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がん - Part 2の記事一覧
日本では胃がんは集団検診による早期発見の効果や手術の進歩で、着実に減少しているように世間では思われています。
実際のところは胃がんの発症率が世界で1位であるという不名誉な事態になっている事はあまり知られていません。
2014年部位別死亡率で胃がんは男性2位女性3位で47.903人が胃がんで死亡しているのです。
胃がんは胃液や粘液を分泌する粘膜に発生します。
もう少し細かく言えば、この粘膜の内側の分泌細胞やその分泌液の導管の細胞にできるのです。
また、胃炎等により粘膜細胞がやられてしまうと、腸の粘膜に似た腸上皮化生になり、その粘膜はがん化しやすいと考えられています。
ですから、慢性的に胃炎を起こす過度の飲酒や喫煙等の生活習慣や昔から塩分の取り過ぎなどが挙げられています。
またヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんの因子であります。このピロリ菌は慢性萎縮性胃炎を起こすからです。
このピロリ菌は一旦感染すると粘膜層に入りこみ胃酸をバリアーにして生き続け、増殖するのです。
ピロリ菌に感染している人は開発進上国で圧倒的に多いのですが、先進国では唯一日本だけが高い感染率なのです。
とくに50歳以上の日本人の8割が保菌しているのです。
ただ、開発途上国ではさほど胃がんは発生していないところをみると、ピロリ菌だけが問題ではなく、様々な因子が合わさり胃の細胞の遺伝子に沢山の傷がついてがんが発生すると考えられています。
1950年代まではアメリカでも胃がんが1位でしたが、近年のアメリカでは胃がんは激減しています。
その理由消炎効果の高い野菜や果物の摂取の生活改善ではないかといわれています。
腫瘍マーカーというがん検査法があります。がん細胞はがんの種類によって異なるある種の物質を作り出します。
またがん細胞と反応した正常細胞が何らかの物質を作り出す事もあります。
血液を採取して特定な検査を施しこの作り出された物質を感知する事で、その物質が目印(マーカー)となりがんの存在を確認する事ができる検査法です。
例えば、大腸がんでは、がん胎児性抗原(CEA)、肝臓がんではα胎児性蛋白(AFP)等がマーカーとなります。
現在は30種類のマーカーがあり、いずれも正常値が決まっていて、この正常植を超えるとがんの疑いが高まるのです。
しかし、この正常値は健康な人のデータから作られた数値であって全ての人には当てはまりません。
更に腫瘍マーカーの様な細胞は健康な人の体内にもあり、血液中の腫瘍マーカーはゼロでは無く、その人それぞれの数値を示すのです。
ですからー回きりの検査で出てきた数値が正常範囲内であったとしてもその人の平均的な数値を知らないと、その数値の意味がないのです。
良性の病気やがんになった時には、数値が高くなってきます。
そして正常植の上限であるカットオフ値と呼ばれる値よりも高い場合を陽性と呼び、「これを超えたら病気の事が多い」という程度のもので、陽性だから必ずがんがあるではありません。
その為に腫瘍マーカーをがんの早期発見や健康診断の手段にする事に批判する専門家がいますが、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAに限って言えば早期発見に非常に確率が高いと考えられています。
腫瘍マーカー検査は、がんができている人の予後の推定、がんの手術や抗がん剤等の効果と経過の観察、再発の発見等に使われているのが現状の様です。
この腫瘍マーカーを継続して調べ、その患者の平均的数値を知り、その値の変化から早期発見をしようという腫瘍マーカー追跡検査(TMT)という考えが提唱されています。
一回の検査だけで決めるのではなく年に2回位で、そのマーカーの値の変動を検査し、異常があれば他の検査をするのです。
2000年も前から古代ギリシヤではがんは熱に弱い事を知っていました。
