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糖尿病 - Part 3の記事一覧

高血圧と糖尿病

2021.03.07 | Category: 糖尿病

高血圧を起す原因は色々で、腎臓疾患、内分泌異常、血管の病気、あるいは薬剤でも起こります。元になる病気が無く、原因が特定できない高血圧を本態性高血圧と呼んでいます。

この本態性高血圧は肥満、運動不足、多量の飲酒、塩分の摂り過ぎ等が原因といわれていて、これらは糖尿病の原因に共通しています。

実際、糖尿病に高血圧症、逆に高血圧症に糖尿病が合併しやすい事はよく知られています。

高血圧症と糖尿病の合併症の場合は心臓血管病が多発する為に生存率が非常に低くなりますが、最近その病因や病態に関連がある事が明らかなってきました。

その共通する原因が高インスリン血症なのです。耐糖異常等で血中に高濃度のインスリンがあると臓器や神経に色々と影響を与えます。

腎臓では糸球体で濾過されたナトリウムは尿細管で再吸収されますが、インスリンはその再吸収を促進してしまいます。

その為、体内にナトリウムが増え、それにつられて水分も増えてしまう結果、心臓の拍出量が増えて血圧が上がります。

また、インスリンは脳の糖代謝や血圧調節の中枢に働いて、交感神経を興奮させる働きもあります。

その為交感神経系が亢進して、末梢血管抵抗の増加と心機能の活性により血圧が上がります。更に、インスリンは血管の平滑筋の膜に働いて、細胞内のナトリウムやカルシウム濃度を増加させ、その結果、平滑筋が収縮しやすくなり血圧を上昇させます。

また、インスリンはこの血管平滑筋を増殖させる働きもあり、血管の壁が厚くなる為内腔が狭くなり、末梢血管抵抗が増大してしまいます。

ですから、糖尿病でなおかつ高血圧という合併症は非常に危険である事を理解すべきです。

糖尿病とストレス

2021.03.06 | Category: 糖尿病

糖尿病の因子の中でストレスはよく挙げられますが、動物実験ではストレス刺激によって糖尿病発生を示す報告があるものの、人で精神的なストレスによって糖尿病が発症するか実はまだ明らかではありません。

ストレスが引き金になり過食に陥り、それで肥満、耐糖能異常、高血糖の状態が続き、その結果糖尿病になる事はあります。

この様なストレス下で過食が起こるのは、内因性モルヒネ様物質やセロトニン等の脳内伝達物質により摂食中枢が刺激された為に起こると考えられています。

また、高血糖症の患者さんに過重なストレスがかかる事でコントロールが出来なくなる琴があります。

これはストレスによって自律神経系の交感神経が優位になる事で、大量のアドレナリンが分泌される状態になります。

このアドレナリンはインスリンの分泌を抑制し、グルカゴン分泌を刺激する事が明らかにされています。

確かに糖尿病患者ではアドレナリンを投与すると血糖値が大幅に上昇しますが、健常者ではほとんど上昇する事は無いのです。

この事からアドレナリンに対する感受性が敏感な人が糖尿病に成りやすいとも言えます。

また、糖尿病の教育入院の時にストレスマネジメントを実施すると、しない場合と比較して血糖値降下が大きいと言う報告もあります。

この様な事からストレスに敏感な人ほど糖尿病になりやすい事は確かな様です。ですからリラックスする方法を持つ事は糖尿病にとって間違い無く予防法の一つなのです。

糖尿病と神経障害

2021.03.05 | Category: 糖尿病

糖尿病の三大合併症の一つが末梢神経障害ですが、一番早くから高い頻度で起こります。なかでも、足の痺れ、冷感など知覚神経障害は頻度が高い事で知られています。

末梢神経には知覚や運動を担う体性神経と内臓器官を調節する自律神経があります。末梢神経が他の細胞と違うのは、エネルギー源として糖を直接細胞内に取り込む事です。

この時インスリンは全く関与しないで、血液の糖の濃度勾配によって糖を取り込みます。

ですから高血糖状態が長く続くと、細胞内で過剰な糖を休む事なく処理する事になり、末梢神経をカバーしている髄鞘が所々失われて神経の伝達が妨げられたり、神経内の細小血管が詰まったりして血統が途絶えて神経障害が起こる事になるのです。

