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消化器 - Part 2の記事一覧
過剰なストレスは消化管を直撃します。ストレスの影響は消化管の機能を支える内分泌系、自律神経系、消化管ホルモンに現われます。
その代表的が胃・十二指腸潰瘍です。潰瘍は粘膜が胃酸に障害されて発症します。粘膜側からみれば胃酸は攻撃因子です。
一方、粘膜は防御の為の粘液を分泌しますが、それを支える粘膜血流呈、粘膜再生能が防御因子になるのです。
このバランスがどこかで崩れれば、潰瘍になってしまいます。
この攻撃と防御のバランスを調節しているのが内分泌系、自律神経系、消化管ホルモンで、これらの調節機能がストレスによって完進したり低下したりします。
内分泌系では視床下部が影響を受け、下垂体前葉からACTHの分泌が促進され副腎皮質から生体の代謝を高めるホルモンが分泌されますが、それが消化管では胃酸分泌亢進を促してしまいます。
また、自律神経系では副交感神経系の興奮により、胃酸分泌が亢進して、粘液分泌は低下してしまいます。
また交感神経系の興奮は、粘膜血流量を低下させ、粘膜の再生能も低下させます。
自律神経は桔抗的に働きますが、ストレスが過剰になると攻撃因子が優勢になり、潰瘍が発生しやすくなります。
また、過度のストレスが加わるのは、オーバーワーク、不規則な食事、睡眠不足等の生活習慣の乱れがありますが、再発性、難治性の潰瘍の患者さんはそれらの事を自覚していないケースがみられます。
A型人間の様な完全主義や過剰適応の性格の人が多いといわれています。
悪性貧血といえばビタミンB12や葉酸の欠乏によって起こります。
全身の倦怠感やめまい、耳鳴り、肩こり、頭重感、動悸等の貧血症状等があり、更に下肢知覚障害も出てきます。
この神経症状は早期に対策すれば回復しますが、遅いと元に戻らない事もあります。
基本的にはビタミンB12や葉酸の摂取不足によって起こりますが、充分摂取していても起こる事があります。
その時に重要な働きをするのが胃なのです。胃の働きの中で最も生命維持に必要な仕事は実は胃底部と胃体部で作られる「内因子」と呼ばれる蛋白質を分泌している事なのです。
この内因子は食物に含まれているビタミンB12と結合し、胃の奈賀でビタミンB12内因子複合体となります。
このビタミンと蛋白の複合体は腸では消化されずにずっと下っていきます。
そして、小腸の最後の部分の回腸の特殊化された細胞によって初めて認識され、そこでビタミンB12は吸収されるのです。
ですから、胃の内因子が欠乏したり、機能が異常になるとどんなにビタミンB12を摂取しても、吸収できないのです。
このビタミンは脳脊髄の神経細胞の維持と赤血球の生成に必要なので、これが体内で欠乏すると、最終的には死に至ります。
この内因子を作る細胞は実は塩酸を創る細胞と同じ壁細胞なのです。
ですから胃酸の欠乏症の患者さんの中には、壁細胞が破壊されている時には、当然悪性貧血も合併する事になります。
いずれにしても、胃がん等で胃を全摘出した人の場合は、直接注射等でビタミンB12を体内に送りこむ事が必要です。
症状が不定愁訴ばかりですので、施術しても治りの悪い患者さんで胃の手術や胃腸障害を持っている人はこの悪性貧血も留意する必要があります。
胃の中にはPH1.5~2.0の胃酸、蛋白質を分解する消化酵素ペプシンがあります。
入の身体は蛋白質からできていますが、この物質によって胃に穴が開く事はありません。
胃粘膜上の細胞からは、胃酸などが胃粘膜の細胞に直接触れないように、防御槽の役目を果たす粘液やアルカリ(重炭酸イオン)を分泌します。
粘液層のPHを計測すると胃酸と接する粘液の上層部はPH2、粘液の底の部分はPH7とほぼ中性になっているのです。
粘液は細長い糖蛋白で立体的な厚い絨毯のようになっているので分子量の大きいペプシンは通されないのです。
しかし、この粘液も分子量の小さいアルコール、薬物等の人工物質は通してしまい、粘液が洗い流されてしまうのです。
その部分の粘膜を胃酸、ペプシンが消化し傷つけることになるのです。
