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虫垂と消化管免疫

2021.03.31 | Category:

俗に「盲腸」と呼ばれ、身体の中であってもなくてもいいものの代名詞のように扱われてきたのが虫垂です。

大腸起始部の盲腸先端に長さ6.5~8センチ、直径0.5~1.5センチのイモ虫のようにくっついていて、どんな働きをするのか最近までよく分かっていませんでした。

この虫垂はしばしば炎症を起こしますが、原因はウイルス感染・異物や便の混入・糞石や結石による圧迫等です。

虫垂炎が悪化すると組織が壊死して虫垂に穴があき腹膜炎になって、昔は発見の遅れ等から死亡率が非常に高い疾患でした。

昭和30年代以降、少しでも虫垂炎の疑いがあれば「手遅れになると恐い」ということで安易に手術をする風潮が蔓延していました。

この結果、日本人は過去に「盲腸」の手術をした事のある人は5人に1人、欧米先進諸国の数倍に昇っています。

ところで虫垂の解剖学的な構造を調べてみると、虫垂はリンパ組織が非常に発達していて、その点でノドの扁桃腺に似ているため「腹部の扁桃腺」と言われるほどです。

扁桃腺は幼児で発達していて、病原体の侵入に感受性が高くてよく炎症を起こします。

大腸起始部の虫垂のリンパ組織も若年者で非常によく発達して炎症を起こしやすく、虫垂炎の好発年齢は10代後半から20代前半です。

虫垂のリンパ組織は、パイエル板という小腸の粘膜下にあって消化管免疫を司るリンパ組織によく似た組織で、免疫グロブリンをつくるB細胞も多数存在しています。

近年の大腸がん等のがん患者の増加は、生体の免疫能に関わる虫垂がやたらと切られてきたツケではないかとみる病理学者もいるほどです。


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