知覚神経が障害された場合、下肢の痺れ・ほてり・ピリピリ感・冷感・神経痛という症状が出ますが、手や足の左右対称に現れ、夜間に悪化するのが特徴です。

この様な神経障害は糖尿病を放置すると5~6年で発生してしまいます。また交感神経と副交感神経にも次第に異常が起こってきます。

無自覚性低血糖、起立性低血圧、心臓調律異常、血管運動機能異常、呼吸機能異常、発汗異常や瞳孔と涙腺の症状等出てきます。

また消化器系では食道無力症、胃・十二指腸無力症、胆のう無力症、下痢、便秘等が起こります。泌尿器系では無力性膀胱やインポテンツがあります。

運動神経が障害されると眼筋麻痺・こむらがえり・腱反射の低下や消失等が起こり、足のつま先が上がらずにちょっとした段差でつまずいたりします。

知覚神経が鈍感になると冷たいとか熟いという感覚が鈍って知らない内に火傷をする、小さな傷やケガに気付かないで細菌感染を起こすといった事もあります。

なかでも危険なのが、自律神経障害を合併した糖尿病による突然死です。心拍数の減少や異常、頚動脈化学受容体の神経支配の障害や起立性低血圧等で致命的な不整脈を誘発する事で突然死が起きてしまいます。

また糖尿病の進行で恐いのが、交感神経系の反応が鈍くなる為低血糖を自覚できない無自覚性低血糖症です。

この様な患者さんのインスリン投与は非常にコントロールが難しくなり、頻繁に血糖測定を行わないと意識障害を引き起こしてしまいます。

この様に糖尿病は血管ボロボロ病であると同時に、神経ボロボロ病であるのです。血糖値が高くて既に足の痺れ等を自覚している患者さんには、自律神経系の障害の恐さを喚起する必要があるのです。

動物性脂肪と糖尿病

2021.03.04 | Category: 糖尿病

糖尿病はカロリーの摂り過ぎと関係が深いのは確かですが、糖尿病になる人が肥満だとは限りません。

最近の日本人が過食であると言う見方は常識になっていますが、実際はエネルギーの摂取量の増加は1960年代の後半がピークで、その後減少気味になっているのです。

もちろん個人差は大きいでしょうが、摂取エネルギーだけを考えるならば、糖尿病患者とその予備軍が急激な上昇傾向にある事が説明出来ないのです。

従って問題は摂取するエネルギーの過剰だけで無く、その内容にもあると言えるでしょう。

日本人の脂肪摂取は急激に増加し、戦前の3倍とも言われますが、この脂肪(動物性脂肪)の摂り方に問題があると見られるのです。

脂肪酸の中でも飽和脂肪酸の過剰な摂取はインスリン抵抗性が強くなる事が動物実験でも確かめられています。

細胞膜を作っているリン脂質の中で飽和脂肪酸が多くなると、細胞膜のインスリン受容体の機能が悪くなって細胞内への糖の取り込みが悪くなる、つまりインスリンが充分に作用し無くなるのです。

動物性脂肪には飽和脂肪酸が沢山含まれていますから、動物性脂肪の摂り過ぎはインスリン抵抗性をもたらし糖尿病に成りやすくさせると言えるのです。

カロリーを摂り過ぎない事はもちろんですが、飽和脂肪酸を摂り過ぎない様にすると言う事も大切です。

糖尿病と筋肉

2021.03.03 | Category: 糖尿病

体は血糖値を一定にする為に、膵臓のインスリンや肝臓の働きによって調整しています。

特に食事の後は唾液アミラーゼや十二指腸の糖質分解酵素などの働きで大量のブドウ糖が血液に流れ込む事になります。

当然血糖値は高くなります。これらのブドウ糖は門脈から肝臓に流れ込み、50%は取り込まれ、その内の10%はグリコーゲンに、60~80%は脂肪に変換され肝臓内に貯蓄されます。

残りのブドウ糖は、主に筋肉細胞と脂訪細胞に取り込まれる訳です。そのプロセスでインスリンが細胞の扉を開く鍵の役目をする訳です。

ところで筋肉細胞に送り込まれたブドウ糖は筋肉が運動をしていないと、余剰のエネルギーになります。

そこで、筋肉細胞では、余剰のブドウ糖をグリコーゲンヘと合成して、運動時のエネルギー供給のストックとして、筋肉細胞内に貯蔵して行くのです。

体重70kgの人のグリコーゲン貯蔵量は肝臓では約70gですが、筋肉にも約200 gも貯蔵する事が出来るのです。

ところで慢性的に運動が不足していると、筋肉細胞のグリコーゲンが満杯になっている状態が続いてしまい、筋グリコーゲン合成酵素活性が低下してしまいます。

その事は結果的にインスリン抵抗性を招いてしまうのです。多くの糖尿病はインスリンの分泌不足と共に、インスリンの作用不足が加わる事によって発症しているので、筋肉の運動が必要な訳です。

血糖値を正常に保つプロセスの中で肝臓と脂肪細胞と共に筋肉細胞の役割は非常に重要なのです。

糖尿病の分類と診断基準

2021.03.02 | Category: 糖尿病

以前糖尿病は「インスリン依存型」「インスリン非依存型」と言う様に、糖尿病の原因による分け方で分類されていました。

しかし今では病気の原因と症状の段階を併記する様に変わって来ています。インスリン依存型を1型、インスリン非依存型を2型とし、特定の原因(造伝子の異常、慢性膵炎や慢性肝炎等)によって引き起こされる糖尿病をその他の型としています。

