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遺伝子 - Part 2の記事一覧

ゲノムの次は一塩基多型

2021.06.15 | Category: 遺伝子

遺伝子分野ではゲノム解読の次に注目されているのが一塩基多型(SNP=Single Nucleot ide Polymor-phimの略)です。

遺伝子配列が各個体の間で異なる存在の事を多型といい、DNAを構成する30億塩基の内、塩基配列の違いは個人個人で0.1%の約300万あるといわれています。

一塩基多型は「DNAが4つの塩基配列で大半の人ではシトシンなのに、ある人ではチミンに置き換わっている」という事です。

この一塩基多型の多くは成長や健康に影響しません。

しかし、一塩基多型がたまたま遺伝子部分にあった場合、たった1塩基違うだけで遺伝子の活性や構造に影響し、蛋白質の違いが生じて、それが個人の体質差に繋がるのです。

このー塩基多型が病気の罹りやすさや薬の効力に関連していると考えられています。

そこでDNAチップに被験者の血液を数滴落として、塩基のパターンを解析することで、心臓病、アルツハイマー、糖尿病など、どの病気にかかりやすいのか、マーカーとして役立てる事ができるのです。

また薬の効き具合は蛋白質の量や質が徴妙に違う為と考えられているので、この解析から効果が高く副作用の少ない薬を枚与するオーダーメード医療が実現する可能性があるのです。

無駄な薬の投与を省いたり、特定の病気や生活習慣病にかかりやすい人が予防的な医療を受ける事で医療費が抑制できる事も期待されています。

遺伝子と薬の効き目

2021.06.15 | Category: 遺伝子

薬の量は年齢や体重等をおよその目安にしています。

しかし、これほどいい加減な目安はありません。漢方は例外ですが薬のサジ加減など今の投薬医療では存在していないと言えるでしょう。

抗がん剤の様な副作用の強い薬も人によってまったく効かないケースがあります。そんな薬をおよその目安だけで投与されてきました。

そこでオーダーメード医療、つまりサジ加減を復活させる医療が注目されてきたのです。

この薬理ゲノミックスと呼ぶ新しい方法は、あらかじめ病気に関連のある遺伝子を調べ、どの薬が効果があるか無いかを確認するやり方です。

基本的には薬の効くという事は、体内で薬が結合する分子(標的分子)である受容体や酵素の様な分子に上手く結合する事ができるかにかかっています。

これらの分子は蛋白質ですが、その構造は遺伝子によって決定されています。

例えば血液型を決める遺伝子は第9遺伝子の長腕の端の方にある決まった遺伝子の上(遺伝子座)にありますが、A、B、○型と人によって違います。

この様に一つの遺伝子座に複数のタイプの違う遺伝子がある場合を多型性といいます。

これは何も血液型だけで無く、各種の酵素の遺伝子や受容体の遺伝子、免疫反応を起こすヒト白血球型抗原(HLA)等他にも多型性の遺伝子座は沢山あります。

この多型性の遺伝子座の遺伝子が違えば、その命令書で作られた蛋白質の構造や能力に違いが出てきて、それが薬の効き目に影響を与える事になるのです。

ミトコンドリア病

2021.06.15 | Category: 遺伝子

ミトコンドリアは細胞の中にある小さな器官で、エネルギーを作る働きをします。

DNAといえば核の中にある1セットの核DNAを思い浮かべますが、ミトコンドリアの中にはそれとは別のDNAがあります。

それはわずか37個の遺伝子を持つ環状になったDNAで、ミトコンドリア1個の中に5~10セットあります。

ひとつの細胞の中のミトコンドリアは数十から数百個ですから、ミトコンドリアDNAとしてはひとつの細胞の中に数千セットもある事になります。

さて、ミトコンドリアはどの細胞にもあるので、そのDNAが障害されれば全身のあらゆる器官に症状があらわれることになります。

健康なミトコンドリアであっても、少量の遺伝子変異は誰でもが持っているという報告もあり、病気の発症は変異が溜まった量や割合にもよるのでしょう。

ミトコンドリアのDNAは変異しやすく、環境等の色んな要因によっても影響を受けます。

最近の研究では、ミトコンドリア脳筋症等といわれていた病気や眼筋麻庫だけでなく、インスリン非依存の糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー、ライ症候群、心臓病等もこのミトコンドリアDNAの異常と関係ある事が分かっています。

