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DESの教訓

2020.01.24 | Category: 内分泌

1939年に、英国の医療チームが体内で天然エストロゲンの様に作用する化学物質 DES (ジエチルスチルベストロール)の合成に成功しました。この物質こそ医学史上に残る悲劇を巻き起こしたのです。その当時、妊婦にとってエストロゲン数値の低下は流産や早産を誘発すると考えられていました。DESを投与された妊婦の総数は米国を中心になんと500万人に昇ったのです。その後の数十年の間、DESは「妊婦必携の妙薬」として広く愛用されてきました。妊婦ばかりでなく、家畜などにも大量のDESが使用されてきたのです。しかし、この奇跡の薬に何の薬理効果も無いと言う研究論文が50年代の初めに次々出てきました。更に、DESこそが流産、早産、新生児死亡の増加の元凶であると断定した論文も出て来たのです。しかし、それにもかかわらず米国の連邦食品医薬局は差し止めようとし無かった為に、その後20年に渡って何十万人もの妊婦が服用してきたのです。その結果、胎児の時にDESを受けた若い女性に膣の明細胞腺癌という珍しい癌が発症し始めたのです。更に、女性の子宮の奇形や男性の精巣及びぺニスの発育不全等も明らかになり、奇薬は悪魔の毒であった事が分かって来たのです。DESは胎盤を通り、胎盤の成長を阻害するとんでも無い影響を与える恐怖の内分泌かく乱化学物質だったのです。


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