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循環器の記事一覧
動脈硬化や心筋梗塞などの循環器系の薬にワーファリンがあります。
この薬は血液凝固に必要な血漿蛋白質合成に必要なビタミンKの働きを抑える事で、血液を固まりにくくさせる物です。
しかしこのワーファリンを服用するには細心の注意が必要です。
まず服用を忘れると心筋梗塞等の症状が悪化したり、反対に飲み過ぎると出血しやすくなります。
更に様々な食べ物、薬の相互作用が大変大きいのです。
食べ物の筆頭は納豆で、ビタミンKを多く含む上に納豆菌が腸内でビタミンKを作る為に最も禁忌の食べ物とされています。
他にブロッコリー、ほうれん草、トマト、アスパラガス、キャベツ、レタス、海藻類がビタミンKを多く含みます。
更に他の薬との飲み合わせに問題が多く、例えばH2ブロッカー系の胃薬を一緒に飲むとワーファリンの分解が遅くなり、その為に薬効が増強され出血傾向となります。
効果が増強する物には他にアルコールや解熱鎮痛剤、抗生物質、消炎剤、アスピリン等があって、消化管・鼻・歯茎からの出血、傷口からの多量の出血、月経過多、血痰、赤色またはコーラ色の尿、赤色又は黒色便、立ち眩み、ふらつき、皮膚の内出血等の副作用が出る事があります。
歯科で抜歯後等は解熱鎮痛剤のボルタレンを処方される事があるのですが、致命的な合併症を引き起こす事もあり、大変危険です。
その他糖尿痢、痛風、甲状腺等の薬との飲み合わせも注意しなければなりません。
こんな薬が薬の名に値するのか疑問ですが、実際には多くの人が飲んでいる薬なのです。
既往歴、生活習慣病の有無、血液の検査数値等の問診で血管の病気はある程度推測出来ます。
しかし、実際の身体に表れる身体の変化は視診や触診がなにより大切です。
血管は先天性の異常もあるし、動脈硬化、血栓症、感染、血管の炎症、腫瘍、外傷等様々な原因で障害されます。
血管の障害により血栓や塞栓が生じると、血液の循環が阻害されてその先の末梢の部位が虚血になったり、その部位が心臓や脳であれば致命的な梗塞が起こります。
また血管に表れる病気は血管が詰まる閉塞性病変だけで無く血管が膨らんでしまう動脈瘤や静脈瘤のような拡張性病変もあります。
特に四肢に表れる血管病変は視診が重要です。
血行に何らかの障害があれば、下肢などの皮膚に色調の変化(蒼白あるいは紅斑)、チアノーゼ、腫脹、浮腫、硬化、肥厚、乾燥等が表れます。
更に手足の先の潰瘍や壊死の形成に進む場合もあります。
慢性的な動脈病変の場合には、栄養が障害され足が細くなったり、爪の変形、脱毛もよく起こります。
また虚血の状態を知るには重力に抗するように手足を挙げると皮膚は蒼白になり、下げると暗紫色に変色する事もあります。
更に正常の足に比べると皮膚の色の回復する時間が長くなります。
また、血管の病気がある側の皮膚温はおおむね冷たく、両手で両下肢を触り皮膚の温度の左右差を見る事も大切です。
動脈を触知できる脈の強さも左右で違ってきますから、脈を見る事も重要です。
この様な視診や触診で四肢に表れた状態は全身の状態を知る上でも大切です。
高齢者は臓器、組織共に衰えて行きますが、知覚もかなり鈍くなる傾向があります。
ですから入浴時、体感的には気持ちょいと感じられるお湯も、実際にはかなり高い温度になっている場合が多いのです。
ところが、このお湯の温度は血液の粘性と密接な関係を持っていて、お湯の温度が42℃を越えると血栓の生成を促進すると言われています。
その危険因子は
1)凝固因子である血小板を活性化させる物質は42℃以上の熱い湯の中で血中濃度が高まる。
2)血栓を溶かす働きをするプラスミンの生成を促進する物質は38~40℃で増えます。しかし42℃以上では阻害する物質が増える。
3)血液の粘度が最も高いのが42℃の全身浴。最も低かったのが38℃の全身浴。
4)熱い湯は交感神経を刺激して血圧を上げる作用がある。
等です。この様に高齢者の熱い風呂の危険性は明らかです。
お湯の温度が39~40℃で心臓に負荷を掛けない為にみぞおちの下まで浸かる半身浴がお勧めです。
また、余り長湯をせず、一回3~5分位にして、身体を洗ったり、水を飲んだりしながら、何回かに分けた入浴が良いと思います。
特に高血圧症、糖尿病等動脈硬化の可能性のある高齢者にはぜひこの様なアドバイスをしてください。
日本の65歳以上の3人に1人は高血圧で、血圧が高いほど心臓血管病や脳卒中の危険が増します。
一般に血圧は加齢に連れて自然と高めになり、70~80歳にもなれば程度の差は有るものの動脈硬化が進行します。
