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インスリンと代謝異常

2021.03.14 | Category: 糖尿病

インスリンというホルモンは一般には血糖値を下げる事に働き、糖尿病はインスリンが足りなくなって起こると解されています。

しかしインスリンには、血液に入ったブドウ糖を骨格筋や肝臓や脂肪組織の細胞に送り込み、肝臓や筋肉中でブドウ糖がグリコーゲンに合成される作用を促進し、かつ肝臓からブドウ糖がむやみに血液中に放出されるのを抑えるといった幾つもの働きがあります。

そして糖質だけでなく、脂肪や蛋白質・水分・ミネラルの代謝にも深く関わっています。

糖尿病ではインスリンが体内に充分あっても細胞で働けない状態(インスリン抵抗性)が起こって、ブドウ糖がエネルギー源として利用できなくなり、身体は不足のエネルギーを脂肪酸で補おうとします。

普通だと脂肪組織に蓄えられた脂肪が分解して脂肪酸になり、この脂肪酸が更に分解してエネルギー源となるのですが、インスリンの作用が不足している状態では脂肪の代謝も滞ります。

分解が途中までしか進まない脂肪酸はケトン体というものになり、これが増加して処理しきれなくなったものが血中に溢れ、血中ケトン体が増加して血液が酸性に傾き、尿中にアセトン体となって出てきます。

健康人なら1~3 mg/d1である血中ケトン体濃度が重い糖尿病では30~40 mg/dl という値を示し、血液がアシドーシスとなって酸性の血液が脳の機能を抑制し、糖尿病昏睡に陥らせる事もあります。

糖尿病が進行して糖質や脂肪がエネルギー源に利用できなくなると、骨格筋の蛋白質を分解して補わざるを得ない為、いくら食べても体重が減って痩せてきます。

また高血糖状態が続くと、浸透圧によって細胞内水分と共にカリウムが細胞外に引き出されて電解質のバランスも崩れ、水分代謝の異常は腎臓の機能障害も引き起こしてしまうのです。


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