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男と女 - Part 2の記事一覧
女性ホルモンのエストロゲンは、女性を女性らしく特徴付けるだけで無く、女性の健康のあらゆる面に渡って影響を与えています。
女性の骨粗粗症が、更年期以降エストロゲンの急激な低下による物である事はよく知られる様になりましたが、エストロゲンは他の病気のリスクに対しても大切な働きを持っています。
そしてその恩恵が病気に対する性差を作ってもいるのです。まずエストロゲンは動脈硬化を抑えています。
HDLコレステロールを上昇させ、LDLコレステロールを低下させるからです。
しかも抗酸化の働きもあって、肝や血液の過酸化脂質を減らすので、女性は男性と比較して心筋梗塞等の心血管疾患が少ない上に、肝硬変や肝癌にもなり難いのです。
またエストロゲンはインスリンの感受性を上げるので、2型糖尿病に対する抵抗力も持ちます。
ですから50歳位までは女性は男性に比べてこれらの疾患から免れていると言えるのです。
しかし、閉経をきっかけにエストロゲンが急速に減少するとこのプラス面は失われて行きます。
するとそれまで免れていたこれらの疾患も男性の発症率に近づいて行きます。
しかもエストロゲンは神経伝達物質のアセチルコリンの量を増やしたり、神経成長因子として神経の成長と活動を促進させてもいるので、これが減少すると言う事は、痴呆にも成りやすいと言う事にもなります。
閉経期以後の女性はそれまでとは違った健康への対策が必要と言えます。
男性より女性の寿命が長いのは世界中の傾向ですが、その差は日本では女性は86.6歳男性は80.21歳で約6歳の差があります。
何と言っても女性は男性より生物的に生存しやすい訳で、流産や死産の3分の2は男性です。
X染色体を2つ持つ女性は一つのX染色体に異常があってももう一つのX染色体でカバー出来る為致命的にならずに済みます。
一方、男性はXが一つしか無いのでそこに異常があるとそれに関する疾病になってしまうのです。
つまり生存のチャンスその物が男性の方が狭いと言える訳です。しかもY染色体には寿命を短くする遺伝子があるのではないかと言われています。
また女性のエネルギー代謝は男性より低いので、活性酸素等の害を受ける事が女性の方が低い事も一因である様です。
そして一番大きな要因は女性ホルモンであるエストロゲンが様々な疾病に対して有利に働いている事だと言えます。
(エストロゲンの項参照)更に社会的な要因も無視出来ません。
男性は喫煙や飲酒、肉体的労働等、危険行為が多く、ライフスタイルその物が寿命を縮めているのも事実なのです。
現に人の限界寿命は約120才くらいで男女でさほど差は無く、長生きすればするほど余命の差は無くなっていきます。
欧米では寿命の性差は少なくなって来ていて、これは中年の男性の死亡が少なくなっているからだとみられています。
したがって、男性が事故に逢わない様にして、生活習慣をつつしんでヘルシーな生活を送れば寿命の男女差は縮まるでしょう。
男らしさや女らしさは、文化や育った環境によって影響を受けますが、胎児期の脳の分化と言う事が「らしさ」をもたらす事も分かってきました。
Y染色体上にはSRYという性決定遺伝子が乗っていて、生殖腺原基に働き精巣が出来、精巣から分泌された男性ホルモンのテストステロンによって男性の器官が出来て行くのです。
しかし、元々胎児の脳は、母親の体内で女性ホルモンに潰かっています。
男の脳になるには生殖器官と同様に胎児の初期(受胎後15から24週)に胎児自身が出す大量の男性ホルモンのシャワーを浴びる事によって男の脳になると考えられています。
ですからこの時期に脳が男性ホルモンをどれだけ浴びるかが重要なのです。
一旦男性化した脳は後で女性ホルモンを浴びても女性化する事はありません。
又この時期に女性化した脳は、後で大量の男性ホルモンにさらされても男性化する事はありません。
猿を使った実験では妊娠中の母猿に男性ホルモンを注射すると母猿から産まれた雌猿の遊びのパターンが雄型になりました。
人の場合でも副腎過形成症という遺伝病を胎児が発症すると、産まれる前から大量の男性ホルモンが分泌される為、女の子でも脳が男性化する事が知られています。
この遺伝病の女の子はおてんばになる傾向があり、人形遊び等を好みません。
また、この時期に母親に何らかのストレスがあって、男性ホルモンの分泌が不充分だと男らしさが失われる事で同性愛者になると言う「同性愛ストレス説」があります。
しかし理論的な根拠に不明確な点が多く定説ではありません。