更に妊娠糖尿病も別に分類しています。ただし実際に問題となるのは病気の段階ですから、病態の分類が採用される事になり、正常領域・境界値域・糖尿病領域とに区分し、糖尿病領域でもインスリン非依存状態とイスリン依存状態とに分けたのです。更に診断基準も厳しくなり、正常な血糖値(血液1dl中のブドウ糖の量)をこれまでは空腹時140mg以下としていたのを110mg未満まで引き下げています。

日本人はインスリンの出方が悪い事が多い為、空腹時血糖値が126mg以下であっても、ブドウ糖経口負荷試験の2時間値が200mgになる人が4割ほどいるといわれています。

糖尿病を見逃さない為にも空腹時の検査だけで無くブドウ糖経口負荷試験を受けることが必要です。

脂肪の蓄積は赤信号

2021.03.01 | Category: 糖尿病

肥満には内臓脂肪型と皮下脂肪型がありますが、日本人は遺伝的に内臓脂肪型が多く、その内臓脂肪が糖尿病の危険因子なります。

脂肪細胞は内分泌細胞で、様々なホルモン(生理活性物質アディポサイトカインと総称)を分泌している事が分かってきました。

標準体重の正常な状態にある脂肪細胞は必要に応じて適切にホルモンを放出しますが、内臓脂肪が肥大、蓄積したBMI25以上の状態になると過剰に放出されたり、逆に放出されなくなるホルモンがあるのです。

蓄積された脂肪細胞からは、TNFα(腫瘍壊死因子a)が過剰に分泌されています。その作用は筋肉の糖の取り込みを促すインスリンの働きを抑え、インスリン抵抗性が増して、糖尿病の発現に関連する事が分かっています。逆に放出され無くなるホルモンにアディポネクチンがあります。

脂肪細胞から分泌されるのですが、脂肪が肥大、蓄積されるとその分泌量が少なくなるのです。このホルモンをインスリン抵抗性の高いマウスに与えると抵抗性が改善されるのです。標準体重の人の血中からはアディポネクチンが極めて濃度が高いのです。

また皮下脂肪が増えても変化しないのですが、内臓脂肪が増えると低下し、糖尿病患者を調べると低下している事が分かりました。

日本人の65%は太ってくると血中のアディポネクチンが低下する遺伝素因を持っているとされています。

内臓脂肪が蓄積される陽な食習慣は糖尿病を抑制するアディポネクチンが減少し、インスリンの抵抗性をもたらすTNFαの分泌を増やすのです。

過食と運度不足の為に脂肪細胞のバランスが崩れた結果が肥満からなる糖尿病につながるのです。内臓脂肪は運動すれば燃焼されやすい脂肪ですから、とにかく脂肪を蓄積させない事です。

日本人の糖尿病

2021.02.28 | Category: 糖尿病

2型糖尿病の発症は民族差や地域差が大きく、アメリカのアリゾナに住むピマ・インディアンは成人の半数が糖尿病です。

その原因のひとつが遺伝子の一箇所に変異が起こるSNPs(―塩基多型)で、β3アドレナリン受容体遺伝子にー塩基多型が起こっている事が分かっています。

β3アドレナリン受容体は熱産生、脂肪分解に関係していて、そこが変異していると基礎代謝や脂肪の分解能が低下し、腹部肥満、高血糖、血圧上昇、インスリン抵抗性を引き起こすので糖尿病になりやすいというわけです。

しかし考えてみればこの変異はエネルギーの節約遺伝子ともいえるわけで、厳しい食料事情の中ではかえって生き延びるには有利な変異だったといえます。

さて、日本人は同様の変異を持っている人が多い事が分かっていて、その頻度はイヌイット、ピマ、インディアンについで世界3番目に高く、欧米人の2~5倍にもなります。

欧米人では高度の肥満体型をよく見ますが日本人ではまれです。にもかかわらず日本人に2型糖尿病が多いのはこの遺伝子の変異によるものという事がいえるのです。

この変異を持つ人はそうでない人に比べて糖尿病の発症が約6年位早く、減量がしにくく、インスリン抵抗性や血糖のコントロールが改善しにくいのです。

さらに網膜症や腎症にもなりやすいようです。2型糖尿病の患者さんが全てこのパターンではありませんが、厳しく日常生活を律しても体重や血糖値をなかなかコントロールできない人はこの変異を持っている可能性が高いといえます。

また家族の中に糖尿病発症者がいる人はこの遺伝形質を持っているものと考え、一層の注意が必要です。最もメキシコで伝統的な食事と労働をしているピマ、インディアンはアリゾナのピマ・インディアンに比べて平均で26kgも体重が少なく糖尿病も少ないのですから、食生活や環境でコントロールできるという基本は日本人でも同様です。

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