胃粘膜は少しぐらい傷ついても、胃粘膜の血涙が正常であれば、血液からどんどん栄養を補給し、約3日半で全く新しい細胞に生まれ変わるといわれています。
しかしストレス、アルコール、タバコ、薬剤等によって胃粘膜の血流が低下し、それが持続的であると、胃の粘膜は荒れ、傷付きます。
胃粘膜の細胞が病的にはがれ落ち、新しく細胞が生まれ変わろうとする力も弱まってしまうのです。
その為に胃酸の働きが強くなり、痛み、むかつきといった、胃の不快な症状が発生するのです。
胃粘膜血流の低下が胃炎・胃潰瘍の始まりなのです。胃の健康のためには胃の血流を良くする生活が大切になるのです。
胃酸が逆流して食道の下部粘膜が炎症を起こすものを胃食道逆流症といい、最近特に増えている疾患です。
症状は胸焼けや呑酸が中心です。日本人はもともと胃酸分泌能が低いので胃食道逆流症は少ないとされていて、内視鏡検査でも40年位前までは3%位しか無かったものが20年ほど前から15~19%と急増しています。
これは診断する側に胃食道逆流症に対する認識が高まった事が一因ですが、高齢者が増えた事にも増加の原因がある様です。
胃食道逆流症は食道下部の括約筋圧が低下したり食道の運動機能が障害されると、本来は逆流しない胃酸が逆流する為、食道下部が胃酸にさらされ、食道炎となります。
すると更に括約筋圧が下がり食道炎が悪化するという悪循環を招いてしまうのです。
特に高齢者では食道下部の括約筋が弛緩しやすかったり、裂孔ヘルニアがあって胃酸が逆流しやすくなっている為にどうしても胃食道逆流症になりやすいといえます。
また食生活の欧米化により脂肪の摂取が増えた事も大きな原因といえます。
脂肪の摂取は胃酸過多を招くからです。
またピロリ菌に感染すると萎縮性の胃炎によって胃酸の分泌が少なくなる事が多いのですが、ピロリ菌の除菌によって胃酸分泌能が回復して胃食道逆流症が発症しやすくなるという報告もあります。
この疾患は内視鏡で下部食退部に炎症がある事を確認して診断されますが、炎症が無くても症状だけが強く現れたり、はっきりと食道炎の所見があるのに症状が出ないという事もめずらしくありません。
生活上では脂肪の摂取を減らす事、食道括約筋を弛緩させない為にも大食を避ける事、腹圧を上げるような服装や姿勢を避ける事、就寝時には上体をやや高くする事などが対策になります。
細菌やウイルスなどの病原体の感染によって嘔吐、嘔気、腹痛、下痢といった症状を表すものを感染性胃腸炎といいます。
この胃腸炎は冬の時期に発生が多く、その原因としてはロタウイルスあるいは小型球形ウイルス(SRSV : small round structured virus)があります。
風邪と似た症状が見られる場合もあり、丁度インフルエンザのシーズンと重なるので「吐くインフルエンザ」「お腹の風邪」とも呼ばれます。
最近ではSRSVによるものが圧倒的に多く、平成9年に食中毒の原因物質に指定され、冬場の食品による食中毒で最も多いのです。
平成10年度の原因別食中毒患者の12%がこのウイルスによるものです。
感染経路はこのウイルスを含む糞便が下水を通じて河川、海へ流れ、カキ等2枚貝等に取り込まれて濃縮されます。
カキの中では増殖できないのですが、そのカキを生食するとヒトの腸内で増殖するのです。更に水を介したり、飛沫感染等人から人ヘ伝播し、秋から冬にかけて流行する事が明らかになったのです。
予防法としては、カキ等の貝類は、生食を避け、十分に加熱調理して食べる、飲料水は煮沸してから飲む、下痢や嘔吐など風邪に似た症状があらわれた場合には調理しないようにします。
二次感染の予防としては手洗いやうがいが有効です。
潜伏時間は24~48時間。発症後3日程で治癒しますが、高齢者や乳幼児など抵抗力の弱い方では重症になる事もあります。
対症療法のみで、熱があっても抗生剤は効果がありません。吐いたり、下痢、そして発熱は体から水分を失い、元は軽い病気であっても悪化する事もあります。
スポーツ飲料、お茶、薄いジュース等、水分を補給する事が大切です。
一般的には内臓は痛みを感じないといわれています。確かに胃を半分にしても腸管を切断しても痛みは感じません。
