があるとつま先が引っかかり、転倒する事になるのす。高齢の方が前かがみの姿勢で歩いていたなら、背筋を伸ばした姿勢にするようアドパイスをしましょう。また転倒防止のために杖やステッキを利用してとっさの時の支えとして積極的に利用し、その時も背筋を伸ばす事を意識して歩く事が大切です。綺麗な歩行は見た目だけで無く、転ばぬ先の杖としての役割があるのです。
下肢の循環器系の疾患の中で恐いのが閉塞性動脈硬化症(AS0)です。生浩習慣病の息者さんが年々増えて行くに従って、末梢の動脈硬化症も当然ながら増加しています。ASOの主訴と言えば間欠性跛行ですが、この症状が出て来る時はかなり進行しているのです。最初は末梢に冷感やしびれが現れたり、下肢の血の巡りが悪い状態ですので以前よりふくらはぎ (腓腹筋)がつったり痙宰を起こし易いといった症状が出てきます。(第一中足骨と第二中足骨)の間で脈の取れる足背動脈の左右差や滅弱等も目安になります。病状が進行すると足の皮膚が薄く弾力が無くなったり、足を上げると蒼白になり垂らすとチアノーゼになったりします。ASOは圧倒的に男性が多く女性は少ないのですが年々女性も増加傾向になってきました。原因になる生活習慣を初期の内に徹底的に改善して行く事が必要です。まず第一に禁煙と食事と運動等の規則正しい生活を実行させる事です。また、足を清潔に保つ事や足爪の手入れはしっかりやり,フィットした靴を撰ぷことも大切です。また、血行改善の為の足のマッサージ、入浴特に足湯は効果があります。これらの勧めは、ASO以外の循環器系の疾患でよく似ているバージヤー病(手足の先の小動脈に多く多発分節性の四肢慢性動脈閉塞症)や静脈系の疾患である下肢静脈瘤等にも効果があります。