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うつ病の物質的基盤

2020.03.10 | Category: 精神科

最近の研究では、うつ病も物質的な説明がつく疾患である事が分かってきました。これまでに分かった事は、神経伝達物質ノルエピネフリンとセロトニンが不足しているという事です。神経伝達物質の働きは放出された神経伝達物質の量と、やりとりする神経細胞の間にその物質がどれ位保たれるかによります。ですからシナプスから一旦放出されたノルエピネフリンやセロトニンがそのシナプスに再び取り込まれる事を遮断すればうつ症状が軽減されるのです。その様な作用を持った最近のうつ病薬は効果も高く、副作用も少ない為多くのうつ病が薬で改善出来る様になったという訳です。ところがこれらの抗うつ薬が効かないうつもあり、その場合はホルモンの異常が考えられます。それは視床下部 一下垂体―副腎系のホルモン異常です。人はストレスにさらされると、視床下部から下垂体、副腎と順送りにホルモンを出させて最終的に副腎皮質刺激ホルモンを放出させ、身体に戦いの準備をさせます。視床下部からのホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)は食欲や性欲を抑制して集中力を高めますし、副腎皮質ホルモンは筋肉へのエルネギー取り込みを増やします。つまりこの系が活性化したままになっている状態がうつ症状なのです。動物の脳に副腎皮質刺激ホルモン放出因子を与えると不眠、食欲、性欲 の減少、不安などの症状が表れますし、現にうつ病患者の脳脊髄液中の副腎皮質刺激ホルモン放出因子濃度は高く、それを産生するニューロンの数も増加している事が分かっています。ストレスでうつ病になったのも、そのストレスがきっかけで視床下部―下垂体―副腎系が活性化されたまま固定されたのだといえます。


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