だからといって痛みの受容内の臓器の痛みは病態生理学的に直接的には内臓痛、体性痛、間接的には関連痛に分ける事ができます。
例えば腸管の平滑筋を過度に収縮させたり、拡張させたりすると痛みが起こります。もちろん平滑筋の痙攣でも起こります。
また食道や胃に直接的な化学的刺激が加わると痛みになります。更に、急性の無酸素状態や炎症等によって神経終末の痛みの受容器が刺激されれば痛みが起こるのです。
この内腰痛の特徴として急性に発症し、いわゆる鈍痛、シクシクした痛みで、どの領域か明瞭では無い痛みが持続的に存在している様に感じます。
この内臓痛以外にも体性痛である腹腔内の痛みで、体壁内面から発生する腹膜痛があります。
これは壁側腹膜や腸間膜等の炎症、機械的刺激で起こり局在性の激しい痛みとして感じる事が特徴で、筋性防御(デファンス)がその例といえます。
また、消化管等に強い刺激が持続すると、特定の皮膚領域に知覚過敏、痛覚過敏が生じてきます。これを関連痛といいます。
消化管の痛みで最も注意しなければならないのは、急激に腹部激痛がある時です。このような病態を急性腹症といいます。
原因疾患としては様々なものが考えられますが、消化管の穿孔、虫垂炎、イレウス、急性腹膜炎、腹部大動脈瘤の破裂等緊急を要するものばかりですので、素早い対応が必要です。
腹痛の部位から考えられる疾患
心窩部痛
上部消化管・胆嚢・膵臓の疾患
右季肋岳痛
肝・胆道、右腎疾患
左季肋部痛
膵臓、左腎・脾臓の疾患
臍部痛
腸疾患、イレウス
右下腹痛
急性虫垂炎、イレウス、尿管結石
左下腹痛
潰瘍性大腸炎、尿管結石
下痢や便意等が頻繁に起こるために、外出するのが恐くなったり、行く先々のトイレを確認しないと落ちつけない等、過敏性腸症候群(I B S:irritable bowel syndrome)に悩んでいる人が増えています。
このIBSは器質的な疾患ではなく、大腸を中心にした機能異常で便通異常、腹部不快感、腹痛等が起こり、更に不安感や抑うつ感などの精神症状を伴う場合もあります。
疫学的な調査で一般の健常者の中でも14~22%はこのIBSの症状をもっていると言われ、消化器疾患の中でも最も高い頻度の疾患なのです。
この症状を持っている中で約20%の人が受診するそうです。男性より女性の方が1.5倍多く、若い時期に多く半数以上は35歳以前に発病します。
便通異常でみると男性は下痢型、女性は便秘型が多い事が分かっています。IBSの特徴として、刺激に対して知覚が過敏で、腸管も過敏な反応をする事が明らかになっています。
ですから一寸した刺激で疼痛や排便を促されてしまったり、腸管の拡張や伸展でも、知覚して脳に伝えられ腹痛を引き起こし、神経反射を介して消化管運動の過剰反応を誘導してしまうのです。
また、症状は下腹部にとどまらず、頭痛、月経異常、倦怠感、頻尿等も引き起こす事から、単に腸管平滑筋の機能異常と考えるより、全身の平滑筋臓器の機能異常として把握する方がこの疾患を理解しやすいという考えもあります。
器質的な疾患がなく吐き気、嘔吐、食欲不振、上腹部痛等の上部消化器の異常が起こる場合をN U D : non-ulcer dyspepsia といいますが、これも平滑筋の機能異常であるのです。
ですから、これらの両方の症状を併せ持つ患者さんも当然いるのです。
そこで、最近になり消化管の機能異常を総称して、irritable gut(過敏な消化器)という概念が提唱されてきたのです。
食道と胃の境目には下部食道括約筋という強い平滑筋があり、食道よりも高い胃の内圧によって胃内容物が食道に逆流するのを防いでいます。
食道は重炭酸や粘液を分泌する事もほとんどなく、PH1~2の強酸の胃液が逆流して食道粘膜に触れると簡単に炎症を起こしてしまいます。
症状は激しい胸やけの他に、胸痛や咳、吐き気や嚥下困難、榎声やしゃっくり等が起こり、単純な胃酸の逆流が様々な症状を引き起こします。
ところで唾液はアルカリ性で、1日に2リットル程分泌されて逆流した胃酸を中和してくれますが、唾液量が減少するシェーグレン症候群では食道炎を起こしやすく、ガムを噛む事が逆流性食道炎の予防になります。