全身の細胞に行き渡らねばならない血液が血管の内径が小さくなる為に減少するのを、心臓のポンプの力を強める事で補う為に血圧が高くなると考えられます。
老人科専門の診療所等の方針では、比較的若い高齢者に対しては中年と同様に生活指導と平行して降圧剤等でとにかく血圧を低く保つようにしますが、70歳以上の高齢者に対しては投薬は慎重に行う要です。
食事・運動・嗜好の指導等の非薬物療法が主流で、血圧がとても高ければ少量の投薬から始めます。
高齢になればなる程薬による問題が起こる率が高いのです。
若者に比べて薬が体内に残る時間が長く、始めの内血圧が下がら無くても2、3カ月後に急に下がったりする事や、病院で多数の薬をもらっている人の場合「多剤併用」による副作用が起き易い事が大きな問題になっています。
降圧剤を服用している高齢者が急に元気が無くなったり、フラついたり、呆けた要な時はすぐに血圧を確認します。
収縮期血圧がかなり下がっていれば転倒やせん妄を起こす危険があるので注意が必要です。
高齢の方で、脚の痺れや冷えがあり、歩くと太腿やふくらはぎが痛み、休憩すると痛みが取れる等の間欠性は跛行の症状を訴える人がいます。
この場合加齢による筋肉の衰えや座骨神経痛だけで無く、足の動脈が徐々に詰まって行く閉塞性動脈硬化症に注意する事が必要です。
歩行する為には筋肉に酸素が必要になりますが、動脈の内径が狭い為に、血液が十分に行か無いので酸素不足になり、この様な症状が現れ、休憩すると血液が供給されるので痛みが無くなるのです。
この時は関節が痛くなる事はありません。更に動脈硬化が進むと安静時も痛くなり、放置すると壊死を起こし、切断する事になりかねません。
脚の痺れ、冷え、歩くと痛いと言う症状を訴える場合には、閉塞性動脈硬化症が無いか、必ず左右の脚にある動脈の脈拍の強さを比較したり、足の色が紫や白色になっていないか、感覚麻痺が無いか等確認する事です。
方法には血管拡張薬や、抗血小板、抗凝固薬、更に悪化するとバイパス手術といった対症療法が行われます。
また血液循環を良くする運動が改善と予防にもなり、運動する事でバイパスの内径が広くなります。
痛くなるまで歩く事も大切で、痛くなったら休み、を繰り返して歩行距離を伸ばし新しいバイパスを発達させる事が大切です。
下肢の静脈の血液は筋肉ポンプ作用と逆流を防ぐ静脈弁で心臓に還ります。
この弁が静止したままの立ち仕事、遺伝、妊娠が誘因となって障害されて血液がうっ滞し、表在静脈が曲がりくねってこぶの様に盛り上がった状態を下肢静脈瘤といいます。
30歳以上の女性で60%、50歳以上の男性で50%の人に認められるのですが、高齢につれて運動不足から筋肉ポンプ作用も低下して、静脈瘤の膨隆が増し、脚が疲れやすい、重い、だるい、痛い、また就寝中にこむら返りが起き易くなります。
鬱血状態が10年以上続くと下腿の内側や、足首を中心に静脈瘤から血液成分が滲み出て茶褐色、黒褐色の色素沈着となり、更に皮膚や血管も脆くなり、軽い打撲で皮下出血したり、皮膚の栄養障害による湿疹、痒み、又傷が出来易くて、治りにくい為に、傷が広がり潰瘍化して行きます。
更に細菌感染の抵抗力も低下し、ブドウ球菌などの細菌の為に、皮下組織が化膿し炎症を起こす蜂寓織炎が起き、脚が痛み、赤く腫れ上がり、高熱が出る事があります。
最悪の場合は敗血症になる事もあるのです。
静脈瘤は中々元に戻る事は難しいので、進行を遅らせる為に初期の段階で弾性包帯や弾性ストッキングを使用する事です。
重症になれば血管に硬化剤を入れてその血管を塞いだり、その血管を抜き取る手術が行われます。
老年期痴呆症の分類は以前は、日本では脳血管性が約60%でアルッハイマー型が約30%、残りが混合型とされてきました。
しかし欧米では逆にアルツハイマー型が過半数を占め、脳血管性は約30%にとどまっていたのです。
この理由として欧米人に内頚動脈等の動脈硬化の程度が重く、頭蓋内脳動脈の動脈硬化は軽いのに比べ、日本人では頚部の動脈硬化は余り見られないのに頭蓋内脳動脈の硬化が著しいという事実が挙げられています。
しかし近年は日本の脳血管性痴呆は減少傾向を示し、欧米での統計に近づきつつあります。
その理由には脳梗塞後遺症に抗血小板薬や脳循環代謝改善薬が繁用される様になり、脳梗塞の再発を抑えていると考えられています。
欧米では脳血管痴呆への関心が薄く、DSM-Ⅲに精神疾患の国際基準とされる米国精神医学会の診断基準DSMの再々改訂版(現在はDSM-Ⅳ)に、ようやく脳血管性痴呆(以前は多発梗塞性痴呆)という診断名が出たのです。
この診断基準では
①痴呆が存在する
②既往歴や臨床症候から脳血管障害の証拠がある
