- Blog記事一覧 -血管内皮細胞の働き
動脈は高い内圧に耐える事が出きるように3層構造になっています。
繊雄性組織からなる外膜があり、その内側に主として平滑筋で出来ている中膜があります。
そして、一番内側に内膜があり、その内膜には一層の血管内皮細胞があります。この内皮細胞は動脈だけでなく静脈や毛細血管やリンパ管系等、循環器系全般に広くある細胞です。
ところで、通常血管の収縮や拡張は自律神経系や血液中の液性因子が調節していると言われてきました。
つまり、末梢の細動脈では交感神経α受容体の刺激やアンギオテンシン等の血管収縮因子により収縮し、β受容体の刺激やキニン等の血管拡張因子によって弛緩するとその細動脈の収縮と弛緩により、末梢循環の抵抗性の強弱が生まれ、血圧や血流の体内分布等が調整されているというわけです。
この説明は間違っているわけではないのですが、他の原因として血管内皮細胞が注目されてきています。
この血管内皮細胞は従来血管壁に血栓が付着したり、血液が固まるのを防ぐ、いわばコーティングのような働きがあると考えられていました。
しかし近年の研究で、この内皮細胞が抗血栓性と血栓形成性の、拮抗する性質の生理活性物質を作る事が明らかになったのです。
例えば内皮細胞から放出されるー酸化窒素等の血管拡張物質は細胞の増殖を抑え、血栓を予防して動脈硬化を妨げます。
これに対して、エンドセリン等は逆の作用の血管収縮物質で、過剰に作られれば血管を傷付け、血栓を作り動脈硬化を進めてしまうのです。
つまり、この2つの拮抗する作用により、血管自体が循環のバランスをとっていたのです。
このバランスが崩れてしまうと、自ら血栓を作り動脈硬化を誘発する事も分かってきました。
この血管内皮細胞は循環のバランスだけでなく、免疫や代謝等も制御しているという研究もあり、現在注目される先端研究のーつになっているのです。