また老化とも強い関係があると考えられています。

遺伝子と蛋白質

2021.06.15 | Category: 遺伝子

ヒトの体は蛋白質や脂質、糖質、無機質からできていますが、中心は蛋白質です。

体を形づくるのも蛋白質なら、体内で化学反応を起こしている膨大な酵素も蛋白質です。酵素は消化、エネルギー製造、神経や免疫の働きに必要な生命現象の担い手といえます。

ですから途中どの酵素が欠けても生命活動がスムーズに行きません。また細胞自身が複製、分裂する時にも蛋白質が必要です。

その生命の基礎である蛋白質は1万種類以上もあるといわれていますが、それを作っているのは僅か20種類のアミノ酸です。

1つの蛋白質はこのアミノ酸がどんな順番でいくつ繋がっているかによって違うのです。

遺伝子は体の設計図だというのも、適当な時期に適当な量の適当な蛋白質を作る指令を持っているという意味です。

DNAは3コの塩基を使って1つのアミノ酸を作りますが、ひとつの遺伝子はそのアミノ酸の並び方が書かれいるというわけです。

DNAの塩基配列が分かったという事は、この蛋白質の作られ方が分かるようになったという事で、生物間の本質的な違いや病気の原因など、生命現象が解明される基礎を手に入れたという事なのです。

【必須アミノ酸】
20種類のアミノ酸は細菌から哺乳類まで共通。ただし人では12種類のアミノ酸を合成できますが、8種類は合成できません。
それが必須アミノ酸と言われるものです。
必須アミノ酸は動物の種類や年齢によって違いがあり、例えば大人のラットの必須アミノ酸は10種類です。
必須アミノ酸はどの動物も体外から摂取しなければなりません。
しかし微生物や植物は20種類すべてのアミノ酸を合成できます。
結局動物は植物がなければ生きていけないのです。

性の決定と遺伝子

2021.06.15 | Category: 遺伝子

20001年2月の「ネイチャー」で、性染色体の男性だけが持つY遺伝子染色体には僅か26個の遺伝子しか無いと発表しました。

この遺伝子の中で注目されているのがSRYと呼ばれている遺伝子です。

マウスの実験で、このSry(動物ではSry)をXXの性染色体を持つマウスの受精卵に入れると精巣をもつ雄のマウスが産まれたのです。

ヒトの胎児の発達過程をみると受精後7選目までは男も女も形態的には変わりません。

この頃までは同じ生殖腺原基を持っているので、精巣にも卵巣にもどちらにもなれる潜在的な能力を持っているのです。

ところが、性差が生じるこの時期にだけSRY遺伝子が働いて、精巣を作り男性化を促すのです。

そしてこの時期を過ぎるとSRY遺伝子は2度と登場しません。ですからSRYは最初のきっかけを作る性決定遺伝子といわれています。

もちろんこの男女の性差を決定して行く遺伝子はSRY遺伝子の他にもあり、Y染色体以外の常染色体に数多くある事も知られています。

ところで、ヒトではXXの性染色体を持ちながら身体は男性になる場合があります。

この場合、SRY遺伝子がX染色体にあったのです。

逆に、XY染色体を持ちながら身体は女性になる例では、Y染色体上にSRY遺伝子がありませんでした。

生殖細胞は減数分裂をしますが、この分裂の時にエラーが発生した為に、遺伝子の組換えが上手くいかなかった為なのです。

遺伝子療法とは

2021.06.15 | Category: 遺伝子

遺伝子療法と言っても、遺伝子その物を操作する遺伝子療法と、遺伝子は使うが遺伝子その物は操作しない遺伝子療法とがあります。

現在アメリカ等で盛んに行われている遺伝子療法とは、遺伝子を使う方の遺伝子療法で、遺伝子その物の操作を目的としたものは少数です。

がんに対する遺伝子療法を例にとれぱ、例えば遺伝子異常によってがん抑制遺伝子のp53が慟かなくなった場合、p53を作る遺伝子を持ったベクターを体内に導入する事でp53を作らせてがんを抑えるといった方法です。

つまり遺伝子そのものには手を加えなくても、細胞増殖やサイトカインなどに関する遺伝子を入れて、必要な部位で一定期間だけ作用させる事を目的にします。

このやり方の遺伝子療法なら、安全性さえ確認できればほとんどの病気に対して方法のひとつとして広く使われる事になるでしょう。

ただし、この方法では遺伝子が働かない為に起こる遺伝子病には有効ですが、働いてはいけない遺伝子が働いた為に起こる遺伝子病は対応できません。

その場合は遺伝子その物を作り変えるだけで無く、その遺伝子の発現を調整している要素までも考えなければなりません。

しかもその病気に関わる遺伝子は1つとは限らない上に、外来遺伝子を目的の所に組み込むという究極の遺伝子療法技術はまだできていないのが現状です。

【遺伝子療法事故】
遺伝子療法はすでに世界中で行われています。
がんが約7割遺伝病1割弱、その他(AIDS含む)です。
1999年にアメリカで遺伝子療法事故が起こりましたが、これはベクターのウイルスに対する非特異的免疫反応が過剰に起こった為と考えられています。
この事故以来アメリカでは技術改良だけでなく厳しい見直しがされています。