顔に肉腫がある人が高熱を出す病気になった後に、その肉腫が消失したからです。
実際に最近の研究で、正常細胞とがん細胞の熱に対する耐性に明らかに差がある事が分かっています。
がん細胞は41℃以上になると壊れ始め、42.5℃以上になると急激に生存率が低下します。
正常細胞と比較すると圧倒的なダメージを受けます。
がん細胞は内部の血液の流れが悪い為に温度上昇を招きやすいのです。
つまり、周囲の温度を上げると血流による冷却が正常細胞と比較して上手く行われずに、温度が上昇してしまうのです。
更に、がん細胞は正常細胞より内部の酸性度が高い為に、温度上昇に対して敏感であるという点も挙げられます。
いずれにしても、がん細胞は高い温度に弱いので、温熱療法は副作用の無い方法として法として期待できるのです。
実際、他の放射線療法や抗がん剤の投与の時に温熱療法を併用すると効果が大変向上したという臨床報告もあります。
また、抗がん剤を投与した時、体温を5℃上昇させると、効力が400倍も上昇したというデータもあります。
更に、放射線療法の副作用も減ったという報告も出ているのです。
また、がんを抑制する遺伝子としてよく知られている「p53遺伝子」も高熱になるほどに働きが活発になる事も明らかになってきました。
鳥取県の三朝(みさき)温泉はラドン温泉ですが、この近辺のがんの発症率は全国平均の半分しか無いといいます。
これ等も温泉と微量の放射線の併用効果なのかもしれません。
入浴はヒートプロテインショック効果でNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化もあり、良い事です。
2014年のデータでは男女あわせて約73.396人、毎日約201人が肺がんで亡くなっています。肺がんは男性は女性の約3倍で、圧倒的に男性に多いがんです。肺がんは小細胞がんと大半を占める非小細胞がん2つの型に分類されます。非小細胞肺がんは、更に細胞組織の違いにより分類され、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がんがあります。この中で腺がんが日本では最も多く、男性の肺がんの40%、女性の肺がんの70%以上を占めています。割とレントゲンで発見されやすく「肺野型」と呼ばれる肺の末梢に発生するのものがほとんどです。次に多い扁平上皮がんは、男性の肺がんの40%、女性の肺がんの15%を占めています。これは気管支が肺に入った近くに発生する「肺門型」と呼ばれるがんの頻度が、腺がんに比べて高くなります。また、小細胞がんは肺がんの約15~20%を占め、増殖が速く、骨等に転移しやすい悪性度の高いがんです。肺がんの最大の原因は「喫煙」で特に小細胞がん、扁平上皮がんは喫煙との因果関係が深いといわれています。 1997年にアメリカの研究者は喫煙を25年間続けると肺の細胞をがんにする遺伝子のスイッチがオンになり、その後に禁煙しても効果が無いとも発表しています。反対に効果あるという報告もあります。2016年の日本のデータでは20歳以上の男性の喫煙率は29.7%女性の喫煙率も9.7%で喫煙者は減少傾向にあります。ではなぜ喫煙者が減少しているのに肺がんの死亡者は増加しているのかは以前喫煙していた人のタイムラグでは無いかと考えれています。それからすると前者の禁煙の効果無しとする補強にはなります。そして問題はその副流煙の危険はそれ以上にあるのです。喫煙以外の危険因子である大気汚染などの肺がんに対する影響力は、せいぜい10~20%程度という国立がんセンターのデータもあります。ですから、肺がんは喫煙率がゼロにならない限り、無くならないがんである事は間違いありません。
フリーラジカルががんの発生に関与していることはわかっていて、発がん物質といわれているものはフリーラジカルそのものであったり、体内でフリーラジカルを発生させるものです。
そのフリーラジカルの中でも活生酸素は体内での酸素代謝の副産物でもあり、免疫の正常な働きにも欠かせないもので、正しく働いている限りにおいては必要不可欠なものです。