アメリカでは逆流性食道長の患者がとても多いのですが、この為にアメリカ人はいつもガムを噛んでいるのではないかといわれるほどです。
一般に欧米では逆流性食道炎はとても多く、アメリカでは入口の40%以上がこの食道炎の患者群と考えられています。
なぜ欧米では日本に比べて逆流性食道炎が多いのかといえば、高脂肪食や肥満度の違いの他に、ヘリコバクター・ピロリ菌の保菌率が低い事がおおいに関係しています。
ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの原因ともいわれていますが、ピロリ菌に長期間感染していると、胃粘膜が萎縮して、酸分泌が低下し、強い胃酸の逆流が起こりにくくなるのです。
日本ではピロリ菌の保菌率の低下と食生活の脂防食化もあって逆流性食道炎が年々増えていますが、これは慢性的な疾患で完全に治る事はなく、欧米ではQOLをおおいに損なう病気だと指摘されています。
重症患者の多い欧米では手術も行われていますが、逆流性食道炎の薬としては、制酸作用が強いプロトンポンプ阻害薬があり、症状が軽い場合は制酸効果が軽いH2ブロッカーなどが用いられます。
アルコールは「五臓六府に染み渡る」の例えの様に、歯、毛髪、脂肪組織等の水分の少ない組織以外には、身体のどこにも染み渡っていきます。
これは細胞は絹胞膜に保護されていますが、アルコールはこの細胞膜を透過するからです。厚生労働省資料ではアルコールの消費量は毎年増加しています。
内訳は男性はやや減少にあるものの女性の飲酒が多くなり、以前は高齢になるに従って飲酒者のグラフが下降線を辿っていましたが、近年は緩やかな下降線になり結果飲酒人口の増加となっています。
それに伴い臓器障害患者さんも増え続けています。医療費ベースで約1兆円、働けない事による経済的損失も含めると約3兆円に昇っています。
とは言え、一方酒税は平成9年で2兆6300億円あったのが第三の酒類等の税率等で現在では1兆7000億円まで減っています。
ところで酒飲みは必ず休肝日を設ける事が必要であると言われてきました。
最近の学説では、毎日飲む人(連続飲酒者)と週末に大酒を飲む人(間歇飲酒者)を比較すると肝病変の程度や死亡率に差が無い事が確かめられて、一日の飲酒量よりもアルコールの総摂取量に問題があるとする積算飲酒量が重視されています。
どんなに体肝日を作っても飲酒量が多ければ効果は無いのです。
そこで一生で飲める酒の量は、どの位かと言うと積算飲酒量の目安は600kgであると言われています。
この辺を守ろうとすると毎日ビール大瓶3本飲んで25年、2本なら40年近く飲酒を続ける事が出来る計算です。
ですから安全な飲み方を計算するとはやり一日2本以下が望ましいのです。
勿論個体差があり酒の分解酵素の少ない男性と一般的に女性は、それよりも少無くした方が良いのは当たり前です。
おならは食べ物や飲み物と一緒に飲み込んだ空気が80%を占め、ゲップとして口から出なかった空気が小腸、大腸へと運ばれ、おならとなります。
日本人の成人男子で、1日平均200~400ccですが個人差もあり、呑気症という空気を飲み込む癖のある人はおならの量も多いのです。
ところで口から入った空気のおならは基本的には臭くありません。
悪臭があるのは消化不良を起こしている便が直腸に来ている時のおならで、食物繊維が少なく高蛋白高脂肪の食事、例えば焼き肉等を食べ過ぎれば、臭くなります。
また腸内細菌のウエルシュ菌などの悪玉菌による異常発酵のおならも臭いものです。
肉や卵、豆等の蛋白質が分解され、インドールやスカトール、硫化水素、アンモニア、メタンなどが発生し、強い悪臭となります。
膵臓が弱っている時も消化酵素が不足して不消化物が増え、おならが臭くなる事があります。
臭いに悩んでいる人はまず食生活の改善を目指し、高蛋白高脂肪を控え、良く噛んで食べ過ぎを防ぎ、食物繊維を意識して摂る事が必要です。
腸内のビフィズス菌等の善玉菌を増やせぱ悪玉菌を減らせるので、ヨーグルトや乳酸菌飲料はお勧めです。
おならが臭いと病気では無いかと心配になりますが、病気の場合は腹痛や下血などの症状も伴います。