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免役の適材適所

2019.09.28 | Category: 免疫

呼吸器と消化管は常に細菌等の異物と闘っていますが、戦いに使う武器は場所によって違います。まず肺胞ではマクロファージや好中球が活躍します。マクロファージは食菌力、好中球は殺菌力で闘います。マクロファージは細菌でもゴミでも、とりあえず何でも取り込んで無害化します。ところが腸ではマクロファージを中心に使う事は出来ません。マクロファージだと腸内の善玉菌も栄養物も異物とみなして食べてしまう事になるので敵か味方かを識別出来る免疫力が必要となるのです。つまりここでの武器は抗体です。抗体であれば栄養分や善玉菌とは結び付かず赤痢菌等の病原菌だけを殺す事が出来るのです。また異物と接する場の違いだけで無く病原菌の違いによっても活用される免疫も違ってきます。例えば肺でも肺炎菌に対してはマクロファージでは無く、好中球や抗体で闘います。この好中球も肺炎菌や緑膿菌は殺しますが、結核菌やカリニ肺炎菌は殺す事が出来ず、T細胞系の力が必要です。例えばエイズの末期では免疫力がガタガタになって結核やカリニ肺炎等の日和見感染で命を落とす事が多いのですが、ダメージを受けているのはT細胞系で好中球は保たれているので肺血症にはなりません。一方抗癌剤などで骨髄がダメージを受けると造血機能が落ちるので好中球等が減少するため敗血症や肺炎等になるのです。免疫は場所と相手によって戦略も違っている訳です。


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