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天然痘はなぜ撲滅できたのか

2020.01.01 | Category: 感染症

人類の歴史の中で天然痘は長い間猛威をふるってきました。紀元前2世紀、エジプトのラムセス5世のミイラには天然痘の痕が残っています。このウイルスの感染力は強く、致死率は50%です。l8世紀になってイギリス人医師のジェンナーが初めて種痘を行いました。1967年にはWHOは天然痘根絶本部を発足、その時点ではまだ世界中に10方人以上の患者がいました。1977年に東アフリカのソマリアで患者が確認されたのを最後として、1980年WHOは天然痘撲滅宣言を行いました。今でも天然痘ウイルスはアメリ力のアトランタのCDC とロシアのモスクワのウイルス研究所に保管されています。しかしWHOはこれらの研究用ウイルスは感染事故やテロに悪用される危険があるとして、1999年6月に廃棄処分する事にし、50万人分のワクチンとワクチン製造のための病毒化ウイルスだけを保存すると決めました。ところでなぜ天然痘は撲滅出来たのに、他のウイルス病は披滅出来無いのでしょうか。それは、種痘による抗体産生が一生持続する事,天然痘のウイルスに抗原変異性が無い事、何よりも天然痘ウイルスが人間にしか感染しないからです。例えば、ポリオや狂犬病がヒトに発症し無くなったとしても、これらの撲滅宣言をする事は出来ません。なぜなら、ボリオや狂犬病は他の動物にも感染するからで、自然界のどこかで、ウイルスが 動物の体内に存在している可能性があるからです。


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