人のゲノムでわかったこと

2021.06.15 | Category: 遺伝子

2000年にヒトゲノムの塩基配列がほぼ分かりました。しかし塩基配列が分かったといっても、本当はそれだけでは意味がありません。

それはまるで、カタカナだけで書かれて句読点もなければタイトルも無い、おまけに間に意味の無い文字の羅列が挟まっている様な、31億6500万文字の文章に過ぎません。

おまけにその文章の意味のある部分(遺伝子)は全体の3~5%ですから、意味のある部分を確定し、文字を意味のある文章(遺伝子)として確認する作業が必要となります。

その遺伝子の部分もこれまで人で10万個程だと予想されていましたが、実際には3~4万個だという事も分かったのです。

この数は細菌の遺伝子の10倍、ショウジョウバエの2倍にしか過ぎません。哺乳類でいえば遺伝子の数だけで無く9割が同じかよく似た遺伝子であり、チンパンジーでは98%がヒトと同じ遺伝子です。

しかも細菌由来の遺伝子が200個以上もあって、実際に遺伝子としての働きをしている事も分かっています。

つまり人は生物として特別な存在ではなく、あらゆる生物は人間が思っていた以上に近い存在だと言えるのかもしれません。

【DNAデオキシリボ核酸】
細長い糸状の科学物質で2本のDNA鎖が4種類の塩基で結びついていて二重らせんを作っています。
塩基はアデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)で必ずAはTとGはCとペアを作ります。
この塩基の中でタンパク質を作る部分が遺伝子。

日本人は肥満体質

2020.03.31 | Category: 遺伝子

アメリカのジョンズホプキンズ大グループが、肥満や糖尿病の発生率が高いアリゾナ州のピマインディアンの遺伝子を調べた所、内臓の脂肪細胞にあるベータ3アドレナリン受容体の64番目のアミノ酸1個の変異を見つけました。

この遺伝子が作る受容体は脂肪の分解を盛んにしますが、遺伝子変異でこの働きが低下すると脂肪が身体に貯まるのです。

この遺伝子変異を日本人で調べた所30~40%の人に見つかり、この変異があれば、一旦太ると痩せにくいことが京都府立医大の吉田俊彦講師により確かめられました。

肥満外来の女性患者88人(平均年齢54歳、平均体重80.6kg)に毎日1200kcalの食事制限と、1万歩歩行の運動療法をさせた所3ヵ月で、遺伝子が正常な女性は体重が8.3kg減り、遺伝子変異のある女性は基礎代謝が低く、平均減量も5kg台に止まったのです。

私達の食生活はちょっと前までは貧しいものでしたから、この遺伝子の変異は効率が良かった分けですが、今の様に高脂防食になると太る原因にもなる分けです。運動しても痩せられ無い人はこの遺伝子かもしれません。

福山型筋ジストロフィー起源は100代前

2020.02.25 | Category: 遺伝子

筋ジストロフイーの中でも日本人に多い福山型筋ジストロフィ一の遺伝子がヒトゲノム解析センターの戸田達史助教授らのグループによって付きとめられました。それによると福山型筋ジスの遺伝子は9番染色体長腕部にあって、フクチンという461個のアミノ酸からなる蛋白質を作る遺伝子が変異して、その蛋白質が作られ無くなってこの病気を発症すると言う事が分かったものです。戸田さんらは日本人の患者の家族約100 家族を調査し、その遺伝子の変異は約100代前に一人の健康な人の遺伝子に発生した遺伝子異常が受け継がれて現代までに遺伝していると言う事も指摘しています。100代前と言うと今から約2000年~2500年前で、縄文時代か弥生時代にあたります。現代では日本人の80人に1人がこの遺伝子を持つと言われていますが、両親共にこの遺伝子を持った場合に発症する劣勢遺伝なので年間数十人の患者が生まれています。

ゲノムという考え方

2019.09.21 | Category: 遺伝子

ゲノムを物質として言い表せば4つの塩基で構成されたDNAと言えます。しかし”ゲノム”と言った時には単なる物質としてでは無い、生命のシステムとして見るという事が必要になります。生物は全てDNAを命の設計図として持っていて、それは大腸菌でも象でも同じです。しかしよく見るとそのDNAが作っているそれぞれの遺伝子は、象の遺伝子、大腸菌の遺伝子と言うよりも、ひとつの酵素の遺伝子、ひとつの蛋白質の遺伝子等が長い年月をかけて組み合わされた物だと言えます。ですから「大腸菌での真実は象でも真実だ」と言われるのはその通りですが、かと言ってそれぞれの遺伝子が大腸菌でも象でも同じような働き方をしている訳では無いからこそ色々な種が生まれてきたのです。また個々のゲノムは象を作ったり大腸菌を作る共通のゲノムではありますが、同時にA象とB象の違いも持つ、個別的なゲノムでもあります。つまりゲノムは種として見る事も出来れば、個としても見る事の出来る、生命のシステムだと考えれば良いでしょう。2003年4月14日に解読終了宣言をしましたが蠅と人とはほとんど同じであり、全ての生物のゲノムが明らかになれば、これらのゲノムと人ゲノムとを比較する事で、生物の進化や共通性、多様性が明らかになるだけでなく、生命とは何かという大問題も随分みえてくる事でしょう。

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