③2つの障害の合理的な関連として明確な脳卒中後3ヶ月以内に痴呆が発症する、とあります。
日本では、脳血管障害があって2年位経って痴呆が出現しても脳血管性痴呆としているのです。
脳血管性痴呆の病態として、最も多く見られるのが基底神経核部及び大脳皮質下白質に存在する小梗塞巣で、大脳皮質の障害は比較的軽い事ですの変化が少ないので、2つの型を見分けるのに役立ちます。
心不全は、虚血性心疾患、心筋症や高血圧性心疾患等、様々な原因によって引き起こされます。
心不全とは、心臓からの血液供給が低下して末梢組織に酸素を供給出来なくなったり、鬱血状態にさせる訳ですから、当然今度は脳や心臓を始め色々な臓器に影響を与える事になります。
心不全による消化器への障害としては肝臓が鬱血状態になる鬱血肝がよく知られています。
鬱血肝は肝臓の鬱血と低酸素血症によって肝臓の浮腫や鬱血、肝細胞の萎縮等が起こります。
酷くなれば肝硬変になって腹水や脾腫になる事もあります。
また腸閉塞も起こしやすい合併症で、高齢になるに従って、また重症になるに従って発症易くなります。
特に75才以上の後期高齢者では4人に1人位の高率で腸閉塞が起こります。
この原因としては、高齢者は若い人と比べて交感神経が活発である上に心不全では更に亢進する為腸管運動が抑制され易くなっている事が挙げられます。
加えて心不全では腸管も鬱血している事等も原因と考えられますが、詳しい事はよく分かっていません。
心不全による腸閉塞はほとんどが麻痺性で、腸に異常がある訳ではありません。便通に注意していても起こる事があります。
しかも心不全の症状が一番重い時になるかと言うとそうでも無く、心不全がある程度軽くなってほっとしたような時でも突然発症する事があるので厄介です。
「脈が跳ぶ、脈が抜ける」と言う事があります。
これは期外収縮による不整脈で、心臓のしやっくりの様な物なのです。
一般的にストレス、過労、コーヒー、タバコと言った刺激物等の為に、自律神経がバランスを崩し、一時的な洞結節機能の狂いから生じるのです。
更に高齢になると冠状動脈の動脈硬化が進んだり、心筋炎、軽い心筋梗塞で心筋組織に異常な部分が出来ると、洞結節の力が衰退し、他の自動能のある細胞から収縮刺激を発する事が多くなり、高齢になるに従いその訴えが多くなります。
心臓には周期的に活動する自動能という能力のある細胞が多くありますが、その内洞結節が最も強く興奮し、その興奮刺激が伝導路を通り規則的な拍動を繰り返します。
期外収縮は早期収縮とも言われ、洞結節以外の心房あるいは心室にある細胞から急に刺激が起きるのです。
例えば心室に血液が充満してから収縮して血液を送り出すのですが、血液が充満する前に心室から早期に収縮刺激が起きると、空回りして血液の抽出が無く、脈拍も発生しないので「脈が跳ぶ」と言う事になるのです。
脈拍の乱れが頻繁に起きれば、胸に違和感を覚えたり、突然死するのではないかと不安になったりします。
この様な時は心電図等の検査で原因を追究する事が大切になります。
脳梗塞にはアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞とラクナ梗塞とがあります。
アテローム性の梗塞は欧米人に多い(20%前後)のに対してラクナ梗塞は日本人に多く(30~40%)、また最近増加傾向にあります。
ラクナ梗塞とは、脳の深い部分や脳幹等を貫く細い動脈(穿通枝動脈)が閉塞を起こし、その動脈の周りが梗塞するもので、数ミリ、最大でも15㎜の小さな梗塞です。
大血管の病変や心原性の塞栓でも起こる事もありますが、大抵は穿通枝の血管自体に原因があると考えられています。
症状としては、意識が無くなる等の劇的発作は無く、ゆっくりと前触れも無く起こります。
時にパーキンソン様の歩き方(足が出ない、歩幅が小さくすり足になるなど)になったり、言葉が出にくい、嚥下し難い、意欲が無くなる等の症状が出ます。
しかし多くは梗塞部分が複数ある事も珍しく無いのに、無症候で、CTやMRIの検査で初めて見つかると言う場合がほとんどです。
無症候性の脳梗塞の8割はこのラクナ梗塞と言われています。
また50歳以上では8人に1人の割合でこの梗塞が認められ、高血圧で高齢になると半数以上に見られる様になります。
ラクナ梗塞のある人は脳卒中発症率が高い危険群で、主な危険因子は高血圧や糖尿病とみなされています。
予防としての抗血小板薬は有効では無く、血圧が高いとかえって脳出血を起こす可能性があります。
無症候であっても梗塞が増えて行けば血流・代謝が減少し、脳の機能低下から寝たきり、痴呆へと進む可能性があるので、高血圧、糖尿病、喫煙等のリスク管理をしっかりしなければなりません。