しかし活性酸素が異常に作られたり、作られてはいけない場所で作られると生体を攻撃してさまざまな疾患を起こします。
その一つががん化というわけです。その活性酸素が異常に作られる場合の一つに慢性炎症があります。
体内で炎症が続くと活生酸素や一酸化窒素が大量に作られ、それが細胞のDNAを傷つける様になります。
しかも炎症している部位では細胞分裂も活発になっているので細胞のDNAの複製エラーが起きやすくなってがん化のリスクを高めるのです。
その代表がヘリコバクター・ピロリ菌による胃がんです。
ピロリ菌によって慢性的に萎縮性胃炎が起こると、それによって炎症細胞から発生した活性酸素や一酸化窒素が細胞DNAを傷害します。
またウイルスによる肝臓がんの場合も同様で、慢性的な炎症が酸化ストレスを起こして肝細胞死と再生反応を増幅させていて発がんさせるとみられています。
このとき、ウイルスが存在するだけでは発がんする事は無く、ウイルスによる炎症が酸化傷害を起こし突然変異を起こすのです。
他の部位のがんも同様、慢性炎症が関与している事が大変多いのです。
緩和医療とは、病気やその改善の過程で起こる様々な症状を和らげて日常生活をサポートするための医療です。
痛みを始め吐き気や食欲不振、だるさ等の身体症状を和らげるだけで無く、精神的ケアやリハビリ、家族を含む社会的援助までも含みます。
この緩和医療という考え方が定着しましたが、まだ誤解が多い様です。
というのも、日本では特に根治が優先されがちで、緩和医療を敗戦処理、終末期医療の様に理解されているのです。
一般にがん医療では手術を第一とし、抗がん剤、放射線療法等で徹底的にがんを叩く方法がとられます。
この根治至上主義が、副作用を仕方のない物とみなしたり、苦痛を伴う延命がいつまでも続けられという事態をもたらしています。
しかしがんの場合、転移の可能性や進行度合いからみても100%の完治は少ないというのが現実で、完治に向けた過酷な方法がかえって命を縮めたりQOLを著しく低下させている事も少なくありません。
多くの場合がんとは上手く長く付き合う事が大切で、更に医療とも上手く付き合う事がQOLを保つ事になります。
したがって、がんと分かった段階から緩和医療は根治と共に用いられるべきなのです。
■積極的緩和医療
・手術(消化管のバイパス手術等)・内視鏡療法・ 放射線療法・温熱療法・薬物投与
■支持的緩和医療
●痛みのコントロール
・鎮痛薬(NSAID→コデイン→モルヒネ)・ 鎮痛補助薬(抗てんかん薬、抗うつ薬)・神経ブロック・理学療法
●症状のコントロール
・薬物療法(抗生剤、吐き気止め、便秘・下痢薬、睡眠薬、抗不安薬等)・皮膚(褥瘡のケア等)・輸液・ 輸血・酸素吸入・穿刺や利尿(胸水や腹水のコントロール)など
●副作用の軽減
・吐き気のコントロール・骨髄機能低下のコントロール・放射線副作用のコントロール・モルヒネの副作用のコントロール
NSAID:非ステロイド抗炎症薬
がんは一般的にリンパ節に転移しやすいのですが、がんの種類によって転移しやすい組織があります。
胃がんや大腸がんは肝臓に転移しやすく、乳がんは骨に、脳腫瘍は肺に転移しやすい傾向があります。
肝臓や肺は毛細血管が多いので血流に乗ってがん細胞が運ばれてきやすいといえます。
しかし、がん細胞がなぜ転移するのか、まだ謎の部分が多いのです。
例えば、大腸なら大腸の組織は細胞同士が接着分子で繋がり、細胞が生きている間は剥がれる事はありません。
がん細胞も正常細胞の中で接着分子をもってその組織として増殖していきます。
しかし、悪性のがん細胞の中には正常細胞とも、がん細胞とも手を結ばない、組織的な性格が失われたがん細胞が生まれるのです。
それが血流にのって他の臓器に行ってそこでまた増殖を繰り返す事になります。
しかし、接着分子がなくなったがん細胞がどうしてもう一度別の臓器に接着できるのかという問題が残りますが、これも決着はついていません。
しかしがん細胞にも転移先の好き嫌いがあり、組織によって接着できるかどうかの違いがあるのだと考えられます。
実際、実験で肺や肝臓の接着分子に変異を起こさせる操作をするとがん細胞は転移できません。
その事から悪性のがん細胞は肝臓や肺の組織の接着分子との相性が良いという事がいえるでしょう。
がん細胞は血管の細胞と細胞の間を抜けて外に出て組織に定着して増殖し始めますが、栄養が欠乏するので血管新生因子を出して毛細血管を作り、栄養を補給していく事も知られています。
あのサリドマイド薬がその血管新生を妨害する事で転移を防ぐ効果がある事です。
1990年代の始め、これからの10年間(つまり2000年頃までの間)で癌医療はどの様になるかを見通した調査があります。
癌専門家はこの10年間の間に基礎研究の分野で癌の全容が分かると予想する人が4~5割もいて、7~8割は2010年までには分かるだろうと考えていました。
診断の上で著しい進展があるとしたのはダントツが遺伝子診断で、ついでMRI、内視鏡、腫瘍マーカー等を有望視していました。
改善面では遺伝子療法と抗癌剤が最も有望視され、骨髄や臓器の移植、内視鏡手術、免疫系の活性化による方法も進むと予測していました。
全体的には10年前、癌の解明はすぐに手が届く所まで来ているという楽観的な見方がされていたといえます。
一方、一般有識者では遺伝子療法に対する予想は低く、手術と抗癌剤の併用、化学療法やレーザー療法が進展するだろうと考えていました。
特定の癌の決定的な検査法や抗癌剤が開発されて、大部分の癌が治癒可能になるだろうという見方も多く、癌専門医よりも更に楽観的な見方をしていた様です。
こうした事からみても癌医療の進歩の予測は楽観的になり易い事が分かります。
先進国では毎年死んで行く人の8割は60才以上で、平均年齢は70才以上になっています。
つまり多くの人が長生きをする様になり、若死には珍しい時代になって来たといえます。
日本での死亡原因の第1位は癌で、1950年代から急カーブを描いて増加し、これからも増えると予想されています。
癌は生活習慣と関連がありますが、原因は遺伝子の異常によるものです。
老化した細胞は遺伝子異常を起こしやすく、その意味では癌は老化の一面であるとも考えられる訳です。
人が長く生きればほぼ全員癌になると言います。
従って高齢者が増えれば当然癌の発生率も高くなる事になります。
現に老化による影響を補正して死亡率をみると、癌が増加しているとは言えず、男性では横ばい、女性では減少傾向になるのです。
つまり癌が増えているのは高齢者が増えた為で、高齢化は更に強まりますから、癌その物が無くなる事は無いと考えられます。
よく言われる事ですが、高齢者の癌は若い人の癌と進って、正常組織とあまり変わらない構造を保つ分化型の癌が多く、進行がゆっくりして転移も少ないという特徴があります。
生活に気をつけて癌になるのを伸ばしたり早期発見早期改善で共存しつつ逃げ切れば、癌でも天寿を全う出来るかもしれません。
抗癌剤の認可の条件は、実際の患者で薬を試す臨床試験で、2割程度の患者の癌が小さくなる事です。
現在100種程度が厚生労働省から認可されていますが、延命効果は認可後に改めて証明する事になるので、抗癌剤では、癌が縮んでも患者が長生きするとは限らないのです。
抗癌剤には、癌細胞の特徴である分裂が盛んな細胞を殺す薬が多いので、正常でも分裂が盛んな胃腸の細胞や、白血球や赤血球を作る骨髄の細胞を傷つけ、吐き気、下痢、白血球減少による免疫力低下、貧血等の副作用を起こします。
実際の患者で効果が証明された薬を適切に使わなければ、単なる毒薬となってしまうのです。
ゲノム解析が進んだ現在、人の遺伝子は基本的に同じですが実際には個人間で微妙な差がある事が分かってきました。
この微妙な差を多型と言い、数百個の塩基の中から遺伝子の中で塩基一つだけが異なっている事から、一塩基変異多型(SNPs)とよばれています。
このSNPsが個体毎に違う為に患者毎に薬剤の効果が異なるので、このSNPsが薬剤の効果のある患者を識別する薬理ゲノムに活用出来る事が判明したのです。
この事から、患者の癌の性質に合わせ、個別的な薬を作るという、オーダーメード医療が期待されているのです。